【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
第112話 運命の転換点
その頃、ニコルはジェネシスに向かって急いでいた。
もうミラージュコロイドを使っている時間はない。
もはや強襲しかなくなった。
「シン……マユ……みんな……僕は必ずジェネシスを止めてみせる!」
前方からジェネシス守備についていたMS部隊と戦闘艦がリジェネレイトの接近に気づき、猛烈な砲火を浴びせてくる。
彼らから見ればリジェネレイトは正体不明機であり撃墜しようとするのは当然だ。
ニコルは反撃せざるを得ない。
同じザフト、同じコーディネイターで殺し合うという救いがたい状況でも手加減する余裕はなかった。
リジェネレイトのビームで一機のゲイツが吹き飛ばされ爆散した。
ニコルは味方殺しというもっとも忌むべき存在になってしまった。
それでもジェネシスを破壊しなくてはならない。
「くっ……!」
ニコルはリジェネレイトを操作して、敵の攻撃を避けながら前進を続ける。
リジェネレイトの残存する武装を使って応戦するが、多勢に無勢。
次第に追い詰められていく。
ジェネシス表面はフェイズシフト装甲で覆われているため、父親が送ってくれた弱点のハッチを貫いて内部に侵入するしかない。
それさえも傷ついたリジェネレイトにとっては負担が大きい。
「このままでは……!」
ニコルが焦りを感じたその時だった。突如として背後から巨大なビームが飛来し、敵MSの一機が撃墜された。
そして非常用ハッチが破壊された。
驚くニコルが振り返ると、宇宙で一番頼りになる人が援護してくれていた。
「キラ!?」
振り返ると、ミーティアと合体したフリーダムが援護に駆けつけていた。
ミーティア各部から排熱している。
よほどの高出力だったのだろう。
「ニコル!無事だったんだね!」
キラの声が通信機を通して響く。
「キラ!ありがとうございます!でも核はどうしたんですか!?」
核ミサイル撃墜に向かったキラがどうしてここにいるんだ?
核とジェネシス両方を止めないといけないのに。
「核ミサイルはプラントを撃ってない」
「どういう事ですか?」
「わからない。ただ地球連合の中で裏切りが発生したみたいなんだ。ドミニオンが核ミサイルを撃ち落としている」
「裏切り?ドミニオンが?」
ニコルは驚きを隠せない。地球連合の中で何が起きているのか。
「詳しくはわからないけど、今の所核ミサイルはプラントに放たれていない。とにかく今はジェネシスを止める事が先決だよ」
キラの声は冷静だった。
確かにジェネシスを撃たれてからでは遅いのだ。
「わかりました。ですがキラも消耗していますよね。ジェネシス突入は僕に任せてください」
ニコルは覚悟を決めた顔で言った。
最悪ジェネシス内部で自爆しないといけない。
もうジェネシスは発射寸前なのだ。
こんな戦いにキラを巻き込む訳にはいかない。
「いや、一緒に行こう。君一人では危険すぎる」
「でも……」
「ニコル。僕達は仲間じゃないか」
そう言ってキラのフリーダムが手を伸ばし、リジェネレイトは残った左手で握手する。
まだ死ねない。
マユだけでなくキラという親友を悲しませてはいけない。
ニコルは自爆を思いとどまったが時間がない。
リジェネレイトとミーティアと合体したフリーダムの火力ならジェネシスを破壊できるかもしれない。
「ありがとうございます。でもキラも無理はしないでください」
「お互い様だよ」
キラの優しい笑顔にニコルは少し安心した。
キラだってラクス様を一人にする訳にはいかないだろう。
必ず生きて帰らないといけない。
「さあ、行こう!」
「はい!」
リジェネレイトとフリーダムは残存する敵部隊を掻い潜りながらジェネシスへと向かっていく。
途中で何機かの敵MSと交戦するが、キラとニコルの連携によって次々と撃破していく。
「キラ!後もう少しでジェネシスです!」
「了解!」
二人のガンダムはジェネシス外殻に到達した。
ジェネシスの外側は広大で、まるで小さな惑星のようだった。
「これがジェネシス……」
ニコルは息を呑む。
かつて父のユーリが完成させようとしていた宇宙探査船の姿に似ている。
しかし今ジェネシスは兵器として機能している。
キラが破壊した非常用ハッチから二人は突入する。
もう発射寸前だから爆弾を仕掛けている時間はない。
「ニコルどうするの?」
キラの問いかけに父ユーリ・アマルフィから託されたデータをキラのフリーダムに転送した。
このデータが無ければ直接ジェネシス中心部へ到達できないだろう。
「このデータを見るとジェネシス内部のメインシャフトを破壊すればジェネシスは撃てなくなります」
ニコルは落ち着いた声で言った。
データは極めて精緻に書かれたもので、小心者ユーリ・アマルフィが丹精込めて作り上げた傑作だった。
全世界は彼が小心者だった事に感謝すべきである。
キラのフリーダムがデータを受信し、即座に分析を開始する。
「了解。でも内部に入るのは簡単じゃないね」
「まかせてください。この第六通路を突破してメインシャフトに突入します。第六通路にはガードMSが配置されていますが無人なので遠慮はいりません」
「なるほど。ニコルが先に行って僕が援護する。それでいい?」
キラの提案にニコルは頷いた。
装甲が厚いリジェネレイトなら多少の攻撃は粉砕できる。
そしてフリーダムが援護してくれる。
キラとニコルの相性は最高だった。
「はい。でもキラも消耗しているので無理はしないでください」
「お互い様だよ」
キラの優しい笑顔にニコルは少し安心した。
とても緊迫した状況で笑えるのは戦士の証だ。
ラクスとの愛を確かめ合ったキラに怖いものなど何もないのだ。
メンタル絶好調のキラに勝てる者がこの世界にいるのか?
