【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
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第124話 仲間と共に掴んだ未来
クルーゼは笑みを浮かべたがすぐにそれが驚愕に変わる。
それほどシンの攻撃は苛烈だった。
対艦刀で斬る。
それだけなのに受け止めたビームサーベルが受け止めきれない。
シンは斬り払い薙ぎ斬りと戦い方こそ我流で教科書とは程遠いが、無心に振り下ろすその攻撃は全て致命傷を狙い確実に狙い通りにクルーゼの装甲を削っていく。
「なっ……!?そんなバカな……!」
クルーゼの動揺を悟ったマユはすかさずドラグーンシステムでクルーゼの回避パターンを読んで先回りしビームを放った
クルーゼの新型MSはその攻撃を避けるために後退する。
だがそこにシンが対艦刀で斬りかかる。
「でりゃああああああ!!」
「こいつ何も考えていないのか……!!」
クルーゼは慌てて機体を操縦するが間に合わず、四本の腕のうち一本を叩き切られた。
衝撃でクルーゼはコクピット内で激しく揺れる。
彼は痛みに顔を歪めたがすぐに余裕の表情を取り戻した。
「なかなかやるな。だが……これで終わりと思うなよ」
そう言ってクルーゼの機体は残った腕でビーム砲を連射した。
だがシンとマユは冷静に回避する。
そして叫んだ。
「いまだニコル!!」
「ニコルさんやっちゃえ!!」
ニコルのリジェネレイトがドラグーンシステムを使いクルーゼの背後から攻撃を仕掛ける。
「クルーゼ、僕達は負けない!!お前を倒してこの戦いを終わらせる!」
「やれるものならやってみるがいい……!」
クルーゼは残りの三本の腕でビームサーベルを抜き、リジェネレイトの攻撃を受け止める。
しかしニコルはドラグーンシステムを使って全方位から攻撃を仕掛けた。
「行くぞキラ!!」
「アスラン!!」
いくら前世の記憶でキラとアスランの動きが読めても、目の前の狂犬シンをなんとかしないと回避もままならない。
キラとアスランのビームがクルーゼに撃たれる。
シンならなんとかするという謎の信頼でキラとアスランは遠慮なく撃ちまくった。
「キラ!アスラン!今です!」
ニコルが叫ぶと同時に、リジェネレイトのドラグーンから放たれる無数のビームがクルーゼを取り囲んだ。
クルーゼは残った腕でなんとか防御するが、ニコルの精密な射撃は徐々にその隙間を突いていく。
そして巧妙にキラとアスランの射撃ポイントへクルーゼを誘い込んだ。
「無駄だよ。私を倒すことはできない」
クルーゼは余裕の笑みを浮かべたままだが、その声には微かな焦りが混じっていた。
まったく予想外だった。
目の前で対艦刀を振るうMSパイロットには恐怖という感情が無いのだろうか?
まるで狂犬のようではないか。
キラのフリーダムがミーティアの推進力を全開にして加速する。
「アスラン!左からいくよ!」
キラの声には迷いがない。
前世なんてどうでもいい。
ラクスを再び泣かせたりなんてしない!!
「了解だ!」
アスランのジャスティスも同様に速度を上げ、クルーゼの新型MSに向かって突進した。
撃墜されたもののカガリは無事だった。
だがもし先ほどの一撃がコクピットに当たっていれば……
想像するだけで恐ろしい。
父親のパトリックはその地獄を経験して狂ったのだ。
カガリを失った時、自分が狂わない自信はない。
失ってはいけない人。
誰かにとってかけがえのない人を自分は殺してしまったのかもしれない。
だからこそ、この戦いを終わらせないといけない。
クルーゼは残ったビーム砲を二人に向けようとするが、シンとマユの執拗な攻撃に阻まれている。
「お前の相手はこっちだ!!」
シンの対艦刀が振り下ろされ、マユのドラグーンが追い打ちをかける。
その斬撃はクルーゼの能力をもってしても危険極まりない。
だがクルーゼはこれほどの不利な状況でも笑う。
世界はそれほど滅びたくないのか!?
滑稽だ。
前世で一度滅んだではないか?
だが再びクルーゼをこの世に呼び戻しやり直しをさせている。
しかも今回の相手は一度死んだはずのニコルだ。
キラでもアスランでもイザークでもラスティでもディアッカでもない。
もっとも目立たず戦いには無縁だったニコルだ。
何故だ?
何故ニコルなのだ?
