【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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ここから大きく史実から変わっていきます。
この話を書くにあたりロマンティクスを入れようか悩みました(懺悔)
18禁じゃないから仕方ないね。
今回別世界のラクスという反則な話にしていますがこういうのって駄目でしょうか?
もしこういうのが受け付けないという方には今後ご期待に沿えないかもしれません。


第28話 ターニングポイント

 第28話 ターニングポイント

 

 士官室でラクス・クラインという少女は取り調べを受けていた。

 だがその様子に物怖じした雰囲気はない。

 それどころか初対面だというのにマリューやムウを懐かし気に見ているのだ。

 

 「ラクス・クラインさん。プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの娘でプラントの歌姫。今回ユニウスセブンの追悼慰霊の事前調査の為に来ていたと」

 

 「はい。ですが地球軍の艦隊に見つかってしまって」

 

 「護衛艦隊から命からがら脱出したという事か」

 

 「はい。わたくしの知っている事は全てお話しました。ですからキラに会わせてくださいませ」

 

 そこが先ほどから疑問点なのだ。

 キラ本人に問い詰めた所まったくの初対面だという。

 キラ当人はというとヘリオポリス組に根掘り葉掘り聞かれていた。

 特にミリアリアの追及が厳しいがキラはラクスにまったく覚えがない。

 ラクスは一旦士官室を与えられ拘禁はされなかった。

 

 マリュー達も困っていた。

 ラクスは聞くこと全てに素直に答えてくれるから問題はない。

 民間人の彼女は軍事について何も知らない様子で、ザフトが今どんな作戦を実行しているのかまでは聞き出せなかった。

 彼女の望みはキラに会いたい、ただその事だけのようだった。

 ラクスの今後の処分はどうするかについても悩む。

 このままシーゲル・クラインの娘であるラクスを月基地に連れて行けばどうなるか。

 

 「そりゃあ大歓迎されるさ」

 

 ムウが困ったように手をあげる。

 コーディネイターでプラントの歌姫、しかもプラント最高評議会議長の娘とくれば使い道に困ることは無い。

 そうでなくてもコーディネイターの彼女は使い道があるのだ。

 

 「民間人の彼女を戦争に巻き込みたくは無いわね」

 

 そうマリューが呟くとナタルが食いつく。

 

 「では彼らはどうなるのですか?」

 

 スクリーンには休憩中で談笑するキラ達ヘリオポリス組が映し出される。

 トールに肩を抱かれてラクスとの関係を根掘り葉掘り質問されているキラ。

 一時の安寧によって少しだけ日常を取り戻した彼らは警告音一つで戦争に戻る。

 ナタルには致し方なかったとはいえ、彼らをそんな状況に追い込んでしまった負い目が常にあった。

 

 「彼らも民間人です。ラクス嬢はよくて彼らが駄目というのは勝手ではありませんか?」

 

 そう言われるとマリューは言い返せない。

 子供たちを戦場に駆り立てたのは自分たちなのだから。

 

 トール達に散々からかわれ、久しぶりに笑ったキラは暗闇の宇宙空間を眺めていた。

 そしてとても美しくも可愛らしい少女に抱き着かれた事に戸惑い、まだ心臓の鼓動が止まらない。

 

 ゛ハロ ハロ゛

 

 「うわあ!?」

 

 急に目の前にやってきたピンク色のボール型ロボットに目の前を塞がれて、キラはひっくりかえりそうになり、柔らかな感触で受け止められる。

 

 「もう、駄目ですよピンクちゃん」

 

 そう言ってキラの背中を胸で受け止めていたラクスが微笑む。

 ラクスを見ているとキラの心が癒されていくような気がした。

 「君はたしか」

 

 「ラクスですわ」

 

 「ラ、ラクス」

 

 「はい。会いたかったですわキラ」

 

 そう言ってラクスはキラの背中に手を回して抱きしめた。

 自然とキラもラクスを抱きしめる。

 その温もりを感じながらキラは自分の心の中にあったわだかまりが消えていくのを感じた。

 ラクスの存在が砂漠の中のオアシスのように心に染み渡っていく。

 ラクスもまた同じだった。

 キラに触れているだけで心が落ち着くのだ。

 二人はしばらく無言のままお互いを抱き合っていた。 

 ラクスが潤んだ瞳でキラを見つめる。

 そのままラクスはキラに唇を重ねる。

 ラクスからのキスにキラは瞳を大きく開いて驚くが自分からもキスを返し、二人はしばらく漆黒の宇宙を背景にキスをし続ける。

 

