動物種とは、動物の力を得ている人であり、それぞれに動物の特徴が表れている種族である。
その中の兎族に珍しい兎が現れる。
その名は卯沫 蒔菜。
彼女は他の兎族とは違い、兎族の母と水の精霊である父から産まれた兎と水の精霊の血を持つ混血の兎であった。
水の中を呼吸出来る彼女は他の兎の子達と違う事を気にし、あまり馴染める事出来ず、一人で水中をぷかぷかと浮かんで過ごしていた。
そんな独りぼっちの兎に変化が訪れる。
「はぁ…」
と卯沫は村の近くにある大きな池にぷかぷかと浮かびながらため息をついていた。
卯沫の住んでいる村は兎族が集まって作り上げた村であり、卯沫みたいな混血の子は居ない、ほとんど兎の血の子だけだった。
混血である卯沫は、卯沫自身他の子と違う事を気にしており、こうして村の近くの池に浮かんで過ごし、1人でつまらなそうに過ごしていた。
そんな一人で過ごしている卯沫に卯沫の母と父は心配していた。
『ため息ついてどうしたんだい?卯沫?』
卯沫以外誰もいない大きな池に声が聞こえてくる。
それは誰も驚いてしまうが、卯沫はその声を良く知っていて、普段通りに振る舞う。
「はぁ、ダディ、大丈夫だから気にしないで」
その声は卯沫の父であり、水の精霊でもあった。
姿は見えないのは、水の精霊であるため水に溶けているのか、卯沫が池にいるので遠くから声を届けているという電話みたいなやり方が出来るの2つである。
今の卯沫は自分自身の事で悩んでいるため、なるべく近くにいないようにという事で遠くから声を届けているという。
こうして卯沫の父と母は心配しているが、卯沫にとっては逆に厄介で、あまり話しかけないで欲しいと思っていた。
『それと、まだ音響士の皆さんがまだ来ているから、なるべく彼らの邪魔にならないように近づかないでね』
と卯沫の父は最後に伝えたい事を伝えて連絡を切った。
音響士…彼らは何処からかやって来て、目的の物を回収したいと言った。
その目的の物は古代にあった武器で、それを確か楽武?にするために発掘していて、古代の武器を発掘出来るまではその周辺には入らないで欲しいとも言っていた。
確かに発掘作業は関係ない私たちには危険であるが、どうしてその武器を求めているのかは分からない。
卯沫はそう思いながら浮かんでいた。
(とりあえずそろそろ戻ろうかな)と思考を切り替え、卯沫は水面から立ち上がり、そのままお気に入りの池から兎族の村まで歩いて帰る。
「あれ?村がなんか騒がしいな…どうしたんだろう?」
村の入り口へ辿り着いた途端、数人の兎族の人達が慌てた様子で誰かを探していた。
「レレ!!どこ行ったの!?」
と母親らしい兎族が慌てながら誰かを探していた。
彼女の兎族の証であるウサミミはピーンと立っており、早く見つけ出したいのが伝わった。
他の人達もそのレレという子を見つけ出そうと一緒に探している。
(あれ?確かレレってあの人の息子だよね?迷子かな?)
と卯沫はレレという少年を思い出していた。
かなり活発な兎族の少年で、興味がある物なら突っ走る頬に絆創膏をつけた少年だ。
あまり関わった事がないけど、良く池の周りを通っていて、確か古代の武器に興味があるって言っていたような……まさか!?
そうレレが何処にいるか分かった卯沫は急いでその発掘現場まで走って行った。
森の中を全力で走る卯沫、足がつりそうになるが必死に足を動かした。
だがその時…
ウー!ウー!
何かの警告音が森全体に広がる。
それはまるで危険な存在が接近している時の警告音と同じで恐ろしくなる。
警告音は発掘現場から聴こえており、ただの発掘作業の筈が一体何が起きているかと卯沫は疑問になりながら、急いで発掘現場へ向かう。
目的の発掘現場へ辿り着いた。
だが様子が可笑しく、現代人である彼ら音響士は慌ただしく動いており、
「Aチーム!左からノイザーが接近してるぞ!動け!」
「この武器を彼らに食われないようにするんだ!!」
と叫んでいた。
「…ノイザー?何の事だろう?」
ノイザーの存在を知らない卯沫は、彼らにバレないよう茂みに身を隠しながらレレを探す。
だがどう探してもレレを見つけられず、卯沫は困り果てる。
あとは何処を探せばいいか卯沫は考えていると…
「おい!!不味いぞ!!右方向に兎族の少年が一人、ノイザーからこちらへ逃げてきてるぞ!!誰か増員を!!」
「駄目だ!もう動ける人が足りない!!」
なんと彼らから兎族の少年がいると言った。
しかもそのノイザーに襲われて逃げているという。
レレが何処にいるか分かった卯沫は身を隠している暇はなく、急いで発掘現場の中へ向かう。
発掘現場へ入った卯沫。
連れ戻されそうと思ったが、彼らは必死にその古代の武器を守るように黒い何かと戦っており、ノイズ音も響いていて、耳を抑えたくなる。
彼らの守ろうとしている古代の武器は、機械のケーブルに繋がっており、まるで元の力を戻そうとしている。
古代の武器は黒く錆びているが弓の形をしていた。
そんな緊急事態な状況なのに、卯沫は何故かその弓に惹かれてしまう。
まるで弓自身が卯沫を求めているのかのように。
「おい!!そこの娘どうして入ってきた!?」
ある音響士が卯沫に気付き迫る。
だが卯沫は気にせずに弓の方へゆっくりと歩き出す。
「聞いているのか!?」
とその音響士は卯沫を掴もうと手を伸ばそうとした時、古代の武器からハープのような音が鳴り響く。
それには戦っている音響士達も振り返り、卯沫と古代の弓へ目を向ける。
「まさか…この弓はこの娘を選んだのか…?」
そう誰かが呟いた。
楽武はその使用者と同じ音ではないと、ノイザーと戦う力を手に入らず、例え小さなナイフの音武でも重りになってしまう。
だが、まだ楽武になっていない弓で、射貫く事が難しいあの古代の弓が卯沫を求めた。
卯沫が手に取る瞬間を誰もが気になって全員が見守る。
卯沫は恐れながらその弓へ手を伸ばす。
もしこの弓に触れたら何がが始まる予感がしたからだ。
だけど、この弓の力ならあの黒いドットのような生物に対抗出来る気がして、レレも救えそうな感覚がした。
卯沫は躊躇わずに古代の弓へ手を伸ばした!
