【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
第116話 混迷する戦場。
戦場は崩壊の一途を辿る。
地球連合は主力の第七艦隊を壊滅させられ敗走した。
月基地から援軍がくるまでまだまだ損害は増えるだろう。
一方プラント側もイザーク達の奮闘が無ければ全面崩壊していた所だ。
そして翌日、再編成を終える前にエマ達に攻撃された地球軍は敗走した。
そんな中、エターナル達四隻同盟のMS部隊が発進する。
クサナギの艦橋でキサカが叫んだ。
「アサギ!ジュリ!マユラ!カガリを守ってくれ!ハウメアの守りのあらん事を」
「「了解!!」」
三人の乗るアストレイNK-2が発艦する。
その後でカタパルトに乗ったカガリが発進する。
「カガリ!!あまり無茶はするなよ!!お前はまだ新入りなんだからな!!」
「わかってる!カガリ・ユラ・アスハ。ストライクルージュ出るぞ!」
「ハウメアの守りのあらん事を!」
次に発進するのはシンとマユだ。
二人とも緊張しているが、マユはニコルとお揃いのハウメアの守り石を握りしめる。
同じ時、ニコルはマユとお揃いのハウメアの守り石をネックレスを握りしめた。
この想いがニコルを救った。
「シン・アスカ!」
「マユ・アスカ!」
「行きます!!」
「ハウメアの守りのあらんことを」
アスカ兄妹が発艦する
モルゲンレーテ攻略戦からずっと戦わせてきた大人としては不甲斐ない。
ニコルはマユに貰ったペンダントを握り出撃する。
マユの想いがニコルを守ってくれる。
「ニコル・アマルフィ!リジェネレイト!行きます」
「ハウメアの守りがあらんことを」
そう言って送り出していてるオペレイターに感謝する。
自分はオーブ国人ではないのにすがって良いのだろうか?
マユは「ハウメアさまはそんなに心が狭くないよ」
との事だった。
宇宙空間は混乱の渦中にあった。
黒い異形のMS部隊と紫色のストライクダガーが戦場を席巻し、地球連合軍もプラントのザフト軍もその対応に追われていた。
一番の問題はMSの性能にあった。
エマ達が一体となったMSは全機がミラージュコロイド装備の黒い機体で、地球連合は位置の把握もままならない。
ザフトに襲い掛かったMSは色違いとはいえ外見はストライクダガーとまったく同じであり地球軍の新型機としてしか認識されない。
その二種類が連携して戦っているのだ。
敵味方さえ区別がつかない混戦にされてはなすすべがない。
そこに数条のビームが放たれる。
キラのフリーダム、アスランのジャスティス、ニコルのリジェネレイトだ。
NJCを搭載したシンのプラチナアストレイとマユのシェンウーが後に続く。
その後ろにオルガ、クロト、シャニ、カガリ達オーブ組という順番だ。
「敵機体を攻撃目標に設定データ送ります。各機はCパターンに設定。味方機を誤って撃たないようにして」
「各機連携を密に。オルガ、クロト、シャニ、右翼は任せました。カガリさん達は左翼を固めてください」
「任せな」「滅殺!!」「やるぜ」
マリューとアリスの声が通信機を通じて全機に伝わる。
その冷静さが混乱の中で頼もしく響く。
新薬は副作用も少なく長持ちするのでオルガ達も安心して戦えた。
エマ達が操る黒いMS部隊は地球連合軍に集中攻撃を仕掛けていた。
紫色のストライクダガーはザフトの機体を次々と破壊していく。
キラとニコルは連携して敵機を追い詰める。
「キラ!あそこの紫色の部隊は普通のコーディネイターじゃない!メンデルで見た『失敗作』と同じタイプです!」
「僕の出来損ないなんて言われて。……そんなの酷いよ」
ニコルの忠告を聞き、キラのフリーダムが高機動で敵機に接近する。
フリーダムの可変翼が展開され、両肩のビーム砲が紫色のストライクダガーに照準を合わせる。
一方、アスランのジャスティスも同じく高機動で紫色のMSに立ち向かっていた。
「父上……これが貴方が望んだ未来なのか?」
アスランの独白は敵機に届くことはない。
ただ彼の決意だけが確かなものとして存在していた。
父親が狂った原因は捕らえたアズラエルから後々聞き出せるだろう。
あいつさえ母の住むユニウスセブンに核を撃ちこまなければこんな戦争はおこらなかったのだろうか?
