【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回はヘリオポリスにいるアークエンジェルへ再度の攻撃を行います。
何度か本編を見返して思ったのですが、対要塞攻略用装備をしたジンを見た時、原作のニコルはどう思ったのだろうという事です。
ヘリオポリスが破壊されると知っていたら止めると思うんですよね。
今回はそういう話です。


第17話 再出撃

 第17話 再出撃

 

 傭兵を追い払ったあと、クルーゼ隊は直ちに攻撃を再開した。

 ヘリオポリス内では既に地球軍最新鋭戦艦アークエンジェルが、破壊されたドックから脱出しヘリオポリス内を航行している。

 

 「ヘリオポリス内で戦闘は行えません。直ちに脱出します」

 

 本来の艦長以下高級士官を失ったアークエンジェルは、技術大尉だったマリュー・ラミアスを艦長代理にしヘリオポリス脱出を試みる。

 アークエンジェル内にはキラ・ヤマトとストライク。

 キラの友人たちも特例で保護されている。

 保護という名のキラへの人質ともいえる。

 ストライクは既にナチュラル用OSから書き換えられコーディネイターのキラにしか扱えなくなっていた。

 

 「やっぱ攻撃してきたか。こっちはコロニー内で身動き取れなくて攻撃も反撃も出来ない。あっちは打ち放題だもんな」

 

 ムウ・ラ・フラガ大尉のメビウス・ゼロはクルーゼとの戦闘で損傷が激しく彼はCIC(戦闘指揮所)にいる。

 アークエンジェルは最新鋭戦艦で対艦戦闘能力は高いが対MS戦闘には適していない。

 本来は五機のMSが搭載される予定だったが手元に残るのは損傷が激しく応急修理中のメビウス・ゼロとストライクのみ。

 彼らの生死はコーディネイターのキラにかかっていた。

 

 ◆◆◆

 

 「要塞攻略装備なんて反対です!!我々の目的は地球軍の新型戦艦とMSの破壊のはずです!!」

 

 頭に包帯を巻いたままのニコルがクルーゼに直訴する。

 このまま戦闘が開始されればヘリオポリスが破壊されるとニコルは知っている。

 もし違う未来になったとしても、コロニー内で戦闘を行えばどうなるかは目に見えていた。

 

 「ではニコルはどうしろというのだ?彼らを黙ってコロニーから脱出させるとでもいうのかな」

 

 クルーゼは相変わらず仮面で表情が見えない。

 彼はコロニー内という民間人が多く居住する場所で、対艦ミサイルでの攻撃を行いアークエンジェルを破壊するつもりだ。

 無論その場合ヘリオポリスは破壊されるだろうが、中立を宣言しながら秘密裏に地球軍と共同でMSと搭載母艦を製造していたヘリオポリスに容赦する必要はない。

 それが一番危険が少ないと誰もが思うだろうがニコルは知っている。

 この戦闘はミゲルをはじめ、多数の戦死者を出して失敗する。

 だから何があってもコロニー内での戦闘を回避しなくてはいけない。

 

 「僕が出ます。僕の奪ったブリッツは接近戦用です。この機体なら敵MSを足止めできます」

 

 「ニコルがコロニーに損害を与えたくない気持ちはわかるが今が絶好の機会なのだ。だが出撃は許可しよう。君がMSと母艦を落せば我々も無駄な殺戮を回避できる」

 

 クルーゼは最大限の妥協をしてくれた。

 その事を察したニコルは敬礼して格納庫へ向かう。

 立ち去るニコルの背を見ながらアデスが呟いた。

 

 「よろしいのですか?」

 

 「戦意が高いのは結構な事じゃないか。それにあの艦は大人しく降伏などしてくれんよ。ヘリオポリスが瓦礫になる前に決着がつく事を期待しよう」

 

 ◆◆◆

 

 「どういうつもりだ?MSの奪取任務が終わったのにまだ手柄が欲しいのか?」

 

