【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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さてそろそろ終盤です。終わっちゃいますね。寂しいような日課の投稿が無くなって気楽になるような。まあ寂しいんですけどね。キラやニコルと過ごした物語が終わる。まことに寂しいものですが最後までかきあげますよ~。DESTINYはするかどうか悩み中。


第119話 エマ

 第119話 エマ

 

 ヤキン・ドゥーエの司令部は大混乱だった。 

 パトリック・ザラが指揮不能となり、絶滅戦争の引き金を引くと言う緊急事態にみなパニックをおこしていた。

 ナチュラル全てを滅ぼすまで戦うつもりなどなかった彼らは自軍が何をしようとしていたのか知ってしまった。

 現在の状態はジェネシスの発射に失敗したが地球軍艦艇にも多大なダメージを与えた状態だ。

 現状だけを見れば十分優位な状態にあるが、地球の月艦隊が到達すれば戦況は不利になるだろう。

 総司令官首席補佐官のレイ・ユウキが倒れたパトリック・ザラにひざまずく。

 パトリックは身体を司令部の壁にもたれさせて半分崩れそうな身体を起こした。

 

 「ザラ議長。もはやこれまでです。交戦か和平かご決断ください」

 

 以前のパトリックなら怒りに身を任せてレイを撃ち殺しただろう。

 だが息子が最悪の事態を回避してくれた時点で腹は決まっていた。

 パトリックはアスランに微笑む。

 最愛の妻にそっくりの息子を死なせる訳にはいかなくなった。

 

 「首席補佐官。議長として最後の命令を伝える。講和だ、急げ。月基地艦隊が来る前に講和するのだ」

 

 そう言ってパトリックは気を失ってしまった。

 レイはただちに医療班にパトリックの手当てを命じると共にタカ派のエザリア・ジュールの説得に向かう。

 正確に言うとエザリアの周りにいる部下たちだ。

 いくらジュール家とはいえ直接の主従関係にあるわけではない。

 部下たちを説得するのに武力は必要になるかもしれない。

 

 「イザーク、君も一緒に来てくれ」

 

 「了解いたしました」

 

 エザリアの説得に彼女の息子を使うのは卑怯だが手段を選んでいる状況ではない。

 地球軍の月基地艦隊が到達する前に講和しなくてはならない。

 一分一秒遅れてはならない。

 この数分にプラントの未来がかかっていた。

 

 「アスランはどうする?」

 

 ディアッカがアスランに尋ねた。

 それに対する答えは決まっている。

 

 「戦場にもどるよ。あそこにはキラとニコルがいる」

 

 「そうか」

 

 「ディアッカたちは残ってくれ。最悪議長命令を無視して交戦を続行する者もいるだろうからな」

 

 「OK。まかせろ」

 

 そう言ってアスランは指令室を後にした。

 

 「あいつの背中、大きくなったよな」

 

 「俺たちだって負けてられない」

 

 ラスティとミゲルは逞しくなった友人の背中に絶対の信頼をかんじていた。

 

 ◆◆◆

 

 そのころニコル達は戦場のまっただなかにいた。

 アスランを通じてプラントが講和を決めたとマリューから告げられたが、プラント所属の黒いMS隊は攻撃をやめない。

 彼ら彼女らはスーパーコーディネイターの出来損ない。

 プラントと地球の双方を絶滅させたいのだ。

 月基地艦隊が到達すれば味方の惨状を知った怒りで月基地艦隊はプラントに襲い掛かるだろう。

 プラント側も必死の反撃を行い双方自滅する。

 月基地艦隊が到達するまでに講和が出来るか、それとも戦闘を続け絶滅戦になるのか。

 時間がなかったのだ。

 プラント側が手を上げても地球側が銃を収めるとは限らない。

 エマの操縦する黒いMS部隊は、講和の動きに関係なく攻撃を続けた。

 

 「エマ!プラントは講和を決定した。攻撃をやめるんだ!」

 

 ニコルがリジェネレイトのコックピットから呼びかけるが、エマからの返事はない。

 

 「あの黒いMS部隊はプラントの意思とは無関係に動いています。このまま地球軍との戦闘を続けて地球とプラントを泥沼の消耗戦に引きずり込むつもりでしょう」

 

 ニコルが冷静に分析する。その額には再び汗が浮かび始めていた。

 

