【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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お待たせしました。え、待ってない!?ま、まあ間隔が空きましたから仕方ないですね。


【外伝『僕の歌姫』 第十一話 舞い降りる大天使】

 【外伝『僕の歌姫』 第十一話 舞い降りる大天使】

 

 同時刻、マリュー・ラミアス指揮のアークエンジェルと、ナタル・バジルール指揮のドミニオンが大気圏降下を行っていた。

 両艦ともクルーの練度は高く、降下シークエンスは順調そのものだ。

 

 「ドミニオン降下開始!!機関40%、4秒後に姿勢制御」

 

 ナタルの指揮に従って的確に命令を実行するドミニオンクルーの姿に、ナタルは満足している。

 アークエンジェルと色違いのドミニオンは、アークエンジェルと性能は遜色がない。

 ナタルの指揮に従う精鋭たちの動きは正確無比。

 彼らは地球軍第八艦隊の生き残りであり、知将ハルバートンの薫陶を受けた選ばれた者たちだった。

 アークエンジェルに劣らぬ力を持つこの艦を見て、ナタルは満足げに頷く。

 

 「大気圏突入まであと二分。姿勢制御良好。システムオールグリーン。地上からの攻撃ありません」

 

 「背後からの攻撃があるかもしれん。宇宙の警戒を厳にせよ!!」

 

 「イエス・マム。ザフト及び地球軍月基地に異常なし」

 

 ナタルにとって初めての艦長職だが何の苦労もない。

 アークエンジェルにいた時はこう上手くはいかなかった。

 思えば当時のナタルはマリューに必要以上に厳しかったのではないか?

 あの時は半人前以下の学生たちと正規クルーの殆どを失って神経に余裕がなかった。

 それを差し引いてもマリューに厳しすぎたのだとナタルは反省する。

 本来アークエンジェルにはドミニオンクルーのように、正しく統率され訓練と経験を積んだクルーがいるべきだったのだ。

 技術士官のマリューが座るべき椅子ではないのに、泣き言も言わず───いや少しは言っていた気もするが。

 それでもマリューはこの椅子を放り出さなかった。

 自分が艦長になって初めてマリューの偉大さがわかると同時に、アークエンジェルを懐かしく思う。

 

 (やはり私は貴女の後ろでCIC担当をしているのが一番性に合っているようです)

 

 隣で降下しているアークエンジェルを懐かしく思うナタル。。

 生粋の軍人であるナタルは自分のもっとも輝ける場所を見つけた気がした。

 雲を突き破る光が地上を照らす。

 大地に降り立つその姿は、まるで戦いを終わらせに来た天使だった。

 子供たちには白きアークエンジェルが解放の天使に、彼らを縛った者には灰色のドミニオンが裁きの悪魔に見えただろう。

 

 ───大気圏降下に成功したアークエンジェルとドミニオンのカタパルトが開き、アスランのジャスティス、オルガのカラミティ、シャニのフォビドゥンが発進する。

 

 その頃ロドニアは大混乱に陥っていた。

 コンピューターロックがかかり、通路という通路が使えなくなったばかりか催眠ガスまで充満している。

 外部に救援を求めようにも、全てのコンピューターはウイルスで使用不可能になっており、しかもロドニアから30キロ圏内は全ての通信が遮断されていた。

 警備部は異常事態が発生している事は理解したが、何が起こっているのかを把握出来ないでいた。

 そのため対応も遅れた。

 警備部がようやく事態を把握したのはロドニアに降下してきたドミニオンとアークエンジェルの援護のために出撃したアスランのジャスティス、オルガのカラミティ、シャニのフォビドゥンの三機による攻撃であった。

 ロドニアに配置されていたストライクダガーが迎撃を行うも、OSがまともに動かず立っているのがやっとだ。

 抵抗できないストライクダガーをオルガのカラミティが蹴り飛ばした。

 ロドニア研究所を睨みつけるオルガ。

 本当なら今すぐここにいる地球軍を皆殺しにしてやりたい。

 オルガもクロトもシャニも同じ気持ちだった。

 三人とも居場所は違うがそれぞれ筆舌に尽くし難い地獄を体験したのだ。

 オルガは殺戮衝動を必死に抑えていた。

 オルガとクロトとシャニを家族だと言ってくれたアリスの為に我慢している。

 

 『もう戦争は終わったの。誰も殺したり傷つける必要は無いのよ。何も奪わなくていいのよ』

 

 オルガとクロトとシャニにとってアリスは愛しくて守りたい少女なのだ。

 プラントにとってラクス・クラインが天使であるように、アリスはオルガたちの天使だった。

 アリスの言葉通り戦争は終わりを迎えた。

 もう地球軍のクソ野郎共は敵ではないのだ。

 オルガはシャニに呼びかける。

 シャニはすでに狂気の淵に踏み込みかけていた。

 アリスの存在がオルガとシャニとクロトの精神を保っているといっても過言ではない。

 オルガにとってアリスとクロトとシャニは『家族』なのだ。

 孤独な戦場の中で育まれた家族。

 それが今のオルガたちの支えになっているのだ。

 シャニのフォビドゥンが銃口を地球軍の戦闘ヘリに向ける。

 オルガのカラミティがシャニのフォビドゥンの腕を掴んだ。

 

 『シャニ、殺すんじゃねえよ』

 

 『なんでだよ?こいつらは俺たちを弄んだ奴らなんだぞ!!』

 

 『アリスが言ってただろ。殺しても何も変わらない。子供たちの人生は戻ってこない。だったら生かしたまま罪を償わせるべきだって』

 

 オルガの言葉を聞いてシャニは引き金を引くのをやめた。

 シャニのフォビドゥンの銃口は地面に向けられている。

 そしてシャニは歯軋りしながらフォビドゥンのコクピットの中で叫んだ。

 

 『くそぉ!!こんな奴ら殺しても殺し足りないのに!!』

 

 シャニは悔しさに歯軋りした。

 ここで暴れればアリスとの約束を破ることになる。

 それはオルガとシャニにとって最も避けたいことだった。

 アスランはオルガとシャニが暴走しないか警戒していたが、二人が葛藤を乗り越えた事に安心した。

 ロドニア研究所に立っているMSはいなくなったし、作戦は予想外のスピードで決着がついた。

 だがアスランの戦士の勘が警戒心を強める。

 作戦が上手くいったと思った時が一番危ない。

 

 ───これで本当に終わりなのか?

 

 砂塵が舞うロドニア研究所に危険はないと思われた。

 

 「子供たちの保護を急いで!!」

 

 マリューがインカムで艦外へ呼びかける。

 並んでいた子供たちが我さきへとアークエンジェルとドミニオンのカタパルトへと駆け寄った。

 バルトフェルド達が子供たちを守りながら走る。

 シンはステラの手を引きながら全速力で走る。

 

 「ステラ! こっちだ!」

 「シン、待って! あの子が!」

 

 マユと同い年くらいの女の子が転んだのを見て、シンとステラが駆け寄る。

 転んだ少女をステラが抱きしめ、天使のように優しく微笑んだ――その瞬間だった。

 

 ───銃声が、世界を切り裂く。

 

 崩れた廃墟から、血を吐きながら兵士が最後の言葉をつぶやいた。

 「青き清浄なる世界のために───」

 

 放たれた弾丸がステラの胸を貫く。

 少女を庇ったまま、ステラが崩れ落ちた。

 

 「ステラ!! ステラァァァ!!」

 

 シンの絶叫が、沈黙したロドニアに響き渡った。

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