【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回は学園パートです。
多分ニコルは自分の事では怒らないけど、愛する人が侮辱したら怒ると思うんですよね。
普段大人しい子を怒らせると怖いという話です。


第2話 アスラン・ザラ

 第2話 アスラン・ザラ

  

 アカデミーでの生活は厳しい。

 早朝に起床するのは勿論、常に部屋が清潔か毎日点検される。

 寮内の売店以外で購入した菓子や茶の類以外のものがあれば厳罰だ。

 勉強も座学から体育まで厳しく訓練される。

 アカデミーというがここは軍隊の訓練所でニコル達は全員軍人だ。

 戦争中なので訓練期間が短縮されたから、さらに厳しい授業が課される。

 徹底的に体育が重視されるのは体力が無いと極限化で冷静な判断が出来なくなる為。

 コーディネイターと言っても身体能力は鍛えないとナチュラルに劣る。

 そう教わっているのでコーディネイターでも耐えがたい体力づくりが行われた。

 その中でも抜群の成績を維持しているのは当然アスランだ。

 ナイフを用いた戦闘訓練や射撃などは常にトップの成績でアカデミーの女子にももてる。

 もてるのだけどストイックな性格と無口で口下手なのが災いして大抵は遠目で見ているだけだ。

 アスランには婚約者がいてプラントでも有名な歌姫のラクス・クラインだと知れば誰でも諦めるだろう。

 僕もラクス様の歌は大好きで、機会があれば隣でピアノを弾いてみたい。

 

 アスランほどでは無いけどニコルにいい寄る女生徒は結構いる。

 どうやらニコルはアスランの代わりというかおまけというか。

 ニコルは母が選んでくれた顔立ちと緑の髪が好きだから褒められるのは嬉しい。

 だがニコルは女の子と遊ぶためにここに来たのではない。

 

 それがある事件を引き起こした。

 その日休憩時間女生徒に校舎裏まで呼び出される。

 そこには5人の男子生徒と、先日ニコルが交際を断ったオレンジ色の髪をした女生徒がいた。

 

 「お前よくもエリザに恥をかかせてくれたな」

 

 「何のことですか?」

 

 そう言いながらニコルは大体事情を察する。

 エリザという女生徒はニコルが交際を断った少女で、怒っている男子生徒は友達だろうか。

 

 「エリザはな。お前に本気で惚れていたんだぞ。それを弄びやがって」

 

 「交際を断った事は謝罪しますが弄んだつもりはありません」

 

 オレンジ髪の少女が泣き崩れるがそれが演技だとニコルはすぐに気が付く。

 どうやら自分が交際を断られた復讐の為に、仲の良い男子生徒を煽ってニコルをリンチさせたいと思ったのだ。

 ニコルはエリザさんとの交際を断った事が正しかったと思い心の中でため息をつく。

 外見はコーディネイトできても内面の醜さは不可能だと知った。

 

 「いつもアスランの背中に隠れやがってこのキャベツ頭。どうした、かかってこい。それともアスランがいないと喧嘩の一つもできないか?」

 

 そう言ってニコルを取り囲む5人。

 喧嘩というのは1対1で行う物だと思っていたけど相手にそのつもりは無いらしい。

 

 「どうせ今の成績も父親のお陰だろ?お前はアスランがいなきゃ何もできないキャベツ頭だからな」

 

 ニコルの父親はプラント最高評議会議員で工学エンジニアであり、MSの設計局や工場が集中するマイウス市の代表だ。

 科学者兼政治家を務める立派な父親で家ではよく機械工学の事を話してくれたので、ニコルが爆発物処理や機械について詳しいのは父親の影響が大きい。

 けして息子の成績を後ろで不正操作するような人物ではない。

 そして先ほどからキャベツ頭と連呼されているのにもニコルは腹が立っていた。

 ニコルは母が選んでくれたこの緑髪が大好きだからだ。

 

 「僕の事を侮辱するのは構いませんが、父さんと母さんの事を悪く言うのは許せません」

 

 ニコルは握り拳を作り構えを取る。

 その時だった。

 

 「それだと俺も親の七光りという事になるな」

 

 そう言ってアスランがニコルの背後から現れる。

 アスランが登場した事で喧嘩は5対2になった。

 アスランがニコルの背中に背中を合わせて身構える。

 普段から無口なアスランから怒りの空気が伝わった。

 緊張が走るなかでアスランがニコルにささやく。

 

 「ニコル、2人任せていいか?」

 

 「勿論です」

 

 「なら俺は3人だ」

 

 アスランがそう言うと同時にニコルとアスランは5人に向かって走り出した。

 相手の5人は数を頼りにニコル達に襲い掛かってくる。

 お互いの戦闘力が同じなら5対2ではニコルたちに勝ち目はない。

 ランチェスターの法則によれば相手の5人は5×5=25の戦力でニコルとアスランは2×2=で4の戦力。

 つまりニコルとアスランはボコボコに殴られて終わりになる。

 ただしそれは同じ強さだという条件の話。

 アスランの強さは常人を遥かに超えていた。

 

