【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回は多少アークエンジェルの戦闘シーンが入ります。
アークエンジェル好きなんですよね。
対MS戦闘を考慮されてるので武装が物凄いですし。
本当に民間人の少年少女と急ごしらえのクルーとは思えません。
あとナタルさんはもっと評価されるべき。


第20話 獅子奮迅

 第20話 獅子奮迅

 

 ヴェサリウスにあるクルーゼの私室をニコルが訪ねていた。

 ニコルには前世の記憶がある。

 クルーゼ隊の目下の急務は、ヘリオポリスから脱出したアークエンジェルを追撃して破壊する事だ。

 ブリッツは大破して修理がまだ間に合わない。

 それでもニコルの戦意は衰えていなかった。

 

 前世と違う所はブリッツが大破した事と、傭兵達との交戦でヴェサリウスとガモフの推進力が落ちているという事だ。

 無論クルーゼはそれを悟らせるほど迂闊ではなかった。

 アークエンジェルはヴェサリウスとガモフが依然健在だと思っている。

 アークエンジェルは一刻も早く大西洋連合の基地である月へと向かわなくてはいけない。

 だが彼らに残された戦力はキラのストライクガンダムとムウのメビウス・ゼロだけだ。

 もう一度交戦すればアークエンジェルは撃沈される可能性が高い。

 交戦を避けるためにアークエンジェルが取るべき道は近くにある地球連合のアルテミス要塞だ。

 

 月かアルテミスか。

 交戦を覚悟で月へ向かうか、安全策でアルテミス要塞へ逃げ込むか。

 ニコルはアークエンジェルがアルテミス要塞へ逃げ込むのを知っている。

 

 「君は足つき(アークエンジェルのザフト側の仮称)がアルテミスへ逃げ込むと言うのだな?」

 

 「はい。彼らに残された戦力は少なく、我々と交戦すれば撃沈されると判断すると私は思います。彼らはヴェサリウスとガモフの速度が低下していると知りません。ですから安全なアルテミスを目指すと思います」

 

 「私もそう思う。だが確信が持てなかった」

 

 クルーゼもアルテミスへ逃げると確信していたが、ニコルの進言を聞いて自分と同じ判断をした部下に感心していた。

 無論それは買い被りで、クルーゼはニコルが前世の記憶を持つ事を知らない。

 

 「いいだろう。君の進言を採用しよう」

 

 「ありがとうございます」

 

 敬礼してニコルはクルーゼの部屋から退室する。

 ニコルはこの作戦が失敗する可能性があると知っている。

 前世ではイザーク、ディアッカ、アスラン、ニコルの四人がかりでもストライクを倒せなかった。

 特にアスランの戦意が著しく低い。

 アスランがキラを仕留める事が出来ないとニコルは知っている。

 だがニコルはアスランがそうする事を咎めるつもりは無かった。

 自分だってアスランが敵になったとしたら撃てるか自信がない。

 

 ◆◆◆

 

 クルーゼはニコルの進言を受け入れ、ヴェサリウスで頭を押さえガモフで後ろを突く作戦を立てた。

 アークエンジェルが本気で逃走すれば機関部に損害を受けたヴェサリウスとガモフでは振り切られただろう。

 だが戦闘経験の差でクルーゼはマリュー・ラミアスに勝っていた。

 イザークのデュエル、ディアッカのバスター、イージスのアスラン、エマのジンが出撃する。

 その後姿をニコルとミゲルとラスティとジャンヌがヴェサリウスの艦内から見送った。

 

 「ま、これで王手だな。Xナンバー三機とジンが一機。負ける要素が無いだろう」

 

 ヘリオポリスで重傷を負ったラスティは一命をとりとめたが出撃に耐えれる状態で無かった。

 そのため彼は後方待機を命じられていたのだ。

 そんなラスティを見てニコルは複雑な表情を浮かべた。

 ニコルは四人が無事に帰艦する事を願っていた。

 ストライクのパイロット、キラ・ヤマトの能力を知るニコルは四対一でも倒せないと知っている。

 

 「ニコル、何辛気臭い顔してるんだ。どう考えたってこっちの勝ちだろ?」

 

 ラスティの言葉にミゲルも同意した。

 彼もまた負傷した身である。

 そう、普通なら圧勝だ。

 だがニコルはアスランがキラを撃てない事もわかっているのだ。

 アスランは兵士になるには優しすぎる。

 親友を撃つなんて出来はしない。

 

 「……」

 

 ニコルは無言のまま、ただじっとモニターを見つめているだけだった。

 

 ◆◆◆

 

