【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

126 / 151
第二話もアスランの話です。アスカガしか勝たん!!色々と案がありましたが脱走したアークエンジェルとドミニオンのクルーはオーブに亡命となりました。ノイマン操縦の車ならケネディ暗殺は無かったかもしれん。あと側近にナタルさんを入れようとしましたが尺の都合でカットに。5000文字超えるとちょっとね。気軽に読めないかと。2500~3500文字くらいがいいそうですし。


 【外伝『婚約者』 第二話 やはり最強はアスラン・ザラ】

 【僕のピアノよCEに響け。外伝『婚約者』 第二話 やはり最強はアスラン・ザラか】

 

 プラントからオーブへの船旅は不穏だった。

 戦争が終結したとはいえ、まだ両陣営の緊張は解けておらず、民間人の移動も制限されていたがアスラン・ザラは特別扱いだった。

 大戦を終結させた功労者としてユーリ・アマルフィとマイウス市には優先的に便宜が図られ護衛付きでの地球降下が認められているのだ。

 パトリックと面会したあとアスランはニコルの計らいでマイウス市からオーブ行きの定期便に乗せて貰う。

 アスランはマイウス市の宇宙港でニコルと別れの挨拶をする。

 

 「アスラン。お気をつけて」

 

 「ありがとう。ニコルはいつオーブへ降りるんだ?」

 

 「プラントが落ち着きを取り戻すまで無理ですね。イザーク達と治安維持を行っていますがまだ火種はあちこちに残っています」

 

 「マユがさびしがらないか?」

 

 「毎日会いたいって通信がきています」

 

 NJCが平和利用されることになって地上と宇宙の通信も元に戻った。

 原子力を使ったエネルギー設備も活動を再開し、地球は長い再建に動き出す。

 プラントにあるマイウス市とオーブの間も通信が繋がり、毎日アスカ家の人々とやりとりするのがニコルの楽しみになっている。

 寂しいし会いたい。

 ずっと隣でマユと触れ合いたい。

 だがそれはまだ無理だ。

 プラントと地球で和平交渉の真っ最中だというのに我がままを言えるわけがない。

 

 「アスラン。カガリによろしくお伝えください」

 

 「ああ。ニコルもしばらく頼むよ。俺もすぐ……」

 

 「アスランがするべき事はカガリの傍にいる事ですよ」

 

 アスランにはオーブで幸せになって欲しいとニコルは思っている。

 もうアスランもキラも戦場に出したくない。

 その為にニコルは戦後処理に走り回っているのだ。

 ニコルの言葉の意味を察したアスランはニコルに手を伸ばす。

 二人は微笑み合い、固い握手を交わした。

 そしてアスランはオーブ行きの船に乗り込んだ。

 

 オーブの首都オロファトの空港ではカガリとその側近たちがアスランを出迎えた。

 カガリはいつもの凛々しい軍服姿ではなく、シンプルなワンピース姿だった。

 プラントから届いた連絡でアスランの到着時間が確定していたので仕事の合間に空港まで来てくれたのだ。

 

 「アスラン。よく来てくれたな。すごく嬉しいよ」

 

 カガリは微笑みを浮かべながらアスランを迎えた。

 側近がカガリの素直な笑顔を見たのは久しぶりだ。

 ここ最近のカガリは公式の場での社交的な笑みしか見せなかったからだ。

 カガリにとってアスランがどれほど大切な人か改めて知る

 

 「カガリ、俺も会いたかった」

 

 二人は見つめ合い、そして自然に抱きしめ合った。

 その様子を見ていたカガリの側近たちは微笑みながらその場を離れ警戒にあたる。

 再会の喜びを邪魔する無粋者などオーブには一人もいないが、こういう気を抜いた時が一番怖い。

 アスランとカガリの二人だけの時間が流れていく。

 アスランの胸の中でカガリは涙を流した。

 戦争中からずっと離れ離れで会えない時間が長すぎた。

 その間に何度もくじけそうになり、その度にアスランの事を考えていた。

 オーブとプラントに別れた時も辛く苦しい時間だった。

 二人は互いの鼓動を確かめるように抱きしめあい続ける。

 その時間は永遠のように長く感じられる。

 空港の喧騒が遠くに聞こえる中、二人だけの静かな世界がそこにはあった。

 永遠のような抱擁の後、アスランはカガリから少し離れ彼女の頬に触れた。

 

