【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
【外伝『僕の歌姫』 第七話 人の闇】
キラとラクスは海の音を聞きながら波打ち際を歩く。
夕暮れ時の海辺は穏やかな風が吹きラクスの美しいピンクの髪を優しく揺らしている。
二人は夕焼けに染まる海岸をゆっくりと歩きながら語り合う。
「綺麗ですね……」
ラクスの声が波の音に溶け込む。
とても優しい声。
キラにだけ聞かせてくれる美しい声。
ラクスの言葉の一言一言が疲れ切ったキラの心を癒している。
「うん……」
キラは夕焼けを見つめながら短く応えた。
夕焼けの浜辺は昼の暑さから夜の涼しさへと変わっていく。
もうすぐ星が見えるだろう。
「あなたと出会えて……本当に良かった……」
ラクスはキラの腕に自分の腕を絡める。
「僕も……ラクスと一緒にいられて幸せだよ」
キラはラクスの手を優しく握る。
「……怖いですか?」
ラクスの問いかけにキラは少し驚いた表情を見せる。
「……何が?」
「これからの未来が……」
キラは少し考えるような素振りを見せてから答えた。
「怖くないと言ったら嘘になる……でも僕は君がいるから前に進める」
ラクスは微笑みながらキラに寄り添う。
「わたくしも……あなたがいるから強くいられます」
二人は寄り添いながら砂浜を歩き続ける。
「キラ……わたくし達はこれからどうなるのでしょうか?」
ラクスの問いかけにキラはしばらく黙った後答えた。
「わからない……でも……僕はずっとラクスと一緒にいたい。どんな未来が待っていても」
ラクスはキラの言葉に頷きながら、二人の未来について考える。
「わたくしも……キラと一緒にいたいです。これからもずっと」
ラクスの声はとても優しく、そして力強かった。
「それに……僕達にはたくさんの仲間がいる。アスランもカガリもみんなで助け合いながら生きていくんだ」
キラの言葉にラクスは微笑む。
「そうですね……仲間たちがいることはとても心強いです」
波打ち際に立ち止まりキラはラクスに向き直る。
「ラクス……これからも僕と一緒にいてくれる?」
キラの問いかけにラクスは微笑みながら答えた。
「もちろん……キラ。わたくしはずっとあなたのそばにいます」
二人は夕焼けの浜辺で互いの存在を感じながら、これからの未来に思いを馳せるのであった。
夕焼けの海辺でキラとラクスは未来への希望を語り合っていた。
だが世界は平和な時間に微笑まない。
その夜、キラは一通の通知を受ける。
差出人は有栖と名乗っていた。
有栖とはドミニオン艦長のアリス・ハルバートンで自他ともに認める最年少天才美少女艦長だ。
キラはそのアリスとネットで連絡を取り合っている。
ちなみにキラは綺羅星と名乗っている。
主に雑談でその雑談にはオルガ、クロト、シャニが加わる事もある。
アリス達ドミニオンクルーは全員オーブに亡命しておりオーブでそれぞれの生活をしている。
アリスはオーブ軍の情報参謀で三佐の地位に就いた。
引き続きドミニオンの艦長を務めつつ、オーブ軍にも協力していた。
オルガは小説を読むだけでは我慢できなくなったようで、アリスに教わりながら学力向上に努めている。
将来小説を書く側になりたいようだ。
クロトはオーブで開かれているゲーム大会で見事優勝し、プロゲーマーの道へと進んだ。
シャニはというと、アリスとオルガとクロトでハードロックバンドを結成しプロデビューを目指している。
ドミニオン艦長をしつつオーブ軍にも務めながら三人の面倒を見ているアリスが一番すごいのだが。
有栖:綺羅星さん。すこしお時間をいただけませんか?
綺羅星:有栖さんどうしました?
有栖:ロドニアについて調べていただけませんか?
綺羅星:ロドニアですか?
有栖:そこにクロトがいた研究所があります。詳細は添付します
そういって有栖ことアリス・ハルバートンは地球連合の最高機密だっただろうデータを送ってきた。
そのデータを見てキラは顔をしかめる。
そこはクロトがいた場所であり、子供を戦闘マシーンにする施設だった。
人間の精神と肉体をいじくりまわして都合よく作り変えるおぞましい施設。
普通の子供だけでなく幼い子供を人身売買して改造、調整をしている。
そして閲覧注意という画像データも送られてくる。
閲覧するかしないかはキラの判断に任せるという事らしい。
キラが閲覧すると、幼い子供たちが訓練と称して殺し合いさせられたり、死亡後も薬品の作用を実験する為にホルマリン漬けにされた画像が写っている。
その画像にラクスは口元を押さえ、キラは目を背ける。
綺羅星:許せない……
キラの声には怒りが滲んでいた。
アリスはキラの気持を理解し、キラに言う。
有栖:わたしも同じです。わたしはこの情報を共有し、クロト達のような不幸な子を救いたいと思っています。
綺羅星:わかりました。僕も協力します
キラはそう返信した。
有栖:ありがとうございます。綺羅星さん。あなたの協力に感謝します。
アリスはキラに感謝の言葉を伝えた。
キラとラクスはアリスの情報を元にロドニアについての調査を開始した。
カガリとアスランが帰宅するのを待って状況を説明する。
二人は激しい不快感を示すが同時に困難な事も理解していた。
特に和平したばかりの地球連合と諍いを起こすのは甚だ問題だ。
オーブは世界中から孤立しかねない。
アリスもすぐにドミニオンを発進させて武力で研究所の破壊と囚われた子供たちを救出したいが、亡命者の彼女たちが表立って行動できない。
カガリも可能ならすぐに軍を派遣して子供たちを救助したいが動けないのだ。
「オーブとして表立って行動は出来ない。私だってなんとかしたいが地球連合の内政へ介入する事は出来ないんだ」
カガリの言葉にアスランが同意する。
「だが救助に時間がかかるとクロト達のような不幸な子供たちが増えてしまうかもしれない。俺としては非公式に行動するしかないと思う」
その言葉にカガリは複雑な表情を浮かべる。
「非公式というのは?」
「ロドニアへの潜入調査と子供たちの救出」
カガリはしばらく考え込んでいたが、決断を下した。
「わかった。だが危険すぎる。私たちだけで決めるわけにはいかない。アリス・ハルバートンと相談してから動こう」
カガリとアスラン、キラとラクスはアリス・ハルバートンを交えて作戦会議を行うことにした。
彼らはまず、ロドニアへの潜入調査を計画し、子供たちの救出を目指すことに決めた。
アリスとキラ達四人はロドニア研究所の情報を共有し作戦を立てていく。
アリスは冷静かつ迅速に情報を整理し、キラ達も真剣に作戦内容を確認する。
必要な装備や情報収集を行いながら、作戦の成功率を高めるための準備を進めていく。
アリスはオーブから極秘裏にロドニアへ接近するルートの作成だけでなく、オルガとクロトとシャニも連れて自分も一緒に行くと志願した。
「オルガとクロトとシャニは私の家族同然です。これ以上不幸な子供を増やす訳にはいきません」
皆が止めたがアリスの決意は固かった。