【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
【僕のピアノよCEに響け。外伝『婚約者』 第九話 波乱】
パーティ襲撃から一夜が明けた。
襲われたプラントとオーブは表向きブルーコスモスのテロだと報告を受けるがそれだけで納得できる筈もない。
ユーリは月宙域に待機しているナスカ級高速戦闘艦「イーゲル」を旗艦とする六隻のザフト艦に警戒態勢を取るように命令する。
イザーク、ディアッカ、ラスティにとって、かつて乗艦していたヴェサリウスと同型の艦なので勝手知ったるという艦だが、艦内のMS隊所属のイザークは微妙な立場に置かれていた。
ナチュラルに対して過激な思想を持つ母親のエザリア・ジュールは、ニコルとディアッカとラスティの親の嘆願で命こそ奪われなかったがほぼ軟禁状態にある。
イザークも危険思想の持主ではないかと疑われているのだ。
母の汚名を晴らすためにもイザークは功績を挙げるしかなかった。
そんな痛々しい決意に燃える友をみてディアッカとラスティは何か出来ることはないかと考えていた。
「何か仕掛けてくるとは思ったけど、まさかテロとはね」
イザークの隣に立つディアッカが口を開いた。
「一応ブルーコスモスのテロって事になってるけどさ。見え見えだよな」
ディアッカに続いてラスティも答える。
明らかに会議の破綻を狙ったテロ行為だ。
アスランとニコルがいたから防げたと三人は思っているが、最大の功労者がメイリン・ホークだと知ったら驚くだろう。
なにしろメイリンはまだザフトに入ったばかりで訓練課程も済んでいないのだ。
ニコルがルナマリアとメイリンの才能を見込んで連れて来たのだ。
慧眼というべきだろう。
「それでもプラント側が何もしないと思っているんだろう。見くびられたものだ」
イザーク達の乗るナスカ級は六隻。
代表団さえ確保すれば高速を生かして地球連合の月基地艦隊の鼻っ柱を折るくらいは出来る。
問題はその後だ。
国力で劣るプラントはいずれ地球連合に滅ぼされてしまう。
だから我慢しなくてはいけない。
くれぐれも挑発にのってはならない。
そんな事を思っているイザークに副長が話しかける。
「テロの状況に関して報告があります。襲撃者たちのほとんどは排除されましたが、数名の容疑者が逃走したとの情報です」
「詳細を教えてくれ」
副長は資料を手渡しながら説明を続けた。
「襲撃者たちは全員ブルーコスモスの一員と見られます。一部の容疑者は既に捕らえられていますが、まだ逃走中の者もいます。彼らの目的は不明ですが、プラント側への攻撃を企てていた可能性が高いです」
「なるほど……。ブルーコスモスが、なぜプラントを狙ったのか気になるな」
イザークは資料を読みながら考え込む。
彼はテロリストの行動には必ず背後に何かがあると感じていた。
ナチュラルとコーディネーターの対立を利用して戦争を続ける意図があるのではないかと疑念を抱いていた。
「彼らがプラントの指導者を狙った理由は何なんだろう?ただの憎悪だけではない気がする」
「おそらく、テロ行為でプラントと地球の対話を妨害し、再び戦争を引き起こそうとしているんじゃねえの?」
ディアッカの言う通りだとイザークも思う。
幸いアスランやニコルの活躍でテロリストは撃退されたが喜べない事がある。
ニコルが女の子を庇って重傷だと報告がきた。
あいつらしいなと思ったが同時に冷徹に徹しきれない所が甘い。
自分の立場を考えれば女の子を庇っている暇などないだろうに。
「確かに、ブルーコスモスはプラントと地球の共存を拒否しているからな。やりかねない」
ラスティの意見にイザークは考え込みながら、その意見に同意する。
そこまでして戦争を続けたいのかと嫌悪感がわくが我慢した。
コーディネイターさえ殺せれば、きっと後の事など考えていないのだろう。
「それにしても……今回はプラント側の代表団や地球側の議員に大きな被害が出なくて幸いだった。しかし、このテロリストたちが本当にただの狂信者なのか、それとも背後に何か別の意図があるのか……」
イザークは沈痛な面持ちで窓の外を見つめた。
彼は戦場での経験から、テロリストたちが突発的に行動することは稀であることを知っていた。
必ず背後に黒幕がいるのだろう。
だがイザーク達には目下の急務が発生していた。
月の防空圏内ギリギリを航行していたので地球連合艦隊の戦闘艦が接近してきたのだ。
イザークは冷静な声で命令を出す。
「地球連合艦隊との接触の準備をしてくれ。必要ならば敵対行動を取るかもしれんが、まずは外交的な対応を試みたい」
