【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
アスランとキラの再会とストライク起動というシーンです。
実はニコルとキラが出会うとかも考えたのですが、色々と整合性が取れなくて史実通りになりました。
これから話が動き出します。
第13話 運命の戯れ
歴史には修正力があると聞いたことがある。
本来の歴史を都合よく変えようとしても結局は同じ歴史を歩むという。
(それなら僕は何の為に2度目の生を受けたのだろう?)
ニコルは自問自答したが状況はそんな事を言っていられない。
いや状況は悪化していると言っていい。
前世ではモルゲンレーテ工場区画にあったはずのMSが存在しない。
「もう最新鋭艦に積み込んだのかもしれないか。当てずっぽうにも程があるよな」
ディアッカが皮肉を言うとアスランがディアッカを睨み黙らせる。
ディアッカはやれやれというふうに手を上げて視線を逸らせた。
いくらナチュラルがコーディネイターより能力的に劣るとはいえ、この人数で艦船の強襲は無理だ。
クルーゼ隊長の判断を仰ぎたいところだが電波干渉でまともな通信もできない。
唯一の望みは強襲したジンが敵の目を引き付けてくれている事だ。
☆☆☆
アークエンジェルのいる軍港は、仕掛けられていた爆弾で火の海だった。
管制室も破壊され艦長以下士官も戦死していた。
マリュー・ラミアス大尉に命令の変更は伝わっていない。
この場合命令を撤回し出撃させたMSを収納した後、ただちにアークエンジェルは出航して退避するべきだった。
状況が変化したというのに命令の変更をしてくれる艦長はもういない。
後にCE有数の指揮官となるラミアス大尉は技術士官という事もあって判断に迷った。
状況は不明で軍港にジンが侵入したという情報しか彼女には無いのだ。
ナタル・バジルール少尉のフォローがあれば違う判断も出来ただろう。
だが周りにいるのは整備班だけで全員戦闘未経験だ。
まだ戦闘未経験のラミアス大尉を責める事が誰にできよう。
ラミアス大尉は命令通りMSの出撃を行った。
☆☆☆
モルゲンレーテに侵入したジンは派手にMMI-M8A3 76mm重突撃機銃を撃ちまくって敵の目を引き付けてくれている。
そのジンの足元にレーザー砲が着弾する。
連合のMS三機が姿を現した。
デュエル、バスター、ブリッツの3機だ。
ストライクとイージスは見当たらない。
MSの動きは鈍くナチュラルのOSでは上手く動かせないようだ。
3機は果敢にも迎撃に出ようとしたらしく、ふらつく足取りでジンへと歩いていく。
「ニコル頼む。俺とラスティは格納庫へ向かう」
「アスラン、ストライクは必ず奪うか破壊してください」
「わかっている」
アスランの指示のとおり前世で得ていたナチュラルOSの解除コードをMSに送信するとコクピットハッチが強制解除された。
慌てるMSパイロットの乗る開放されたコクピットにニコル達は向かう。
ニコルはブリッツのパイロットと接近戦をすることになった。
ブリッツのパイロットは思うように動かない機体の操作を無我夢中で行おうと足掻いていたが、ニコルが接近すると慌てて拳銃を抜いた。
コクピット内を破損しない事が絶対条件のこちらは銃を使えない。
ニコルはそのままパイロットと組みあう。
そしてパイロットの腕を抑え込みナイフでパイロットの喉元を掻き切った。
恐怖と激痛で顔をゆがませた茶髪のパイロットが血を吐きながら宙に放り出されて落下する。
死亡したパイロットに一瞬だけ憐憫の気持ちを抱くが時間が無い。
イザークもディアッカも同じようにデュエル、バスターの捕獲に成功したようだ。
アスランとラスティが格納庫へと向かったから、これでニコル達の勝ちだと思っていた。
☆☆☆
アスランとラスティが格納庫へ向かうとストライクとイージスはモルゲンレーテへ移動していた。
二人と緑服数人は移動中の二機を強奪すべく戦闘を開始する。