 「エマ!聞こえますか!プラントはもう戦いません!あなた達の計画は破綻したんです!!」

 

 ニコルの呼びかけに対する回答は黒いMSたちによるビーム攻撃だった。

 数条のビームと同時に彼らはミラージュコロイドを展開するが、宇宙一ミラージュコロイド戦法に長けたニコルには通用しない。

 リジェネレイトに搭載されたパーツを使って追い詰めビーム攻撃を行う。

 すぐに退避行動にうつる敵機はミラージュコロイドを使う暇がない。

 ニコルのリジェネレイトが追い込んだ先にはシンとマユのアストレイが待っていた。

 

 「でりゃああああ!!」

 

 シンのアストレイが対艦刀を振るい黒いMSを切り裂いていく。

 高出力の対艦刀を思う存分振るえるのはオーブ最新鋭のNJC搭載型アストレイだからだ。

 シンのアストレイと合体したマユのシェンウーがシンの接近戦を援護する。

 空間認識能力ならキラを上回るマユの放つビームとミサイルはまさに百発百中で黒いMSを破壊していった。

 

 「お兄ちゃん後ろは任せて。一機も通さない」

 

 「頼むマユ」

 

 アスカ兄妹の連携は完璧の一言に尽きた。

 互いの呼吸を熟知しているからこそできる芸当である。

 そしてキラのフリーダムが高機動で宇宙を駆け抜けながら敵機を撃墜していく。

 

 「エマさん!あなた達の目的は何なんです!?こんな事をしても誰も幸せにはなりません!!」

 

 キラの問いかけにようやくエマが応えた。

 

 「幸せになりたいのではない。すべてを壊したいだけよ」

 

 「なぜそこまで……」

 

 「スーパーコーディネイターは完璧な存在として生まれるはずなのに、私たちのような失敗作が生まれた。その悔しさがわかるかキラ・ヤマト!!本来なら私たちのだれかがスーパーコーディネイターとして生まれるはずだったのよ。私達はお前が憎い。お前のようになりたかった」

 

 エマの言葉にキラは一瞬言葉を失った。

 そこには深い絶望と怒りが滲んでいたからだ。

 だがキラだって戦いたくもない戦場に身を置いた。

 ただ幸せに暮らしたかっただけなのに。

 

 「僕だって、僕だってスーパーコーディネイターなんかに生まれたくなかった!!普通にお父さんとお母さんに愛されて生まれたかったんだ!!そんなに僕になりたいの!?こんなに辛いのに!!」

 

 そう言ってキラはまた一機黒いMSを撃ち落とす。

 あの中にいるのは兄弟なのだ。

 本来こんな殺し合いなんてしなくてすんだはずなのに。

 キラはこの世界の不条理に涙した。

 それが判断を一瞬だけ鈍らせた。

 フリーダムの背後に回ったMSがビームを発射する。

 それは確実に命中するはずだった。 

 

 「馬鹿!!戦場で気を抜くんじゃない!!」

 

 ムウ・ラ・フラガが操縦するストライクのシールドが一瞬早くキラの背後を守った。

 ムウのストライクに続いてトールのアストレイとフレイのレッドストライクも到着し、三機でフリーダムを守る。

 

 「お前たちにはわかんねえよ。俺たちがキラと友達になったのはスーパーコーディネイターだからじゃない。キラだからだ」

 

 「……トール」

 

 「もう少しで戦争が終わるっていうのにキラの邪魔なんてさせない!!」

 

 「フレイ」

 

 トールとフレイの言葉にキラは勇気づけられた。

 二人はスーパーコーディネイターとしてのキラではなくサボりがちでいい加減で、でもとても魅力的なキラ・ヤマトという人物が好きだったのだ。

 キラは二人と友達になれて嬉しかった。

 

 「キラ、俺たちがお前の後ろを守る。徹底的にやっちまえ!!」

 

 「わかりましたムウさん!!」

 

 もう二度とラクスが泣く未来なんて訪れて欲しくない。

 キラはフリーダムの全ての武装を展開し、残りの黒いMSに狙いを定めた。

 

 「これで終わりだ!!エマさん!!」

 

 「終わらせてなるものか!!」

 

 エマの叫びが響く中、戦いの幕があがった。

 

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