地球連合艦隊がプラント艦隊に対して通信を送ってきた。
イザークは緊張した面持ちで通信を受け、スピーカーから聞こえる地球連合の代表者の声に耳を傾ける。
「こちら地球連合第七艦隊所属『エリュシオン』、プラント側の艦船に対して警告する。月の防空圏内に接近するのは許可されていない。直ちに退去せよ」
「こちらザフト艦隊旗艦『イーゲル』。我々はテロリストの襲撃を受けたプラントの代表団を守るためにこの場に居る。まだあなた方の防空圏内にまだ侵入していない。こちらは交戦を望まないことをご理解いただきたい」
地球連合側の艦隊司令官は苛立った声で答えた。
まだ停戦中であって不慮の事故から戦闘開始という事も十分ありえるからだ。
それはイザーク達も同じで先に手を出したほうが後日責任を問われる。
イザーク達に後日があればだが。
「緊急事態というが、我々にはそんな報告は受けていない。あなた方は月の防空圏内に侵入したことで国際法違反をしている。直ちに退去しない場合は武力行使も辞さない」
イザークは一瞬考え込むが、相手がプラントの代表団を守るためにいることを伝えた。
「我々はただ代表団を守るためにここにいるだけだ。あなた方に敵対する意図はない。しかし、もし武力行使をされれば、我々も正当防衛として応戦せざるを得ない。それだけはお忘れなきよう」
イザークの言葉は冷静で断固としたものであった。
しかし、彼は心の中では状況をどう打開すべきか思案していた。
ここで戦闘になればプラント側は不利であり、代表団の安全も保障されない。
むろんブルーコスモスを裏で操っている者はそれを望んでいるだろう。
地球連合艦隊の司令官はしばらくの沈黙の後、不満そうな声で返答した。
「了解した。ただし、我々の監視下に置かれる覚悟をしておけ。あなた方の行動は常に監視されていることを忘れるな」
「当然だ。我々も無駄な戦闘は避けたいと思っている」
イザークは安堵の溜息をつきながら通信を終えた。
地球連合との緊張したやり取りは一旦落ち着いたが、これで終わったわけではないことを彼は理解していた。
「監視下に置かれると言う事は何かあったらこちらが悪いと言われるな」
ディアッカの言葉にラスティが応える。
ラスティは困ったものだなと言わんばかりに肩をすくめている。
「そうだな。監視下に置かれるとは名ばかりで実質的には拘束されてるようなものだ。こっちには自衛権があるものの、実際に行使するとなれば国際的な非難を浴びることになると」
ラスティの言葉にイザークはうなずいた。
イザークは地球連合の意図を読もうとしながら、次の一手を考え始めていた。
「あいつらが本当に俺たちの行動を監視しているとしたら、俺たちは慎重に行動しなければならない。プラントの代表団の安全が最優先だ。また、ブルーコスモスの活動も引き続き警戒する必要がある。常に距離を保て。敵が引けば進み、前に出てくれば退くのだ。けして月の防空圏内に入るなよ」
イザークは自らの立場を強調し、部下たちに注意を促した。
地球連合の監視下に置かれながらも、イザークはプラントの利益を守るために最善を尽くす覚悟だった。
そんなイザークをみてディアッカが笑いながら言う。
「お前変わったな」
「何がだ?」
「前のお前なら突っかかってる所だぜ」
「そうそう。俺もそう思う。親友の成長に俺は涙を禁じ得ないよ」
「お前らな!!」
そう言ってイザークは叫ぶが勝手知ったるなんとやら。
ディアッカもラスティもどこ吹く風だ。
ここまで生き残ったのだからこいつらとも一緒に終戦を迎えたい。
その為には地球艦隊の挑発に乗る事はできなかった。
「何事も起きないのが一番だが、何かあったら俺の指示に従って行動してくれ」
「了解」
「了解さ」
ディアッカとラスティはイザークの言葉に同意し、艦橋を離れパイロットルームに向かった。
この艦隊にいるのは生き残った精鋭で全員がエースパイロットだ。
もし交戦となれば実力で敵を排除できる自信がイザークにはあった。
イザークは再び窓の外を見つめ、地球連合艦隊の動きを注視していた。
彼は自分がプラントのために戦う立場であることを自覚し、これから先の困難な状況を乗り越える覚悟を固めていた。
イザーク・ジュールは現在の状況について、冷静に分析していた。
地球連合艦隊との緊張したやり取りを終え、彼らの監視下に置かれながらもプラントの利益を守るために最善を尽くさなければならない。
イザークは自らの立場を強調し、部下たちに注意を促した。
地球連合の監視下に置かれながらも、彼は慎重に行動し、プラントの代表団の安全を最優先に考えていた。