【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
第123話 クルーゼの嘲笑
キラ、アスラン、ニコルの活躍により応急修理と補給、そしてパイロットのメンタルが回復した四隻同盟は反撃を開始した。
黒いMS部隊は次々と撃墜されていく。
「もう少しだ!みんなでこの戦いを終わらせよう!」
キラの掛け声に全員が応える。
残りの黒いMSはエマが死んだ今、自暴自棄になっていた。
彼らはキラのフリーダムに向けて最後の反撃を試みる。
「キラ危ない!」
ニコルが叫ぶが遅い。
キラに数条のビームが放たれる瞬間だった。
黒いMSたちがビームに貫かれ一斉に爆散した。
そのビームを放ったのはシンとマユのアストレイだった。
「ニコルさん!キラさん!アスランさん、間に合った!」
「キラさん!!アスラン!!ニコル!!大丈夫か!?」
シンのアストレイは対艦刀を振りかざし、マユのシェンウーは精密なビーム攻撃で黒いMSを次々と撃ち落としていく。
そしてマユのシェンウーにはドラグーンシステムが搭載されていた。
高出力のエネルギーを必要とするドラグーンシステムだが、NJC搭載のシンのアストレイと合体する事でその不足を補う事ができる。
「休憩の時間は終わりだ!!」
シンが緊迫した顔で叫びながら対艦刀で一機の黒いMSを袈裟懸けにする。
その隣でマユも叫んでいた。
「ニコルさんが頑張ってるのに私たちだけ休んでられないよ!!」
マユの言葉にニコルは心が温かくなった。
一歩間違えば戦死という緊迫した空気の中で、マユの言葉が存在がニコルに勇気をくれる。
その横でシンがジト目でニコルを見てふくれっ面をするが最初の頃とは違い少し優しい。
「ありがとう……でも無理はしないでね」
「大丈夫マユは無理しないよ。その分シンお兄ちゃんが無茶するからね。行くよドラグーン!!」
マユがドラグーンシステムを使用する。
空間認識能力だけならキラを上回るマユのドラグーンは正確無比で次々と黒いMSを仕留めて行った。
「アサギ!ジュリ!マユラ!全機突撃!!」
カガリの命令と共にオーブのアストレイ部隊が一斉に攻撃を開始した。
ストライクルージュのカガリを先頭に三機のアストレイが敵の黒いMS群に突進する。
アークエンジェル隊のムウのストライクはトールとフレイを守りつつ、ビームライフルを撃つ。
トールのアストレイは両肩のスラスターを全開にして高速機動で敵機を翻弄し、フレイのレッドストライクは高出力ビームライフルで精密射撃を行う。
「こっちは大丈夫だ!フレイ援護を頼む!」
トールが叫ぶとフレイが応える。
「ええ!私たちも頑張るわ!」
トールが敵機を引きつけている間にフレイが狙い撃ちをする。その戦法で次々と黒いMSを撃墜していった。
「あらまあ二人とも上手くなって」
トールとフレイの連携にムウは思わず笑顔になる。
この短期間で二人を鍛えたムウとしては感無量だった。
アサギのアストレイは近接戦闘に特化した装備で黒いMSに接近し、ビームサーベルで一閃する。
「この程度の敵に負けるわけにはいかないわよ!」
その言葉と共にアサギのサーベルが敵のコックピットを貫いた。
ジュリとマユラも互いの背中を守りあいながら敵機を撃墜していく。
「マユラ!援護お願い!」
「任せて!」
マユラのアストレイがビームライフルで敵機の動きを封じると、ジュリのアストレイが急降下してビームサーベルを振り下ろす。
「これで終わりだ!」
ジュリの一撃が敵機を真っ二つに切り裂いた。
「よしっ!カガリ様!この調子で頑張りましょう!」
マユラが叫ぶ。
