【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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  外伝を含む全151話、492096文字で完結しています。
 完結していますので安心してお読みいただけます。
 現在シン・アスカが主役の『機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生』が連載中です。
 機動戦士ガンダムSEED DESTINY REBIRTH 運命の再生
 https://syosetu.org/novel/388968/

 ニコルは良い子です。
 良い子すぎてキャラが薄いのです。
 性格はキラと被り、イザークやディアッカのような尖った性格でもない彼。
 赤服での人気はいま一つで公式でも死ぬシーンを何度も(32回?)流される始末。
 ですがニコルの死はキラとアスランを殺し合いへと発展させ、絶望した父親ユーリは禁断の核動力に手をだしてしまいます。
 結果最終決戦は地獄と化しました。
 もしニコルが生きていたらどうなるか?
 初の二次創作ですので色々と不都合があると思いますがよろしくお願いします。


飽くなき執念編
第1話 ニコル・アマルフィ


 第1話 ニコル・アマルフィ

 

 虹色の優しい光の空間に一糸まとわぬ姿でニコルは漂っていた。

 暖かな世界。

 これが死後の世界なのか。

 ニコルの目の前に黒色のガンダム。

 ブリッツガンダムが爆散する光景が映画のスクリーンのように見えた。

 

 (ごめんね。僕がもっと強かったら君もこんな所で死ななくてすんだよね)

 

 そうしてニコルが瞳を閉じれば意識が薄れてゆき、辺りが暗くなっていく。

 脳裏に浮かぶのは星空とニコルが生まれ育ったプラント型コロニー。

 人は死ぬと星になると言われているけど本当だったんだ。

 

 (アスラン……母さん…僕のピアノ)

 

 ニコルはキラ・ヤマトのソードストライクガンダムの攻撃から親友で戦友のアスラン・ザラを庇い戦死した。

 最後に見た光景は危機から脱出したアスランと母親の思い出と大好きなピアノの事。

 ニコルのピアノを聴きながら微笑んでくれた両親の事。

 自分の戦死報告を両親はどれだけ悲しむだろうか。

 

 (もしこの戦争が無ければピアノを弾いていられたのかな…でもアスラン達には会えなかったのかもしれない…それは…いやだな)

 

 ニコルが意識を闇に落とすと光が瞳から差し込んでくる。

 浮いていた身体が重力によって引っ張られる感覚。

 全身が光に包まれて消えていく。

 ニコルは自分が人々の記憶から消えていくのだと思っていた。

 

 ◆◆◆

 

 ニコルが目を覚ますと椅子の上に座っていた。

 どうやら椅子に腰かけてうたた寝をしてしまったらしい。

 でも自分は死んだ筈。

 ここは死後の世界なのだろうか?

 

 「大丈夫か?」

 

 聞き覚えのある声に振り向く。

 そして目の前に彼がいた。

 青い髪と緑の瞳。

 上手く笑顔が作れない不器用なニコルの大切な友達。

 機械いじりが好きでとても優しい人。

 

 「アスラン!!」

 

 「え、ああ。俺はアスランだが。大丈夫か?ええとニコル」

 

 ニコルは死に別れたはずの親友に抱き着いてその胸で涙を流す。

 そんなニコルを振り払う事もせず、困った仕草でニコルの肩を抱いてくれるアスラン。

 やっぱりアスランは優しい人だ。

 

 「どうしてここにアスランがいるんですか?まさかアスランもあのあと戦死したとか」

 

 「初対面で縁起の悪い事を言うな。俺たちは戦死どころか兵士にすらなってないんだぞ」

 

 初対面?どういう事だろう。

 それにこの部屋には見覚えがある。

 確かニコルがアカデミーに入学した時に入った寮の部屋だ。

 白を基調にした清潔な部屋で勉強机とベッドが二つ。

 そよ風で揺れるカーテンのついた窓の外からアカデミーの生徒が校庭を走る声が聞こえる。

 ニコルは慌てて部屋に会ったカレンダーの表示を見る。

 電光で示されていたのはCE70.03

 コズミックイラ70年の3月という事は血のバレンタイン後にニコルがザフトに入隊した頃と一致する。

 ここは死後の世界だろうか。

 でもアスランの感触は本物だし。

 もしかしてタイムスリップしてる!?

