【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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歴史改変物のお約束。
主人公が持っていた知識とズレが生じるという話です。
もともとニコルがミゲルと共に出撃した事がズレの始まりでした。
でも介入しないと歴史が変わりませんしね。


第11話 狂い始めた歯車。

 第11話 狂い始めた歯車。

 

 傭兵サーペントテールの叢雲劾にとって手痛い任務失敗となった補給基地の破壊を依頼していた地球連合は、予想外のザフトの抵抗にサーペントテールとは別の傭兵を募り大規模な攻撃を行ってきた。

 まだMSを持たない地球連合はザフトの補給基地を破壊し時間を稼ぎたいのだろう。

 ザフトにとっても補給基地を守るために部隊を展開せざるを得ず傭兵対ザフトという決め手の無い戦いが続いた。

 前世でニコル達クルーゼ隊は今頃オーブの中立コロニーヘリオポリスへ襲撃を行っていた頃だ。

 あの青いジンを取り逃がした事と補給基地を巡るじれったい戦いのせいで、前世とは違う日数を費やしてしまっていた。

 早くしないと足つきが連合のガンダムを積み込み発進してしまう。

 

 「邪魔だ!!」

 

 そういってニコルの乗るMSジンがMMI-M8A3 76mm重突撃機銃を撃ち、傭兵の乗ったMAメビウスを打ち落とす。

 

 「この雇われ兵どもが鬱陶しい!!」

 

 イザークの乗るジンも猛り狂っていた。

 地球連合と違い傭兵は負けるとわかった戦いに拘りはしない。

 彼らは契約の範囲内でしか命をかけない。

 軍人とは思考回路が根本から違うんだ。

 追い払っても追い払ってもしつこく攻撃してくる。

 後続の部隊に補給基地防衛を引き継ぐまで時間を浪費してしまう。

 思わぬ変化にニコルは戸惑った。

 もう前世の知識は通用しないのかもしれない。

 

 「傭兵とは鬱陶しいものだな」

 

 クルーゼ隊長も珍しく苛立ちを見せる。

 連合のMSがヘリオポリスにあるとクルーゼ隊長には連絡が入っているのだろう。

 すぐにヘリオポリスへ向かいたかったがニコル達は余計な時間を使ってしまった。

 

 「どうしてこんな事になったんだ」

 

 ニコルはザフトの高速艦ヴェサリウスの艦内にアスランと同じ部屋で頭を抱えていた。

 どうしてこんな事態になっている?

 既に予定時刻を過ぎようとしている。

 空間跳躍というSF物語でよく出てくるワープなどという都合の良い技術はまだない。

 傭兵達の掃討を後続部隊に任せたあとクルーゼ隊はヘリオポリスへと進路を変えた。

 だがその行程は1日のずれが生じている。

 

 「ニコル、まだ1日じゃないか。作戦にそれほどの影響があるとは思えないが」

 

 「アスラン、僕達が強奪したガンダムは稼働可能な状態でした。OSこそナチュラル用で赤子のような代物ですが、ストライクだけ理由不明ですが僕達と互角以上に戦えたんです。もしストライクと同じことが他のガンダムにも可能となれば強奪ではなく強襲になってしまう」

 

 「それはまずいな」

 

 この事をクルーゼ隊長に進言するべきか?

 論外だ、なぜそんな内情を知っているのかと訝しまられるだけだろう。

 たった一日の遅れが致命的となる可能性がある。

 ニコルとアスランが運命の歯車の歪みに悩んでいると、艦橋に集まるようにクルーゼ隊長から指示がある。

 そしてニコル達は前世と同じくヘリオポリスへの潜入とガンダムの強奪を命令される。

 その命令が一日遅く発せられたという以外、順調に前世と同じシナリオを歩んでいた。

 

 艦橋から自室へ戻る途中でラスティに声をかけられる。

 ニコルの顔色が悪いのを察してくれたのだ。

 ラスティはこういう気遣いが出来る。

 でも前世でラスティはヘリオポリスで戦死してしまう。

 

 「そんな暗い顔してると成功するものも失敗するぜ。俺たちはニコルの爆弾処理能力に期待してるんだ。緊張するのはわかるが訓練どおりやればいいんだよ」

 

 「ありがとうラスティ。僕は大丈夫だよ。ラスティこそ気を付けて」

 

 「心配するなって。俺たちクルーゼ隊はザフト最精鋭だぜ。どんなに困難な任務でもやり遂げられるさ」

 

 満面の笑顔で笑うラスティを見ていると胸が苦しくなる。

 この友情に厚い戦友をもうすぐ失うかもしれない。

 そう思うとニコルの瞳から自然と涙が零れ落ちる。

 

 「おいおい泣くなよ。そんなに不安になる事はないって」

 

 違うんだ。

 僕はラスティに死んでほしくない。

 でも僕にはどうしようもないんだ。

 どうしようもない。

 それを言う事はできない。

 でも、もしかしたら一日の違いが運命を変えるかもしれない。

 歴史の歯車が良い方向に乱れる事をニコルは心から願った。

 

 ☆☆☆

 その頃、叢雲劾とサーペントテールのメンバーはオーブ政府の代理と名乗る老人から、ヘリオポリスの鉱山を改造した地下基地で製造されているMSの破壊を依頼されていた。

 オーブは連合と協力してG計画というガンダム開発計画を実行中だが、連合とは別の技術を使い製造していた。

 その存在が明らかになればオーブが中立という立場を堅持するのは不可能となるという。

 戦闘などでMSの存在が暴露する前に完全な自爆による破壊とデータ消去を行う事になっているが、それが実行されるか不明だという。

 オーブ内部も一枚岩ではなくオーブ独自のMSを所持する事を優先する政治勢力がいる。

 その勢力に内通している者が破壊とデータ消去を行わない可能性もある。

 劾達サーペントテールは完全に破壊されているか確認と、その存在を知る者の抹殺が依頼された。

 その依頼を引き受けたサーペントテールは早速ヘリオポリスへと向かったが、依頼主は一抹の不安をぬぐい切れなかった。

 

 もしサーペントテールがその任務に失敗したら?

 ありえない事ではない。

 現にザフトの補給基地攻撃にサーペントテールは失敗したではないか。

 サーペントテールが破壊に失敗したのは一つの補給基地だけだったから依頼は達成されたと地球連合は判断したようだが、今回の作戦はオーブの未来がかかっている。

 絶対に失敗は許されない。

 依頼主は致命的な失敗を犯してしまう。

 サーペントテール以外の傭兵に同じ依頼をしてしまった。

 極秘に行われねばならない依頼を複数に依頼するなどあってはならない。

 依頼主は最初からサーペントテールごと証拠を隠滅する気だったし、そこに幾つかの傭兵が混じっても同じことだ。

 ただ一つ間違いだったのは傭兵の横の連絡が依頼主の予想を超えていた事だ。

 

 ガンダム開発計画を行った連合。

 その阻止と強奪をもくろむザフトのクルーゼ隊。

 ガンダム開発計画とは別のアストレイというMSの破壊を依頼されたサーペントテール。

 そして複数の傭兵がアストレイの破壊とサーペントテールの抹殺を依頼される。

 依頼主の致命的な失敗により、ヘリオポリスに連合とザフトと傭兵達が同時に存在する事になってしまった。

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