カガリは仲間たちの活躍に満足げに微笑むと、ストライクルージュのビームサーベルを構えた。
「ああ!みんな!最後まで油断するな!この戦いを人類最後の戦いにするんだ!!」
そう言った瞬間、カガリのストライクルージュがビーム攻撃で右肩に被弾し推力が低下する。
カガリの反射神経でなければ今頃直撃して爆散していただろう。
「カガリ!!」
すかさずアスランが助けに入る。
ジャスティスでさえ姿が見えなかった。
「なっ!?どこから!?」
カガリは動揺しながらも即座に対応しようとするが、被弾の衝撃でストライクルージュの姿勢制御に乱れが生じる。
アスランのジャスティスがカガリ機に接近し、シールドでビームを防ぎながら防御態勢を取る。
確実に止めをさしに来るこの戦い方をアスランは知っていた。
「クルーゼ隊長?大丈夫か、カガリ!?」
「アスラン……すまない……」
カガリの機体は徐々に推力を回復させていくが、その隙を狙ったかのように新たな敵機が現れた。
「あれは……新型!?」
奇抜なシルエットを持つガンダムが突如として姿を現し、周囲の黒いMS部隊を指揮するかのように陣形を整え始めた。
その姿はジャスティスに似ているが少し違う。
機体の色は黒でミラージュコロイドを装備。
プロヴィデンスのドラグーンユニットを背負っているまでは同じだが、腕が四本ある。
手の平にビーム砲とガトリングガンを装備していて指を自在に動かせる。
ビームサーベルも四本もてた。
しかも巨体だ。
リジェネレイトと同じくらいの大きさがあった。
その姿を見てムウが叫ぶ。
「クルーゼ……やはり貴様か!」
ムウの声に怒りが滲む。
その新型MSのコックピットで不敵な笑みを浮かべる男は確かにラウ・ル・クルーゼだった。
「諸君、久しぶりだ。君たちの活躍は見事だったよ。だが、これがこの戦いの終わりだと思うな」
そう言ってクルーゼは黒いMSを率いてニコル達に襲い掛かった。
クルーゼの新型MSはその四本の腕を自在に操り、驚異的な機動性でニコルたちの戦列に割り込んだ。
ビーム砲とガトリングガンが交互に火を噴き、その正確な射撃で次々と味方のMSが撃墜されていく。
「キャー!!」
「アサギ!!ジュリ!!うわっ!!」
オーブのアストレイ隊が瞬く間に沈黙させられた。
三機のアストレイが爆発する。
「クルーゼ……なぜお前がここに……」
キラは驚きと怒りを押し殺しながらクルーゼの新型MSに向き合った。
フリーダムのミーティアを駆使して対抗しようとするが、クルーゼの動きは予測不能だった。
クルーゼの機体はミーティアより早かった。
「キラ・ヤマト。君が私を止めるのか?だが無駄だよ。この機体は君のフリーダムとは比較にならない」
クルーゼの挑発にキラは冷静さを保とうとするが、怒りが込み上げてくる。
「クルーゼ!お前がエマさんたちに何をしたんだ!」
「彼女らは私に従ったまで。彼女らの意志だよ」
その言葉にニコルが反応する。
リジェネレイトのドラグーンを展開しながらクルーゼの新型MSに向かって突進した。
「あなたがエマたちを操ったんだ!エマはあなたを慕っていた!それを踏みにじるなんて!」
「ニコル君。君は優しいね。だがその優しさが命取りになるよ。それに操ったなどと心外だ。彼女たちは自らの意志でキラ君を殺そうとしたのだからね」
クルーゼの機体はニコルのドラグーンの攻撃を軽々とかわし、その隙に黒いMSたちがリジェネレイトを取り囲んだ。
一斉にクルーゼのドラグーンからビームが撃たれる。
ニコルは必死に回避するが数発命中してしまった。
「うわあああ!!」
コクピットで激しく揺られ計器に頭をぶつける。
