【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
【外伝『僕の歌姫』 第二話 新居】
オーブは南国の島々で構成される群島国家だ。
気候は熱帯で一年を通して高温多湿。
時々大雨が降り雨上がりは空がとても美しい。
プラントで生まれ育ったラクスにとって全てが新鮮で刺激的だった。
「キラ、海がこんなに大きいなんて知りませんでしたわ!」
ラクスは目を輝かせて言う。
キラも嬉しそうに答える。
「そうだよね。プラントで大きい海はあんまり見ないもんね」
キラとラクスは手を繋いで浜辺を歩いている。
二人は婚約式典が終わってからもアスランとカガリと連絡を取り合っていた。
ある日、アスランが電話をかけてきてこう言った。
「キラ、ラクス。アスハ邸の別邸が完成したんだ。そろそろ一緒に暮らさないか?」
キラとラクスはお互いを見て微笑んだ。
アスラン達と一緒に暮らす予定だったので二人ですぐに引っ越しを始める。
「父さん、母さん。荷物はこっちでいいの?」
キラが久しぶりに見せた笑顔に母親カリダ・ヤマトと父親のハルマ・ヤマトは笑顔を見せあう。
可愛い息子が戦場へ駆り出され、無事に帰ってきてくれた。
辛い経験から今でも過去を思い出してふさぎ込む事が多いが、恋人で将来義理の娘になる予定のラクスと支え合っている。
二人の仲睦まじさと愛らしさを見るとカリダとハルマの心も癒されていく。
ヤマト家にもようやく平和が戻ってきた。
キラは自分の出生を知り辛く苦しい想いを今でもかかえているが、出生に関わらずカリダとハルマにとって可愛い息子である事に変わりはない。
ずっと過ごしてきてこれからも共に生きていく関係に変わりはないのだから。
アスランとカガリの婚約式典の会場にも呼んでくれたのでカリダとハルマは大いに楽しんだ。
その後にラクスがキラの婚約者だと紹介されると二人は舞い上がってしまった。
自分たちの子供が幸せになれる事がとても嬉しかったから。
愛しい息子が立派に育ったのだから。
「ええ、ここに置けばいいわよ」
カリダが指示するとキラが頷く。
「よし、じゃあ次はキッチンのほうね」
カリダとハルマはキラとラクスの荷物を運びながら、二人の幸せを願うのだった。
もともと荷物が多い家ではないのですぐに引っ越しの準備が整う。
荷物はオーブ引っ越し業者が船で運んだ。
四人はカガリが手配してくれたヘリコプターで別邸へと向かう。
周りには武装したヘリが護衛しているというのが未だ戦時のなごりだろう。
今後狙われるかもしれない四人だからこそ、オーブ軍は万全の態勢で出迎えた。
ヘリに乗る事一時間足らずでキラ達四人は別邸へ到着した。
「すごいね……ここが別邸なんだ」
キラは驚きの声を上げた。
白地に赤色の屋根を持つ別邸は海岸沿いに建っており、目の前には美しい砂浜とエメラルドグリーンの海が広がっている。
そして家は二階建てで、各階にはバルコニーがあり、リビングは広々としていて、開放感のある空間が広がっている。
「うわぁ……素敵ですわ!」
ラクスも興奮した様子で家の中を見て回る。
キッチンは広く、最新の設備が整っている。
ダイニングルームには大きなテーブルがあり、家族全員で食事ができるようになっている。
寝室は各部屋が独立しており、プライバシーが守られながらも家族の絆を感じられるような配置になっている。
「これだけの施設を用意してくれたんだね。本当にありがとう」
キラがテレビ通信でオーブ本島の政務室にいるカガリとアスランに感謝の言葉を伝えると、カガリは照れくさそうに微笑んだ。
「気にするなよ。私たちはただ、キラたちが安心して暮らせるようにしただけだ。それと、もし何か必要なものがあれば遠慮せずに言ってくれよ」
アスランも優しく微笑みながら続けた。
「そうだよ。家族なんだから遠慮はいらないさ。これから一緒に暮らしていくんだし、少しずつ慣れていけばいいさ」
「ありがとう、カガリ、アスラン」キラは心から感謝の気持ちを伝えた。
テレビ通話を終えた後、キラとラクスは新居の探検を続けた。
書斎や音楽室、プライベートな庭園など、二人が想像していた以上の贅沢な設備が備わっていた。
「キラ、見てください!この音楽室!」
ラクスが音楽室に入ってみると、そこにはピアノやバイオリン、様々な楽器が揃っていた。
壁には美しい絵画や彫刻が飾られており、音楽を楽しむための完璧な空間が広がっていた。
「これはすごいね!ラクスのために作られたみたいだ」
ラクスの顔が明るく輝き、キラも嬉しそうに微笑んだ。
「これで毎日歌えますわ!キラと一緒に過ごす時間が増えるのは嬉しいです」
キラもラクスの幸せそうな表情を見て、心が温かくなった。
「そうだね。これからは毎日一緒にいられるんだから、たくさん楽しい時間を過ごそうね」
二人は手を繋ぎながら新居の探検を続けた。
最後に訪れたのは海岸に面したサンデッキだった。
「こんな素敵な場所で昼寝ができそうだね」
キラが言うと、ラクスは笑顔で頷いた。
「はい!海を見ながらのんびり過ごす時間も大切ですわね」
キラとラクスはサンデッキに座り、穏やかな波の音と心地よい風を感じながら、これからの生活に期待を膨らませた。
この別邸は、ヤマト家が幸せに暮らすための新しいスタート地点となるのだった。