 「ぎゃあ!!」

 

 挑んできた相手の拳を軽々と避けたアスランは右ストレートで相手の頬を殴る。

 頬骨を砕かないのはアスランの恩情だろう。

 そのまま3人相手に殴りかかるアスラン。

 殴り合いじゃなくて一方的な殴りになっていた。

 ニコルも負けてられない。

 リーダー格の大柄な男子に正面から殴り掛からず円を描くように身体をずらし相手のミスを誘う。

 怒りに震えるリーダーと取り巻きがニコルを追う。

 取り巻きが大柄なリーダーから少し離れるように誘導している事に気が付かないようだ。

 リーダーから離れた取り巻きの隙をついてニコルは取り巻きの腹に体重とスピードを乗せた肘うちをする。

 ゴリって嫌な音がして肘が腹をえぐる。

 取り巻きは腹を押さえながら胃液を吐き出して床で痙攣していた。

 そしてリーダーに正面から対峙する。

 

 「やるじゃねえかキャベツ頭」

 

 ゴキゴキと指を鳴らしながらリーダーがニコルに突撃してきた。

 そして太い腕から繰り出された右拳がニコルを襲う。

 ニコルは拳を左手で受けつつ威力を逸らし、リーダーの顔面に拳を繰り出した。

 そのニコルの拳をリーダーが左手で受け止める。

 そして動きが止まったニコルを思いきり蹴った。

 お腹に蹴りが命中し空気が吐き出される。

 腹筋を鍛えてなかったらもっと酷い状態だっただろう。

 そのまま両手で地面にニコルをねじ伏せようとするリーダー。

 

 「ニコル!!」

 

 3人を倒したアスランがニコルに加勢しようとして駆け寄ってきてくれた。

 

 「来ないでアスラン!!こいつは父さんと母さんを侮辱した!!父さんと母さんを侮辱したこいつだけは、僕が決着をつけないと怒りが収まらない!!」

 

 ニコルがそう叫ぶとアスランはニコルとリーダーの戦いから離れる。

 アスランの気持ちに感謝しながらニコルは背中と足に力を入れて立ち上がり、リーダーの身体をのけ反らせる。

 ニコルにそんな体力があると思わなかったのだろう。

 そして無防備になったリーダーの腹にニコルは拳をめり込ませた。

 

 「よくも父さんと母さんを侮辱したな!!」

 

 ニコルはリーダーのお腹を何度も殴る。

 固い腹筋を殴り続けるとリーダーが倒れた。

 ニコルが馬乗りになってリーダーの顔面に拳を叩きこもうとしたとき。

 

 「やめろニコル。もう勝負はついた」

 

 アスランに手を握られて止められる。

 周りには倒された5人とガタガタと震えるオレンジ髪の女生徒だけ。

 アスランがその女生徒の胸倉を掴んだ。

 

 「いいか?お前が何を吹き込んだのか知らないが、お前たちが恋愛ごっこをしている間もニコルは必死になって身体を鍛えて勉強に励んでるんだ。今度俺の友達に手を出してみろ。女でも俺は容赦しないぞ」

 

 そう言って女生徒から手を離すアスラン。

 ゲホゲホと咳き込む女生徒を見ながら、アスランの方がやりすぎだよと思いニコルは微笑む。

 そうしている間に騒ぎを聞きつけた教官がやってきて、ニコルとアスランは直立不動の姿勢を取った。

 ニコルとアスランは一発ずつ平手うちを受け1日反省室に入る事を告げられる。

 5人は病院送りのあとどうなるのか。

 退学かそれに準ずる扱いになるだろう。

 

 「優等生のお前たちが喧嘩騒ぎとはな。しかしよくやったぞ。それでこそザフトの軍人だ」

 

 そう言ってニコルとアスランを平手うちした教官は笑う。

 多分教官もこういう経験があるのだろう。

 

 ☆☆☆

 

 「まったく。5人で1人を相手に喧嘩騒ぎとは情けない奴らめ」

 

 そう言って銀髪で整った顔立ちのイザークと金髪で浅黒い肌をしたディアッカは校舎の陰から一部始終を見ていた。

 

 「そう言いながら自分も参加する気まんまんだったじゃないか」

 

 そう言いながらディアッカが楽しそうに笑った。

 彼らも参加するのに出遅れた口だ。

 

 「まあいい。あのキャベツ頭が両親を侮辱されて頭を下げるような臆病者で無いことはわかった。俺があいつなら5人全員地面に這いつくばらせてやったところだ!!」

 

 「そうカッカするなって。本当はアスランに先を越されたのが悔しいんだろ?」

 

 ルームメイトのいつもの激昂に慣れたディアッカはやれやれといった表情でイザークを宥める。

 

 「うるさいうるさい!!アスランの名前を出すな!!」

 

 アスランとイザークとディアッカは後にニコルと固い友情で結ばれる事になる。

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