【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回はさらに激闘続く展開になっています。事実上15名のパイロット、しかもアスランがいないという状況です。黒いMSは大体300機くらいいたという設定です。その全てがキラを殺しに来ると言うキラ涙目。核動力のフリーダム、リジェネレイト、シンのアストレイなら兎も角通常電力の皆はそろそろエネルギー切れそう。それがエマ達の狙いでもあるのですが。こんな設定考えて書くと色々と浮かんで楽しいものです。


第121話 世界の意志

 第121話 世界の意志

 

 黒いMSとの戦いは続く。

 ニコルが戦線復帰するまでほんの一時間弱だったが戦況は不利の状態だった。

 敵の攻撃が集中しているキラの心身の疲労はピークを迎えつつあった。

 

 「君たちの復讐に意味はない!!もうやめるんだ!!」

 

 キラが叫ぶ。

 しかし黒いMSたちは耳を貸さず攻撃を続ける。

 黒いMSの一機がキラのフリーダムを狙ってビームライフルを発射した。

 それと同時に十数発のビームが放たれ黒いMSを貫いた。

 

 「誰だ!?」

 

 「僕だよキラ。新装備のドラグーンシステムを使ってみた」

 

 ニコルのリジェネレイトが戦線復帰し、不利な戦闘を行っているオーブ組のフォローにまわる。

 アサギ達に襲い掛かろうとした黒いMSにドラグーンシステムで四方八方の射撃を打ち込む。

 目の前で展開されたドラグーンシステムによる攻撃に一瞬唖然としたアサギだったが、それがニコルのリジェネレイトによるものだと知ると笑みを浮かべた。

 

 「マユちゃんいい男捕まえたね!!シン君諦めなさい。なんならお姉さんが恋人になってあげるよ♪」

 

 戦場で軽口を言えるようになれば大したものだ。

 ニコルのリジェネレイトはそのままシンとマユ、そしてカガリたちの支援に向かう。

 ドラグーンシステムは空間認識能力が高くないと扱えない装備なのでニコルの負担はかなり大きい。

 決め手を欠いていた戦況はリジェネレイトが復帰した事でニコル達に有利に傾いた。

 だがそれまで地球軍の追撃に向かっていた黒いMSたちも集まりだした為、戦力差は瞬く間に差が付いてしまった。

 ニコルの体感では五対一といった所だが、リジェネレイトに乗っているニコルでさえそう感じるのだからアストレイに乗っているトール、アサギ、ジュリ、マユラには余程重く感じている筈だ。

 ストライク、ストライクルージュ、ストライクレッドに乗るムウ、カガリ、フレイの動きも鈍ってきた。

 元々軍人のムウでさえキツイ戦場にナチュラルの少女のカガリとフレイはいつ集中力が切れてもおかしくはない。

 このままだと疲労の蓄積と武器の枯渇で押し切られる。

 ニコルは一時的に戦線を縮小し、補給と整備を行う事をマリュー達に進言した。

 ラクス、マリュー、アリス、キサカの四人は緊急に協議を開いてその進言を受け入れる事にする。

 だが言うは易し。

 戦闘中の撤退こそ至難の業だ。

 

 「シン!マユ!僕が援護します。二人は一旦引いてください」

 

 ニコルのリジェネレイトから放たれるドラグーンの精密な射撃が黒いMSを次々と撃墜していく。

 その光景を見たシンとマユは表情を引き締めた。

 マユはすぐにでもニコルと共に戦いたかったが、幼い自分では緊張に耐え切れない事も理解している。

 利発な少女だから状況が厳しい事はわかっている。

 それでもニコルの傍にいたいというマユの想いにシンは気が付いていた。

 

 「マユ、ニコルの気持ちを無駄にしちゃだめだ」

 

 「……うん。お兄ちゃん」

 

