【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
この時期、和平を求めたのはプラント側だった。
このまま軍拡競争になれば国力で劣るプラントの敗北は間違いない。
食料プラントの増築でいずれ解消されるとはいえ、食糧問題は地球の親プラント国家に依存している。
経済的にも生産した工業品は地球で売らないといけない。
兎に角時間が欲しかった。
ルナマリアだけでなく妹のメイリンのように歳の離れた者でさえ志願するほどプラントは危険だった。
対して地球は荒廃した都市などを再建する事が出来れば余裕が生まれる。
そうなれば再戦も辞さない。
破壊から再生には時間がかかるが、それが出来れば勝機はある。
だが再度の戦いを望まない勢力がいるのも確か。
だからウズミの切り崩しで和平派を前面に押し出しての和平を求めた。
だが彼らが選んだのはロード・ジブリールという人物。
前回の戦いで失脚したムルタ・アズラエルの後継者。
ブルーコスモスとの関係者だと思われる彼は和平など破壊してしまえという一派が送り込んだのだ。
彼の正体を知る者は地球議会でもほんの限られた者だけだった。
「という事で、ロード・ジブリールって人はブルーコスモスです」
というメイリン・ホークの発言にみな驚いた。
メイリンはあっさりとプロテクトを突破してしまったのだ。
といっても一人ではない。
ドミニオン艦長だったアリスとメイリンはネット仲間であり二人は意気投合してプロテクトを破ったのだ。
「ええと、その。その話は本当なのか?」
カガリが驚きながら聞くとメイリンが頷きニコルが発言する。
「はい。僕が確認しました。間違いありません。プラントの情報部からの情報も一致しています」
ニコルは真剣な表情でカガリとアスランに報告した。
「それじゃあ、和平会談はまずいんじゃないか?」
アスランが心配そうに尋ねるとカガリは冷静な声で答えた。
「そうだな。私たちはプラントと地球の和平のために尽力する。ジブリールの妨害があっても諦めるわけにはいかない。どうやらお父様の尽力で和平派が政治力を増しているのだろう。だから強硬派はジブリールを送り込んで和平をご破算にするって考えたと思う」
和平を求めるプラント側に態度を明らかにしない地球側。
だが交渉のテーブルについた以上お互い妥協をせざるを得ない。
本来プラント側についてはいけないオーブだが、現時点ではプラント側が不利なのでバランスを取るしかない。
プラントも地球も我慢できる譲歩を引き出すしかなかった。
そして和平交渉は始まった。
オーブは中立国として地球とプラントの間を仲介する役割を担い、その和平のために尽力してきた。
だが地球連合側には強い抵抗勢力がいて、交渉は難航している。
プラント代表はユーリ・アマルフィとギルバート・デュランダルの二人が現れた。
ユーリが代表でギルバートは補佐のような形だ。
「プラント代表のユーリ・アマルフィです。この度の会談に臨むことを嬉しく思います。今回の会談がプラントと地球の和平に向けた一歩であると信じます」
会場から惜しみない拍手がされる。
戦争はもうこりごりだと地球側も思っているので相手が穏健派のユーリだというのはありがたい。
ユーリは礼儀正しく挨拶を述べた。
隣にはデュランダルがいて、彼も同様に礼を示した。
「ギルバート・デュランダルです。この会談で地球とプラントの平和的な解決策を見つけたいと願っています」
対して地球側代表はブルーコスモスの新盟主ロード・ジブリールだ。
明らかな強硬派で会談を潰したい。
それもプラント側の失態でだ。
そしてロード・ジブリールは傲慢な態度で演説を始めた。
「プラント側は地球の領土を侵して来た侵略者である。このような会談に応じるのも、プラント側の罪を軽くするために仕方なく行われているものだ。つまりこれは単なる和平交渉ではない」
ジブリールは不快感を隠そうともせずに言った。
地球連合側の議員たちは不安げな表情でジブリールを見ている。
アスランとカガリは冷静な眼差しでジブリールの言葉を聞きつつも、内心では苛立ちを感じていた。
特に地球の核攻撃でユニウスセブンと母親を殺されたアスランは今の発言に怒り心頭だがカガリがアスランの手を握った。
オーブにとっても言いがかりで攻めて来た地球に対して怒りが強い。
カガリだって辛いのだと思い出してアスランは怒りを鎮める。
ジブリールが演説を続ける。
プラント側の失敗や弱点を強調し、会談を不利な状況に導こうとしていた。
会場内には緊張感が漂い、プラント代表であるユーリはジブリールの言葉に対して反論した。
「ロード・ジブリール、我々は和平を望んでいる。我々はお互いの過去の過ちを反省し、新たな関係を築きたいと考えている。お互いに歩み寄るべきだ」
