【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回はめっちゃ悩みました。実はパトリック生存ルートか史実通り狂ったまま死亡ルートの二つを書いていたのです。ということでこういう事に。批判されても仕方ありません。でも書いちゃったものは仕方ないですね。ちょっとくらい救いがあっても良いと思うのです。


第118話 レノア

 第118話 レノア

 

 一人の少年兵がパトリックを撃った銃を握りしめたまま呆然と立ち尽くしていた。

 イザークの学徒兵部隊の一人だ。

 

 「なぜこんなことを……!!」

 

 イザークが声を震わせながら少年兵に向かって問いかけた。

 学徒兵の中でも特に大人しい子だった。

 手足が震えている学徒兵は涙を流しながら叫んだ。

 

 「ザラ議長は……僕たちに死ねと言った!コーディネイター大義のために死ねと……!!」

 

 司令室内に沈黙が流れる中、モニターに「核ミサイル発射準備完了」の文字が点滅し始めた。

 これはプラント側最後の反撃用に組まれていたプログラムだ。

 万が一の時はナチュラルごと死滅する為の最終兵器。

 

 「核ミサイル!?まさか父上が……」

 

 アスランが驚愕の表情でパトリックを見つめる。

 彼はパトリックがまだ諦めていないのではないかと疑った。

 だがパトリックも驚きを隠せない表情で叫ぶ。

 

 「違う…私が命令したわけではない…だがナチュラルには当然の報いだ」

 

 「父上!!」

 

 叫んだアスランはすぐさまコンソールに飛びつき、解除コードを入力する。

 だが画面上には「エラーコード01」という文字が表示されるだけだった。

 

 「くそ!!なぜ解除できない!?」

 

 「無駄だ……私以外解除は出来ん」

 

 パトリックは苦しそうな表情でそう告げた。

 アスランは怒りと失望が入り混じった感情で父を見つめる。

 

 「父上……あなたは本当にコーディネイターの未来を考えて戦っていたのですか?それともただ復讐を果たしたいだけなのですか?」

 

 パトリックは冷たい目で息子を見つめ返した。

 

 「復讐か……。それだけが私の望みだったのかもな。レノアを失った時から……」

 

 「母上を……愛していたのですか?」

 

 アスランの問いにパトリックは一瞬沈黙した後、静かに答えた。

 それは今まで聞いた事のない弱々しい声だった。

 

 「当たり前だろう……愛していたよ。誰よりも……だからこそ許せなかった。レノアを殺したナチュラルを……」

 

 その言葉にアスランは胸が締め付けられるような思いを感じた。

 もし自分がカガリを失っても父のようにならないか自信がなかった。

 

 「父上……あなたの気持ちもわかります。ですが母上がもし生きていたら……きっと悲しむと思います」

 

 パトリックの表情が曇った。その瞳には深い悲しみが宿っていた。

 

 「レノアなら……きっと……」

 

 そう言いかけてパトリックは口を閉ざす。彼は苦悶の表情で額から汗を流していた。

 

 「父上!血が……!」

 

 アスランは焦りの表情で父の傷を見る。弾丸は左肩を貫通しており大量の出血があった。

 

 「父上!あなたは間違えている!!母上はそんな人じゃない!!本当の母上を思い出してください!!」

 

 「アスラン……お前にはわからない。私とレノアの絆は……誰にも壊せない……」

 

 その時、核ミサイル発射カウントダウンの表示が現れた。

 残り15分。

 

 「父上!早く解除コードを教えてください!」

 

 パトリック・ザラにはわかっていた。

 自分の愛した妻がどういう人だったのかを。

 コーディネイターとナチュラルが対等の関係になる為に農学を志した優しい妻だった。

 誰よりもコーディネイターとナチュラルを愛した妻だった。

 かつて荒んでいたパトリックの心を癒してくれた妻。

 妻を裏切る事が本当に正しいのか。

 正しくないと最初からわかっていたのだ。

 だからこそ許せなかった。

 妻の想いを踏みにじったナチュラルを。

 目の前で自分に声をかける息子はレノアによく似ていた。

 母親を失ってもなおナチュラルとの共存を望む馬鹿息子。

 私の大切なレノアの忘れ形見。

 

 「『レノアだ』」

 

 「……父上」

 

 「早く入力せんか」

 

 アスランがコンソールに飛びつきコードを入力する。

 

 『レ・ノ・ア』

 

 『アクセスキーが解除されました。議長権限で発射シークエンスは停止します』

 

 コンピューターの返答に一段階解除されたが安心するのは早い。

 またパスワード画面に移る。

 

 「父上、もう一つパスワードが」

 

 「そんな筈はない。クルーゼめ……システムを書き換えたな」

 

 パトリックが悔しそうにつぶやく。

 ここから先は自分たちで解除せねばならない。

 こういう時ニコルがいればすぐに解除してくれるのに。

 その時ふとアスランは思い出した。

 ニコルから教わった事だ。

 

 ◆◆◆

 

 「B125の回路をC136に繋いでそのコードキーは」

 

