【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
第120話 新たなる剣
エマの叫びと同時に黒いMSが散開する。
彼らの目的はただ一つ、キラだ。
キラを殺す事だけを生きがいにしてきた彼らにとって、これは逃せない絶好の機会だ。
ニコルはリジェネレイトとオーブ組と共に参戦する。
「アサギ、ジュリ、マユラはキラを守れ!!私はあいつをやる!!」
『『『了解!!』』』
アサギ、ジュリ、マユラの三人は宇宙用に換装されたアストレイでキラの援護をする。
カガリはニコルと共に黒いMSの相手だ。
「ニコル君!キラ君はあたし達に任せて!!お転婆姫の事守って!!」
「わかりましたジュリさん!!」
「誰がお転婆だ誰が!!」
黒いMSの攻撃をかわしながらカガリがストライク・ルージュで接近戦を挑む。
その動きは洗練されており、敵機の攻撃を難なくいなしている。
正直カガリがこれほどだとニコルは思っていなかった。
「キラに手出しはさせない!!」
そう叫んでカガリのストライク・ルージュが黒いMSに斬りかかる。
しかし黒いMSは素早く機動し、カガリの攻撃を避けた。
だがそれはニコルにとっては好機だった。
「もらった!」
ニコルのリジェネレイトが黒いMSにビームサーベルを突き刺した。
黒いMSは抵抗する間もなく爆散する。
キラのフリーダムはムウ達の援護の元、ミーティアに装備されているミサイルで攻撃する。
そしてビームライフルを撃つ。
回避する黒いMSはキラのフリーダムに接近しビームサーベルで斬りつけてくる。
キラはそれをビームサーベルで受け止め反撃した。
互いの刃がぶつかり合う中でキラのフリーダムが黒いMSを切り裂いた。
「これ以上犠牲を増やすな!君たちの復讐に意味はない!!もうやめるんだ!!」
キラが叫ぶ。
しかし黒いMSたちは耳を貸さず攻撃を続ける。
キラはさらに加速し、黒いMSを次々と撃破していく。
トールのアストレイがフレイのレッドストライクと連携してキラの背面を援護する。
ミーティアから引き離されないようにするだけでも大変なのに、援護も出来る二人の実力は既にコーディネイターを超えていた。
「こんんのおおおお!!」
ムウが叫びストライクのビームを放った。
また一機の黒いMSが塵と化した。
あまりにも脆い黒いMSの動きにニコルは気が付いた。
機械と融合した脳が拒絶反応をおこしているのだ。
「エマ!!もうやめるんだ!!このままだと君たちは死んでしまう!!」
ニコルの説得にエマは答えない。
エマの黒いMSはリジェネレイトにビームサーベルで切りかかる。
「それがどうしたのさ!!あたしたちはキラを殺せればそれでいいのよ!!お前こそ邪魔だニコル!!」
いつもムードメーカーでいてくれたエマ。
イザークをからかって、笑わせて、皆を励ましてくれたエマ。
そんなエマにこんな一面があったなんて。
ニコルの動きが一瞬だけ途切れた瞬間だ。
「死ねえええええ!!」
「……お前がな」
一瞬動きを止めたリジェネレイトをエマが切り裂こうとビームサーベルを掲げる。
そのビームサーベルを巨大な鎌でシャニのフォビドゥンガンダムが守ってくれた。
「おのれ!!」
「へっ」
エマはビームライフルで反撃するが、ビームはフォビドゥンガンダムに捻じ曲げられる。
その後ろからレイダーガンダムとカラミティガンダムが遠距離レーザーで支援してくれた。
ニコルは極度の緊張と悪意にさらされて過呼吸になっていた。
「おい大丈夫か?」
ニコルの異変にカラミティガンダムに乗ったオルガが声をかける。
今までのような突き放した言い方と違うのは、新薬を届けてくれたニコルへの感謝とアリスの人徳のたまものだろう。
レイダーガンダムのクロトも隣に来た。
「だ、だいじょうぶです」
「ばーか、大丈夫っていう奴が一番危ないんだよ。ここは俺たちに任せていいから下がれ」