 「カガリ。君に話さなくてはいけないことがある」

 

 「何だ?」

 

 カガリが不安そうに聞く。

 アスランの表情は真剣そのものだ。

 

 「プラントで婚約破棄手続きを終えた。俺は正式に自由の身になった」

 

 「ラクスとの婚約を?」

 

 カガリは驚きの表情を浮かべる。

 それは予想していなかった事ではなかったが、実際に聞いた衝撃は大きかった。

 

 「ああ。父とも話してきた。父は許してくれた」

 

 「そうか。それでラクスは?」

 

 「彼女は全てが落ち着いたらキラと結婚する気だ。二人は前世でも恋人同士だったらしい」

 

 「前世ってあの記憶の事?」

 

 「そうだ。ラクスとキラはお互いをとても深く愛していたらしい」

 

 「そうなのか……」

 

 オーブは大戦中唯一地球連合に屈しなかった地球上国家という立場で戦後も外交の場を提供するだろう。

 他国の紛争に関与せずという理念は今は置いておくしかない。

 やっと地球とプラントの戦争が終わろうとしている。

 この戦争の継続を望む声がいまだに多い事が事態を深刻にしていた。

 彼女はオーブのアスハ家の姫として多くの責任を背負っていた。

 その時に愛しいアスランが自分を支える為に会いに来てくれた。

 カガリはそのことに心から感謝していた。

 

 「ありがとうアスラン。来てくれてすごく嬉しい」

 

 「ああ。これからは常に君の傍にいるつもりだ」

 

 肩書はオーブに雇われたカガリ専任のボディーガードという事になっているがこれ以上の詮索は野暮というものだろう。

 アスランはカガリの手を取り空港を出る。

 そこには迎えの車が待っていた。

 その運転手はノイマンだった。

 軍を脱走したアークエンジェルとドミニオンのクルーはオーブの市民権を与えられている。

 何度もカガリ暗殺未遂事件が起こっているが、ノイマン操縦の車に銃弾が当たった事は無い。

 アスランは車に乗り込み、カガリと共にオロファトの官邸へと向かった。

 道中アスランは窓の外の景色を眺めていたが時折カガリを見つめた。

 カガリはアスランの視線に気づくと微笑み返す。

 

 「どうした?」

 

 「すまない、やつれたか?」

 

 「私はいつも元気だよ」

 

 カガリはそう言いながらも疲労は隠せない。

 化粧で誤魔化してはいるがまともに寝ていないのだろう。

 カガリは激務続きだ、食事と睡眠は車内が多い。

 今日は無理やりスケジュールを調整してアスランの出迎えに来てくれたが帰ったらすぐ仕事がある。

 

 「今日は無理して会いに来てくれたんだね」

 

 アスランはカガリの手を優しく握りながら言った。

 その手から優しさと暖かさを感じてカガリはこれからの交渉に挑む勇気を貰う。

 

 「ああ。どうしても会いたくてな」

 

 カガリは照れくさそうに笑う。

 その笑顔は疲れているはずなのに輝いて見えた。

 車内のスピーカーからはオーブの国内ニュースが流れている。

 オーブでは大戦終結を祝う雰囲気が広がっていたが、同時に戦後処理の難しさも報じられていた。

 

 「カガリ。ちゃんと休んでいるのか?」

 

 アスランは心配そうに尋ねる。

 カガリは車窓から外を眺めながら答えた。

 

 「まあ、できる限りはな。でも今は大事な時だから」

 

 「無理は良くないぞ」

 

 アスランの真剣な表情にカガリは少し驚いたが、すぐに微笑んで返した。

 

 「心配してくれるのは嬉しいけどな、アスラン。私だってこんな事態は分かっている。だけど今を逃せばプラントと地球の和平交渉も長引いてしまうかもしれない」

 

 オーブ政府はプラントと地球連合の和平交渉の仲介役を買って出た。

 オーブにとって外交上の好機であり、同時に世界平和への貢献でもある。

 

 「その通りだけど、カガリの体が壊れたら元も子もない」

 

 アスランの言葉にカガリは黙り込んだ。

 実際彼女は疲労困憊だった。

 しかし今を逃したらプラントと地球の和平交渉が失敗するかもしれないという思いがカガリを突き動かしていた。

 車はオロファトの官邸に到着した。

 アスランはカガリの手を引いて車から降りる。

 カガリの側近たちが二人に駆け寄る。

 

