【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回はガンダムオリジンでのドズルさんのセリフから構想を貰いました。『オレは何億人ものミネバを殺したんだ‼』とても深い言葉です。この作戦に参加したキラもアスランも他の皆も自分が罪人だと知っています。だから誰かを助けたい。その為に集った。偽善かもしれません。


【外伝『僕の歌姫』 第十二話 贖罪】

 【外伝『僕の歌姫』 第十二話 贖罪】

 

 ───ピッ─ピッ─ピッ───

 

 アークエンジェル艦内の医務室。

 ステラはベッドに寝かされていた。

 緊急手術で傷口は塞いだが出血がひどく生命維持がやっとの状態だ。

 細い腕にはセンサーが幾つも繋がれ、白いシーツの上に伸びている。

 シンはステラの手を握っていた。

 祈るように、ただその温もりを確かめていた。

 包帯の下の胸がわずかに上下している。

 血色を失ったステラの肌は白く、今にも砕けそうなガラス細工のようだ。

 

 「シン。ここにいても俺たちは何もできない。医師に任せよう」

 

 アスランの言葉に、シンは涙を浮かべて顔を上げた。

 その目は後悔と憤りの瞳だ。

 

 「あんたはカガリが同じ状況でも、そんな事が言えるのかよ!!」

 

 アスランが言葉に詰まる。

 戦場で一度も怯んだ事のない最強の戦士さえ気圧されるシンの叫び。

 もしカガリが同じ状況だったなら、アスランはきっと狂っていたかもしれない。

 アスランの肩に手を置いたキラが悲痛な声でアスランに語りかける。

 

 「行こうアスラン。僕達に出来る事をやるんだ」

 

 「……ああ。シンすまなかった」

 

 シンに詫びてアスランはキラと共に医務室を出て行った。

 

 ───アークエンジェルの艦橋にはマリュー、アリス、ラクス、バルトフェルドが集まっていた。

 艦橋にキラとアスランが入ってくると皆が心配そうに二人を見る。

 

 「ステラさんの容体は?」

 

 「……かなり危険な状態です」

 

 マリューの問いにキラが沈痛な表情で答える。

 子供たちの救出の指揮を取っていたバルトフェルドは悔しさと責任で言葉が出なかった。

 自分が隙を離した一瞬で起きてしまった悲劇なのだ。

 冷静を貫いていたアリスも、瞳を潤ませていた。

 常に冷静を保ち規律正しく自分を律しているのは部下を危険に晒さないためだ。

 コンピューターを掌握し、ロドニアの全てを止めたと油断した。

 ――その油断を、偶然通りかかった一人の兵士が突いた。

 その偶然が、ステラの命を奪おうとしている。

 

 ラクスは胸の前で両手を組み、静かに祈るように目を閉じていた。

 

 「この戦いで何を得て、何を失ったのか……。それを忘れてはいけませんわ」

 

 彼女の穏やかな声に、誰も言葉を返せなかった。

 バルトフェルドがふと呟く。

 

 「結局、守りたいと思うものがある奴ほど、戦場で傷つくんだな……」

 

 その横でマリューは拳を握りしめていた。

 

 「それでも……それでも戦うのよ。失った命に報いるために」

 

 艦橋の窓越しに見える星々が、まるで涙のように瞬いていた。

 

 「ステラさんの事は医師とシン君に任せて、これからの事を考えましょう」

 

 そう言ってマリューは宇宙図をモニターに表示した。

 アークエンジェルとドミニオンはL4コロニー群にある『ハーバーコロニー』へ向かっている。

 保護した八十名の子供たちを、そこへ避難させるためである。

 オーブに匿えば必ずブルーコスモスに発見される。

 ハーバーコロニーなら普段はミラージュコロイドによって偽装されており、内部には生活圏がある。

 子供たちに新しい生活を、そして教育と治療を施す。

 そのため、オーブから医師団と教師が派遣され、ジャンク屋組合からも機材と技術者が協力に訪れる予定だった。

 

 「問題はハーバーコロニー到着まで、ステラさんの身体がもつかどうかですわ」

 

 ラクスの言葉にみな黙り込む。

 アークエンジェル内の医務室でできる事は限られていた。

 ハーバーコロニーに行けば設備の整った病院と医師団が待っている。

 

 「保護した子供たちには、これから普通の生活を送ってもらいます。心の傷を癒し、自立できるように医師と教師を派遣するわ。もちろんステラさんにもね。絶対死なせないわ」

 

 マリューの言葉に皆うなずいた。

 ここにいる全員がたくさんの敵を倒して来た。

 ステラの命を救ってもその罪が消えることは無い。

 それでも皆がステラの命を救いたかった。

 それが自分たちの贖罪だった。

 

 ───その頃医務室で、シンはハウメアの守り石をステラの手に握らせていた。

 この石は妹のマユがシンにくれたものだ。

 

 「お兄ちゃんを守ってね」と願いを込めて渡されたものだ。

 

 自分よりステラを守ってほしい。

 その小さな手に、妹の願いと自分の祈り、二つを重ねて握りしめた。

 

 助けると約束した。

 守ると誓った。

 

 それなのに自分が祈る事しか出来ない。

 オーブ防衛線とヤキン・ドゥーエでもシンはたくさんの敵を撃った。

 あの時は世界を守ったと誇らしげにも思った。

 

 ───だが今は違う。

 

 自分は沢山の子供の親を殺しただけだった。

 たくさんのステラを生み出してしまったのだ。

 自分の両手が血にまみれているとシンは自覚した。

 血にまみれたこの手で、ステラの手を握る資格なんてないのかもしれない。

 それでも、離すわけにはいかなかった。

 

 シンは目を閉じ、震える唇で言葉を探した。

 

 (俺が撃った銃の向こうにも、誰かを想う心があった。敵も、味方も、みんな……生きたかっただけなんだ)

 

 かつて見た炎の光景が脳裏をよぎる。

 壊れた街、泣き叫ぶ声、マユの小さな笑顔。

 もしマユが殺されたら、きっと自分は壊れてしまっただろう。

 壊された世界の中で、キラもアスランもシンも皆、それでも光を掴もうとしている。

 シンは自分の犯した罪を思い、その罪を前にシンは膝をつき嗚咽した。

 

 「ハウメア様……俺に罪があるなら、すべて背負います。だから、ステラを……助けてください」

 

 祈りの言葉と涙がシンの頬を伝い落ちた。

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