【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回はムウさん有能回ですね。
あとキラのストライカーパック装着回でもあります。
前回でかなりのダメージを負ったクルーゼ隊なのでキラにはイザークとアスランしか向かえなかったという設定です。
基本的にニコルはアスランが大好きなので、アスランが親友殺しを出来ないさせたくないという行動を取ります。


第21話 辛勝

 第21話 辛勝

 

 ヴェサリウスに乗っていたニコル、ラスティ、ミゲル、ジャンヌは突然の激しい振動と揺れに、頭と背中を打ち付けられた。

 ニコルの目に一瞬映ったのはオレンジ色のメビウス・ゼロ。

 

 「あいたたた。いったい何が!?」

 

 衝撃で頭を壁と天井にぶつけたジャンヌが頭を押さえて呻く。

 それと同時にヴェサリウス艦内に警報が鳴り響く。

 

 「機関区損傷大!!推力低下!!第五ナトリウム壁損傷!!火災発生!!ダメージコントロール、隔壁閉鎖!!」

 

 同じく壁に叩きつけられたミゲルが胸を押さえている。

 その横ではラスティも壁に手をついて呼吸を整えていた。

 その時、通路の向こうから一般兵が走って来た。

 彼は息を切らしながら叫ぶように言う。

 

 「機関区の消化急げ!!ガスが発生しているぞ!!」

 彼の声には焦りの色があった。

 それは今の状況が芳しくない事を示していた。

 彼は額に流れる汗を拭う事もせずに状況を報告する。

 

 「本艦は危険です。最悪の事態もありえますので大至急退避してください!!」

 

 その声を聞いてニコルはミゲル達と格納庫へ向かう。

 パイロットは優先的に避難しなくてはならない。

 格納庫は一機でも多くのMSを退避させようと整備兵が飛び回る。

 ニコルは整備主任に事情を聞く。

 

 「ブリッツの様子はどうですか!?」

 

 「修理は80%といった所です!!すぐにガモフに拾ってもらってください!!」

 ニコルはブリッツで、ミゲル達は連絡艇でヴェサリウスを脱出する。

 その瞬間大出力の陽電子砲がヴェサリウスをかすめた。

 

 ◆◆◆

 

 「ローエングリン。一番二番第二射発射準備」

 

 「すぐには無理です」

 

 陽電子砲ローエングリンの第一射でヴェサリウスを大破に追い込んだマリュー・ラミアスはローエングリンの二度目の発射を断念し、キラのストライクとムウのメビウス・ゼロの支援射撃に専念する。

 225cm2連装高エネルギー収束火線砲「ゴットフリートMk.71」

 110cm単装リニアカノン「バリアントMk.8」

 75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」

 あらゆる火器がディアッカとエマ機に襲い掛かり、両機とも退却を余儀なくされた。

 そしてデュエルとイージスも苦戦から敗走へと移る事になる。

 

 「イザーク!!撤退命令だぞ!!」

 「うるさいうるさい!!二対一で落とせないなんて屈辱あるかよ!!」

 

 「もうエネルギーが少ない。このままだとガモフにたどり着けなくなるぞ」

 

 「せめてあいつだけは仕留める!!」

 

 「イザーク!!」

 

 尚もストライクに攻撃を仕掛けるイザークのデュエルだが状況は著しく不利になりつつあった。

 だがストライクも電源が切れる。

 フェイズシフトが解かれ鋼鉄色の機体に戻る。

 ストライクのコクピットではキラが電源の落ちた状況にパニックになりかけていた。

 

 「キラ!!キラ応答して!!」

 

 アークエンジェルからミリアリアの悲痛な叫びが聞こえる。

 その声を聞きながらキラの心臓が、殺される恐怖に早鐘のように打つ。

 

 (僕はここで死ぬのか?こんなところで?)

