【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
さっそく前提条件が崩れてきました。
歴史改変物はずっと同じ歴史が続いて、ある日を境に本来と違う歴史になっていく。
変わっていく歴史の中で翻弄されていきますが、ある地点まではほぼ史実通りになっていきます。
第12話 ヘリオポリス。
ニコルの所属するプラントのクルーゼ隊はヘリオポリスで開発中のMS強奪が目的だ。
対する地球連合はMS開発計画の遂行と貴重な実験データを何があっても手に入れたい。
オーブ政府は極秘裏に開発されているアストレイの存在を抹消するという依頼をサーペントテールを含む複数の傭兵に依頼してしまう。
つまりヘリオポリスにプラントと地球連合とオーブの思惑が全て集中してしまった。
「なかなか壮観な光景だな」
ニコルが艦橋に上がるとクルーゼ隊長が楽しそうに微笑んでいた。
かくいうニコルは内心冷や汗ものだ。
ヘリオポリスを含む宙域にいるのはザフト艦以外は隠密行動に失敗した傭兵艦だけで10隻。
隠れるのに成功した傭兵艦も含めれば15隻はいるだろう。
もしかしたら先日戦った青いジンも、どこかに隠れているかもしれない。
傭兵艦のほとんどがMAメビウスを数機搭載していると予想され、ザフトからの脱走者が持ち込んだかジャンク屋から購入したMSジンを搭載している傭兵艦もいるだろう。
「まさか我々と戦う気ではないですよね」
ニコルがそう呟くとイザークが馬鹿にした口調で答える。
「バカバカしい。金次第の傭兵風情がザフトの正規軍と戦うものか。もし挑んで来たら全員あの世へ送ってやる」
イザークの言う通り金銭だけが判断基準の傭兵がニコル達と戦う筈はない。
だが地球連合が雇ったとは考えられないだろうか。
「問題は彼らの目的がわからないという事だ。もし我々のMS強奪計画が地球連合に漏れたとして、その場合お出迎えは地球連合艦隊だろう。秘密裏に実行したMS開発計画を傭兵に悟らせるほど地球連合も馬鹿ではあるまい」
ニコルもクルーゼ隊長の言う通りだと思う。
もしニコルたちの接近を地球連合が知っていればヘリオポリスにいる地球連合のMAが警戒している筈だし、強力な最新鋭艦が入港しているのだから戦闘準備なり逃亡なりいずれかの行動をとっているはずだ。
だがヘリオポリスに潜入しているザフトのスパイからそういう情報は入っていない。
地球連合がこの状況を知らないならあの傭兵達はなぜここにいるのか?
傭兵達は不気味なほど静かでニコルたちの存在に気が付いた様子はない。
「ここで傭兵と戦闘を行えばヘリオポリスにいる連合に我々の存在が知られてしまう。彼らは我々をまだ見つけてはいないようだ。彼らの意図は不明だが作戦に変更はない」
クルーゼ隊長の言葉にニコル達は敬礼し各自の持ち場に向かう。
ニコルとアスラン、イザーク、ディアッカ、ラスティの5人はスパイから報告されているMS五機を強奪する。
ほかに数名の支援要員と共に潜入する。
ヘリオポリス宙域はミゲルのジンが警戒にあたった。
CE71年1月26日。
史実だと1月25日に行われていたはずの潜入作戦は開始された。
ニコル達はパイロットスーツに着替えて出撃する。
ニコルたちの乗っていたヴェサリウスとガモフが陽動の為にヘリオポリスへと接近した。
その間にニコル達はヘリオポリスへの侵入ゲートのロックを外し秘密裏にヘリオポリスへ侵入する。
侵入ゲートの開閉を行うハッキングはニコルの役目だ。
「ニコル早くしろ」
「出来ました」
「お、おう。早いじゃないか」
ニコルが手慣れた操作でロックを外すとイザークが驚く。
前世でも行った手順だから簡単だ。
その後、対人センサーも解除したニコルたちはヘリオポリスへ侵入した。
そのままモルゲンレーテの工場へ向かう。
☆☆☆
ヘリオポリス管制室。
「接近中のザフト艦に通告する!!貴艦の行動は明らかにわが国との条約に大きく違反するものである。直ちに停船されたし!!」
ヴェサリウスとガモフの接近にヘリオポリス管制室から警告が発信される。
それに対する返答は強力な電波干渉とMSジンの発進だった。
ヘリオポリス管制室は直ちに全コロニーに緊急事態を通告し、MA部隊による心もとない迎撃を行う。
同時刻軍港に停泊していたアークエンジェルは前日に積み込んだMS五機を出撃させる事を決定した。
「まだ無理よ!!OSの再調整も終わってないのに!!」
アークエンジェルに乗艦予定だったマリュー・ラミアス技術大尉は艦長からの命令を受けて頭をかきむしった。
確かにMSは動く。
動くだけなら出来る。
しかしとてもではないが戦闘を行う事はできない。
「しかしこのままではザフトの攻撃で発艦する間もなくアークエンジェルごと沈められる。ヘリオポリスと共同してザフト艦を迎撃する。これは命令である」
今の状態でMSを実戦に投入したらどうなるか。
ジンを一機撃墜できるかどうかだろう。
その程度の動きしかできないのだ。
ましてパイロットは訓練をしたエースパイロット達とはいえMSでの実戦経験はない。
「電源回して!!ブリッツ、デュエル、バスターはパイロット到着と同時に直ちに起動。調整が終わっていないストライクとイージスは格納庫内で整備続行急いで!!」
軍人だから命令には実行しなくてはならない。
ラミアス大尉は自分に出来る最善を尽くそうと決めた。
仕掛けていた爆薬が爆発してヘリオポリスに振動が走る。
モルゲンレーテの工場と軍港への攻撃が開始された。
今頃ジンが軍港に突入し暴れている筈だ。
激しい銃撃戦を潜り抜けてモルゲンレーテの工場区画へと侵入したニコル達は目を疑った。
そこにMSは無かった。
「どういうことだこれは!?」
イザークが思わず叫ぶ。
ディアッカが舌打ちし、ラスティが天を仰ぐ。
「どうなってるんだニコル!?」
アスランがニコルに問いかける。
たった一日の違いが全てを狂わせていた。
「わからない、どうしてどうして!!」
ニコルの持っていた知識と記憶が未知の領域へと変化していた。
「どうするアスラン!?」
ディアッカがアスランに叫ぶ。
「モビルスーツの強奪は後回しだ。最新鋭艦の格納庫を狙うぞ。まだ搬入されたばかりのはずだ」
アスランの決断は早かった。
唖然としているニコルの背中をラスティが叩く。
「しっかりしろニコル!!集中しないとやられるぞ!!」
混乱しながらニコルは頷くしかなかった。