「ラスティはストライクを奪ってくれ。俺はイージスを狙う」
「OK。ザフトの為にってか」
ラスティの軽口にアスランは一瞬だけ微笑んだ。
どんな状況でもラスティは冗談や軽口で場を和ませる。
アスランと同じく緑服達も肩の力を抜いた。
訓練通りやればいい。
敵は静かに確実に仕留めればいい。
ラスティはトレーラーに搭乗している連合の兵士を銃で撃ち殺す。
アスラン達も銃撃戦を開始した。
護衛の戦闘車両の砲身がこちらを向くがアスランは慌てず銃に搭載したグレネード弾を撃つ。
戦闘車両が爆発すると同時に散乱した物資コンテナを盾に銃撃戦が始まった。
「ザフト兵もうこんな所へ来たの!?すぐにストライクとイージスを起動させて!!このままトレーラーに乗せてるとやられるわ!!」
ラミアス大尉の指示でトレーラーの起動を行おうとした技術士官がアスランの射撃で撃ち殺された。
ラミアス大尉は拳銃をアスランに向けて発砲するがアスランには当たらない。
二人はストライクの陰で銃撃戦を展開した。
両者の実力は、ほぼ同じレベルで決着がつかない。
「アスラン援護する」
ラスティがアスランの援護に向かおうとした一瞬の隙に、ラミアス大尉の注意がアスランから離れる。
その隙をアスランは見逃さない。
ラミアス大尉に銃口を向けて撃つ。
「ぐうっ!!」
ラミアス大尉はアスランの銃で右腕を撃たれてストライクの陰に膝をついた。
「貰った!!」
ラスティがラミアス大尉の止めを刺そうとした時、爆風と共に戦場に似合わない少女の叫び声が響く。
「きゃああああ!!」
ミリアリアだった。
彼女はキラ、トール、サイ、カズイと一緒にモルゲンレーテから避難している最中だった。
ジンから放たれた砲弾がかすめ彼女たちの近くで爆発したのだ。
飛び散る土砂と衝撃波の影響で動けない少年少女達。
その中で一人の少年が立ち上がる。
民間人を撃つのを躊躇したラスティの胸に、連合兵の銃弾が命中した。
「ぐああっ!!」
「ラスティ!!」
アスランはラスティを撃った連合の兵士を撃ち殺すとラミアス大尉に迫る。
「誰かストライクを起動して!!」
重傷で動けないラミアス大尉が叫ぶと同時に民間人の少年がストライクに飛び移る。
「よくも僕の友達を!!」
「邪魔をするな!!民間人は下がってろ!!」
アスランがラミアス大尉に止めを刺そうとした瞬間、銃が故障する。
即座に軍用ナイフに武器を切り替えてアスランがラミアス大尉に迫る。
その時民間人の少年がラミアス大尉の前に立つ。
その少年の顔をアスランはよく知っていた。
そして少年もアスランの顔をよく知っていた。
「───アスラン?」
「───キラ?」
二人の動きが止まった瞬間ラミアス大尉がコクピットハッチを開けて少年を押し込み自分も搭乗した。
そしてケーブルや固定具を破壊してストライクが起動する。
「しまった!!」
状況の変化に一瞬だけ気を取られたアスランだったが負傷したラスティを抱えてイージスのコクピットへ飛び込む。
ストライクの捕獲に失敗したがイージスだけでも確保しなくてはいけない。
前もってニコルから得た知識で先にストライクを確保しようとした瞬間、戦場で再会した幼馴染の親友。
でもなぜキラがここにいるのかアスランにはわからない。
キラは月にいたはずだ。
☆☆☆
「こちらアスラン。ラスティが重傷を負った。イージスを捕獲、これより合流する」
ニコルはアスランからの通信でイージスの強奪に成功した事を知る。
ラスティは重症のようだが助かるだろうか。
「アスラン、ストライクはどうしたんです?」
「イージスは奪取に成功、ストライクの奪取は失敗。ストライクとイージスは格納庫ではなく工場区へ移送途中だった。おそらくマシントラブルで工場へ戻されたんだろう。今から俺とラスティはイージスに乗って離脱する」
いつも冷静なアスランの声が震えている。
ラスティの容体はそれほど酷いのだろうか。
ストライクの捕獲に失敗したのは手痛い失態だった。