ゴキブリのシリオンは結構すばしっこい。 作:ゴキカブリ
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作ろう!
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折角だしゴキブリしよう!
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ゴキブリ早いし最速にしてやろう!
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完成!
ここは新エリー都のとある街。
都会の喧騒とは打って変わって静かな土地……というか、全体的に暗くてジメジメした雰囲気を持つ街だ。
そんな街に、カラスすら寝静まる深夜、コンビニ帰りらしき緑髪の女性が片手にアメリカンドックを持ちながらもスタスタと歩いていた。
何てこと無い普通の道だ。その建物の隙間に夜な夜な蠢く黒光りする影があることを除けば。
女性は何かいいことでもあったのか、ルンルン気分でいるようで……その手からポロリとアメリカンドックが滑り落ちても、気づくことなく足を進めていた。
……アメリカンドックは少女の手から離れてくるくると回転しながら地面へと落ちそうになる。
このまま惨たらしく地面に堕ちてぐちゃぐちゃになり、鳥や野良犬の餌になる定めかと思いきや……その落ちるアメリカンドックを瞬時に掴む手があった。
その手は獲物をその手に掴むと、そのまま建物の隙間へと入り込む。
黒光りして艶のある、スパイクの様なトゲを持つ細いその手の主は、そのまま建物の狭間でアメリカンドックを口の中へと放り込む。
衣とソーセージ、そしてそれを貫く棒ごと噛み砕き、その胃へと入れる。
バリバリと、棒が砕ける音がする……黒光りする手の主は、何とも言えぬ瞳でそのアメリカンドックを喰らっていた。
その人にとっては二週間ぶりの
そしてその人ば美味いのか、不味いのかも良くわからない物を食べながら立ち上がり、その暗がりの奥底へと歩いて消えようとする。
だが、次の瞬間に気配を感じ取ったその人は、咄嗟に振り返り構える……そこにいるのは、先ほどこの道を通った緑髪を長く携えた一人の女性だった。
「ふぅ、見つけるのに手間取ったわ。」
女性が見つめる先……暗がりに満ちていたその空間が、月明かりに照らされていく。そこに居たのは、一人の少年だった。
年頃は15、黒く艷やか名髪を持ち、首元には茶色のマフラーを巻き、そのマフラーと同じ様に首からは半透明で筋の浮き出た虫の後翅の様な部位が伸びている。
頭には凸状の黒光りする、長い触角の映えたバイザーを持っている。その手足は黒く光沢を帯びており、スパイクの如くトゲが生え揃っていた。
ここまで細かな特徴を羅列してみたが……もっと簡単に言えば、その姿はまるで人間に、あの全世界から恨まれる害虫兼益虫――
そう、ゴキブリの意匠を合わせたような姿をしていた。見るものが見れば、それだけで不快感を撒き散らし、嫌悪感をぶつけるような見た目だ。
しかし、その少年は人々がゴキブリを蔑むよう目よりも、遥かに鋭く、くすんだ目つきで女性を見る。
「なんだ、お前。」
鋭い声だ……だが、その女性は特に気負う事もなくサラリと言葉を投げかける。
「そうねぇ、人からは明けの明星なんて呼ばれてるけど……貴方はなんて呼びたい?」
「知るかよ、気取った名前しやがって。緑髪で十分だろーが。」
男は口悪く声を上げる。一つの問いかけに3つの罵倒が飛んできた。威勢の良い子だ。
「もぉ、荒いわねぇ。お姉ちゃんは名乗ったんだし……君も名乗ったらどうなの?」
「……ヒレンだ。唯のヒレンだ……そんな事よりも、何しに来たんだよお前。」
「えぇ、そうね……貴方の噂を聞いて少し顔を見に来たの。ゴキブリのシリオンが居るってね。」
「へぇ、つまりアンタも俺を
ヒレンは良く覚えている。望んで生まれた訳でもないのにゴキブリのシリオンに生まれて、塵のように扱われた日々を、人目の前に歩くことすら許されなかった日々を。
どいつもこいつも、ゴキブリのシリオンと聞けば気味悪がり、頼んでもないくせに見に来ては気持ち悪がる。冗談じゃねぇ、人を玩具や見世物みたいに扱いやがって。
ヒレンの長年の恨みは、積もりに積もっていた……故に、目の前の女も同じ口かと、ヒレンは地面を踏みしめて首元の翅を伸ばす……すると、明けの明星は妖艶な笑みを浮かべて手を差し出して止める。
「ごめんなさい、口数が足りなかったわね。正確にはゴキブリのシリオンの
ホロウレイダー、それはこの世界で度々現れるドーム状の異空間、ホロウへと違法な出入りを繰り返し、資源たるエーテルを違法に取引したりする者達の総称だ。
……確かに、金を得るために似たような仕事はした覚えがある。
流石にエーテルの売買までには手を染めてないが、違法でホロウに入ってホロウでの落とし物を拾うくらいはしている。
ホロウ内の落とし物で正式な手続きを踏んだのでは届くまでが遅すぎる……だが、ヒレンならそれこそ
他にも組のカチコミの手伝いから明日の買い物まで、文字通り何でも屋地味で来ている……別に構いやしないが。