 「こちらディアッカ。こいつら手ごわいぞ!!」

 

 「まったくもう!!馬鹿みたいに武装付けてハリネズミかっての!!」

 ディアッカのバスターとエマのジンがアークエンジェルを攻撃しているがアークエンジェルの反撃に手を焼いていた。

 アークエンジェルはコリントス対空防御ミサイルとバリアントリニアカノンを正確に撃ち続けていた。

 

 「アンチビーム爆雷発射!!イーゲルシュテルンはMSを艦に近づけるな!!ヘルダートは自動発射に切り替えろ!!」

 

 ナタル・バジルール少尉の的確な迎撃命令にイザークとエマは遠距離射撃しか出来ない。

 獅子奮迅。

 アークエンジェルは最新鋭艦であると同時に対MS戦闘を考慮されているとはいえ実力以上の能力を発揮していた。

 まさか急ごしらえのクルーと先ほどまで民間人の少年少女が戦っていると思えない。

 

 「くそっ!こいつら!!」

 「なんて奴等よ!!」

 

 ディアッカは舌打ちしたくなる気持ちを抑えた。

 この場にはいないがアスランもイザークも苦戦しているだろう。

 だが、アスランとイザークが来れば状況は変わるはずだ。

 まさか二人がかりで一機のXナンバー相手に手間取るはずもない。

 だがそのまさかになっていた。

 キラはイザークとアスラン相手に互角以上の戦いを繰り広げていた。

 

 ◆◆◆

 

 「同じコーディネイターのお前がなぜ僕達と戦わなくちゃならないんだ!!なぜナチュラルの味方をするんだ!!」

 

 「僕だって戦いたくはない!!でもあの艦には仲間が、友達が乗っているんだ!!君こそなんでザフトになんか!!戦争なんか嫌だって、君も言っていたじゃないかっ!!」

 

 アスランはなおもキラを説得しようとしていた。

 だがキラにはアスランの説得に応じられない理由がある。

 トールがサイがミリアリアがカズイがキラと一緒に戦うと言ってくれた。

 キラは友達を見捨てる事ができない少年だった。

 

 「なにをモタモタやっている!?アスラン!!」

 

 イザークの目にはアスランがストライクとの交戦に苦戦しているように見えた。

 アスランの実力を高く評価しているイザークはストライクが余程のパイロットに見えたのだろう。

 ビームライフルで威嚇しつつストライクへ迫る。

 

 「手に負えないなら俺が貰う!!下がってろ!!」

 

 そのままイザークのデュエルとストライクは交戦に入る。

 キラは覚悟を決めてビームライフルを撃つがイザークはそれを易々とかわす。

 流石ザフトレッドと言うべきだろう。

 Xナンバーの性能が良いと言っても、並みの兵士では高性能を生かしきれない。

 イザークだからデュエルの性能を引き出せる。

 

 「キラ!!」

 

 「アスランッ!!」

 

 イージスも交戦に加わってストライクを追い詰めにかかる。

 キラは必死に操縦桿を操作してデュエルから逃れようとした。

 だが操縦技術はイザークが勝っていた。

 ついにデュエルのビームサーベルがストライクを捕らえる。

 ストライクに乗ったキラが衝撃に叫ぶ。

 

 「うわああああっ!!」

 

 「キラ!!」

 

 この時イージスが躊躇せずストライクを撃っていれば間違いなく撃墜できただろう。

 だがアスランはキラを撃つことができなかった。

 その一瞬の隙を突いてアークエンジェルがコリントス対空防御ミサイルを撃ち込む。

 いつのまにかストライクはデュエルから逃れるのに必死でアークエンジェルの防空圏に入っていたのだ。

 その隙を見逃すほどマリュー・ラミアス艦長は狼狽をしていなかった。

 回避する余裕のないデュエルに向かって無数のミサイルが襲った。

 

「くっ!?」

 

「イザーク!!」

 

 爆煙に包まれるデュエルを見てアスランが叫んだ。

 

 「……大丈夫だ!それよりあいつを追うぞ!!」

 

 デュエルはスラスターを全開にしてミサイルの間を縫うように飛ぶ。

 だがその間にもアークエンジェルからの攻撃は続く。

 

 「邪魔をするなぁ!!」

 苛立ちの声を上げてイザークはビームライフルを放つ。

 コリントスミサイルが数発ビームライフルを撃墜するがそこまでだった。

 ストライクのビームライフルがデュエルを捉え命中した。

 

 「くそお!!何をやっているんだアスラン!!」

 

 イザークの苛立ちの声が聞こえる。

 そして彼らに撤退命令が出された。

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