ユーリは穏やかな声で言った。
だがジブリールは冷笑し、反発を示した。
「ユーリ代表、あなたの言葉は誠実なものだが、プラント全体がそうであるとは限らない。我々は過去の傷を癒すためにも、プラントに厳しい条件を突きつけるつもりだ」
ジブリールの言葉は冷たく、まるでプラント全体を敵視しているようだった。
このままでは会談が決裂してしまう。
そこでカガリが立ち上がり、言葉を発した。
「私はオーブ代表としてこの場に臨んでいる。オーブは中立国として、地球とプラントの平和を実現するために尽力してきた。この会談はただの政治的なショーではなく、真の平和のための重要な一歩だ」
カガリの言葉に会場は静まり返った。
地球連合とプラントの間には緊張感が漂っていた。
ジブリールは皮肉な笑みを浮かべてカガリに向かって言った。
「カガリ・ユラ・アスハ代表。あなたは理想論ばかり語っているが、現実を知らないのではないか? 我々は過去の傷を癒すためには、プラントに対して厳しい態度を取らなければならない。それが我々の正当な権利だ」
この発言に会場はざわついた。
地球側の中にも納得できない者がいるのだ。
ジブリールの言葉に対し、デュランダルが毅然とした態度で反論した。
「ロード・ジブリール。プラントは過去の過ちを認め、和平のために努力している。地球もまた、過去の遺恨を乗り越えるために努力すべきではないか」
デュランダルの言葉は冷静でありながら強い信念が込められていた。
ジブリールは激高し、怒りの表情を浮かべながら反論した。
机を拳で強く叩きプラント側に激しい怒りをぶつける。
「プラント側の言葉には信用できない。我々は自らの正義を貫き通す」
デュランダルとジブリールの言い合いが続く中、会場の雰囲気は一層緊迫したものとなった。
はっきり言って口でジブリールがデュランダルに勝てるはずがない。
もともと人物が違い過ぎるのだ。
そしてついに激昂したジブリールが決定的な発言をした。
「我々はプラントに対して軍事力の制限と賠償金の支払いを要求する。これが地球連合の総意だとご理解いただきたい」
ジブリールの言葉に地球連合側は驚きと困惑の表情を浮かべた。
地球側の事前の打ち合わせでは穏便な和平案だったはずだ。
プラント側も動揺しており、緊張が最高潮に達した。
この言葉を先に察していたデュランダルが反論する。
「ロード・ジブリール。そのような要求は受け入れがたい。プラントは既に多大な被害を被っており、さらなる制限や賠償金は和平の道を閉ざすことになる」
デュランダルの声には毅然とした意志が込められていた。
プラント側も一丸となって反発した。
会場内の緊張感は頂点に達した。
ジブリールは嘲笑しながら言い放った。
「あなたたちの言葉など聞く必要はない。地球連合は強い力を持つ。その力を行使する権利を持っているのだ」
ジブリールの言葉が会場に響き渡り、不穏な空気が漂った。
ジブリールの過激な発言に会場内は凍りつく。
「ちょっと待ってください。そんな言葉を発していいのですか?」
カガリが冷静に反論した。
メイリンの情報でロード・ジブリールが和平会談をぶち壊したいと考えている事を知っているから止めないといけない。
「いいんだよ。我々は地球連合としてプラントを相手にしている。過去の遺恨を乗り越え、平和な未来を築くためには厳しい措置が必要だ」
カガリは鋭い眼差しでジブリールを見据えた。
「本当にそれが平和な未来を築く方法なのか? お互いに譲り合い、理解し合うことが重要ではないのか」
カガリの言葉が会場に響き渡り、プラント側と地球側の代表たちは息を飲んだ。
「譲り合う? そんなことは幻想だ。我々は地球を守るためにプラントを打ち負かすまでだ」
ジブリールは傲慢な態度でカガリに言い放った。
その言葉にカガリは怒りを覚えながらも冷静さを保とうとした。
「あなたたちの態度は和平の道を閉ざすものだ。我々はこの会談を成功させるために最大限の努力を払ってきた。それを台無しにするような言葉は聞き捨てならない」
カガリの声は穏やかだったが、その中には強い意思が感じられた。
彼女の言葉に地球連合側も動揺が広がる。
オーブの代表がこんなにハッキリと物を言うなんて思っていなかった。
ただの小国の世間知らずのお姫様だと思っていたからだ。
ジブリールは冷笑しながら答えた。
「オーブの代表が言うべきことではない。これは地球とプラントの問題だ。あなたたちは口を挟むべきではない」
その言葉にカガリは鋭く睨みつけた。
後ろに控えているアスランは今にも飛び掛かりそうなくらい怒っている。
「いいえ。私たちは中立国として平和を希求し、そのために尽力してきた。この会談の場においても、平和を実現するための道を探すのは当然の義務だ」