ずっと抱いていた疑問は今解けた。
確かにこの世界のニコルは強いが一人でクルーゼに勝てるほどではない。
だがニコルはキラにもアスランにも出来なかった事、誰かを頼るという事ができる。
キラとアスランを和解させ、前世では焦土と化したオーブを救い、目の前で対艦刀を振り回す狂犬と正確無比な射撃を行うMA乗りを見出した。
歴史も大きく変えた。
前世ではムウの目の前で沈めた足つきを、地球連合の二隻目の足つきが支援しているなどありえない。
「やっかいだよ君という存在は!!」
そう言ってクルーゼはシンの剣戟とマユのドラグーンをかわしキラとアスランの砲撃もよけた。
ニコルを倒さない限り、今度こそ人類滅亡はできないと悟った。
ドラグーンシステム同士の撃ちあい。
ニコルのドラグーンさえ全て撃ち落とせばそれでいい。
クルーゼのドラグーンとニコルのドラグーンはお互いを全て破壊した。
「少々君を侮っていたようだね!!」
真っすぐにニコルのリジェネレイトに迫るクルーゼの機体の背中に予想外のビームが発射された。
遅れて到着したカラミティガンダムからの砲撃と、真っすぐ高速で突っ込んでくるレイダーガンダム。
そしてレイダーガンダムの背中にはフォビドゥンガンダム。
オルガ、クロト、シャニ達だ。
全てクルーゼの記憶では地球連合のMSだったはずだ。
「随分慕われたものだなニコル!!」
そしてその砲撃を回避した先にいるのがニコルのリジェネレイトだった。
リジェネレイトが右手と両足のビームサーベルを抜く。
決死の顔をしたニコルは全てのバーニアを吹かしてクルーゼへと迫る。
そういえばレイとピアノのレッスンを頼んだままだった。
あの時ニコルは嬉しそうにクルーゼに笑顔を向けてきたのだった。
その顔とは似使わないニコルの笑顔を思い出す。
そしてクルーゼは前世でも見たニコルの笑顔を見た。
あの笑顔が人を引き付けたのか。
「君が成長する前に殺しておくべきだったな!!」
「僕一人じゃこんな事はできないよクルーゼ!僕には仲間がいる!!お前の自由にはさせない!!」
リジェネレイトのビームサーベルがクルーゼの機体を斬る。
クルーゼの機体は腕を一本失いながらもリジェネレイトの片足を奪った。
衝撃で姿勢制御が困難になったリジェネレイトだがすぐに助けが入った。
マユだ。
「ニコルさん!!」
「マユ!!来ちゃ駄目だ!!」
「でも!!」
ニコルの警告も聞かずにマユがクルーゼの機体にミサイルを発射する。
クルーゼはミサイルの雨を避けようとするが完全には避けられない。
クルーゼが一旦後退する隙にマユはニコルを助けようとしている。
ニコルはマユに逃げるよう叫んだ。
「マユ!!早く逃げろ!!」
「嫌!!マユは逃げない!!ずっと一緒にいるって言ったじゃない!!ニコルさんが死んだらマユは、マユは」
「早く逃げろ!!逃げてくれ!!」
マユはシェンウーでリジェネレイトを強引に引っ張る。
その時にクルーゼは笑った。
「そうか君がニコルの恋人か?君はニコルを愛してしまったか?前世ではありえなかった事だ!だがそれも終わりだ!!」
クルーゼがシェンウーに向かってビーム砲を放つ。
しかし突然現れたムウのストライクがシールドでそれを防いだ。
「ニコル!!マユ!!二人とも後ろへ下がれ!!」
ムウの声はいつもよりも力強い。
そしてクルーゼが敵意をむき出しにした。
「最後まで抗うかムウ!!」
「クルーゼェェェ!!」
激しいビームサーベルでの斬り合いだがストライクのコクピットにビームサーベルが突き刺さる。
だがそれはムウに当たらずコクピットを吹き飛ばしただけだった。
それはムウの作戦だった。
ビームサーベルを持ったクルーゼのMSの腕を掴み動きを封じたのだ。
「ニコル行けェェェ!!」
「この一撃で全て終わらせる!!うおぉぉぉ!!」
撃破されたストライクの後ろからニコルのリジェネレイトが現れ、残った二本のビームサーベルでクルーゼの機体を切り裂いた。
バーニアが爆発しNJCが停止する。
腕や足が吹っ飛び明らかに最後を迎えつつあった。
爆発する寸前だというのにクルーゼは満足だった。
人類を滅亡させようと画策したが、クルーゼにはどこかで人類に滅んで欲しくないという感情があった。
しかし二回も運命に抗うなど、世界とはこのように無様なものだとはな。
そこまでして滅びたくはないのか。
優れた者を妬み恨み殺戮の果てに生き延びた人類はどこへいくのか。
自分はそれを見届ける事はできない。
いつか人類は宇宙鯨の領域に達するのかもしれない。
クルーゼにとって世界が終ろうが終わるまいがどうでもよい。
世界が再びクルーゼに敗北するならそれでもよかった。
だが世界は今度こそ自分たちの望む世界を手に入れたのだろう。
この宇宙でただ一人、自分だけが世界を弄んだのだから。
これほどの幸福があるだろうか?
