【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回は救出シーンです。子供たちを騒がせず外へ連れ出すのに少々ご都合な手を使いましたがお目こぼしを。ステラ達三人って運命見返すと味が薄い気がします。最初からすごく重要なキャラ感だしてるのにステラは兎も角スティングとアウルはもう少し活躍して欲しかったな。特にアウル。アウル好きだったので。


 【外伝『僕の歌姫』 第十話 自由】

 【外伝『僕の歌姫』 第十話 自由】

 

 警備室を出て更に進むと不気味な雰囲気の場所にたどり着いた。

 周りには透明なカプセルが並んでいる。

 

 「お前ら……見たくないなら下見てろよ」

 

 そう言ってアリスと手をつないだクロトがキラ達に振り向いて言った。

 キラとムウは同じような光景をメンデルで見た。

 だから中身がわかってしまった。

 

 「トール!ミリアリアには絶対見せるな!」

 

 ムウの叫びにトールは慌ててミリアリアに下を向かせる。

 

 「ちょっとトール!いきなり何するのよ!」

 

 「ミリィ。知らない方がいい事ってあるんだぜ」

 

 そう言うトールの声は震えていた。

 初めて見る人間のホルマリン漬けにトールは奥歯をガチガチ震わせる。

 周りに見えるガラスの筒には子供たちの全裸死体が並んでおり、悪趣味なオブジェとなっていた。

 

 「トール。私はジャーナリスト見習よ。どんなものでも見るわ。私そんなに弱くないから」 

 

 ミリアリアの強い言葉にトールは観念してミリアリアを押さえていた手を離す。

 そしてミリアリアがショックで倒れそうになるのをしっかりと支えた。

  

 

 「これが人体実験って奴か……」

 

 バルトフェルドが嫌悪感を露にする。

 周りの光景を見てシンは思わず吐きそうになる。

 

 「うぅ……」

 

 「シン……大丈夫?」

 

 キラが声をかけるがシンは返事をしなかった。

 

 「シン!しっかりしろ!」

 

 バルトフェルドが肩を叩くとようやく反応した。

 

 「すいません……大丈夫です」

 

 シンの顔色は青ざめていた。

 

 「本当に大丈夫なのか?」

 

 ムウも心配して声をかけた。

 

 「はい。多分……」

 

 シンの返事は曖昧だった。

 それでもシンは歩き出した。

 シンの脳裏には先ほど監視カメラに映った少女の顔が焼きついて離れなかった。

 あの少女の悲し気な笑顔が忘れられない。

 もし自分たちが遅れていたら、あの少女がこの標本になった子供と同じ扱いになっていたかもしれない。

 そんなの許せない。

 そんな感情に支配されていた。

 

 「あれが全部……失敗作……」

 

 クロトは苦々しい表情で呟いた。

 周りのカプセルに収められている子供たちを見ながら言う。

 

 「ここを出る時は俺みたいに完成品として出るか、死体として処分されるかだけだ。俺は生き延びたが殆どは」

 

 クロトの言葉をみな黙って聞いていた。

 クロトも先ほどの少女も、過去に何があったとしても、こんな非人道的な扱いを受けていい筈がない。 

 クロトは周りのガラスケースを見ながら拳を握り締め、怒りに震えていた。

 

 「酷い……こんなの……許されない……」

 

 アリスの顔は青ざめていた。

 彼女にとっても衝撃的過ぎたのだ。

 あまりの惨状に言葉を失うほどショックを受けているようだった。

 そしてクロトが受けて来たひどい仕打ちに涙した。

 普段無表情のアリスは誤解されやすいが感受性が豊かな女の子だ。

 だからこそ軍人として冷徹に振る舞おうとする。

 自分の一挙手一投足に部下の命がかかっている事を知っているからだ。

 アリスは言葉が出なかった。

 あまりにも残酷過ぎる現実に愕然としてしまう。

 クロトが受けた仕打ちは想像を絶するものだろう。

 