一瞬だけ意識が無くなり隙が出来た。
クルーゼは笑いながら止めをさそうとする。
「ニコルさん!」
マユが叫びながらドラグーンを展開して援護しようとするが、クルーゼの新型MSがマユの動きを察知し、強烈なビームで牽制した。
「よくもニコルさんを!!」
それでもマユは怯まずドラグーンで弾幕を張りクルーゼの動きを牽制した。
クルーゼもまさか搭乗しているのが小学生だとは思うまい。
更に言うとニコルの恋人などと夢にも思わなかった。
自分の知らない凄腕パイロットだと判断し、一旦下がる。
「マユ!大丈夫か!」
シンがシェンウーに接近し、クルーゼの攻撃からマユを守る。
マユの的確な攻撃にクルーゼでさえ近づく事が出来ない。
クルーゼは舌打ちしてニコルに止めをさすのを諦めた。
「ありがとう……シンお兄ちゃん。でも、ニコルさんが……!」
「わかってる!俺たちでニコルを救うんだ!」
シンとマユのアストレイとシェンウーが合体し、クルーゼの周囲の黒いMSに集中砲火を浴びせた。
その隙にニコルはドラグーンを再展開し、クルーゼに向かってビーム攻撃する。
「クルーゼ!僕は許さない!」
エマの笑顔を思い出しニコルは復讐に吠えた。
確かにキラを殺したいのはエマの本音だったかもしれない。
今戦っている黒いMSに乗っている身体を捨てた人達もそうかもしれない。
だが焚き付け武器を渡したのはクルーゼだ。
ゆるせない。
絶対に許せない。
ニコルのリジェネレイトとクルーゼの新型MSがビームサーベルで激しくぶつかり合う。
手足に四本のビームサーベル同士の戦いは、怒りで冷静さを無くしているニコルが不利になりつつあった。
その戦いを見守りながらアスランがキラに向かって叫んだ。
「キラ!俺たちも加勢するぞ!」
「ああ!行くよアスラン!」
キラとアスランの機体が連携し、ニコルを支援する。
しかしクルーゼの新型MSは想像以上の性能を誇り、彼らの攻撃をかわし続けた。
「ふっ。面白い。だが君たちでは私に勝てないよ。前世で君たち二人の戦い方はよく心得ているからね。キラ君、君にも見せたい物だな。君が前世でどれだけ無様に散ったかをね」
クルーゼの冷酷な笑い声が通信を通して響き渡る。
そしてドラグーンシステムがキラの動きを読んでビームを放つ。
キラは回避し続けるが背部のスラスターに直撃を受けた。
「うわああああっ!!」
「キラ!!」
アスランがキラを支援するがその戦い方もクルーゼには筒抜けだった。
ジャスティスが放ったファトゥムもかわされ逆にクルーゼの機体から放たれる手のひらのビームを避ける間もなく右手を吹き飛ばされた。
アスランは生まれて初めて死の恐怖を感じた。
「キラ!!アスラン!!」
ムウのストライクが二人を庇う。
だがその動きも読まれていた。
「ムウ。君には散々苦渋を飲まされたが、前世同様足つきと同時に殺してあげよう」
そう言ってクルーゼが余裕を見せた時だ。
クルーゼが咄嗟に避けるも近接戦とミサイルによる中距離戦という困難な戦い方を、肉親ゆえに完璧な連携で行う二人がいた。
前世では出会わずゆえにクルーゼが知らない戦い方をする者。
シン・アスカとマユ・アスカだ。
「キラさん!!アスラン下がれ!!こいつは俺がやる!!よくもべらべらとニコル達の悪口を喋りやがって!!」
シンの対艦刀が振るわれマユのミサイルとドラグーンがクルーゼの動きを制限する。
シンの急加速にクルーゼは手間取る。
振り上げられた対艦刀
「君達は……前世では存在しなかったね」
クルーゼが不敵な笑みを浮かべる。
クルーゼにとってこの戦いそのものが愉悦だった。