響音とおうかの戦いが始まる前、もか達は自身の支部へ帰還していた。
らんまはあのまま路地裏で気絶していたのを、後で追い掛けたもか達が見つけ、そのまま連れ帰り、医務室で休ませる。
響音がまだ帰ってきてない事をもかは気になり、響音のスマホへ連絡し、返信が帰ってくるのを待っていた。
「……遅いなぁ」
と、もかは呟き、皆も気になり始めていた。
そんな待っている中、支部のモニターから何処からかの通信が入る。
「一体何処のどいつだぁ?」
と睦月が操作盤をカタカタと操作し、その通信を受け取る。
もか達は一斉にモニターへ顔を向けると、そこに『狛犬』支部の皆が映っていた。
『夜空支部の皆、急な通信失礼する。』
とおうか達全員が横に並んでおり、全員が真剣な顔をしていた。
あまりにも真剣な顔だったので、もか達は警戒を始める。
『今回通信したのは……そなた達の仲間、響音の事じゃ』
おうかは響音の事を話すと、もか達は響音に何かあったか!?と喰い気味に話を聞こうとする。
「響音に何かあったか!?」
黒狼はおうかに質問する。
それはこの場全員が思っていた事を代弁していた。
それに対し、おうかは『そう焦るではない』と落ち着かせる。
そして、おうかは今回通信した要件を話し始める。
『……響音の音響士としての覚悟を確認させて欲しい』
覚悟?
どういう事だ?
そう、もか達は思っていたが、おうかは話を続ける。
『今回の騒動、響音のお陰で解決は出来た。だが、彼は自身の音弾によって、かなり体力が消耗しており、まだ眠っておる』
『そして、その音弾の力で自身を犠牲にするような行動をしており、下手したらいつか響音は戦いの中で早死にするとおうか達は思ったんじゃ』
そう話すおうかの顔は、あんまり口にしたくない言葉だった為、申し訳なさそうな顔をしていた。
『なので、響音本人の音響士としての覚悟をおうかが確認したい。だから、暫くの間、おうか達の支部で預けさせて欲しいんじゃ。どうかお願いします。』
とおうかは頭を下げて、桜達も続けて頭を下げ始めた。
「そうは言っても……」
と弓道はまだ理解してなく、早く連れ戻したい気持ちがあった。
それは他の仲間達も同じで、らんま抜きの全員で『狛犬』支部に凸りに行くかと考えていた。
……だが、その中で白崎だけは違った。
「……いや、俺はこのまま『狛犬』支部の皆さんにお願いしたい」
白崎のまさかの発言にもか達は一斉に顔を向ける。
「心配じゃないの!?」とリトは咄嗟に言うが、白崎はこのまま思った事を話す。
「いや!確かに心配だよ!!だけど、アイツは初めての任務で確かに自身の音弾の力で危ない事をした。」
「その時は今回だけだと思ったんだ……けど!森の戦闘でも新たな力に目覚めて、また危険な事をしたのを覚えている……」
「だから……黒狼、もかさん、リトさん、弓道さん、フィメルさん、睦月さん……どうか、お願いします」
と白崎は深々と頭を下げる。
そんな白崎の姿に全員は戸惑ってしまう。
だが、そんな白崎の言っている事には、黒狼、もか、リト、フィメルは理解出来た。
「……確かにそうだよな、あの時の初任務はほんと危なかったかったよな」
黒狼は白崎の肩に左手を置く。
「だね……確かにあの時の響音はほんと怖かった」
「そうだね……」
もかとリトは森のカメレオンのノイザーとの戦いを思い出し、あの時の響音の危険性を感じていた。
もか達がそう考えが変わると、取り返そうと思っていた弓道と睦月はそれほどヤバイのかっと感じ始める。
最初、響音を取り戻そうと行動を起こそうとしたが、ここで皆の考えが変わった。
もか達はお互いに目を合わせる。