 「……僕は」

 

 キラは辛そうな表情を浮かべる。

 メンデルで同じように作り出され、自分を恨み襲ってきた少年少女の事をキラは忘れられない。

 夢で何度も暗闇に引きずり込もうとされた。

 その度にラクスが助けてくれた。

 キラの存在を肯定してくれて愛してくれて、キラもラクスを愛している。

 

 「俺はあの女の子を絶対に助け出す!!」

 

 シンが叫ぶように言った。

 

 「勿論!」

 

 トールとミリアリアも頷く。

 そしてキラがクロトに言う。

 

 「クロト。絶対にみんなを助けよう。君のような子を増やさないためにも!」

 

 クロトは頷く。

 キラたちは通路をさらに進む。

 そこにはいくつかの研究室のような場所があり、今は深夜なので当直以外はいないようだ。

 警備室と同じように催眠ガスを撃ち込み研究所員を眠らせたあと、周囲を制圧し監視カメラをウイルス汚染させてデータを破壊する。

 これで証拠は残らない。

 あとは全員を安全に保護するだけだ。

 アリスがドアのロックキーを外す。

 そして一部屋ずつ開けていく。

 子供たちは就寝しているが起こしたら大騒ぎになるだろう。

 

 「任せろ。おい、夜間訓練だ。すぐに着替えて訓練ルームに集合だ」

 

 そういってクロトは管理官を装って声をかける。

 突然の夜間訓練はいつもの事なので、子供たちは素直にクロトの指示に従った。

 命令には絶対服従で思考が麻痺しているのだ。

 その姿はとても痛々しい。

 

 その頃シンは囚われの女の子の部屋のドアを開けた。

 綺麗な金髪をした女の子は驚きに目を見開いた。 

 シンは駆け寄って女の子の手錠を外し抱きしめる。

 

 「もう、もう大丈夫だから」

 

 「お兄ちゃんだれ?」

 

 「俺はシン、シン・アスカ。君たちを助けに来たんだ」

 

 「ステラを…助ける?」

 

 「そうだ。ステラ一緒に行こう。立てる?」

 

 そう言ってシンはステラの手を取って部屋から出て走る。

 通路には捕らわれていた子供たちが綺麗な整列をして待機していた。

 それを統率していたのはクロトだ。

 悲しい経験だがクロトはこの子達がどうすれば動くのかよく知っていた。

 

 「いくぞ」

 

 そう言ってクロトは子供たちを先導して外へと歩き出す。

 いつもと違う様子に子供たちは戸惑ったが中庭で訓練を行う事もあるので黙って従っていた。

 外で待機していたムウとバルトフェルドとダコスタが子供たちの護衛をする。

 

 「クロト、ご苦労だった。全員で何人だ?」

 

 バルトフェルドがクロトに尋ねる。

 クロトは子供たちに大声で叫んだ。

 

 「お前、全員で何人だ?」

 

 クロトに呼ばれた子供たちは「昨日まで七十八人、今日は知らない」と答えた。

 そのうちの三人がスティング・オークレーとアウル・ニーダとステラ・ルーシェだった。 

 

 「こちらバルトフェルド。子供たち七十八人無事保護。子供たちを搬送してくれ」

 

 バルトフェルドがアークエンジェルに連絡を入れる。

 作戦は無事成功しそうだったが見張りの兵士が子供たちの異変に気が付いて警報を鳴らそうとした。

 

 「お前ら伏せろ!!」

 

 クロトが命令すると子供たちは一斉に伏せる。

 バルトフェルドとムウがサイレンサー付きの銃で応戦し、すぐに射殺したがそう長くはもたないだろう。

 キラとメイ☆リンのウイルスでラボ内はパニックになっていたし、アリスが隔壁を一斉に閉じたので敵は外にいる兵士だけだ。

 

 「マリュー早く来てくれよ」

 

 ムウは祈るような気持ちで大気圏突入しているアークエンジェルとドミニオンを待ちわびた。

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