「……マジでなんの用件だ。仕事の依頼か?」
「うぅん、ある意味そう?そうなるかも?……私はレイダーやプロキシの仲介人の様な仕事もしててね、最近貴方の噂をよく聞くようになったから、どんな子なのか気になってたのよ。」
明けの明星が聞いた噂によると……機械ですら知覚出来ないスピードで動けるゴキブリのシリオン。
監視カメラにすらたった一コマにブレブレの状態でしか映らず、どんな攻撃も
兎に角スピードと逃げ足の速さ、見た目の不快感が話題に上がってくる少年の話だ。
明家の明星としては、あまりに皆蛾気持ち悪い気持ち悪いと言うからどんな姿をしてるかと思い見てみれば……何てこと無い、ほんのちょっとゴキブリの意匠のあるだけの少年ではないか。
鋭くケモノの様な瞳を持ちながらも幼さも保つ顔……噂に聞くほど醜悪ではない。
それどころか、可愛らしさを持ちながらも雄々しいとも思える良い男ではないか。嫌いではない……寧ろ、どちらかと言えば好みな方だ。
「……んで、実際にお目に掛かった感想はどうよ?噂通りだったかい?」
「うぅん、そんなに……?でも、お姉ちゃん。貴方みたいな目の子は嫌いじゃないわよ?」
「あぁ?」
ヒレンは訳が分からないと言わんばかりに肩をすぼめる。だが、明けの明星は質問に答える事無く畳み掛けるように提案する。
「貴方、私と少し組んでみない?」
「……信用出来るかよ。」
「この業界は信用する事が第一よ?でなきゃ、何も出来ない。」
「甘い言葉に乗って痛い目なんて幾らでも見てきた。」
「頑なねぇ……」
「あぁそうさ。頑なさ……だがな、俺はこう思う。
どんなに優秀でも有能でも強くても速くても自分の道を簡単に譲るような輩はどう頑張って前に進まない、他人の進む方向になんとなく道を合わせていてはいつまで経っても自分の道へは進めない!その道を歩くために浪費した労力は労力でもないし努力でもない!そんな言葉は頑張ってると言う言葉でしか無い!真に自分の道を進むやつは自分の道を消して迷わないし周りの人間の行く先など見やしないしその道を最速で駆け抜ける覚悟が!!!
…………ある。」
「……なるほどね。」
とんでもない早口で言われたせいで会話の5割も聞き取れなかった……明けの明星は、少しばかり……いや、かなり目の前の少年に声をかけたことを後悔した。
……だが、逆に益々面白い。
ホロウレイダーやグレーゾーンの職種の人間はアクの強い者ばかりだが、ここまで信念というか……独自の美学を持つ物は少ない。
そして、こういう輩は……大抵
「うぅん……じゃあ私も頑なにならせてもらうわね?……貴方はなんだか
「興味ねぇ。俺は俺の道を最速で突っ走ってるだけだ。」
「そう……まぁ、しょうがないか。この仕事そこそこ難しいし、
明けの明星が何の気なしに放った言葉に、ヒレンは目を血走らせて、瞳孔を広げながら瞬間移動のような勢いで明けの明星へと近づく。
「……どんな依頼だ。」
「えっ……えっと、ホロウ内の品物の回収――」
「どのルートだ。」
「えっ?えっと…………ここね。」
明けの明星は少し焦った……というか、あまりにもグイグイと来るヒレンに若干引き気味だ。しかし、ヒレンは下がらない……明けの明星から出された依頼のデータを最速で見終えて確認すると、目を細めてつぶやく。
「なるほどな、分かった。速攻で済ませる。」
「待って!?さっきまで断る感じ出してたじゃない!?」
「俺に時間が掛かるなんてありえないのを証明するためだ。一度やると決めたら即決即納即効即急即時即座即答。早速言ってくる、この規模ならプロキシを雇うまでもない。」
「えっ!?ちょっ…………流石に私まだ間接的に人殺しにはなりたくないんだけれど?良いプロキシ居るわよ?」
「この位のホロウでプロキシを雇う時間が勿体ない!!即決即納即効即急即時即座即答って言っただろうが!!……んじゃ、行くわ。場所も最速で覚えたし。」
ヒレンはそう言うと、頭に着けた、黒光りした触角の生える、まるでゴキブリの顔の様なバイザーを目元までもっていき、マフラーで鼻まで顔を覆う。
そして、クラウチングスタートを決めるように構えると、首元の翅が大きく広がり虫特有の羽音を立てながら高速で羽ばたきが起こる。
ヒレンは羽ばたきの衝撃で持っていかれそうな体を押さえながら、次の瞬間、夜空へと向かって飛び立つ。そのスピードはもはや誰にも認識できない程の速度だ。
残像すら残さずに飛び立ったヒレンは、そっと頭を抱える。
「……何か、凄い声を掛ける相手を間違えた気がしてきた。」
……その通りである。
因みに、翌日確りと依頼は達成され、その仕事の早さからヒレンのインターノットでの注目度が上がったり、同時にそんなヒレンと繋いだ明けの明星の手腕が評価されたりしたと言うのは、ヒレン当人の知るところではなかった。
Q:プロキシ居ないのにどうやってホロウから抜けるんコイツ。
A:最速で品物見つけて最速でホロウ内を駆けずり回って最速で出口を見つけます。ヒレンはリスクよりも速さを取るのでこういう真似をします。
キャラのモチーフはまんま某最速の兄貴。セリフとかも結構名残がある。