違う。
いつかはこんな戦争になっていただろう。
だがこれほどまで凄惨な戦いになる前に、何度も和平交渉が行われプラントも地球連合も停戦できたかもしれない。
父親が狂いさえしなければ、こうなるまで戦う必要は無かったのだ。
アスランが撃ったビームライフルが紫色のストライクダガーを捉え撃墜した。
その後方からアークエンジェルとドミニオンが続く。
「ゴットフリート、バリアント照準。目標紫色の敵機。ゴットフリート、バリアント」
「アークエンジェルを支援します。コリントス一番から八番まで装填。アンチビーム爆雷、バリアント」
「「撃て」」
マリューの攻撃とアリスの支援は完璧なタイミングだった。
二人の攻撃に翻弄された敵機が陣形を乱した時を見計らってオルガとクロトとシャニが襲い掛かった。
カラミティが遠距離で支援しレイダーが中距離をフォビドゥンが巨大な鎌で撃破していく。
今までにない連携に、以前の彼らを知るカガリとアストレイ三人娘は驚いた。
「あいつらやるじゃないか!!」
カガリが驚きつつも連携のすばらしさに感嘆の声を漏らす。
その横でアストレイ三人娘が姦しい声を上げた。
「あ~ん♪も~アリスちゃんってば罪作りなんだから」
「いいなあ。あたしもあのくらい素敵な彼氏欲しい」
「いっそアリスちゃんを百合に落とそうか」
「お前ら真面目にやれ!!来るぞ!!」
などとオーブ組が言っている余裕があるのは、先行したムウのストライクとフレイのレッドストライクとトールのアストレイMK-2がいるからだった。
ムウの指導の元、二人の技量も大きくあがりエースパイロットと言っていいレベルに達している。
「トール!フレイ!そっちは任せたぞ!」
ムウの声に反応し二人は頷いた。彼らもまた必死に戦っていた。
「了解です!」
「絶対負けない!」
紫色のストライクダガーはアークエンジェルとドミニオンにロックオンされる。
退避しようとした彼らに前もってアリスが放っておいたミサイルが四方八方から襲い掛かる。
最初からオルガ達はアリスの罠に敵機を誘い込んでいたのだ。
「どうだアリス!!」
「何浮かれてやがる、俺が支援してやっただからだろば~か」
「お前らうっせーぞ」
通信機から流れてるオルガ達はかつての野良犬のような戦い方をしていない。
三人とも長年の友のように笑いあっていた。
そんな三人に微笑むアリスだが、アリス得意のミサイル攻撃を見ていたマリューは背筋が凍る想いだった。
「あの子達が味方でよかったわ」
あの時に今のオルガ達とアリスの連携があればアークエンジェルは沈んでいたとマリューはため息をついた。
だが戦いはまだこれからだ。
紫色のストライクダガーはニコルたちMS部隊の攻撃であらかた撃墜されたがそれは後ろからザフトの攻撃が迫るという事でもあった。
彼らの目的は四隻同盟の撃滅に他ならない。
ザフト側は紫色のストライクダガー部隊を撃破した四隻同盟を脅威として認定していたのだ。
「敵MS接近中。ザフトの正規部隊のようです!!」
サイがモニターを見ながら報告する。
ザフト軍からは多数のMS部隊が向かってきていた。
「彼らは俺が引き受ける。お前たちは行け」
「アスラン」
キラが心配そうに声を上げる。
「大丈夫だ。父の真意を確かめるためにも、俺は行かなければならない」
アスランは一瞬だけ振り返り、決意の表情を見せた。
彼の目には複雑な感情が浮かんでいる。
敵と味方の区別がつかない混戦の中で、彼は自分の過去と向き合う覚悟を決めていた。
「ジャスティスこらからヤキン・ドゥーエに行きます!」
アスランの駆る赤い機体が前線へと飛び出していく。
その後ろ姿を見送りながら、キラはフリーダムのコントロールを強く握りしめた。
「僕達も急ぎましょう。ニコル、リジェネレイトを頼むよ」
「もちろん。アスランには負けていられません」
ニコルのリジェネレイトが高機動モードに移行し、宇宙を切り裂くような加速でキラ達を追う。
ザフトの部隊はすでに攻撃態勢に入っていた。数十機のMSが規律正しく隊列を組み、四隻同盟に迫っている。その先頭にはイザークの駆るデュエルがいた。
「あの赤い機体……」
イザークはジャスティスの姿を認識し、目を細める。
かつての親友たちとの再会は、今は敵としての対峙という形になっていた。
「あれは恩人だ、全機、攻撃待て!」
イザークの号令と共に、ザフト部隊が一斉にビームライフルをおろす。
「イザーク……!」
イザークはジャスティスを妨害どころかヤキン・ドゥーエまで護衛してくれた。