 「このX703ZEQ~に続くコードキーですね。この爆弾のコードキーを知るときは端末をつないでX703ZEQと設定すると出てきます」

  

 「コードキーが100個くらい表示されたぞ?」

 

 「このXZを全て取り除いてください」

 

 「一気に30個にまで絞れたな」

 

 「過去の解除パターンに使われた部分を全て消去してください」

 

 「なるほど。これがコードキーか」

 

 「アスラン安心するのは早いですよ。こういう場合はトラップが仕掛けられています。コードキーを入力したらフェイズ2に移行しますからすぐ別の解除キーを解析しないといけません」

 

 「解析できなかったら?」

 

 「ラクスさまが悲しむ事になります」

 

 ◆◆◆

 

 アスランは気が付いた。

 ニコルは爆弾解除の秘訣を教えてくれていたのだ。

 慌ててコンソールを手にし解除を試みるが手が足りない。

 その時、イザークがアスランの隣に立った。

 

 「貴様一人じゃ手が足りんだろ。俺も手伝ってやる」

 

 「イザークすまない」

 

 「礼は核ミサイル発射を阻止してからだ」

 

 そう言っているイザークに、にやけながらディアッカが口を挟んだ。

 

 「俺だってザフト・レッドだぜ。手伝うよ」

 

 「ありがとうディアッカ」

 

 「そういう事なら俺も参加しない訳にはいかないな」

 

 「ラスティありがとう」

 

 ザフトレッドが四人そろった。

 ニコルも爆弾解除方法をアスランに伝授したので実質ザフトレッドが全員揃っている。

 アスラン達が解除しているあいだ、ミゲルは一人で銃撃戦を戦っていた。

 どうやら司令部にも過激なザラ派将兵がおり、核ミサイル発射阻止をさせまいと襲い掛かってきたのだ。

 アスラン達に銃を向けるがミゲルの的確な射撃でアスラン達に当たらないように注意している。

 

 「クソッ!あいつら邪魔しやがって!!」

 

 ミゲルが叫びながら銃を乱射する。

 ミゲルはザフトレッドではないが銃の腕前は一級品だ。

 ミゲルは器用に銃を操り、敵兵たちを次々と撃ち倒していく。

 

 「何をやっているんだ!早く核ミサイルを止めるんだ!」

 

 「すまない!!もう少しだけ守ってくれ」

 

 「人使いの悪い後輩だぜ」

 

 ミゲルの軽口にアスランは口角を少し上げて返事をする。

 その余裕がアスランたちの精神的負担を和らげる。

 

 「もう少しだけ時間が必要なんだ」

 

 アスランは複数のモニターを見つめながら、素早く指を動かす。イザークとディアッカも同様に作業を続ける。

 

 「パスワード1は突破した!だが、フェイズ2のトラップがある!」

 

 ディアッカが叫ぶ。イザークは目を細めてモニターを凝視する。

 

 「これは……ニコルが言っていたパターンか!」

 

 「ああ、そうだ。ニコルから教わった方法でいくしかない」

 

 アスランは手を止めずに答える。

 

 「イザーク、そのコードを解除してくれ」

 

 「わかった」

 

 ミゲルの側では激しい銃撃戦が続いていた。彼は素早く移動しながら敵兵を次々と倒していくが、敵の数は多く、次第に追い詰められていく。

 

 「くそっ……」

 

 一瞬の隙にミゲルの肩を弾丸が掠めた。痛みに顔を歪めながらも彼は立ち止まらない。

 

 「やつらを近づけるわけにはいかないんだ!」

 

 アスランが急に顔を上げる。「イザーク!このまま進めれば次の段階へ行ける!」

 

 イザークは頷き、ディアッカと協力して次の手順を進める。ラスティは別のコンソールを操作し、セキュリティシステムの解除を試みる。

 

 「アスラン気を付けろ。トラップが起動する!」

 

 「わかった!」

 

 アスランが特定のキーを押し込むと、画面が暗転し、新たな表示が現れる。

 

 「フェイズ3か。これはニコルが教えてくれたパターンとは違う」

 

 「くっ……あと3分で発射される!」

 

 イザークがモニターを睨みつけながら叫ぶ。

 ディアッカは息を切らしながら作業を続ける。

 ラスティが最後のタッチパネルを見つけた。

 赤と青のどちらをタッチすればいい。

 これを解除すれば停止するはずだ。

 アスランがイザークとディアッカとラスティに声をかける。

 

 「これでミスれば全てが終わる。いいか?」

 

 「ああ」

 

 「俺はパス。こんなのやりたくねえよ」

 

 「ディアッカ、そんな事言ってる場合か。あ、俺もパスな」

 

 アスランが肩をすくめた。

 やはり彼らは最後まで仲間だった。

 

 「いくぞ、ザフトレッドの赤だ」

 

 そう言ってアスランがタッチパネルの赤を押した瞬間、ヤキン・ドゥーエ全てのミサイルポッドが停止する。

 アスラン達は四人でタッチしたあとすぐミゲルの支援に走った。

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