その夜、キラはベランダに出ると夜空を見上げていた。
月が明るく輝いており、星々が点々と散りばめられている。
「キラ」
振り返ると、ラクスが立っていた。
「一緒に星を見ましょう?」
ラクスが微笑みながら手を差し伸べる。
ラクスの手を優しく取りながらキラは微笑む。
「うん。それと」
「はい」
「ラクスの歌が聞きたいな」
キラがそう言うとラクスは少し照れたように笑った。
「わたくしの歌でよろしいのですか?」
キラは優しく頷いた。
「ラクスの歌が聞きたいんだ」
ラクスはキラの手を握りしめながら微笑む。
「わかりました。それでは歌いましょう」
ラクスの歌声が夜空に響き渡った。その美しい旋律はキラの心に温かさを届け、彼は静かに目を閉じて歌に酔いしれた。
夜風が二人を包み込み、星明かりが優しく輝く中、キラとラクスの愛は深まっていった。
前世の事をキラは知らない。
あの時のラクスはキラを失って狂う程苦しかった。
でもそれも、もうおしまい。
前世で失った全てをラクスは手に入れた。
愛しいキラも穏やかな生活も、そして平和も。
全てを知り戦ってくれた人々には感謝しかない。
大切な仲間たちを思い出しラクスは歌う。
(みなさまありがとうございます)
ラクスの歌が終わりキラがパチパチと拍手すると、二人は寄り添いながらベランダの夜景を眺めた。
波の音が静かに耳を楽しませる。
南国の澄んだ空気と満天の星空。
「ねぇ、ラクス。僕たちの未来は明るいと思う?」
キラがふと尋ねると、ラクスは微笑みながら答えた。
「もちろんですわ。私たちが一緒にいれば、どんな困難も乗り越えられます。私たちの愛は永遠です」
ラクスの言葉にキラは満面の笑みを浮かべた。
「そうだね。僕たちの愛は永遠だ。これからもずっと一緒にいようね」
「はい。私たちの愛は決して途切れることはありません。永遠に愛し続けましょう」
二人は手を握り合い、夜空を見上げながら、愛を誓い合った。
その瞬間、二人の心は一つになり、幸せな未来への希望が溢れた。
二人のキスは甘く、溶けるような柔らかさがお互いを包み込む。
キラとラクスは手を取り合い、静かに微笑んだ。
互いの存在が幸せであり、心の支えだった。
波の音が奏でるリズムの中で、二人は新たな未来へと歩み出す。
その夜は特別で、キラとラクスの心に永遠の愛を刻む思い出となった。
翌朝、二人は明るく澄み渡る空気の中、目を覚ました。
朝日が別邸の窓から差し込み、眩しい光が二人を包み込む。
キラはラクスを抱きしめながら微笑んだ。
「おはよう、ラクス。いい朝だね」
ラクスも微笑みながらキラの胸に頬を寄せた。
キラは少し細いからこれからは沢山食べて貰わないと。
ラクスは内心そう思っている。
「おはようございます、キラ。素敵な朝ですね」
二人は静かにキスを交わし、朝の目覚めを祝った。
キラとラクスはベッドから起き上がり、窓を開けて新鮮な空気を吸い込んだ。
海からの潮風が心地よく、二人の肌を撫でる。
少し汗ばんでいたが二人の透き通るような肌はとても美しかった。
二人がシャワーを浴び汗を流すとカリダ母さんが朝食が出来るまでゆっくりしていなさいと言ってくれたので、キラとラクスは二人で砂浜を歩くことにした。
「ラクス、足元に気をつけて」
キラが手を差し出すと、ラクスは嬉しそうにその手を握った。
「はい、ありがとうございます。この砂浜、とても歩きやすいですね」
波打ち際まで歩いていくと、潮風が二人の髪を揺らした。
朝日に照らされた海はキラキラと輝き、時折魚が跳ねる様子が見える。
「こんな美しい景色を見ながら毎日暮らせるなんて夢のようですわ」
ラクスの声は静かだが幸福感に満ちていた。
キラはその言葉に頷きながら微笑む。
「そうだね。この海は僕たちの新しい日常の一部になるんだ」
キラとラクスは並んで座り、しばらくの間、静かに波の音を聞いていた。
「ねぇ、キラ。わたくしの歌を聞いてくださいますか?」
ラクスが少し恥ずかしそうに尋ねると、キラは優しく頷いた。
「もちろんだよ。ラクスの歌声が大好きだから」
ラクスは深呼吸をして歌い始めた。
その歌声は海風に乗って広がり、砂浜全体が彼女の音楽で満たされるようだった。
キラは目を閉じてその美しい旋律に身を委ねる。
ラクスの歌が終わると、キラは静かに拍手した。
「やっぱり素敵だ。ラクスの歌は心に響くよ」
ラクスは微笑みながら立ち上がり、キラの手を取った。
「帰りましょう。お母さま達が朝食を作って待っていてくれますわ」
二人が別邸に戻ると、既に朝食の準備が整っていた。
カリダとハルマが笑顔で迎え入れてくれた。
「おかえりなさい、二人とも。朝食の準備ができたわよ」
ダイニングテーブルには新鮮なフルーツと焼き立てのパン、そしてハーブティー。
そして唐揚げが並んでいた。
「ありがとう、母さん」
キラは嬉しそうに席に着いた。
ラクスも一緒にテーブルにつき、キラと目を合わせて微笑んだ。
「これからは毎日こんな素敵な朝食を食べられるんですね」
「うん。家族みんなで朝食をとるのは素敵な習慣だと思う」
朝食をとりながら、キラとラクスはこれからの生活について話し合った。
そのうちに大慌てで帰ってきたカガリとアスランを交えて穏やかな一日を過ごしたのだった。