【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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キラ曇らせポイントの一つヘリオポリスの崩壊です。
自分の住んでいた町が消え去るというのは我々の想像を超えたストレスで、家や町を無くした被災者の方々にしかわからない状態になるそうです。
ずっと続くと思っていた平和な日常がある日突然消え去る。
キラの絶望はどれほどのものでしょう。


第18話 ヘリオポリス崩壊

 第18話 ヘリオポリス崩壊

 

 「敵MS発進を確認。数は8です」

 

 「コリントス発射準備。データ諸元入力。間違えてもコロニーに当てるなよ!!」

 

 ナタル・バジルール少尉の命令で対空防御ミサイルコリントスM144が発射準備に入る。

 アークエンジェルはコロニーに攻撃できない。

 一刻も早くヘリオポリスから脱出しなくてはいけない。

 

 「フェイズシフト装甲に実体弾は効かないわ。主砲発射準備」

 

 フェイズシフト装甲が施されたジンを破壊するべくマリュー・ラミアス大尉の命令でゴットフリートMk.71、225㎝連装高エネルギー砲も発射準備される。

 コリントスもゴットフリートもコロニー内で使用していい武器ではないが無抵抗で沈む訳にはいかない。

 そんな躊躇を吹き飛ばす装備を持ったジンとXナンバーを見てムウ・ラ・フラガは毒づく。

 彼らは拠点攻撃用の大型ミサイルランチャーや特火重粒子砲を装備していた。

 

 「どうやらあっちはコロニーと一緒にアークエンジェルを沈めるつもりのようだぜ!!艦長、俺はメビウスで出る」

 

 「大尉無茶です!!」

 

 「無茶でもやるしかないんだよ!!」

 

 ムウはCIC(戦闘指揮所)から立ち上がり格納庫へ向かう。

 通常装備のジンならやりようがあるが、拠点攻撃装備をしてくる以上、彼らの意図は明白だ。

 たとえ中立コロニーを完全破壊してでもアークエンジェルを沈めるつもりだ。

 パイロットスーツのメットをロックしたムウは愛機メビウス・ゼロに乗り込んだ。

 

 「待ってください!!まだ無理ですぜ!!」

 

 「出なきゃやられるだろうが!!」

 

 整備員のコジロー・マードック軍曹が慌てて止めるがムウは聞こうとしない。

 メビウス・ゼロは応急修理が終わった状態だが一度の戦闘くらいなら出来ると判断した。

 ここで出撃しないとアークエンジェルはヘリオポリスから脱出できないのだ。

 それに民間人のキラ・ヤマトがMSで出撃するというのに観戦していられる余裕もない。

 

 格納庫にはまだパイロット・スーツを着ていないキラ・ヤマトがいた。

 

 「どうしてまた僕が戦わなくちゃいけないんだ!!」

 

 キラは数時間前まで平和な中立コロニーの学生だった。

 それなのに突然戦闘になって、戦争に巻き込まれていて。

 友達を守る為に戦って。

 怨念のような殺気を放つ黒いガンダムと戦って。

 あんな憎しみを今まで向けられた事は無かった。 

 心優しい両親に愛されて、とても仲の良い親友もいてヘリオポリスでも友達に恵まれて。

 その自分がどうして。

 

 「どうしてこんな事に!!」

 抑えようのない怒りと苦悩をキラは格納庫の壁にぶつけた。

 

 ◆◆◆

 

 「足つきから出撃したのはメビウス・ゼロとX105の二機だけです」

 

 アデスの報告にクルーゼは冷笑する。

 あんなボロボロの機体でこちらに挑もうとは愚かな奴だ。

 ムウ・ラ・フラガを自分で落とせないのが残念だが仕方がない。

 こちらはジンが六機にXナンバーが二機。

 万が一にも取り逃がしはするまい。

 

 アークエンジェル側に察知されないようにコロニーから離れているヴェサリウスもガモフも、傭兵達との戦闘で船足に損害が出ていた。

 アークエンジェルが本気を出せば取り逃がす可能性もある。

 ここで確実に仕留めたいところだ。

 

 「期待しているぞ、アスラン、ニコル」

 ヘリオポリスコロニー内では、大型ミサイルを発射する六機のジンをコリントスミサイルとイーゲルシュテルンで迎撃するアークエンジェルの死闘が始まっていた。

 ジンのミサイルを回避しきれず着実に損害を受けるアークエンジェルをキラとムウが必死に守る。

 コロニー外へ出れば快速艦アークエンジェルは振り切れるだろう。

 キラは必死に15.78m対艦刀「シュベルトゲベール」を振るい一機のジンへ切りかかろうとした。

 それはジャンヌ搭乗のジンだ。

 ジャンヌは特火重粒子砲を撃ちながらシュベルトゲベールから逃れようとする。

 

 「来るな!!来るな!!」

 

