おうかへ向けて大蜘蛛は鋭い爪のような足を振り下ろした。
迫り来る痛みに目をギュッと閉じたが、そこへ劉がおうかを庇い、横腹を貫かれていた。
劉はあまりにも激しい痛みに歯を食い縛っており、その光景を見た全員が大きく目を開けて驚いていた。
「劉ぅぅぅう!!」
とっさに動いたのは獅白だった。
獅白はかなりのスピードで駆け付け、劉に突き刺さってる足の間接目掛けて短剣を振り下ろす。
その一振は見事に大蜘蛛の一足を断ち切り、おうかと劉を脇に抱えて距離を取る。
大蜘蛛は自慢の足を切られた事で、■■■!!と痛そうに鳴き、その場で大暴れし始める。
響音と銀次の所まで戻ってこれた獅白、だがその両脇に抱えた劉とおうかの状態が最悪であった。
おうかは顔が青白くなっており、劉は苦しそうに横腹を抑え、そこから血がポタポタと流れていた。
2人とも戦える状態でなかった。
大暴れしていた大蜘蛛は、自身の再生力で斬られた足から黒いドットが溢れだし、足が再生される。
そして、獅白へ向けて突撃する!
獅白は劉とおうかの前へ立ち、短剣を構えて応戦しようとしていた。
だがその時、
「やらせないッ!!」
響音は槍に新たに付けられたスイッチを押し、持っていた槍は孤の形となり、その間に玄が張られる。
そして、響音の右手に掴んでいる小さな筒をその玄へ乗せると、なんと光輝く矢が出現する。
それは睦月がまた響音の楽武を改造し、弓の機能を付けていた。
光輝く矢は自身の音のエネルギーを矢として放てるようにし、矢の消費を無くしたのだ。
この小さな筒を貰った弓道は、矢の消費を気にする心配が無い事に、涙を流しながら「ありがとう……ありがとう……」とお礼をしていたという。
「ハァァァァ!!」
響音は大蜘蛛へ向けて矢を放つ。
それは見事に命中し、大蜘蛛を退ける事が出来た。
その隙に響音はおうか、劉、獅白の元へ走り出す。
「響音!頼む、2人をここから遠ざけてくれ!」
俺は時間を稼ぐからと獅白はお願いをするが、響音は劉の横腹から流れる血を良く見てしまい、何かが響音の頭からある光景を思い出してしまった。
それはまだ幼い時の光景であった。
父親と母親、響音とノイザーの襲撃にあった街から逃げる時、目の前で父親と母親を食い殺されたあの絶望的な光景を……
父親と母親から飛び散る血飛沫を……
それが劉から流れる血と重なって、響音は思い出してしまった。
もう誰も食い殺させない。
「……どうした?早く2人を連れていってくれ!?」
お願いしたはずがおうかと劉を連れて行かない響音に疑問に思い声をかける獅白。
後ろを振り返った途端、響音が一人で大蜘蛛へと走り出した!
「なっ!?」
まさか一人で立ち向かうとは思っていなかった為、獅白は響音を止めることが出来なかった。
その後銀次が獅白の元へ駆け付けた所で、響音が立ち向かった所だった為、「嘘だろ!?」と驚いていた。
「アアアアアアア!!」
響音は狂ったような叫び声を上げながら、大蜘蛛へと走り出していた。
迫ってくる響音を察した大蜘蛛は、口からあのおうかの動きを止めた黒い糸を吐き出す。
だが響音はしっかりと大蜘蛛を見ていた。
黒い蜘蛛の糸が迫ってくる瞬間、響音は動きを変える。
「音弾装填ッ!!『ラビットステップ』ッ!!」
響音は最近手に入れた音弾『ラビットステップ』を駆使し、ウサギの素早さで黒い糸を回避し、大蜘蛛へとそのまま迫っていく。
まさか黒い糸を回避された事に大蜘蛛は驚いたような動きをしていた。
それは「狛犬」支部も同じ反応を見せた。
「アイツ……!?ウサギ族だったのか!?だけど、普通の現代人だったよな……?」
と銀次は困惑し、獅白も「どうなってんだ!?」と驚いていた。
劉とおうかは響音の姿をうっすらと見ており、(一体何者なんだ……?)と響音の事を不思議に思っていた。
響音は『ラビットステップ』で助走の付けた強力な飛び蹴りを大蜘蛛へ叩き込む。
大蜘蛛は響音の飛び蹴りで後ろへと飛ばされ、壁に激突する。
まさかあの巨大な相手をたった一人の青年が蹴り飛ばした事に銀次達は驚く。
響音はこのまま追撃する為に駆け出す。
大蜘蛛は反応したいが強烈な一撃を食らってしまい、怯んで動けなかった。
そんな動けない大蜘蛛へ辿り着き、その腹の部分に向けて、響音は違う音弾を放つ。
「アアアアアアアッ!!『二重奏』!!」
生えたウサミミは消えたが、響音の放った一突きの槍は2撃起き、大蜘蛛へ大ダメージを与える。
大蜘蛛の身体から黒いドットが溢れ、消滅し始めている。
『二重奏』を繰り出した響音は後ろでバク転し、距離を取った後、また違う音弾を繰り出そうとしていた。
『二重奏』、『ラビットステップ』、もう2つの音弾を使い、それ以外は無いと思われた。
しかし、たった今、新たな音弾を響音は手に入れた。
それは劉から感じ取れた音であり、大切な人を守りたいという強い思いが込められているのか、まるで太鼓の叩く時に感じる空気が振動するような音が響音の中へ伝わってくる。
そして、響音はその音を自身の音弾として形作られた!
「音弾装填……」
『狼爪脚』(ろうそうきゃく)ッッ!!
すると響音の頭から今度は劉と同じ色の犬耳生え、足にはオーラの纏った鋭い狼の爪が備わる。
響音はその鋭い爪を振り上げ、狼の爪の斬撃を放つ『狼爪痕』(ろうそうこん)を繰り出した。
『狼爪痕』は劉の技の一つで、それを今日出会ったばかりの人で、その技は見てないはずなのに、響音はそれを真似して使ったのだ。
そんな神業を出来た響音におうか達は驚愕していた。
響音の放った爪の斬撃は見事に大蜘蛛を三枚にし、身体はバラけ始める。
大蜘蛛は最後に「ウラ■ウ■ム■■ム■■■ッ!!」と絶命の悲鳴を上げ、消滅して行った。
大蜘蛛との対決はこれで終わりを告げた。
「新たに得た特異音弾」
・狼爪脚
大蜘蛛との戦いで手に入れた音弾、劉から感じ取った音。それは大地を震わせるような力強い太鼓の音であり、守りたいという強い意志を感じる音であった。
その状態から放つ『狼爪痕』は狼の爪の斬撃を飛ばす事が出来る。そして、その力強さは壁も走っていけるそうだ。