【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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外伝二つ目。今回はキラとラクスです。原作では静かに暮らしていた二人でしたが、ここではブルーコスモスのテロをきっかけに二人の身が危険になったと判断されました。といっても二人とも基本静かに暮らす話(予定)なのであまり起伏に跳んだ話にはならなさそう。きっと平和な話になると思います。


【外伝『僕の歌姫』 第一話 穏やかな日々】

 【外伝『僕の歌姫』 第一話 穏やかな日々】

 

 雨上がりの草木の香りが心地よい風と共に吹いている。

 キラは綺麗な空気と共にその香りを楽しんだ。

 隣には愛しい少女がいて優しい歌を歌ってくれている。

 キラは心地よさそうにラクスの膝に頭を乗せて、うとうとと惰眠に身を委ねた。

 カガリが建ててくれた小さな家に、キラとキラの両親とラクスだけで住んでいる。

     

 アスランとカガリが婚約すると聞いたとき、キラとラクスは久しぶりに人前に出た。

 行方不明だったプラントの歌姫に報道陣から質問が相次いだが、ラクスは公務をすべて終わらせて隠棲しているのでコメントは無し。

 アスランとカガリも手伝ってくれて無粋な人々は追い払われた。

 キラとラクスはアスランとカガリが婚約した事を自分のように喜んだ。

 アスランには早くラクスと婚約しろと突かれたが、婚約も何も結婚しているような関係なのでキラは苦笑いするだけだった。

 カガリは将来はアスハ家の当主でアスランは正式にザフトからオーブ軍に移籍が決まっている。

 将来オーブが戦場にでもならないかぎりプラントのエース、アスラン・ザラはMSに乗る事は無いだろう。

 二人ともオーブの顔と言ってもいい存在となり簡単に会えるような間柄ではない。

 そんなキラとラクスを気遣ってアスランとカガリは会いにきてくれていた。

 キラとラクスはオーブの僻地でひっそりと暮らしていた。

 

 「キラ、ラクス」

 

 アスランとカガリが呼びかけるとキラが慌てて起き上がり、ラクスが笑みを浮かべた。

 

 「ふわあぁぁ───やあ、アスラン。カガリ。来てくれたんだね」

 

 そう言って欠伸をするキラの姿にアスランとカガリは楽しそうに吹き出した。

 プラントと地球の間の戦争が終わったので余ったMSの民需転換も始まり、地球もプラントも緩やかな復興へと向かっていた。

 もう戦争に行かなくて済む。

 そう考えるキラ。

 

 メンデルとその後にあったスーパーコーディネイターの出来損ないから受けた精神的プレッシャーは、夜中に悪夢となってキラを襲うがその時必ずラクスがいて抱きしめてくれる。

 恐怖で震えるキラを優しく抱きしめて落ち着くまで傍にいてくれた。

 キラにとってラクスはかけがえのない存在であり、ラクスにとっても前世で失ったキラの温もりを感じる大切な時。

 愛し合い寄せ合い溶けるように交じり合う。

 昨夜もそうだったがラクスのお陰で眠りについた。

 少し寝不足だったキラは笑顔でアスランとカガリを迎える。

 

 「久しぶりだな、キラ。元気そうで安心したよ」

 

 アスランは穏やかな笑顔で言った。

 

 「アスランも元気そうで何よりだよ。カガリも変わらず元気そうだね」

 

 キラが言うとカガリは「当たり前だ」と胸を張って答えた。

 

 「カガリたちの婚約式以来だね。今日は何か特別な用事があって来たの?」

 

 キラが聞くと、アスランは少し真剣な表情になった。

 その様子からただならぬ気配を感じたキラとラクス

 アスランは静かに言った。

 

 「実は、今日の訪問はちょっとした提案があって来たんだ」

 

 「提案?」

 

 キラは興味を示すように身を乗り出して聞く。

 

 「ああ。俺とカガリは婚約したし、将来的には結婚することになる。その時に、キラとラクスも一緒に暮らさないか?」

 

 アスランの提案にキラとラクスは驚きを隠せなかった。

 

 「えっ……それってどういう意味?」

 

 キラは混乱した表情で聞き返した。

 

 「俺とカガリはお互いに尊敬しあっているし、一緒にいる時間が増えて、さらに絆が深まった。でも、キラとラクスもとても仲が良さそうで、お互いに支え合っているように見える。だから、四人で一緒に生活したら楽しいんじゃないかなと思ってさ」

 

 アスランは真剣な目でキラとラクスを見つめながら言った。

 その提案の意味を悟ってラクスが話す。

 キラとラクスの身に危険が迫っているという事だ。

 

 「情勢はそんなに悪いのですか?」

 

 ラクスの声は恐怖と悲しみに震えていた。

 かつての大戦の英雄とプラントの歌姫。

 唯一成功したスーパーコーディネイター。

 ブルーコスモスのテロの対象としては十分だ。

 またプラントの過激派にとっても事前に殺害しておきたい対象だろう。

 カガリとアスランは二人を安全な場所で保護したいのだ。 

 アスランとカガリは複雑な表情で頷いた。

 

 「ああ……実は最近、ブルーコスモスの動きが再び活発になっているんだ。俺たちはその影響を受ける可能性が高いし、キラとラクスも安全ではないかもしれない」

 

 アスランは沈痛な声で説明する。

 先日の講和会議でブルーコスモスのテロが行われて以来、アスランもカガリも神経質になっていた。

 彼らが次に狙うのはどこだろう、誰だろう?

