音響士   作:かげかげ

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「お社の狛犬」編 大蜘蛛

 

 黒フードの人物は路地裏を進んでいく。

 その足取りはまるで久しぶりに来た場所を思い出す為にゆっくりと足を進めていた。

 

 「む……行き止まりか……」

 やがて行き止まりに辿り着き、「手前の道を右に曲がればよかったか?」と一人で呟く。

 

 「……出来ればらんまとは出会したくなかったが」

 と言い、黒いフードは振り返る。

 そこに居たのは全速力で追いかけてきたらんまの姿があり、息を切らしていた。

 

 やっと追いついたらんまは息を整え、今まで隠していた怒りを吐き出す。

 

「やっと見つけた……クソ親父ィ!!」

 

 今までのらんまとは様子が違った。

 いつものムードメーカーとして明るく振る舞っていた彼であったが、今その明るさは無く、瞳は黒フードを鋭く睨んでいた。

 

 親父と呼ばれた黒いフードはようやく被っていたフードを下げる。

 その顔はらんまが少し大人びた顔をしており、左目蓋には切り傷が付いていた。

 

 息子との再会であるが、らんまの父、四季箔蓮司(しきはく れんじ)はらんまへ冷たい視線を送っていた。

 「そういえば、もう『らんま流』と名乗るのはそろそろ辞めて、元の名前に戻したらどうだ?」

 蓮司はふと思い出し、らんまの刀術の名称を元に戻せと話すが、それをらんまは頑固拒否をする。

 

 「断るッッ!!お前のせいで……お前のせいで……」

 

 「俺たち家族はメチャクチャになったんだッ!!だから、『四季流』との決別するために変えたんだッ!!」

 

 らんまは怒りに震えながら自身の刀を抜刀し、蓮司に斬りかかる。

 それに対して蓮司は呆れ顔をし、自身の楽武である刀を抜き、らんまの刀を防いだ。

 

 誰も知らない路地裏では今2人の戦いが始まった。

 

 

 場面は無人のトンネルへと移る。

 

 桜とヒロが表でノイザーを足止めしてる間、響音達はトンネルの中を進んでいく。

 トンネルの中はうっすら暗く、何とか目を凝らしたら見えるが、しっかり視界を確保した方が良い為、響音はスマホのライトをつけ、おうか達は各自持っていた小さな懐中電灯をつけていた。

 

 トンネルを進んでいく度、ノイザーが迫ってくるが、それほど脅威的でも無いため返り討ちにしていた。

 やがて少し広い場所に辿り着く。

 

 そこは電灯が点いていて、周りには蜘蛛の巣みたいに糸が広がり、ちらほら人並みに大きい卵も置いてあった。

 周りが見える程の明るさだった為、響音達は点けていたライトを消して、周りを見始める。

 

 「なんだこの卵……?」

 獅白は落ちていた大きな卵を気になり、ふと足を動かした時……

 

  ■■■■■■■■■■ッ!!

 

 急に何処からかノイザーの高い咆哮が聞こえてきた。

 誰もが警戒し始めた時、落ちていた大きな卵はプルプルと動きだし、パキパキと殻が割れていく。

 卵から現れたのは、グール型のノイザーで、ゾンビのように動き出した。

 その1体は早速目の前に獅白が居たので、エサだと判断し飛び掛かる。

 

 「羽化した!?」

 獅白は驚いたが、冷静に持っていた楽武の短剣で斬り倒す。

 

 すると、上から巨大な何かが糸を垂らしながらゆっくりと降りてくる。

 足は先が鋭く6本生えており、岩さえも砕ける顎さえも持っている巨大な大蜘蛛のノイザーが現れた。

 大きさはかなり大きく、トンネルの一面を埋もれてしまう程であった。

 

 ■■ッと大蜘蛛のノイザーが鳴くと、卵から羽化したグール型達は、響音達に向けて襲い掛かった。

 どうやら大蜘蛛はグール型達に命令をしたらしく、親玉であることを確信する。

 

 「あやつはおうかに任せろ!!そいつらは劉達が倒してくれぇ!!」

 とおうかは大蜘蛛のノイザーへ単身で飛び出して行った。

 「あのバカ犬!」と銀次はおうかを止めようとしたが、丁度グール型が飛び掛かって来た為、チッ!と舌打ちをしながら、何処からか取り出した楽武の大鎌で切り裂いた。

 

 続けて銀次も何もない空間から楽武を取り出した光景を響音は見て、

 (……もしかして『狛犬』支部は何もない空間から楽武を取り出せる能力があるのかな?)