 後ろ髪を引かれる思いでシンのアストレイとマユのシェンウーが連携して黒いMSから距離を取りクサナギへと向かう。

 少しでも緊張を和らげなければ長期戦は戦えない。

 その分キラとニコルの負担が爆上がりなのだが。

 一方、キラのフリーダムはエマの黒いMSと対峙していた。

 

 「エマさん、もうやめてください。あなたのやっていることは間違いです」

 

 キラの言葉にエマは嘲笑した。

 

 「間違い?あたしたちの人生すべてが間違いだって言いたいの?」

 

 「違います!僕たちは……」

 

 キラの言葉はビームの衝撃波で遮られた。

 エマのMSから放たれた攻撃がフリーダムを掠めたのだ。

 

 「黙れ!お前なんかに何がわかる!」

 

 「違います!!僕達は完璧とか不完全とか、そういうモノじゃないはずです!!」

 

 「なら完全なお前を殺して私たちが不完全じゃないと知らしめるわ!!」

 

 エマの目には憎悪だけがあった。

 

 「キラ下がってください!エマやめるんだ!!」

 

 ニコルのリジェネレイトが間に割って入る。

 そのドラグーンがエマの黒いMSを取り囲んだ。

 

 「ニコル……お前まで邪魔をするのか!」

 

 「エマもう十分です!あなたはもう限界です!この引き金を引かせないでください!!」

 

 ニコルの声は悲痛だった。

 リジェネレイトのドラグーンがエマ機を捉えた。

 かつての仲間を殺すという緊張にニコルの鼓動が早くなる。

 エマの優しい笑顔。

 楽しそうな姿。

 あれが全て演技だったなんて。

 

 ニコルの本気をエマも感じ取った。

 だがもう戻れない。

 キラを殺すことでしか、自分たちの生きた証を刻めないのだから。

 

 「あたしはまだ……まだ終わらない!」

 

 エマがビームライフルを構えた瞬間、ニコルのドラグーンからビームが発射された。

 

 「エマぁぁぁ!!」

 

 ニコルの絶叫と共にドラグーンが一斉に動き、エマの黒いMSを包囲する。

 リジェネレイトのドラグーンシステムは空間認識能力の高いニコルによって精密に制御され、エマ機の全ての逃げ場を塞いでいた。

 

 「これが……ニコルの力……?ふふ、クルーゼが楽しんでいるのがわかるわ」

 

 エマが一瞬だけ優し気な笑みを浮かべる。

 これがクルーゼが言っていた終わりたくないという世界の意志。

 なら自分たちが戦っているのはニコルでもキラでもない。

 この世界で生きとし生けるもの全ての望み。

 望まれて生まれてこれなかった自分たちが本当に欲しかったもの。

 

 「この程度で……私を止められると思うな!!」

 

 エマの黒いMSが機体を回転させながらビームサーベルを抜き放つ。

 その動きはニコルの予想を超えていた。

 空間認識能力をフルに使ったドラグーンの攻撃パターンを読み切っていたのだ。

 

 「なぜ!!どうしてここまでするんだ!?」

 

 ニコルが驚愕の声を上げる。

 エマの機体はドラグーンの攻撃を回避しながら突進してきた。

 エマの狂気にニコルが威圧される。

 

 「ニコル!ドラグーンを展開させて!」

 

 キラの声が通信を通して響く。

 ニコルは即座にドラグーンを分散配置させ、エマの動きを封じ込めようとする。

 回避しきれずドラグーンの放ったビームがエマ機の左腕を吹き飛ばす。

 

 「無駄よ!この体は痛みを感じない!どんなにダメージを受けても止まらない!」

 

 エマの機体は左腕を失いながらも前進を続ける。

 その瞳には狂気と決意が混じっていた。

 

 「やめろ……もう十分だ……!」

 

 ニコルの声には悲しみが滲む。

 かつての仲間を殺さなければならないという重圧がニコルの心を締め付ける。

 ドラグーンのビームがエマの機体をさらに貫くが、それでも彼女は止まらない。

 