ジブリールの態度はますます傲慢になり、その発言は次第に激しさを増していった。
「あなたたち地球の裏切り者の言葉など、我々は聞くつもりはない。我々は強硬な態度でプラントに対抗し、地球の正当な権利を守る」
ジブリールの言葉にプラント側は怒りを募らせた。
プラント側を怒らせればもう一度再戦になる。
その時地球の損害は天文学的になるだろう。
地球側もジブリールの言葉に不信感が芽生えてきた。
特に和平派の政治家たちは最初からジブリールの就任に反対だったのだ。
これがカガリの策略だった。
好きなように喋らせてジブリールを地球側から見ても過激すぎるという状態に持って行く。
そしてジブリールに追い討ちをかける。
「ジブリール、あなたは本当の意味で地球を救いたいと思っているのか? 戦争によってどれだけの命が失われ、どれだけの資源が浪費されたかを考えたことがあるのか?」
カガリの言葉は冷静で、ジブリールの怒りを一瞬抑えた。
ジブリールは一瞬沈黙した後、再び口を開いた。
「カガリ・ユラ・アスハ。あなたは理想論ばかり語っているが、現実はそんなに甘くない。我々はプラントとの戦いに勝利するためには強い態度を示さなければならない」
「その考え方自体が問題なのだ。あなたが強硬な態度を取れば、プラント側も同じように強硬な態度に出るだろう。これでは平和は実現しない」
カガリの言葉に会場は静まり返った。
プラント側と地球連合側の代表たちはカガリとジブリールの対峙に注目していた。
ジブリールは憤怒の表情でカガリに言い返した。
「あなたたちは戦争を知らない理想主義者だ。我々は地球を守るために戦わなければならない。そして、そのためにはプラントに対する圧力をかけなければならない」
「それが本当に地球のためだと言うのか? 戦争の悲惨さを知らない者が地球を語る資格はない!」
カガリの声には怒りと悲しみが混じっていた。
彼女の言葉は会場全体に響き渡り、地球連合側の代表たちの心に深く刻まれた。
そもそもジブリールは戦争中安全な場所にいたと知らない者はいない。
地球連合の政治家たちの中には親族友人を戦争で失った犠牲者もいるのだ。
所詮安全な場所にいる人間にはわからない。
暗にジブリールを非難する声が地球連合からも上がった。
「我々は平和の実現のために戦ってきた。戦争を知らない者が戦争を語ることはできない。あなたたちはただの政治的な駒に過ぎないのだ」
ジブリールの失言に、地球連合側の代表たちも怒りを爆発させた。
政治的な駒だと言われて怒らない政治家はあまりいないだろう。
プラント側もジブリールの暴走に不信感を募らせていた。
ここがポイントだ。
ニコルは父親の背中を優しく叩いた。
ユーリ・アマルフィは小心者ではあったが臆病者ではなかった。
「そのような態度を続けるなら、我々は和平交渉から撤退するしかない」
ユーリが発言したと同時にプラント側の政治家が一斉に立ち上がった。
その態度に会場全体が震え上がった。
地球連合側は一瞬驚きながらも、ジブリールに反発した。
「ジブリール閣下! あなたの暴走が和平交渉を台無しにしている! あなたは地球連合の総意を無視している!」
地球連合側の政治家が立ち上がり、ジブリールを批判した。
その瞬間、会場全体が一斉にジブリールに批判の目を向けた。
プラント側もジブリールに対して怒りを露わにし、緊張がピークに達した。
ジブリールは憤怒の表情で周囲に向かって叫んだ。
「何が問題なのだ? 我々は正しい道を歩んでいる! プラントを打ち負かし、地球の正義を貫くのだ!」
その言葉に会場内は騒然となり、地球連合側の代表たちもプラント側の代表たちもジブリールに対して怒りをぶつけた。
これでは和平ではない、降伏勧告だ。
その時、カガリが再び立ち上がり、力強く宣言した。
「我々は平和のために戦う。戦争が私たちに何を与えたか、それを知っている。地球とプラントの対立は終わらせなければならない。これ以上の人命と資源の無駄遣いは許されない」
カガリの声には強い信念が宿っており、会場全体がその言葉に耳を傾けた。
その言葉にデュランダルは感銘を受ける。
「獅子の娘は獅子だったか」
そしてその声はプラント側にも届いていた。
この状況を打破するためには、デュランダルが次に行動を起こさねばならない。
そう考えると同時にデュランダルは冷静な口調で言った。
「カガリ代表の言葉は正しい。我々は互いに手を取り合い、平和を築くべきだ。地球とプラントの対立はもはや時代遅れだ。平和の実現こそが、我々の共通の目標である」
デュランダルの言葉にプラントと地球側の代表たちは感動し、盛大な拍手が沸き起こった。
ジブリールは怒りに震えるが、地球連合側の政治家たちでさえジブリールの暴走を望まない声が増えて来た。
明らかに孤立したジブリールは席につくしかなかった。