 発進格納庫は無重力下にある。

 宙に浮かび飛ぶニコルの前をミゲルが追いつき、ニコルを不思議そうに見つめていた。

 出撃準備中のミゲルがニコルを訝しる。

 それはそうだろう。

 ミゲルから見ればニコルは自分の任務をやりとげたのだから、ヴェサリウス艦内で休息するのが当たり前だ。

 ミゲルとニコルの関係は良好だが、今回の行為でミゲルはニコルに疑念を抱いた。

 ニコルは怪しまれても仕方ないと思っているが、まさか貴方を助けるつもりですとは言えない。

 ニコルが返答に困っていると後ろからアスランの声が聞こえた。

 

 「俺も出る。隊長の許可は取った」

 

 そう言ってアスランはニコルの肩を叩いて耳打ちする。

 

 『ニコル、少しだけストライクのパイロットと話をさせてくれ』

 

 『どういう事ですか?』

 

 『もしかしたらストライクのパイロットは俺の知り合いかもしれない』

 

 『わかりました。僕がストライクに接近戦を挑んでいる間に話してください。ただし短時間でお願いします』

 

 『……すまないニコル』

 

 ニコルとアスランの内緒話を見ながらミゲルがぼやく。

 彼から見れば勝手についてくるといいながら、何をもたもたと時間をかけていると思っているのだろう。

 

 「まったくどいつもこいつも。付いてくるんだから足手まといにはなるなよ」

 

 そう言ってミゲルは発艦準備に入ったジンへ乗り込んでいく。

 その後ろ姿を見送りながら、ニコルは自分の無力さを痛感していた。

 後ろではエマとジャンヌがニコルとミゲルの会話を見ていた。

 

 「ねえ、ニコルってあんなに好戦的だった?」

 

 「戦闘とかになると気分が高揚するタイプではないか?だがアスランと一緒に出撃か。あの二人今回もコンビを組むとはな。クルーゼ隊長に信頼されていて羨ましい」

 

 「あっちは赤服だから仕方ないでしょ」

 

 エマとジャンヌもニコルが負傷を負いながら出撃を志願した事を訝しんでいた。

 普段は温和で人当たりが良いニコルが訓練や戦闘になるとストイックになる事は知っていたが、今回は明らかに行き過ぎだ。

 ニコルの負傷はけして軽いものではなかった。

 ナチュラルなら入院レベルの負傷もコーディネイターのニコルは短時間の休憩で若干癒える。

 それを差し引いても重傷なのに無理をしている。

 パイロットだけでなく、整備員にとってもニコルの行動は不思議でしかないと思っている。

 

 当のニコルは周りの評価なんて気にしていない。

 パイロットとしてニコルは自分の事を赤服に相応しい実力者だと思っているし、ザフト全軍でもニコルに勝てるパイロットはそう多くはない。

 その自分に勝ったナチュラルのパイロット。

 余程の実力者だろう。

 そのパイロットとアスランが知り合いかもしれないという。

 アスランは月で親しくしていたナチュラルがいると言っていた。

 そのナチュラルの子供。

 コーディネイターのキラ・ヤマト。

 アスランから散々愚痴のように聞かされて。

 キラの話をしている時、アスランはとても楽しそうだった。

 アスランの話だとキラはとても穏やかで戦いには向いていない優しい性格だから、キラとは別の知り合いだろうとニコルは思っていた。

 

 (僕は……)

 

 ニコルはまた自分の実力不足のせいで仲間を失うかもしれない恐怖を感じた。

 今回出撃しないが、イザークもディアッカも今後戦死する可能性は十分にある。

 この世界は自分の知る未来とは別の未来へと転げ落ちている。

 戦死していたはずのエマとジャンヌが生き残り、別の誰かが死ぬかもしれない。

 だが今は戦いに集中しなければならない。

 それが今の自分にできる精一杯の事なのだから。

 ニコルはブリッツに乗り込む。

 懐かしい黒い機体は偵察と強襲に特化している。

 この機体ならコロニーに大損害を与えることなく最新戦艦と手ごわいMSにも勝てるだろう。

 仲間を守る為に勝つしかないのだ。

 

 『カタパルト接続、システムオールグリーン。発進準備ヨシ。無事の帰艦を祈ります』

 

 「ありがとう。ニコル・アマルフィ。ブリッツ発進します!!」

 

 「アスラン・ザラ。イージス発進する!!」

 

 ニコルのブリッツとアスランのイージスが発進した。

 目指す目標はアークエンジェルとストライク。

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