【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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カガリとアスランの外伝もそろそろ終盤になってきました。MS同士の戦闘シーンこそありませんがこれも一つの戦いなのです。とはいえ退屈なのも申し訳なく。やっぱり戦闘シーンが無いと盛り上がりませんからね。我々はガンダムを見に来ているのであって政治ドラマが見たい訳ではないですし。つまり戦闘シーンが書きたいのですよ。


【外伝『婚約者』 第五話 月へ】

 【僕のピアノよCEに響け。外伝『婚約者』 第五話 月へ】

 

 その後シンとマユと別れたカガリ達は海辺の公園へと向かった。

 夕日が水平線に沈みかけ、美しい夕焼けが広がっている。

 護衛は適度な距離を保ちながら見守っている。

 

 「シンとマユには勇気づけられたな。オーブのみんなに希望を持ってもらえるよう努力しなければ」

 

 カガリは沈む夕日を見つめながら呟いた。

 一度はこの夕日を再び見れないと覚悟したのだが仲間たちのお陰でオーブはその理念と独立を勝ち取った。

 沢山の命が消えた。

 今でもあの時の選択が正しかったのか悩む事はあるが、戦うと選択したのは自分達でありその犠牲者になった人々にとっては割り切れるものでもないだろう。

 その事だけは忘れないようにしよう。

 それを忘れた時、自分は無能な独裁者になってしまう。

 

 「ああ。彼らのような若者が未来を担うんだ。俺たちの仕事は彼らの未来を守ることだ」

 

 アスランはカガリの肩に手を置いた。

 アスランにとってもオーブは第二の故郷だ。

 婚約者のカガリが慈しみ守りたい国と民。

 それなら自分もカガリの隣で支えよう。

 そうアスランは決意していた。

 

 「アスラン……私たちはまだ若いのに世界の行く末を背負っている。プレッシャーが大きい。だが……」

 

 カガリはアスランを見上げた。彼女の瞳には決意が宿っていた。

 この瞳にアスランは魅了された。

 とても強く儚い瞳。

 全身全霊をかけても守りたい瞳。

 

 「だが、共に歩む仲間がいる。それだけで十分だ」

 

 二人は砂浜に面した椅子に座り込んだ。

 波の音が心地よく響く。

 

 「カガリ。少し休まないか?君の疲労は目に見えて分かる」

 

 アスランはカガリの髪に触れながら言った。

 カガリの疲労は一日で全快するほどよくはない。

 

 「そうだな。少し休むことにする。でもこれでいいのかな?時間は待ってくれないのに」

 

 カガリは不安そうに言った。

 実際カガリはよくやっている。

 若年ながら各派閥を渡り歩き報告書を読み決済する。

 他国に介入しない中立政策というのは、いざとなったら誰の支援も受けられないという事だ

 地球連合軍による『オーブ解放作戦』でも他国の支援は受けられなかった。

 キラ、アスラン、ニコル、シン、マユ。

 そして死力を尽くして戦ったオーブ将兵の奮闘で勝利を得たが、情報戦での戦いも大きい。

 死して屍拾うものなし。

 諜報員の死亡は行方不明扱いされる。

 

 「時間は待たないが、カガリ自身が倒れてしまっては元も子もない。バランスを見つけることだ」

 

 アスランはそう言いながらカガリの頭を優しく撫でた。

 恋人は時々自分を子供扱いするが、カガリが甘えられる存在はキラとアスランだけなのでカガリは素直に甘える事にした。

 姫という立場では弱みを見せられないのだ。

 見せたら最後、サハク家に食われる。

 舐められたら終わりなのだ。

 

 その時、カガリの携帯端末が鳴る。

 カガリが確認すると父親のウズミが帰国するらしい。

 国連での根回しが終わり和平交渉の本格的な開始に向けて帰ってくるのだ。

 

 「父上が帰ってくる。プラントと地球連合のトップを招いて月で正式な和平交渉をしようという考えだ」

 

 カガリはアスランに報告した。

 やっと地球連合が重い腰を上げたのだ。

 カガリ達の長く苦しい努力が報われるときが来た。

 

 「それは大きな進展だ。俺たちも月に一緒に行けるよう手配しておこう」

 

 アスランは嬉しそうに言った。

 月はアスランにとってもキラと幼少期を共に過ごした思い出の場所だ。

 かつて『コペルニクスの惨劇』という国連の主だった面々が暗殺される事件の場所ともなった。

 そのくらい会議に向いた土地だが第二の惨劇を生み出す訳にはいかない。

 テロでカガリが殺されるような事があってはならない。

 

 「ああ。シンとマユも一緒にニコルに会いに行くんだろうな」

 

 カガリは微笑んだ。

 シンとマユにとってはニコルに会えるチャンスだろう。

 なぜなら父親のユーリ・アマルフィの随員としてニコルも来るからだ。

 イザークやディアッカ達も護衛で月に来るのだからザフトレッドが久しぶりに揃う。

 

 その日の夜、カガリはアスランと一緒に夕食を取りながら将来の計画について話し合った。

 カガリの執務室には数多くの資料が山積みになっているが、アスランが整理整頓してくれているおかげでだいぶ見やすくなった。

 実務面も含めてカガリの心身を気にかけてくれる大切な存在だ。

 アスランもカガリがこんな酷い状態だとは思わなかったのでニコルの忠告が身に染みた。

 ニコルの言う通り、カガリの傍にいるのがアスランのするべき事だったのだ。

 