卯沫の手が触れた瞬間、錆びて茶色だった弓は段々と卯沫と同じ白色へと染まっていった。
戦う力を取り戻した弓は、まるで昔から使っていた弓みたいに卯沫の手に馴染んでいた。
「はぁ!はぁ!誰か助けて!!」
兎族の少年レレは必死にノイザーから逃げていた。
レレを追っているのは狼の姿をしたノイザー三匹、デザートである古代の弓を食べる前の前菜としてレレを食べようとしていた。
レレはなんとか逃げているがもう足が疲れ始めていて、震えそうになっていた。
それでもレレは必死に逃げる。
あの発掘現場へ入れば助かる。
そうレレは思い、疲れ始めている足に力を入れた。
「あ…」
レレは転んでしまった。
それを見逃さない狼のノイザーの一匹がレレへ飛びかかる。
もう…僕は死ぬんだ…
レレは諦めてしまう。
どうせなら母さんと父さんに会いたかったなと思い、これから来る激痛に目をギュッと閉じる。
■■ッ!?
激痛は来なかった。
だが、狼のノイザーから鳴き声か分からないノイズ音の鳴き声が聞こえてくる。
レレは恐る恐る目を開けていく。
なんとそこには水の矢が突き刺さっている三匹の狼のノイザーが倒れて、チリチリと空気に溶けていく姿だった。
何がどうなったか分からないレレは戸惑っていた。
「レレ君!?大丈夫!?」
と後ろから何処か知っている声が聞こえてくる。
レレは振り返ると、そこにはあの水の精霊と兎族の混血である卯沫がいて、その手には卯沫の色と同じ弓を構えていた。
この後はレレを救い出せた卯沫はこのまま彼ら音響士と共に迫ってくるノイザー達と戦った。
彼らは本当は卯沫をこのまま戦わせたくなかったが、今は最大の危機であった為、卯沫に頭を下げた。
卯沫もこのままだと村の皆が食い殺されると感じ、まだ戦うのは恐怖であったが、それでも音響士と一緒に戦い、見事に勝利した。
戦いに勝利し、卯沫は音響士と共にレレを連れて村へと帰る。
レレはお母さんとお父さんの姿を見つけ、「母さん!父さん!」と駆け出し、レレの母親と父親もよっぽど心配したのか涙を流しながら走ってくるレレを抱き締めた。
その家族の再開に卯沫はホッと胸を撫で下ろしていると、レレが「卯沫お姉さんが助けてくれたんだ!」と卯沫へ指を向ける。
それにレレの両親は卯沫へ近づき、「ありがとう…ありがとう…」と手を握ってくれた。
その手の暖かさは優しく、心が温かくなっていた。
そこに音響士の人達も卯沫へ向けて、
「それだけではありません。卯沫はノイザーという脅威な存在に私たちと共に戦い、この救いましたよ」
それには村の大人達が驚き、英雄だと卯沫を称えてくれる。
卯沫は英雄の言われたのは恥ずかしくて、少し顔を赤くなってしまう。
「では私たち音響士の仕事はこれで終わりですが、もし良ければ卯沫、私たちと一緒に戦いませんか?その弓は持っていて大丈夫。だけど、卯沫ならきっと私たちよりも強い音響士になれる」
と一人の音響士が真剣に卯沫へ見つめていた。
本当は戦いたくない。
けど、今の温もりを守れるなら、音響士になってみようかなと卯沫は思っていた。
やがて彼ら音響士は元の世界へ戻り、卯沫は音響士になるか時間をかけて考え始めていた。
これは独りぼっちの兎が英雄になるための始まりだった。
~ 余談 独りぼっちの兎 終 ~
「世界観紹介」
発掘現場
楽武は造られる武器であるが、古代の武器を楽武として利用することもある。
ただ発掘作業をすると、その古代の武器から溢れてしまう音がノイザー達を呼び寄せてしまう為、発掘現場の周辺には誰も近づかせないようになっている。
古代の武器
それは昔に使われていた武器であり、神性を得ている武器でもある。
錆びて使えなくなっているため、もう一度使う為に楽武として復元させる。
今回の弓は卯沫の持つ音と共鳴し、直ぐに使える状態になった。