 「僕はラクスを知らない。でもラクスは僕を知っているって言ったよね」

 

 「はい。わたくしもキラの事を思い出したのは救命ボートに乗った時でしたわ」

 

 そう言ってラクスは語りだす。

 自分が経験した事全てを。

 キラがアスランを殺してしまった事。

 その事でキラが廃人になりかけた事。

 その時、キラと身も心も恋人になった事。

 オーブが焼かれたのち、自分がキラを戦場へ送り出してしまった事。

 ───そしてキラが戦死した事。

 ジェネシスと核兵器の撃ちあいで地球圏にいなかった一部以外の人類が滅亡し、地球が死の星になってしまった事。

 そしてラクスが最後の生き残りとして人類滅亡の鎮魂歌を歌いながら死んだこと。

 

 すべてを語ったラクスはキラの胸の中で泣き崩れた。

 そんな彼女をキラも強く抱きしめる。

 初めて出会った少女なのに、その言葉は嘘に思えなかった。

 まるで離れていたピースが嵌るように、キラとラクスの心がつながったのだ。

 しばらくして落ち着いたラクスは顔を上げて微笑んだ。

 

 「キラはやっぱり優しい方ですわ」

 

 「どうしてそう思うの?」

 

 「普通こんな話を信じようとしないでしょう」

 

 「僕だって半信半疑だよ。でもラクスが言った事が嘘だとは思えないんだ」

 

 キラの言葉を聞いてラクスは嬉しかったのか、また涙を浮かべて微笑む。

 だがすぐに表情を引き締めると、真剣な眼差しで見つめてきた。

 その視線を受けてキラも居住まいを正す。

 これから彼女が何を言おうとしているか、わかっていたから。

 

 「アスラン・ザラと戦ってはいけません」

 

 「僕だって戦いたくないよ。でもどうすればいいのかわからない」

 

 「今はまだ二人ともわかりあえませんが、必ず和解出来ます。わたくしも尽力しますわ」

 

 「でもどうやって?ラクスはこのままだと地球軍の月基地に連れて行かれちゃうよ」

 

 「大丈夫です。すぐにわたくしを探してザフトの船が来るでしょう。わたくしを人質にしてこの危機を逃れた後、その時に引き渡してください。そうすればわたくしは月に行かずにすみ、キラもマリューさん達も助かるでしょう」

 

 それはつまりキラと別れるという意味だった。

 そして二度と会えないかもしれないという事でもあった。

 それがわかった途端、キラの中に不安が生まれた。

 そんなキラの不安を察したラクスがキラの唇にキスをする。

 一瞬驚きに目を開いたキラだったが自分からもキスを返した。

 何分くらいそうしていたのか。

 自然と二人は唇を離し、長い抱擁をする。

 

 「キラ。わたくしは常にあなたの傍にいます。たとえ遠く離れていても。わたくしはずっとキラの傍にいますわ。だから安心してください、わたくしは必ずキラと再び出会えます」

 

 見つめ合う二人の耳に警戒音が鳴り響く。

 アークエンジェルがニコル達に発見されたのだ。

 

 『総員第一種戦闘配備。繰り返す。第一種戦闘配備』

 

 警戒音を聞きながら、キラは自分からラクスにキスをする。

 ラクスは微笑みながら受け入れて。

 そして二人は手を繋いで士官室へ向かった。

 

 「ラクス。僕は必ず帰ってくるよ」

 

 「信じていますわキラ」

 

 そう言ってキラは士官室のドアを開く。

 ラクスは素直に士官室へと戻りベッドに腰かけた。

 ラクスとの別れ際に見せた笑顔のまま、キラはストライクガンダムに搭乗して発進した。

 アークエンジェルから離れていくストライクを見つめるラクスは、その背中に向かって祈りの歌を歌う。




最後までお読みいただいてありがとうございます。
なぜこんな話にしたのかというと、ラクスを逆行させた時点で劇場版ハッピーエンド??が確定するからです。実はフレイにしようか悩みましたが色々と問題が発生するのでフレイ逆行ルートは没になりました。このラクスが経験した世界はクルーゼエンドという最悪の世界です。今後こういう路線でいきますので、お気に召さなかったらごめんなさい(ぺこり)
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