音響士   作:かげかげ

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総合訓練編 変化し始める音

 

 丁との戦いを終えて、3時間後……

 

 「う……うん……」

 と響音が目を覚める。

 

 目覚めた場所は、医療室のベットの上で、どうやらここまで運ばれたんだろうと響音は察する。

 そして、自身の右腕には点滴をされており、管が腕から容器まで伸び、その容器に入ってる赤い液体が見えていた。

 

 「お!起きたか?」

 と黒狼の声が左から聞こえ、視線を向けると、黒狼と白崎、もか、フィメルの四人が目覚めるのを待っていた。

 

 「うん、おはよう……って!!あの後の戦いどうなった!?」

 と、まだ寝起きの為、ボッーと意識が朦朧としていたが、丁との戦いをふと思い出し、意識を覚醒する。

 

 「あ〜それなら……」

 と、白崎は別のベットへ指を向ける。

 向けられた方へ視線を向けると、ベットの上で伸びている丁の姿があり、その丁の状態から黒狼と白崎の2人が勝ったのが分かった。

 

 あの丁に勝利した2人に響音は「おお!」と感銘の声を上げ、白崎と黒狼は少し鼻を伸ばしていた。

 

 「あれ?そう言えば、弓道さんとリトさんは?」

 

 「2人は負けてられないっとそれぞれ交流しに行ってるよ。僕達はまだ誰に教わりに行くのか迷い中」

 

 「それに、睦月は『よし、俺も技術面で他の奴らの見てくるか』って言って、学びに行ってるぞ」

 

 ここに居ない弓道とリトが何処に居るのかと気にしていた響音だが、2人は先ほどの戦いを見て、早速他の音響士達と交流しに行き、睦月も技術面での交流しに行った事を、もか と フィメル から聞かされる。

 

 「そっか」っと納得し、響音はもう少し休もうとすると、「あ、起きた?」と誰かが声をかけてくる。

 

 一体誰だろうと響音は顔を向けると、背を曲げてないまるで英国の執事みたいな雰囲気の老人と、すきピという文字が書かれたカバンを下げた綺麗な黒髪のヴァンパイアの女性の2人がいた。

 

 「うん、顔色いい感じだね」

 と、そのヴァンパイアの娘が診察する。

 どうやら彼女は医療班の人だと察した。

 

 「あ、自己紹介が遅れたね。僕は茅ヶ崎 六花(ちがさき りっか)。で、彼が」

 「レオナルド・オ・ジーである。宜しくお願い致します」

 と、2人が自己紹介をする。

 

 「お?そろそろ点滴の無くなりそうだね~そろそろ補充の時間だよ おじぃ」

 

 「だから!私は おじぃ でなく、オ・ジーで……「うるせぇ!!」アフゥン!」

 

 六花は響音の点滴がそろそろ切れそうなのに気付き、オ・ジーの事をおじぃと呼ぶが、オ・ジー自身そう呼ばれたくないから、言い直して貰おうとする。

 しかし、それを六花は うるせぇ と言い返し、何処から取り出したか分からない程の大きい注射器で、オ・ジーの背中へ刺した。

 かなり痛そうなのに、オ・ジーは気持ち良さそうに声を上げていて、その様子に響音達は若干引いていた。

 

 オ・ジーから取り出された血液は巨大な注射器にトクトクと溜まっていき、充分取れた後、六花はそのまんま点滴の容器に入れようとする。

 

 その行為には、響音達は目を大きく見開いて驚いてしまい、「待て待て待てッ!?」とすぐフィメルが止めさせる。

 

 「大丈夫!僕の特異音弾は『共鳴』、音を合わせる特性で、例え違う血液でも、この僕なら直ぐに使える血液にする事が出来るんだ~」

 と、六花はいつも通りの安心した手さばきで、点滴の容器へ早速注入する。

 

 六花の特異音弾を初めて聞いた響音達は、とても医療組に必要な音弾を持つ音響士なんだなと感心していた。

 

 「そして、私の特異音弾は……フゥンッ!!」

 

 オ・ジーは自身の身体に力を入れると、なんと筋肉が爆発したように大きくなり、着ていた上半身の服が弾け飛び、マッスルポーズを取る。

 まさかの姿に、響音達は「ふぁ!?」とびっくりしていた。

 

 「『増幅』ッ!!、持っている音の力を大きく増やし、身体能力を上げるという特性である!!」

 オ・ジーはマッスルポーズを取りながら説明する。

 そんな筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な姿のオ・ジーに響音達はじゃっかん気持ち悪さを感じていた。

 

 「このおじぃの特異音弾で傷の回復が早くなるんだ」

 と、六花は教え、「だからおじぃではない!!」とオ・ジーは突っ込む。

 

 「もしかして響音もそうなるんじゃないか~?」

 そう白崎は悪そうに笑い、「えぇ…」と響音は嫌そうにしていた。

 フィメルと黒狼はそんなやり取りに大きく笑っていた。

 

 そんな中、唐突に六花は もか へ話しかける。

 

 「君が もか ちゃんだよね?」

 

 「そうだよ~?どうしたの?」

 

 話しかけられた もか は何だろうと話を聞く。

 

 「君の事はデータで見たけど、君の特異音弾、『夜の輝き』は広範囲の治療能力の音弾だけど、確かいつも前衛で戦ってるよね?護身用なら気にしなかったけど、どうしてそこまで一緒に前で戦うの?」

 

 「うん、僕も皆と一緒に戦いたいから、頑張って戦ってるんだ。腕前はまだまだだけど。」

 

 どうして回復能力なのにそこまで前衛で戦うか六花は聞き、それを もか は一緒に戦いたいという理由で答える。

 その答えに、六花はう~んと考え始める。

 

 「……確かに一緒に前で戦いたい気持ち、凄い分かる。この僕も同じだったんだ。だけど、例え治療だけでも、皆の戦える力を与え続けるという事が出来るんだって気付いて、こうして僕は僕の出来る事を今も続けてるんだ」

 と、六花は自身の経験を もか へと伝える。

 その六花の言葉は、もかの耳に自然と入っていく。

 

 「僕の出来る事を……」

 そう もか は自身の楽武である二丁拳銃を取り出し、じっと見つめていた。

 

 ──もかの持つ音の力が、段々と変わり始め、強く鳴り始めていた。




  「登場人物紹介」
 茅ヶ崎 六花(ちがさき りっか) 魔界人
  ラビスタ支部に所属しているヴァンパイアの音響士。とても親しみやすい人で、姉御らしい一面も持っている。
  彼女の持つ特異音弾は、『共鳴』、音を合わせるという力で、医療班として活躍している。
  オ・ジーとは2人1組のコンビである。

 レオナルド・オ・ジー 現代人
  ラビスタ支部に所属している英国の老紳士のような優雅な姿をした音響士。見た目はそんなに気にならないが、彼の持つ特異音弾『増幅』は、自身の持つ音を大きく増やす能力で、そのお陰で、いつも上半身の服が筋肉に負けて弾け飛んでいる。
  この特異音弾は、六花の力と合わせると、負傷した傷の回復を速める力となる。
  その為、六花とはタッグで、戦闘面でも前で戦えるスペックを持ち、『医療班の鬼神』とも呼ばれつつある。
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