全員が同じ考えだと察し、モニターに映っているおうかへ目を向ける。
「「「「「「「…どうか、響音をお願いします」」」」」」」
もか達はおうか達『狛犬』支部の皆に響音をそうお願いした。
……時間が戻り、ただいまおうかと響音が対面していた。
まさか『狛犬』支部のリーダーである、おうかと戦う事になるとは思わなかった響音は心の中で焦っていた。
(まさかのおうかさんと戦う事なるなんて……いや、切り替えないと、相手はかなりの武術の使い手で、あの巨大なノイザーを貫いた技『牙閃』には警戒しないと……)
と思考を巡らせていた。
だがそう思考を巡らせていたのが、相手に攻撃のチャンスを与えてしまった。
「……え?」
響音は確かに目線をおうかへ向けていた。
だが、急におうかの姿は消えていた。
急に消えたおうかに響音は焦り、周りを見渡し探し始めるが、何処にも居らず、観戦している桜達はこれは決まったなっと察していた。
「……ここじゃ!!」
下から声がした。
響音は目を向けるが、おうかの鋭い拳が腹へ命中し、殴り飛ばされる。
あまりの威力と想定外の一撃に、響音は腹を抑え、ゴホゴホッ!!と咳き込む。
「ほら、早く立たんか」
おうかは咳き込んでいる響音へ挑発する。
「クソぉぉ!!」と響音は立ち上がり、自身の音弾を発動する。
「音弾装填!『ラビット・ステップ』!」
ウサギの耳を生やした響音はその足の速さで、おうかを中心にして周り始める。
それはかなりの速さで、目で追えないスピードであるが、おうかは何故か焦らずにいた。
響音は何処で仕掛けるかタイミングを探し、おうかの背後に回った瞬間、そこで飛び蹴りを放つ!
これは確実に入ったと響音は思った。
……だが、この攻撃はおうかへ通じなかった。
「……嘘だろ」
そう響音は言葉を溢す。
これは目に追うことが難しい程の飛び蹴りなのに、おうかは左手でしっかりとその足を掴んでいたのだ。
「確かに速くて追えないと思うが、飛んで来る所が分かれば、こうして捕まえられるわ」
とおうかは平気そうに言い、響音の足を掴んだまま投げ飛ばした。
投げ飛ばされた響音は急いで受け身を取り、ダメージを和らげる。
だが、心の中では『ラビット・ステップ』が通じなかった事にかなり焦り始める。
「さて、そろそろ決めるかのぉ」
おうかは肩を鳴らし始め、決めに行こうとする。
(このままやられてたまるかッ!)と響音は今の音弾を解き、持っていた自身の槍をおうかへ向けて投げつける!
投げられた槍は真っ直ぐに素早く飛んで行くが、おうかは軽く右手で払い除ける。
だが、その隙を響音は狙い、次の音弾を使う。
「音弾装填!『狼爪脚』!」
次は劉と同じ狼の耳を生やし、狼の爪の斬撃の『狼爪痕』を放つ。
それは道場の床を切り裂いて進み、おうかへ命中し、煙が舞う。
「よしっ!!」
響音は当たったと感じ、「俺たちの支部が……」と桜は白目を向いていた。
……しかし、響音の放った攻撃は命中していなかった。
「……何当たったと勘違いしてるんじゃ?」
響音の思考が止まる。
『狼爪痕』は当たった筈なのに、おうかの声は自身の腹の下から聞こえる。
おうかの声がした方へ目を向けると、身体を屈め、強力な技を繰り出す態勢に入っており、それはあの『牙閃』の構えであった。
響音は急いで防御しようとしたが、遅かった。
「……『牙閃』ッッ!!」
おうかの牙のような貫く拳の技が響音の腹を捉え、壁まで飛ばした。
あまりの威力に壁は少し凹んでしまう。
響音は何とか腹に力を入れて防御していたが、すぐに気を失い、前へ倒れてしまう。
この勝負はおうかの圧倒的勝利となった。