白洲アズサに愛を込めて   作:爪ワッサン

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あけましておめでとうございます。


呪!アリウス分校入学の時

 

───ベアトリーチェとの邂逅から数日後、俺はどこかの牢屋に監禁されていた。あの後、ベアトリーチェは俺を殺さずに貴重な被検体として生かすことにしたらしい。ひとまず生きていることを喜ぶべきだが、今はアズサの所在が気になる。最後に見たアズサは重症だった、今すぐここから出て行き安否を確かめたいが…

 

「………っ……!」

 

首元の首輪に指が触れると、急速に首が締め付けられる。ミサイル等で負った怪我は完璧に治療されたが、代わりにこの首輪を付けられてしまった。外そうにもこの様で、捕まってからずっと壊す方法を探していた。

 

『──その首輪は特殊な金属でできています。いくら貴方が力を込めたとしても壊れることはないでしょう。無駄な抵抗はしないほうが賢明ですよ』

 

「……ベアトリーチェ、入室を許可した覚えはないが?」

 

『貴方に意見することを許した覚えもありませんよ、ショウマ』

 

いつのまにか牢屋に入ってきたのはベアトリーチェ…のホログラムを投影したドローンだ。飛行する音が全く聞こえなかったが、キヴォトスの技術は俺の世界よりも高いのだろうか?

 

「…なんのようだ、ようやく実験とやらを始めるつもりか?」

 

あの日から実験に関しての続報は何もなかった。被検体として生かされているにもかかわらず特に言及もされなかったが…もしや実験は無かったことになったのだろうか?

 

『残念ながら違います。現状、貴方の代わりは見つかっていませんから、無駄使いする訳にはいかないのです』

 

「………」

 

つまり、俺と同じのが複数人いれば躊躇なく実験に使うと……まあ、実験中止でお前は用済みだと雑に殺されるよりはいいか。

 

『今回ここへ来た理由は、貴方をある場所へ向かわせるためです』

 

「ある場所…?」

 

『ええ、場所はアリウス分校…私の管理する学園です。そこで貴方には私の私兵として相応しい実力と態度を身につけてもらいます』

 

「…俺はいつからお前の私兵になったんだよ」

 

『貴方が今も生きているのは私が怪我の治療を施したからだと忘れているのですか?私に生かされたのならば役に立つのは当然のことでしょう?』

 

「………どの口が」

 

怪我を治療したのは事実だが、そもそもの原因はこいつが放ったミサイルだ。恨む理由はあるが従う理由は一つもない。

 

「そもそもこの怪我は──」

 

『─少し躾が必要ですか』

 

「お前の───っ!?」

 

ベアトリーチェが告げた直後、全身を痺れるような痛みが走った。ミサイルの与えたものとは別種の痛みに耐えることができず膝から崩れ落ちる。これは、首輪から発生しているのか…!

 

「…なに、を……?」

 

『言ったはずですよ。貴方に意見することを許した覚えはないと』

 

床に倒れ伏す俺。その姿を映像越しに嗤うベアトリーチェは意気揚々と語り出す。

 

『貴方に付けた首輪には他にも二つの機能があります。一つは居場所を発信する機能。もう一つは首輪から電流を流す機能。貴方が逆らえば、この端末からいつでも電流を流すことができるのです』

 

「………そう、かよ」

 

手に持った機械を見せてベアトリーチェは告げた。常に居場所を把握していると……外に見張りがいないわけだ。

 

『──ああ、そういえば…学園には貴方の知り合いの白髪の少女もいますが……あなたが私に従わなかった場合、身の安全を保証することはできませんねぇ?』

 

「………お前」

 

それは、言外の脅しだ…アズサが捕まっているのもそうだが、その命がこいつの手のひらにあるのなら……俺一人で逃げるとこはできない。

 

『ふふふ…この後すぐに案内が来ますから、大人しく従いなさい』

 

通信を切ったのかベアトリーチェの姿が消える。役目を果たしたドローンは、そのまま檻の外へと姿を消した。

 

「……………」

 

…今逆らったところで電流を流されるのがオチだ。ならば、アズサを見つけよう。これの外し方は後から考えればいい。

 

 

→→→→→→→→→→

 

 

「ついたぞ、ここだ」

 

「………………やっと喋ったよ」

 

少しでもベアトリーチェを探ろうと牢屋からここまでの間、俺は何度も話しかけた。しかし、こいつはその全てを無視した。話しかけてもうんともすんとも言わなかった。俺は泣いた。

 

「……それで、このボロい校舎が目的地なのか?」

 

「いや、正確にはこの中だ」

 