 答えはキラとラクスだ。

 今は誰にも知られない静かな場所にいるが、いつ襲われてもおかしくない。

 キラは不安そうに顔を歪めながらも、真剣に考えていた。

 

 「ラクスはどう思う?」

 

 キラがラクスに尋ねると、ラクスは静かに考え込んだ。

 そしてゆっくりと口を開く。

 

 「私も同じ考えです。キラと一緒ならどこに住んでいてもかまいません。キラの居場所がわたくしの居場所なのですから」

 

 ラクスの言葉に、キラは優しく微笑んだ。

 ラクスも自分たちの身がもはや自分達だけの物では無いと知っているのだ。

 

 「ありがとう、ラクス。僕も同じ気持ちだよ。でも、本当にいいのかな……カガリとアスランには迷惑かけちゃうかも」

 

 「何言ってるんだよ、キラ。むしろ嬉しいんだぞ。みんなで一緒に過ごせるなんて」

 

 そういって満面の笑顔でカガリが言う。

 アスランも頷きながら言った。

 

 「俺たちだって、キラたちと一緒にいたいんだ。それに、四人の方が何かと安心だしな」

 

 キラは少し考え込んだ後、「それじゃあ……お願いしてもいいかな」と答えた。

 

 四人は夕暮れの庭に座り、星空を見上げながら詳細を話し合った。

 

 「僕とラクスはできるだけ静かに暮らしたいんだ」

 

 キラがそう言うと、アスランとカガリはその答えを知っていたので頷く。

 キラはもう十分すぎるほど戦い傷ついた。

 癒しの時間が必要だろう。

 

 「もちろん、それは理解しているよ」

 

 アスランが優しく言った。

 

 「だからこそ、君たちの安全を確保しながらも、できるだけ静かな生活ができる場所を考えているんだ」

 

 カガリも頷きながら続けた。

 

 「私たちはアスハ邸の別館を整備するつもりだ。そこならセキュリティもしっかりしてるし、周りは自然豊かで静かだから」

 

 「でも……」キラが言いかけたが、アスランが手を上げて遮った。

 

 「心配するな。別館といっても独立した住居になる。プライバシーもきちんと保たれるよう設計される。セキュリティの面倒な部分は俺たちが引き受けるから、キラたちは普通の生活をすればいい」

 

 ラクスがキラの手を取りながら言った。

 

 「わたくしはキラと二人きりでいることが大切です。でも、同時に、アスランさんとカガリさんと一緒にいられることも嬉しい。両方のバランスを取れるなら、その方がいいのではないでしょうか」

 

 キラは少し考え込んでから、柔らかく微笑んだ。

 

「そうだね。みんなで助け合いながらも、それぞれのペースで生活できるなら……それもいいかも」

 

 単純に考えても公務で忙しいカガリとアスランと、穏やかな時間をすごすキラとラクスでは会える時間が限られる。

 だが一緒に朝食は食べたいとカガリは主張した。

 生き別れの弟と家族になる予定の義理の妹が一緒なのだから出来るだけ過ごしたい。

 キラの両親のヤマト夫妻にも一緒にすんでもらう。

 ウズミとも仲良くして欲しい。

 カガリは満面の笑みを浮かべた。

 

 「決まりだな!別館の改装はもう始まってるんだ。完成したらみんなで引っ越そう」

 

 夕暮れの空に星が輝き始める中、四人は新しい生活への希望に胸を膨らませていた。

 

 「ところで……」

 

 アスランが少し声を落として言った。

 

 「ブルーコスモスの件だけど、彼らの動きが最近活発になっている。特にラクスの再登場は彼らにとって大きな脅威らしくて……」

 

 キラの表情が一瞬で引き締まった。

 

 「危険度はどのくらい?」

 

 「まだ直接的な脅威というわけではないが、油断はできない。だからこそ、より安全な場所でみんなで過ごすべきなんだ」

 

 「分かった。でも僕たちは戦うためじゃなく、普通に暮らすために集まるんだよ」

 

 キラは強く言った。

 アスランは穏やかに微笑む。

 

 「もちろんだ。俺たちがいるからには、キラとラクスは絶対に守ってみせる。それに安全の為にもキラとラクスはあまり人前に出ない方がいいだろう」

 

 夜風が四人の間に流れる中、彼らの新たな生活への誓いが静かに交わされた。

 これから先の未来は厳しいかもしれないが、互いに支え合いながら乗り越えていくという決意が星空の下で固まった。

 

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