 でも記憶が残ってる。

 あと一年後に戦死した時までの記憶が。

  

 しばらくして泣き止んだニコルは落ち着こうと寮の部屋にある備品の紅茶を用意しポットからお湯を注ぐ。

 

 「初めましてアスラン。よろしければお茶でもどうですか?」

 

 「いや、俺はいいよ」

 

 今日から一緒の部屋に住むアスランは椅子に座って考え事をしていたようだ。

 初めて会うルームメイトにいきなり抱き着かれて泣かれたらニコルだってそうする。

 

 「もう煎れちゃいました。アスランが飲んであげないとお茶が冷えてしまいます。折角煎れて貰ったのに飲まれずに捨てられるなんて可哀そうなお茶さんですね」

 

 そう言ってニコルは寮内の売店で手に入れたクッキーを勝手に皿に盛り、アスランにお茶とクッキーを勧めた。

 アスランは無言でため息をついた後でティーカップを受け取る。

 不愛想なアスランに微笑みながらニコルも椅子に座りルームメイトとお茶会を楽しむ。

 前世ではアスランのルームメイトはラスティだったと思う。

 つまりこの世界は史実から狂い始めている。

 それなら今回は違う結末を迎えられるかもしれない。

 

 ───そう。

 

 (僕は最初にアスランと仲良くならなくてはいけない。今度こそアスランを助けないと。大丈夫、今度はやれるさ)

 

 紅茶を飲みながらニコルは決意を新たにした。

 

 ☆☆☆

 

 ニコルが前世の記憶を思い出したのはアカデミーの部屋割りが決まってルームメイトのアスラン・ザラと挨拶した瞬間だった。

 ニコルのフルネームはニコル・アマルフィ。

 先ほど入学式を終えアカデミーの生徒になったばかりだ。

 ザフトというのはプラントという地球から離れた場所にあるスペースコロニーの集合体で編成された志願制の軍隊の事だ。

 プラントはコーディネイターという遺伝子操作をされた人々が住む場所で、地球で迫害され数が劣るコーディネイターは宇宙にプラントという宇宙コロニーを作りそこで生きる事にした。

 コーディネイターは普通の人間とは違い身体や知能に大変優位な新人類だと言われている。

 自然に生まれたナチュラルという人種と遺伝子操作で生まれたコーディネイターは地球と宇宙という別々の世界で暮らすことを選んだ。

 

 その瞬間から経済戦争が始まった。

 

 資源の枯渇した地球は宇宙に住むプラントに資源と工業製品を求め、プラントは地球に宇宙では貴重な水と食料を求めた。

 プラントと地球の仲はけして良好とは言えなかったが、経済的にお互いを必要としたのでを緊張状態しつつ共存関係が長く続いていた。

 いずれ戦争になるという噂は広がっていてプラント側と地球はお互い軍拡を行っていく。

 自立したいプラントは食料を自分たちで作ろうとした。

 プラントが秘密裏に建造した農業コロニー『ユニウスセブン』で食料生産を始めた事が地球側に脅威と思われたのだろう。

 それが地球からの完全な自立を意味すると考えた地球はプラントに対して全面戦争を挑んできた。

 そして一発の核ミサイルがユニウスセブンを破壊し24万人の命が奪われる。

 もはや話し合う余地はない。

 プラントと地球は全面戦争に突入したのだ。

 

 というのがプラント側に住むニコルに与えられた戦争に至る経緯だ。

 それは概ね間違いではないがニコルはこの戦争に疑問を抱いている。

 地球側が枯渇した資源を宇宙に求め、無重力を利用した工業品をプラントに依存していたのは地球側から見れば納得しがたい。

 地球が優位に立つ食料を交渉材料にするのは当然で、彼らから見れば自分たちで食料を生産しようとし始めたプラントは恐ろしい勢力になる。

 地球に住む人々───遺伝子操作をされていないナチュラルの立場から見れば工業品と資源を止められる事は死を意味すると考えるだろう。

 この戦争は経済から始まったけれどナチュラルとコーディネイターという相いれない存在同士の戦争というのが大きい。

 ニコルはけしてナチュラルに対して完全な敵意を抱いてはいない。

 ニコルはピアノを愛し幾つかの賞を得ているが、その曲は遥か昔のナチュラルが作曲したものだ。

 だからけしてナチュラルがコーディネイターより下等などと思わない。

 ではどうしてニコルがピアノを弾く指を銃に持ち替えたのか。

 このままではユニウスセブンのように核を使われて更に被害が出るのは確実だったからだ。

 ニコルはピアノを弾けていればそれで幸せだった。

 その幸せを失いたくなかった。

 これ以上同胞のコーディネイターを殺されたくなかった。

 ニコルがザフト───プラントの持つ志願者の軍隊に入ったのはその為だ。

 

 「このお茶美味しいな」

 

 「そうでしょう?地球のセイロンという土地のお茶です」

 

 そう言ってニコルはアスランとお茶を楽しむ。

 アスランはニコルより1歳年長で入学試験を1位で突破した天才だ。

 対してニコルはアスランには及ばないまでも優秀な成績で入学した秀才。

 だから今回の部屋割りでアスランと同室になれたのは嬉しい。

 直接指導して貰えたら嬉しいけど、アスランの生活を学ぶだけでも大きな違いがある。

 アカデミーを卒業する頃にはアスランと同じくらいの成績で卒業したい。

 ニコルはそう願い努力する日々が始まった。

 

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