今クルーゼは世界全ての意志で滅びるのだ。
歴史上誰も達しえなかった高みにクルーゼは立っているのだ。
たとえその高みが幾千万の犠牲者で作られた丘だとしても。
誰もなしえまい。
ラウ・ル・クルーゼだけがこの高みに達したのだ。
「クルーゼ。もしあなたが次の世界でも同じことをするなら、僕は何度でも貴方を止めます」
「次の世界などないよ。今の私はとても幸福だ。満足して死ねるのだからな。前回と違い私は全てを手に入れたのだよ。君のお陰でとても楽しかったよ」
そう言い残してクルーゼの機体は爆発した。
それと同時に周りにいた黒いMS達は痙攣のような動きを見せた後、動きを止めた。
やはり機械と人体の結合は負荷が大きすぎたのだろう。
彼らもわかっていた。
わかっていてなお、キラが憎かったのだ。
人工子宮という機械から生まれた彼らは機械の身体でこの世を去った。
ニコル達はその光景に唖然としながらも、それぞれの神に彼らの冥福と魂の救済を願った。
周辺に舞うデブリが彼らの墓標を形作る。
その時アイリーン・カナーバの声が響き始めた。
『宙域のザフト全軍、ならびに地球軍に告げます───現在プラントは地球軍およびプラント理事国との停戦協定に向け、準備を始めています』
憤る者。
嘆く者。
大多数は放心していた。
ただ一つ共通している事は生き残ったという事。
偉くなくてもいい。
賢くなくてもいい。
誰かにとってあなたは大切な人なのだから。
生き残った者だけが明日を掴めるのだから。
それを彼らは噛みしめていた。
『───それにともないプラント臨時最高評議会は、現宙域におけるすべての戦闘行為の停止を地球軍に申し入れます』
ラクス・クラインは素直に喜べなかった。
結局兵力の大多数を両軍共に残したままだ。
地球軍は月基地に大部隊が駐留しているし簡単に矛を収めるだろうか?
だがこのまま戦い続ければプラントと地球は今度こそ破滅の戦争になるだろう。
そうさせてはならない。
きっとこれから忙しくなる。
父親のシーゲル・クラインの代理として地球とプラントを飛び回る事になるかもしれない。
ただ、今は生きてキラと会える事を喜ぼう。
前世で失ってしまった自分の最も大切な人と、今度こそ添い遂げるのだ。
この幸せを今は噛みしめよう。
宇宙に漂うリジェネレイト。
ニコルはその相棒から少しだけ離れる。
シェンウーから小さなパイロットスーツを着た幼い恋人が出て来た。
二人で抱きしめあい、生き残った事を喜んだ。
マユもニコルも涙を流し、ヘルメットの中は涙の粒が宝石のように漂っている。
その光景を眺めるニコルの親友たち。
シンも完全に吹っ切れたようで妹の幸せを願い笑顔で見続けた。
「い~ない~なマユちゃんい~な」
「カガリ様~オーブに戻ったら婚活設定してくださいよ」
「私もあんな恋人ほしー」
アストレイが吹き飛ぶ寸前に脱出装置で強制排出され助かったアサギ、ジュリ、マユラの声を聞いてカガリは頭を抱える。
またモルゲンレーテが勝手な装置を作ったのだ。
頭を抱えるカガリを抱き寄せてアスランが微笑む。
その笑顔だけでカガリの悩みは消えていく。
(今度こそ生き残って君の所に戻るよ)
キラは遠くに見えるエターナルを見ながら恋人に小さく手を振った。
前世の記憶は無いが、ラクスが喜んでくれる事だけはわかった。
当分ラクスは忙しいだろうからずっと一緒に多忙な日々が続くだろう。
それを想うとつい笑みが浮かぶ。
全て終わったら、ラクスと結婚して海沿いに小さな家でも建てて暮らすのもいいかもしれない。
そして自分とラクスが老いて沢山の子供と孫に囲まれて。
些細な幸せがキラにはとても大切なものに思えたのだった。
機動戦士ガンダムSEED 僕のピアノよCEに響け。転生したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。
お読みいただいてありがとうございます。
書き終えると43万7000文字という。
単行本一冊で10万文字といいますから四冊ちょいですね。
仕事でもないのに何をやっているんだかと思いますが大変楽しかったです。
SEED DESTINYの方は書くかどうか悩んでいますので書くかは今後書く予定の短編をぽちぽち投稿しながら決めます。
主人公は当然シンでニコルは多分アスランポジかなあ。
という事はミーアはニコルに惚れるのか?
マユ以外の女性にニコルがなびくとも思えませんが。
でもシンがプラントに行く理由無くなったんですよね。
両親はモルゲンレーテの社員だし、当然オーブ暮らし。
困った、ルナマリアを出せないぞ。