 「みんな……みんな死ねばいい!私達の痛みを……苦しみを……思い知れ!!」

 

 エマの黒いMSがビームサーベルを振り上げ、リジェネレイトに向けて突き出す。

 ニコルはドラグーンを一点に集中させる。

 エマの黒いMSに向けて全てのドラグーンのビームが放たれた。

 

 「………イザーク。もう一度会いたかったな」

 

 エマの呟きがニコルには聞こえた気がした。

 複数のビームが彼女の機体を貫き、一瞬で爆散した。

 残骸が宇宙空間に散っていく。

 

 「エマァァァ!!」

 

 ニコルは脱力し、リジェネレイトのコントロールパネルに頭をうずめた。

 涙があふれて止まらない。

 もしもっと早く彼女らの心に気が付いていれば。

 自分ならなんとか出来たと思うのは思い上がりだとわかっているのに。

 戦友を手にかけた重みが彼の心に圧し掛かる。

 

 「ニコル!まだ戦いは終わっていない!」

 

 キラの声に促され、ニコルは再び顔を上げた。

 残存する黒いMSが彼らに向けて攻撃を開始しようとしていた。

 

 「了解!キラ!残りを掃討しましょう!」

 

 ニコルはリジェネレイトのドラグーンを再配置し、残りの敵機に向かって前進する。

 

 「アークエンジェルの増援が到着するまで持ちこたえよう!」

 

 キラのフリーダムとニコルのリジェネレイトだけで時間を稼ぐ。

 一分でも一秒でもシン達に休息を与えなくてはならない。

 ミサイルや電源の補給も必要だ。

 

 ◆◆◆

 

 その頃アークエンジェル達は緊急着艦したMSの整備とパイロットの休養に大忙しだ。

 補給と整備は兎も角パイロットの神経がもたない。

 

 「まったくこれじゃキリがないぜ」

 

 パイロットルームでムウは軽く愚痴ったが、疲れ果てたフレイとトールは俯いたまま動けなかった。

 ムウは自分の無力さが悔しくて扉を叩いたが、次の瞬間扉が開いてサイとミリアリアがパイロットルームに飛び込んできた。

 サイはフレイを、ミリアリアはトールを抱きしめる。

 その温もりに二人の緊張が解けていく。

 

 「フレイ……」

 

 「サイ……!」

 

 「トール……」

 

 「ミリィ……!」

 

 お互いの名前を呼びながら涙を流す。

 

 「帰ってきてくれてよかった……」

 

 サイがフレイの頬を撫でる。

 

 「あたしたちを置いていかないでよ……」

 

 ミリアリアがトールに抱きつきながら泣いている。

 

 「俺たちは死なない……約束する」

 

 「私も死なない……もう離れたくない……」

 

 四人が再会を喜ぶ中、ムウはパイロットルームを出た。

 クルーもパイロットも無事に帰ってくる。

 それが自分の役目だ。

 しかし自分だけ一人身というのは寂しい。

 まさか戦闘中の艦橋を置いてマリューが来るはずがない。

 そう思ってパイロットルームを出ようとした時だ。

 目の前に目に涙をためたマリューが立っていた。

 

 「なんで…艦長さんがこんな所にいてもいいのかよ」

 

 「『今は整備と補給という自分が最も得意とする作業の指揮ですからパイロットのメンタルケアをお願いします』ってナタルに言われたの」

 

 「あの優秀な副官め」

 

 ムウは苦笑した。

 マリューはそんなムウを見て微笑んだ。

 

 「でもあなたはちゃんとトール君とフレイちゃんを守り抜いたじゃない。立派だったわ」

 

 「まぁな」

 

 そう言ってムウとマリューは笑いあう。

 そして子供たちが見えない廊下で抱きしめあいながら濃厚な大人のキスをした。

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