「わかりました。気をつけてください」
「言われるまでもね~よ。俺たちが死んだらアリスが悲しむからな」
そう言ってレイダーガンダムとカラミティガンダムとフォビドゥンガンダムは目を見張る連携で次々と黒いMSを倒していく。
ニコルは激戦のなかでリジェネレイトをなんとか操縦し、クサナギのカタパルトへ戻る。
カタパルトにはすでに医務官が待機しており、リジェネレイトが着艦すると同時にコクピットハッチからニコルを担ぎ出した。
「すぐ医務室へ運ぶ、大丈夫だ」
クサナギの医務官がそう言うと同時にニコルは意識を失った。
◆◆◆
ニコルは夢を見た。
そこは青空が広がり鳥が飛び交っている。
太陽が眩しく大地には砂浜が広がっていた。
ニコルの隣にはマユがいて微笑んでいた。
「ニコルさん」
そう呼ぶマユの声が心地よい。
目の前には見慣れた海岸線が広がっていた。
ここはシンとマユとニコルが出会った思い出の砂浜だ。
三人でよく海を見ていた楽しい思い出。
「マユ……」
「ニコルさん、わたしね……ニコルさんが好きだよ」
マユはそう言って笑った。
その笑顔はとても眩しくて胸が痛い。
「マユ……僕も……」
そう言いかけてニコルは目を覚ました。
あたりを見回すとそこはクサナギの医務室だった。
医務室の窓からは宇宙の景色が見える。
ニコルは自分の胸に手を当てて確認した。
鼓動がはっきりと感じられた。
(生きてる……)
ニコルが身体を起こすと女性の医務官がニコルを押さえた。
いつもなら跳ねのけられる筈なのに身体が上手く動かせない。
「いま精神安定剤を打ったところだから10分くらい寝てなさい」
「戦況は!?マユは!?みんなは!?」
「落ち着きなさい。マユちゃんも無事よ」
ニコルとマユの関係はクサナギの皆が知っていた。
医務官の言葉に少し安心する。
「他の皆は!?キラは!?」
「無事よ。キラ君も無事に戦ってるわ」
ニコルの顔に安堵の表情が浮かんだ。
「よかった……」
「安心したらもう少し寝なさい。精神安定剤は副作用が強いから」
「はい……」
そう言ってニコルはまた眠りについた。
◆◆◆
黒いMSの攻撃は続く。
ニコルたちの代わりに援護に来たオルガ達のMSはまるで三匹の狼のような獰猛さで戦場を駆け巡る。
「邪魔をするな!!」
「引っ込んでろよば~か!!」
「落ちろ!!」
三人が叫ぶたびに確実に敵機をしとめていく。
その様子をモニターで見ながらアリスは次の投薬時間を逆算した。
10分の余裕をもってアリスは三人に帰艦を命じる。
「オルガ、クロト、シャニ。お薬の時間です」
「まだまだいけるぜ!?」
「駄目、帰艦してください」
「大丈夫だって!!」
三人の反応は予想内だったので、アリスは自分の胸に手を当てて悲し気に微笑んだ。
「貴方たちの苦しむ姿はみたくないの。おねがい戻ってきて」
ずるい。
汚いぞアリス。
だが三人は照れた後、素直にドミニオンに帰艦した。
ちょろい。
そしてオルガ達と入れ替わりにニコルが再び前線に立つ。
リジェネレイトはカタパルトを使って射出できない。
大きすぎるから仕方がない。
「ニコル君、シンとマユを頼んだよ」
「まかせてください」
アスカ父と母が見送りに来てくれた。
二人はクサナギでエリカ・シモンズの補佐を行っているモルゲンレーテの社員だ。
だからリジェネレイトに魔改造を施してある。
リジェネレイトにザフトのドラグーンシステムを搭載してしまった。
またビームサーベルとロングビームライフル以外の装備で近接戦か遠距離戦の両極端だった武装を、内蔵型ビームライフルを装備する事で中距離戦にも対応できるようになっている。
「シンとマユ。二人の命は僕が必ず守りますからね」
「ニコルさん」
「お願いしますニコルさん」
アスカ両親の返事に微笑んでニコルはリジェネレイトを発進させた。
新たなリジェネレイトが発進した。