見上げた校舎は、ここに来る前に通っていた学校よりも大きかった。その大部分が劣化して瓦礫となっているが、それでも立派な建物だ。

 

「ついてこい」

 

言われるがままに中へ入っていき、間違いなく掃除なんてされてない埃だらけの廊下を歩く。校舎の中にもかかわらず風が吹き抜けてくる…窓くらい直せよ。

 

「ここだ」

 

しばらく歩いていると目の前に大きな扉が見えてくる。掠れたプレートには体育館と書かれている……アリウスにもあるのか。

 

「入れ」

 

「……………多いな」

 

扉の先に広がっていたのは、俺の知る体育館よりも広い空間があって、その中に数え切れないくらいの人が敷き詰められていた。…この中にアズサがいるのか。

 

「貴様はここで待っていろ」

 

「あ、おい!………行っちゃったよ」

 

引き止める俺の言葉に対して案の定無視を決め込んだ案内は、そのまま扉を閉めて出て行った………無駄かもしれないが一応確かめるか。

 

「……鍵がかかってるな。まあ、当然か」

 

残念、というよりも当然のように扉は動かなかった。仮に開いてたとしてもアズサを見つけるまでは逃げるつもりはなかったが、見つけた後の逃走経路の一つが潰れてしまった。ただ、落胆している暇はない。当初の目的通りにアズサを探そう。…どこにいるかな。

 

「ここはどこ…?」

 

「……暗い…寒い」

 

「ふぇーん…お腹が空きました…」

 

「…ヒヨリ、今は我慢してて」

 

中を歩いて探そうにも、人が多すぎる……これじゃアズサを探すどころか歩くことさえ難しい。

 

「……どこにいるんだ」

 

「何を探してるんだ、ショウマ?」

 

「ああ、アズサさん。今この中からアズサさんを探しているんだが、人が多すぎて見つかりそうもないんだ」

 

「私はここにいるぞ」

 

「?何言って…………!?」

 

側を見るとアズサが立っていた。あまりにも自然に混ざってくるから気づかなかった…

 

「アズサさん、いつの間に…」

 

「扉が開くのが見えたから急いで走ったんだ。近くに来たら外からショウマが入ってくるのが見えて……無事でよかった」

 

「なるほど……」

 

あの人混みの中を短時間で?怪我人が無理をするもんじゃ…

 

「……そういえばアズサさん、怪我は大丈夫なのか?」

 

俺の記憶通りなら動ける状態じゃなかったはずだが、見える範囲に傷は無い。それに、凄く元気そうだ。

 

「それなら大丈夫、私をここに連れてきた大人たちが治してくれた」

 

怪我が治ったのはいいことだけど、その一言で一気に不安になったよ。

 

「アズサさんも……なあ、何かされなかったか?こう、首輪をつけろとか」

 

「首輪…?ううん、何もされてないけど」

 

「そっか……ならいいか」

 

元々首輪は被検体である俺の逃走防止用に用意された物だ。心配は無用とは知っていたが、それでも気にはする。

 

「……?ショウマ、その首輪──」

 

──静かにしろ

 

パァン!と大きな音が辺りに響き、アズサの言葉を遮る。音の発生源に目を向けると、そこには煙を吐いている銃を空に掲げるガスマスクの大人がいた。

 

「これより、生徒会長が来られる。貴様らは失礼の無いようにしろ」

 

「…生徒会長?」

 

生徒会が来るのか?ここはベアトリーチェの管理している場所の筈だ…例え生徒会がいたとしても穏健派を名乗っている生徒会がアリウスを荒らしたベアトリーチェと手を組んでいるとは思えない。…それとも、ミサイル爆撃程度は荒らすことに含まれないのか。

 

『──こんにちは、アリウスの子供達』

 

「………ベアトリーチェ?」

 

ドローンが投影した映像には新聞に載っていた生徒会長の姿はなかった。何故生徒会長ではなくベアトリーチェが……?嫌な想像が脳裏をよぎる。もしこの予想が当たっているのなら、生徒会長は既に……

 

『───私の名前はベアトリーチェ。このアリウスの新たなる支配者にして()()()()()()()…そして、貴方達に唯一救いをもたらす者です』

 

「…………??」

 

いや、生徒会長が既にいなくなっていることは予想できていたが……お前が生徒会長…?いやまあ、学生が政治をするなら学生の定義に大人が入るのもおかしくはないのか…?

 

『私のことはマダムと呼びなさい』

 

救いをもたらす者を自称し、自らをマダムと呼ばせるベアトリーチェ。その顔の口元は扇で隠されていて表情は伺えないが……不思議と嗤っているような気がした。

 

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