「行きましょう」
「うん!」
ジェネシス内部は広大で複雑な構造だった。
無数の通路が絡み合い、どこか異質な雰囲気を漂わせている。
だがニコルが持つ見取り図はその複雑な通路を難なく突破していく。
ガードMSはキラのフリーダムと合体したミーティアのミサイルとビームで排除していった。
「もう少しでメインシャフトです!」
ニコルの声に力がこもる。
だが突然ジェネシス全体が振動した。
「何!?」
「ジェネシスが発射シークエンスにはいったんだ!!急がないと」
そう言ってニコルのリジェネレイトがビームサーベルで最後の扉を切り裂くがびくともしない。
ニコルの声に焦りが滲む。
振動が徐々に激しくなっていく。ジェネシスの中心部からは不気味な低音が響き始めている。
「残り時間は!?」
「あと2分しかない!!」
キラの質問にニコルが答える。時間との闘いが始まった。
リジェネレイトとフリーダムは残る最後の隔壁を目前にする。
「この扉を突破するんだ!」
そう言ってニコルのリジェネレイトが手足のビームサーベルを展開し、キラがミーティアとフリーダム全てのミサイルとビームを最後の扉に向けて発射した。
そして亀裂の入った最後の扉をリジェネレイトの三本のビームサーベルで切る。
激しい火花と共に隔壁が切り裂かれる。
その向こうに広がるのはジェネシスのメインシャフト。
直径数二十メートルもある巨大な円筒形の空間だ。
「あれがメインシャフト……」
キラの声には緊張感が漂っていた。
高速で回転しているメインシャフトがエネルギーをまき散らしながら悪魔の所業を発射しようとしていた。
「キラ!ミーティアのビーム砲で破壊できる?僕はロング・ビームライフルでメインシャフトを破壊する」
「やってみる!」
キラのフリーダムがミーティアに搭載された大型ビーム砲を構え、メインシャフトに向けて照準を合わせる。
ニコルのリジェネレイトもロングビームライフルの限界火力で狙う。
二人はメインシャフトの底部に狙いを定めた。
息はぴったりだ。
「発射!」
二機のガンダムから放たれた強力なビームがメインシャフトに命中し、激しい爆発が起こった。
回転していたメインシャフトが倒れ、ジェネシス内部が破壊されていく。
「やった!」
キラとニコルが喜びの声を上げた。
メインシャフトから炎が吹き上がり、ジェネシスの発射シークエンスが停止する。
ジェネシスは停止したのだ。
ヤキン・ドゥーエの司令部ではパトリックザラが叫んでいた。いままさに発射寸前だったジェネシスが射撃できなくなったのだ。
「ジェネシスが……停止しただと!?」
ヤキン・ドゥーエの司令部で、パトリック・ザラはモニターを見つめながら怒号を上げた。
発射寸前だったジェネシスが突如として動きを止め、メインシャフトから炎が噴き出す様子が映し出されている。
「どうなっている!誰がジェネシスを破壊した!?」
ザラの部下たちは慌てふためいていた。
「わかりません!突如としてジェネシス内部で爆発が発生した模様です!」
「レーダーに反応は?誰が潜入した!?」
「フリーダムとリジェネレイトです!!」
「何だと!?」
ザラの顔が怒りで歪んだ。オペレーションスピットブレイクと同じように彼の計画はまたしても邪魔されたのだ。
「地球連合に情報は伝わっていないだろうな!?」
「地球連合側も混乱しているようです」
モニターには地球連合の反応も映し出されていた。
地球連合の艦隊から発進した核ミサイル搭載のMA部隊ピースメーカーがドミニオンとカラミティ、レイダー、フォビドゥンによって破壊されていった。