 「カガリ。プラントとの和平交渉の準備は順調に進んでいる。ただ、まだまだ課題も多い。特に軍縮については地球側の反発が強い」

 

 アスランは報告した。

 カガリの父親ウズミと相談の上、アスランは表向きはカガリの外交顧問という肩書きを与えられている。

 なおウズミからは正式にアスランをカガリの婚約者にするという事は承諾を受けていない。

 実質的にアスランがカガリの側近であるという事は誰もが知るところだが。

 オーブであのユウナという名前のゴミカス糞なめくじゴキブリ馬鹿アホ間抜けドジ虫けら以下の存在との婚約を正式に解消するにはまだセイラン家の支持が必要なのだ。

 だから表向きはユウナとかいうゴミカス糞なめくじゴキブリ馬鹿アホ間抜けドジ虫けら以下が所属するセイラン家を刺激する事は得策ではない。

 つまりゴミカス糞なめくじゴキブリ馬鹿アホ間抜けドジ虫けら以下の存在でも政治には必要なのだ。

 政治ってめんどくせー。

 

 「そうだな。軍縮については地球側もプラント側も譲れない部分だろう。だが地球側は経済的にも苦しい状況にある。和平したいのはプラントも地球も一緒なのだから、オーブが仲介役として彼らに恩を売っておくことで今後の交渉も有利に進められるだろう」

 

 カガリは頭がいい。

 特に外交的思考に優れている。

 獅子の子は獅子なのだった。

 

 「なるほど。カガリの考えは正しい。だが、オーブが介入しすぎるとプラント側が警戒する可能性もある。地球連合寄りだと思われない程度の適度なバランスが必要だ。プラント側からみればオーブも地球国家だからね」

 

 これは長年プラントで生活していたアスランの視点だ。

 プラントにとってオーブは地球連合の一員だという誤解はまだ大きい。

 アスランとカガリが話しているとノックの音が響く。

 カガリが入室を許可すると侍従がやってきた。

 

 「お食事中申し訳ありません。カガリ様に緊急のご報告があります」

 

 「なんだろう」

 

 カガリは眉をひそめた。

 

 「サハク家のロンド・ミナ・サハク様からメッセージが届いております」

 

 カガリとアスランは顔を見合わせた。

 ロンド・ミナからのメッセージは珍しい。

 

 「読み上げてくれ」

 

 カガリが命じると侍従は読み上げた。

 

 「アスハ様。この度の御尽力には感服いたします。私もサハク家当主として和平交渉には賛成の意を表明します。しかし、地球連合からの情報を分析した結果、彼らはまだ軍事的圧力をかけるつもりでいるようです。地球連合は頑なな態度を崩さないようで。もしプラントとの和平が破綻した場合、オーブはその責任を負う可能性がある事を念頭に置いて検討されることをお勧めします」

 

 カガリはメッセージを聞き終える。

 まさかサハク家が賛同してくれるとは思わなかったが何を企むやら。

 それと釘も刺された。

 失敗したら責任を取れよと言っている。

 

 「負けてたまるか!!」

 

 そう言ってカガリはステーキにナイフを突き刺した。

 そのまま凄い勢いで食べ終わるとおかわりを頼む。

 アスランもカガリに合わせてステーキを頼んだ。 

 

 これで五大氏族のうち

 アスハ家(ウズミ・カガリ)

 サハク家(ロンド・ミナ・サハク)

 マシマ家(トーヤ・マシマ君の家系) 

 キオウ家(機動戦士ガンダムSEED ECLIPSEで外交、情報、文化関係との事)

 トキノ家(断絶?)

 の過半数を得ることになりウズミとカガリに決定権が委ねられた。

 

 食後、執務室で二人だけの会議を行う。

 

 「サハク家からのメッセージとは意外だったな。彼らがオーブの和平交渉に賛同してくれれば大きな助けになる」

 

 「でもその反面、サハク家はオーブの軍事を握る一族だ。和平が失敗すれば責任を取るのは我々。つまりサハク家は我々の失敗を願っているとも考えられる」

 

 カガリの言葉にアスランも頷いた。

 サハク家の狙いはまだわからないがアスハ家の失敗で権力を取り戻す事が目的かもしれないとカガリは予想する。

 

 「そうかもな。だが今は和平交渉に集中しよう。サハク家の動向にも注意しながら」

 

 アスランはそう言いながらカガリの肩に手を置いた。

 

 「ああ。それじゃあ、地球連合との交渉を加速させよう。プラント側と地球側の条件を調整して、両者が合意できるラインを探り当てなければならない」

 

 カガリは決意を新たにして立ち上がった。

 

 「アスラン。お前の助けが必要だ。月で地球連合の代表と直接会って話し合うことになるかもしれない」

 

 「分かった。俺も全力でサポートするよ」

 

 アスランは微笑みながら頷いた。

 二人は再び手を取り合い、未来への一歩を踏み出した。

 カガリはアスランの支えを感じながら、決して後戻りしないと心に誓った。

 

 「俺が守る。だからカガリ俺を頼ってほしい」

 

 アスランはカガリにそう言った。

 

 「頼りにしてるよ。アスランがいてくれてよかった」

 

 カガリは笑顔で返す。

 二人はお互いの存在が何よりも力強い支えであることを感じながら、新たな挑戦に立ち向かっていった。

 月での和平交渉に向けての準備は始まったばかりだが、カガリとアスランは共に歩むことで未来を切り開いていく決意を固めていた。

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