 

 その時だった。

 目の前を赤い閃光が通過したと思った瞬間、ストライクは後方へと吹き飛ばされていた。

 アスランだ。

 無論アスランはストライクを破壊しようと攻撃したのではない。

 確実に戦闘力を奪い捕獲しようとしたのだ。

 

 「キラ!!このまま来るんだ!!」

 

 「嫌だ!!僕はザフトになんかいかないぞ!!」

 

 「いいかげんにしろ!!血のバレンタインで母は死んだ。俺はこれ以上大切な人を失いたくないんだ」

 

 「───アスラン」

 

 アスランの気持ちに気が付いたキラ。

 このまま親友に連れていかれる。

 その時ミリアリアの悲痛な声が耳に入る。

 

 「キラ!!キラぁっ!!応答してえっ!!」

 

 キラはアークエンジェルに残した親友たちを思い出す。

 このまま捕獲されるわけにはいかない。

 その頃デュエル、イージス共に電力残量が残り少なくなっていた。

 その時アークエンジェルのカタパルトからランチャーストライカーが射出された。

 キラはエールストライカーを離脱させて、コンピュータがストライクとの相対速度を合わせる。

 その時デュエルがビームライフルを発射した。

 

 ───ほんの数秒の差。

 

 パワーパックを装備したストライクのフェイズシフトが間に合いビームの直撃を受け止めた。

 コンピュータ制御頼りなら間に合わなかっただろう。

 キラは自力でパワーパックを装備するとビームランチャーを撃つ。

 それは半狂乱に近い射撃だったがデュエルを後退させるに十分だ。

 たった一機のストライクがMS4機を退けた瞬間だった。

 

 ◆◆◆

 

 大破したヴェサリウスは完全に戦闘力を失った。

 本国へ帰還しなければ航行に支障がでるだろう。

 ガモフに退避したニコル達はガモフのパイロットルームで待機する事になった。

 ニコル達がパイロットルームに入るとイザークがアスランを壁に打ち付けていた。

 

 「貴様ぁ!!なぜあの時撃たなかった!!貴様が撃てば間違いなくストライクは墜とせていたぞ!!」

 

 「やめてください!!今はそんな事を言っても仕方ないでしょう!!」

 

 イザークとアスランの間に入ったニコルがイザークの手をアスランから離そうとした。

 ディアッカもエマも自分がアークエンジェルを落せなかった事が悔しいのだろう。

 二人とも何も言えなかった。

 アークエンジェルさえ落とせばストライクも自動的に堕とせたのだから。

 

 「落ち着けってイザーク。戦場じゃ上手くいかない事もあるさ」

 

 先輩格のミゲルがイザークを説得する。

 ラスティもジャンヌもイザークの手を取ると、イザークは忌々し気にアスランから手を離した。

 

 「くそっ!!次あんな事があったら殴るだけじゃ済まさないからな!!」

 

 そう言ってミゲルとディアッカ達はイザークを慰めようとパイロットルームを出て行った。

 パイロットルームではアスランがニコルから視線を逸らし、腕を振るわせている。

 ニコルはアスランの手を取った。

 

 「アスラン、自分を責めないでください」

 

 「……すまない。俺は」

 

 「いいんです、わかっています。アスランは親友とわかっていて撃てるような人じゃない。アスランは戦闘機械じゃないんですから」

 

 アスランがキラを撃てない事は最初から分かっていた。

 前世もそうだったが今回もそうなるとニコルには最初からわかっていたのだ。

 だからアスランが撃てないなら自分が撃つ。

 ブリッツの修理が終わり次第、今度こそストライクを。

 キラ・ヤマトを殺す。

 そうでないとアスランが殺される。

 

 ニコルには自分が死んだあとの記憶が当然ない。

 あの時アスランがキラに殺されると思った時、咄嗟にアスランを庇って戦死した。

 その後二人が和解した事も、この戦争の行方も知らないのだ。 

 キラ・ヤマトを殺す。

 そうでないとアスランが殺される。

 ニコル・アマルフィはその決意を新たにした。

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