 「うわああああ!!」

 

 キラの操縦するストライクがジャンヌのジンに追いつきシュベルトゲベールを振るう。

 ジャンヌは慌てて回避するも特火重粒子砲と両足をシュベルトゲベールで切り飛ばされた。

 キラは返す刀でジャンヌ機に切りかかろうとするが。

 

 「ジャンヌ下がってください!!」

 

 ニコルのブリッツが3連装超高速運動体貫徹弾「ランサーダート」を発射してキラの攻撃を防いだ。

 その隙にジャンヌのジンはコロニー外へと逃走する。

 

 「またキミか!!」

 

 キラは目の前に現れた因縁の黒いガンダムにシュベルトゲベールを構え切りかかるが、ブリッツは右手にビームサーベル左手からロケットアンカーのグレイプニールを用いてキラを牽制するだけで攻撃してこない。

 傍から見ればストライクの攻撃にブリッツが押されているように見えるが、明らかに敵対するつもりはないらしい。

 

 「どういうつもりだ」

 

 ストライクのコクピットでキラはブリッツの意図を掴みかねていた。

 その時、ストライクの背後に回ったイージスから親友のアスランの声が聞こえる。

 

 「キラ!!キラ・ヤマト!!」

 

 「アスラン!?アスラン・ザラなのか!?」

 

 「キラ!!やっぱりキラなのか」

 

 大型ミサイルがコロニーのシャフトに命中し落下してくる。

 二人は巧みに避けて悲しい再会を果たした。

 別れた時は親友で、再会したとき。

 二人は敵同士になっていた。

 

 「なぜ…なぜ君が!ヘリオポリスにっ!!中立のコロニーにこんなひどい事を!!」

 

 「お前こそどうしてそんなものに乗っている!?コーディネイターの君がなぜ地球軍のモビルスーツなんかに!!」

 

 二人の会話を聞きながらニコルは深い悲しみに包まれた。

 アスランが話しているのは彼の親友のキラ・ヤマトでありヘリオポリスに住んでいたのだ。

 アスランが語ってくれたキラ・ヤマトという少年は穏やかで少し抜けているけど優しい人という印象だった。

 先ほどの会話からもキラ・ヤマトが自分から兵士になったとは考えにくい。

 地球軍のMSに乗り込んでいるという事は徴兵されたのだろうか?

 それはまずありえない。

 コーディネイターを敵視する地球軍がキラ君を兵士にするとは考えられない。

 何か事情があるのはわかるが今は戦闘中だ。

 ニコルはアスランに辛い選択を強いた。

 

 「アスラン。ストライクにすぐに降伏勧告をしてください。または撃墜してください。そうでないとヘリオポリスが破壊されます」

 

 「………」

 

 「アスラン!!」

 

 ニコルの呼びかけにアスランが答えない。

 迷っているのだろう。

 ニコルも相手が親友だったらすぐに判断できない。

 

 「アスラン!!」

 

 ニコルが再度の呼びかけを行った瞬間。

 アークエンジェルから発射されたコリントスミサイルがイージスとブリッツへと向かってくる。

 ニコルとアスランが反射的にかわしたミサイルがコロニーのメインシャフトに直撃し、シャフトが折れてヘリオポリスに亀裂が入る。

 それと同時に民間人を乗せた脱出用シャトルがヘリオポリスから一斉に発射された。

 ヘリオポリスが崩壊の軋み声をあげた瞬間。

 住宅街だった平和な街が。

 リアカーが走っていた道路が。

 数時間前まで子供たちが遊んでいた緑の公園が崩壊した。

 

 「うああぁぁぁぁーー!!」

 

 キラが愛したヘリオポリスが破壊される。

 大切な思い出の場所は宇宙に漂う瓦礫と化してしまった。

 キラの叫び声はアスランとニコルの耳にも届いていた。

 助けようとイージスで追いかけようとするアスランだが、乱気流に阻まれてストライクに追いつく事はできない。

 

 「逃がさない!!」

 

 ニコルはブリッツの左腕に装備されたロケットアンカーのグレイプニールを発射して、宇宙の闇へと流されていくストライクの足を捕らえる。

 そしてスラスターを全開にして強引に引き寄せた。

 

 「キラ・ヤマト……アスランができないなら」

 

 ニコルはアスランに親友殺しをさせたくなかった。

 たとえアスランに恨まれてもいい。

 出会いが違えば親友になれたかもしれない男の子の命を奪おうとしている。

 戦争だから。

 地球軍は敵だから。

 キラ・ヤマトが自衛のためとはいえ、ニコルの戦友を何人も倒した敵だから。

 ニコルは自分にそう言い聞かせてビームサーベルを抜いた。

 

 「許してとは言いません。恨んでください」

 

 アスランの親友を殺すことを心の中で懺悔して。

 ニコルはビームサーベルをストライクに振り下ろした。

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