 と仮説を立てていた。

 

 おうかはかなりのスピードで大蜘蛛へと駆け出していく。

 迫り来るグール型も居るが、それは殴り倒し、その間をすり抜けて迫っていく。

 やがて大蜘蛛の近くまで接近出来、おうかはその勢いのまま飛び上がり、「はぁぁぁ!!」と気合いの入れた拳を大蜘蛛へ当てようとしたが……

 

 ■■……■ラ……ウラム……

 

 と大蜘蛛がなんと人の言葉を話した!

 まさかノイザーの口から「恨む」という不気味な言葉が出た事に全員が驚いていた。

 攻撃を与えようとしたおうかは、まさか目の前の大蜘蛛が言葉を話した事に、驚きすぎて気が抜けてしまった。

 

 その気が抜けた瞬間を見逃さなかったのか、大蜘蛛は口から黒い蜘蛛の糸をおうかへと向けて吐き出した。

 黒い蜘蛛の糸は見事に命中し、おうかの身体をしっかりと粘り付き、おうかは動けなくなる。

 

 「き……切れん……!!」

 おうかは自身の圧倒的な身体能力で蜘蛛の糸を切ろうとしたが、それでも蜘蛛の糸は切れない。

 

 大蜘蛛は動けないおうかへ向かって、

 

 ウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラムウラム

 

 と壊れたラジオのように「恨む」を繰り返し言いながら、ゆっくりとおうかへと向かって来る。

 それは瘴気を含んでいたのか、狛犬であるおうかの体調を悪くさせ、弱めていた。

 

 弱まっているおうかの姿を見て、響音、劉、獅白、銀次は不味い!!と感じ、直ぐにおうかを救助するのに動き出す。

 

 「劉ッ!!俺がコイツら切り裂くから、全員切り裂いたらおうかを助けてくれッ!!」

 「了解したッ!!」

 

 銀次はグール型達を一掃してから、劉がおうかを救助という指示をし、自身の音弾を発動させる。

 

 「全員頭下げろッ!!音弾装填、『狩人』(かりびと)ッ!!」

 自身の楽武である大鎌に力を込めると、輝き始め、その刃はより大きくなる。

 大鎌が大きくなると同時に銀次の姿にも変化が始まる。

 

 「え……角が生えてる……?」

 そう、銀次の頭から角が生えてきたのだ。

 その立派な角を見た響音は驚いてしまった。

 

 銀次は一見、響音と同じ現代人だと思うが、実は現代人と魔界の魔王の血を合わさって産まれた人であり、彼が音弾を使用するとこうして角が生えてくるのだ。

 

 「喰らえぇぇぇ!!」

 

 と銀次は大きくなった大鎌を横に思いっきり振ると、大鎌は空気を切る音を立てながら、目の前にいた10体程のグール型を一気に切り裂いた。

 そんな圧倒的な力は魔王が現れたと思わせる。

 

 銀次のお陰で目の前の道が開いた。

 劉は急いでおうかを救助しようと駆け出す。

 

 「くぅ……」

 

 おうかの視界はぐらつき始めており、今にも倒れてしまいそうだが、気合いで意識を保っていた。

 目の前にはその鋭い足でおうかを貫こうと構えている大蜘蛛のノイザーがいる。

 早く避けないといけないのだが、身体は言うことを聞いてくれない。

 絶対絶命の状況であった。

 

 大蜘蛛は充分に溜めた足の1本をおうかへ向けて振り下ろす!

 おうかはこれから来る痛みを堪える為に目をぐっと閉じる。

 

 ……だが、やってくる痛みは全然感じられない。

 疑問に思ったおうかはそっと目を開けると……

 

 劉がおうかの事を庇っており、その横腹は見事に貫かれ、だらだらと血が流れていた。




  「登場人物紹介」
 四季箔 蓮司(しきはく れんじ) 現代人
  30代後半の男性、らんまの父親であり、季節の出来事を刀術として表した『四季流』の師範代。
  彼も音響士として戦い、家族と平和に過ごしていた。 
だがある時、音響士の研究員を皆殺し、音響士を裏切り世の中から消えていた。
  何故今になって現れたのかは不明である。

  「新たな情報の開示」
 四季箔 らんま(しきはく らんま) 現代人
  四季箔蓮司の息子であり、『四季流』を受け継いだ音響士。蓮司が研究員を皆殺しした事で、母と共に世間から傷つけられた過去を持つ。
  そんな父親との決別するため、『四季流』を『らんま流』と言い換えていた。
  父親が生きていた情報を掴んだとき、心の中に復讐心が誕生していた。

 覇前 銀次(はぜん ぎんじ) 現代人と魔界のハーフ
  響音と同じ現代人だと思われたが違い、本当に魔王の血を持っている人物であった。
  母親が現代人、父親が魔王だったが、ある時から魔王である父親から離れていて、父親の事をあまり知ってない。
  そんな父親を知るためにこうして音響士として動いている。
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