 「カガリ様。お帰りなさいませ」

 

 「ああ。ありがとう」

 

 カガリは側近たちに軽く手を挙げて応え、アスランと共に官邸の中へと入っていった。

 アスランはウズミに会って直接カガリとの婚約の許可を貰いたかったが、ウズミは国連総会に出席するためワシントンにいる。

 

 「アスラン。客室で待っていてくれないか。少し仕事を片付けてくる」

 

 カガリがそう言うとアスランは眉をひそめた。

 どう見てもオーバーワークだ

 

 「仕事をするって?今すぐ?」

 

 「ああ。明日の会議で決めることがいくつかある。プラント側からの提案についても検討しなければならない」

 

 カガリの言葉にアスランは困惑した表情を浮かべた。

 

 「カガリ。少し休んでからでも良いんじゃないか?」

 

 「心配してくれるのはありがたいが、時間が無いんだ。アスランは客室で待っていてくれ。終わったら一緒に食事をしよう」

 

 そう言い残してカガリは急ぎ足で執務室へと向かった。

 アスランはカガリの後ろ姿を見送りながらため息をついた。

 カガリの側近の一人が速足で歩くカガリに声をかけた。

 

 「カガリ様。明日の会議ですが、明後日に延期することはできませんか?」

 

 「いや、それは無理だ。プラント側からの提案を検討する時間が欲しい。それに今後の会談のスケジュールも詰めなければ」

 

 「ですが、カガリ様のお体が心配です。少しでも休まれては?」

 

 「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だ。今日は必ず終わらせる」

 

 アスランはドアの前で静かに立ち尽くしていた。

 カガリは本当に疲れているのに、休もうとしない。

 これは悪い兆候だ。

 

 アスランはオーブと地球とプラントの関連書類を持ってきてもらった。

 最近のものだけでもかなりあるがカガリの負担を少しでも減らしたかった。

 そしてその全てに目を通し、現在オーブが置かれている立場を理解したのだ。

 父親の薫陶よろしくアスランは政治面でも能力を発揮するのだ。

 

 カガリと約束通り夕食を共にする。

 オーブは日系の移民が多いので日本食が主流だ。

 魚介類をメインにした食事を堪能する。

 食事が終わるとカガリは自室に戻り仕事を片付けようとした。

 だがアスランはカガリの手を取りソファに座らせた。

 

 「アスラン?どうした?」

 

 「少し休もう。明日は早いんだろう?」

 

 「ああ。でもまだ仕事が……」

 

 「今日はもう十分だ」

 

 アスランはそう言ってカガリの隣に座り肩を抱いた。

 カガリは抵抗しようとしたが、アスランの優しい眼差しを見て諦めた。

 

 「分かった。少しだけ」

 

 カガリはそう言って目を閉じた。アスランは彼女の髪を撫でながら静かに座っていた。

 カガリはいつの間にか眠ってしまっていた。

 アスランはカガリが眠っている間、執務室で彼女の仕事を片付けることにした。

 しかしカガリの机の上には膨大な量の書類が積まれている。

 プラントと地球連合の和平交渉に向けての準備だけでなく、オーブ国内の復興計画や外交政策など様々な仕事があった。

 アスランはその中から優先順位の高いものを選び取り掛かる。

 数時間後、カガリが目を覚ますとアスランが机で書類に目を通していた。

 

 「おはようカガリ」

 

 「ああ。おはようアスラン」

 

 カガリは体を起こして伸びをした。

 短時間でも頭がすっきりするものだ。

 ソースは俺。

 

 「よく眠れたか?」

 

 「ああ。ありがとう」

 

 カガリは立ち上がり部屋を出ようとした。

 

 「どこへ行くんだ?」

 

 「執務室だ。仕事がある」

 

 アスランは少し呆れた表情を浮かべた。

 

 「昨日も言ったはずだ。一人で抱え込まないでくれ」

 

 「分かってる。でも今は……」

 

 「さっき片付けておいた。今君がすべきことは休息をとることだ」

 

 カガリは驚いて目を丸くした。

 

 「嘘だろ?あれだけあった書類を?」

 

 「ああ。君の代わりに目を通した。重要な案件はまとめておいたから後で確認してくれ」

 

 アスランの言葉にカガリは感動した。

 纏めておいてくれるだけでも大幅な仕事の軽減だ。

 やはり最強はアスラン・ザラだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。