暫く「水面」支部に身体を休めた響音達は、森の中を迷わずに「夜空」支部へ帰還する事が出来た。
身体を休めていたわりに響音だけは少しボロボロで、左頬には湿布を貼っていた。
帰還途中、その左頬に貼ってある湿布を気にしたもかは聞いてみるが、「ちょっと休んでる間無理しちゃった」と響音は渇いた笑いをする。
もかに続いてリトやフォメル達3人も響音の湿布を気にしていた。
何故湿布をしていたのかは、卯沫との特訓中、卯沫の強力な蹴りを左頬へ命中してしまい、暫く左頬が腫れていたからであり、もう卯沫と組み手したくないなと若干トラウマにもなっていた。
「夜空」支部へ無事帰ると、最初の任務で腕を骨折していた黒狼が完全復活し、帰ってきたもか達へ「おかえり~」と声をかける。
全然平気そうに腕を動かす黒狼を見て、次の任務から復帰出来そうと皆は感じていた。
そして、森で一人で勝手に迷子になった響音に対する罰則が決まり、一週間「夜空」支部の皆の買い出しのパシりとして働く事となった。
食べ物、楽武のパーツ、本、ビデオ…等々をひたすら町から「夜空」支部の往復を響音は大変そうにしていた。
しかも音響士としての仕事もやるので、疲労困憊になりつつあった。
そんな日々を過ごしてやっと7日目、これでパシり期間が終わる日であった。
「…ほんと疲れたよ色んな物を買い出しに行かされて」
と響音は疲れて、最後の買い出し物を探しに町の中を彷徨いていた。
響音が今探しているのは、「黄金プリン」という金色に輝くプリンで、その見た目とは違い、とろけるような甘さが1品のデザートである。
その見た目と味で期間限定のデザートであり、一時間で完売する程人気であった。
もか達全員が食べたいという事で、響音含めて8人の黄金プリンを買う流れになった。
「だけど、自分も黄金プリン食べれるから楽しみだな〜」
とさっきまでの疲労困憊の姿から少し元気を出して、最後の買い出しを頑張ろうと響音は気合いを入れ、目的のお店を探す。
(それにしてもほんと色んな人達がいるな~…)
と黄金プリンの店を探すついでに、響音は町の様子を見る。
町には色んな種族の人達が行き来し、鬼の角を生えた親父みたいなのがガハハと知り合いである狼耳の少年と共に笑い合い、エルフ耳の商人が遠い未来にあるような服装を着ている男性へ商品の紹介をしていたり、そんな沢山の人達が今の町に集まっていた。
種族が違う彼らがこうして互いに仲良くしている光景を見て、響音は(平和だな~…)と感じていた。
だがそんな楽しいやり取りの中で、酒を扱う専門の店の前で、一人の犬見をした女性が涙を流し正座させられ、その彼女の仲間である眼鏡をかけた男性が腕を組んで叱っており、他の仲間はやれやれとしていた。
そんな彼女らに通行人は
「何かあったのかな…?」
「一体なにしたんだ?」
と心配そうに見ながら、彼女らの横を通っていた。
「…なぁ、言ったよな?支部の資金を使わないでって」
と眼鏡の男性はそう怒っており、
「だって~期間限定の『鬼姫の酔いどれ鬼殺し』が売ってたんじゃ~」
そう犬耳の女性は泣きながら言うが、「なら自分の金で買えっ!!」と眼鏡の男性は言い返した。
「やっぱり酒カス…」
「なんとかしなければ…」
と他の仲間も頭をかかえていた。
「な…なんなんだあの人達…?」
そんな彼女らを響音は驚いて見ていた。
だが彼女らも音響士であり、これが響音の新たな音響士の出会いとなった。
卯沫との出会いを終えた響音、
森での迷子で暫く買い出しに駆り出された時、あるお酒屋さんの前で、正座で叱られている「音響士」である彼女らがいた。
そんな彼女らとの出会いが始まる。
次回、「お社の狛犬」編が始まります。
「登場した食べ物紹介」
・黄金プリン
これは普通の卵を使ったプリンではなく、妖精界にいるコカトリスという魔物の卵から作ったプリンである。
野生のコカトリスの巣から取っ手来るのだが、コカトリスは人を石化させる能力のある鳥形の魔物の為、命を賭ける卵取りであった。
今は飼育出来るようになっているが、それでも石化される人がいるので、変わらず命懸けである。
・鬼姫の酔いどれ鬼殺し
このお酒は昔、鬼族のお姫様が気に入ったお酒という伝承があるお酒である。
あまりに強いアルコールで、酒が強い鬼族の鬼姫は初めて酔いつぶれたお酒だったが特に気に入った酒でもある。
このお酒は祭り関係の出来事で出すお酒であるが、より多くの人達に呑んで好きになって欲しいと思い、こうして売られていた。