【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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この世界のニコルはキラ(というかストライク)をめちゃくちゃ敵視しています。
自分が殺されたとか以前にストライクによって沢山のザフト兵が殺されたのを知っているからです。
このニコルに違和感を持たれるかもしれませんが、血のバレンタインで同胞を殺され銃を手にしたニコルにとって、戦友のザフト兵の犠牲を無くす事が最優先なのです。
友達を助けたいから殺すキラ。
仲間を助けたいから殺すニコル。
似ている気がするのです。


第15話 狂いだした未来

 第15話 狂いだした未来

 

 2機のMSが地面に倒れている光景をアスランとイザークとディアッカは呆然と眺めていた。

 ニコルとキラの戦いは凄まじくモニター越しに見ているだけで冷や汗が流れる。

 ニコルがストライクのナイフをシールドで防御しなければ、コクピットを貫通されてニコルは間違いなく死んでいただろう。

 3人ともニコルの技量はザフトレッドを明らかに超えると理解した。

 そのニコルと互角以上に戦うストライクのパイロットも只者じゃない。

 

 「まさか、あれがナチュラルだと?」

 

 イザークはモニターに映るストライクを見て呟く。

 アスランやディアッカも信じられないといった表情で画面を凝視した。

 ストライクのパイロットがコーディネイターなら理解は出来る。

 いや並みのコーディネイターではニコルと互角以上の戦いはできないだろう。

 それをナチュラルのパイロット───この時点ではアスラン以外ストライクのパイロットがコーディネイターのキラ・ヤマトだとは知らない。

 

 (キラなのか?どうしてコーディネイターのキラが地球連合のパイロットをしているんだ?)

 

 アスランには理解できない。

 キラは戦争とは程遠い優しい性格だった。

 アスランはすぐにニコルを連れて脱出しようと降下する。

 その瞬間コロニー内に白色のMS、ラウ・ル・クルーゼの機体が侵入してきた。

 

 「アスランは直ちにニコルを救出してヴェサリウスへ戻れ。イザークとディアッカはアスランを援護しろ」

 

 クルーゼの目的はあくまでストライクの破壊。

 ストライクはいまだ立ち尽くしている。

 

 ☆☆☆

 

 「───殺した?僕がこの手で人を殺した?」

 

 キラはストライクのコクピットで自分の両手を見つめながら唖然とする。

 動かなくなったブリッツを見るとブリッツのコクピットにストライクが突き刺したナイフが刺さったままだ。

 キラはブリッツのコクピットをナイフで貫通したと思い込んでいた。

 

 「しっかりしなさい!!これは戦争なのよ!!」

 

 キラの後ろの席でラミアス大尉が叫ぶ。

 ストライクも右肩をビームサーベルで貫通されて片腕が動かない状態になっている。

 その状態のストライクを確認したクルーゼはほくそ笑む。

 

 「よくやったぞニコル。後始末は任せろ」

 「させるかよおお!!」

 

 クルーゼの乗る白いMSシグーをムウ・ラ・フラガの乗るMAメビウスが追いかける。

 ムウは月面エンデュミオンクレーターの戦いでジン5機を撃墜しエンデュミオンの鷹の異名を取る凄腕パイロットだ。

 その彼でさえシグーをロックオン出来ない。

 正確に言えばクルーゼは巧みにヘリオポリスのコロニーシャフトを盾に使う機動でムウを誘い込む。

 

 「ああくそっ!!」

 

 ムウはコロニーに損傷を与えるような攻撃は出来ず苛立ちが募る。

 宇宙でもトップクラスのパイロット二人は激闘を繰り広げる。

 その間もヘリオポリスは緊急警報を発し続けた。

 

 『ヘリオポリス全土にレベル8の避難命令が発令されました。直ちに最寄りの退避シェルターに移動してください。くりかえします。直ちに最寄りの退避シェルターに移動してください』

 

 宇宙港と軍港を破壊されたヘリオポリス市民は脱出ポッドである退避シェルターに避難する。

 各区画ごとに設置された退避シェルターは理論上は全市民が避難できる数が用意されているが、戦闘でパニックになった市民が市街地など人口密集地の退避シェルターに殺到したため市街地では数が足りなくなった。

 警官や軍人の指示で各シェルターに分散を行うが、中立国オーブの平和なコロニーで惰眠していた市民は年に数回の退避訓練すら不参加の者が多かった。

 そのため避難は遅々として進まず、パニックになった市民が我先にシェルターへ殺到し警官や軍人達も対応に苦慮していた。

 その光景がモニターに映し出されキラは両手を震わせて顔を見上げる。

 

 「このままじゃヘリオポリスが」

 

 キラの後ろの座席に座っているラミアス大尉がキラに話しかける。

 

 「仕方ないわ。君ええっと」

 

 「キラです」

 

 「キラ君、すぐに軍港へ向かって。この機体のエネルギーはそう長くはもたないわ」

 

 「でも友達が」

 

 キラがコクピット内で指さす先に民間人の少年少女、サイ、トール、ミリアリア、カズイがいる。

 ラミアス大尉は事情を察して無傷のトレーラーを指さす。

 

 「君たちはそのトレーラーに乗って。私たちは軍港へ向かいます」

 

 民間人の少年少女を見捨てる事が出来ないのが彼女の美点であり欠点でもあった。

 動けないブリッツから離れてストライクとトレーラーが軍港へと移動を開始する。

 それを黙って見逃すクルーゼではないが、ムウのメビウスが邪魔をしてストライクへと近づく事が出来ない。

 苛立つクルーゼにヴェサリウスの艦橋にいるアデスから緊急電が届いたのはその時だ。

 

 「何だアデス。私は忙しいのだがね」

 

 「失礼いたしました。しかしこちらも忙しくなりそうなのです」

 

 「どういう事だ?」

 

 「傭兵達が一斉にMSとMAを発進させました。数は30機、まだ増えそうです」

 

 「ちっあと一息という所で」

 アデスが指揮するヴェサリウスとはいえ30機の敵を相手にすれば苦戦は必至だろう。

 ニコルが与えたストライクの損傷は激しく当分戦闘は不可能だ。

 ならヴェサリウスを救援してから改めて攻撃しても間に合う。

 未確認だが地球連合軍の最新鋭戦艦が入港しているという情報も受け取っている。

 損傷著しいストライクと最新鋭戦艦をヘリオポリスごと破壊してしまえばいい。

 言い訳などいくらでもつける。

 オーブは中立国と言いながら、連合と共同でMS開発を行っていたという証拠をザフトは手に入れたのだから。

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