【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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投稿再開します。
第二部オーブ編開始です。
今までとまったく違う環境でニコルの感情や視野がどのように広がるのか。
そして出会った兄妹とはどのような関係になるのか。
ちょっとだけ外伝のアストレイ要素が入ります。


オーブ編
第42話 平和の国


 第42話 平和の国

 オーブの正式名称はオーブ連合首長国という。

 南太平洋のソロモン諸島。

 ニューギニアの東に浮かぶ赤道に近い国土で南にはオーストラリア、ニュージーランドが存在する。

 大小さまざまな20島の火山島で構成された島国で多数の日本人移民が技術とともに入植し発展してきた。

 5部族の小国から発展した首長国連合であり、それ故に国家にはオーブ建国以前から島々を支配していた者達が後に「氏族」として君臨し、議会との合議制という政治形態を持っている。

 特筆すべき点はコーディネイターを受け入れている事で、地球上でナチュラルとコーディネイターが共存する国家である。

 外交方針は中立国を維持しており救助以外で派兵する事は無い。

 その中立の内容は、「いかなる事態が起ころうとも、独立、 中立を貫く」というもので、「オーブは他国を侵略しない、他国の侵略を許さない、他国の争いに介入しない」とするものである。

 

 長い旅路を経てニコルはオーブ連合首長国首都オロファトにある空港へ到着した。

 砂漠と同じく日差しは熱いが、湿気と緑の風と海の匂いに圧倒されそうだ。

 輸送機から降り立つと楽団の兵士と190cmに近い長身で長い黒髪の美しい女性、そしてオーブ軍の軍服を着た少女が待っていた。

 楽団がプラントの国歌とオーブの国歌を演奏した後、スーツ姿の長身の女性が話しかけてくる。

 

 「ニコル・アマルフィ殿、オーブへようこそ。私はロンド・ミナ・サハク。サハク家当主の義理の娘です。こちらはミオ・キサラギ三尉。オーブ滞在中のあなたのお世話をします」

 

 そう言ってロンドがミオを見ると、ミオはニコルの前に歩いてきて敬礼をする。

 ミオは短い黒髪をした瞳の大きな可愛らしい少女で、年齢はニコルと同じくらいだろうか。

 オーブ軍の軍服を着た少女は肌の色と黒い瞳からアジア属日本系だとわかる。

 ニコルが答礼するとニコルの荷物を持ってくれた。

 

 「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

 

 「こちらこそよろしくお願いいたします。お荷物はこちらだけでしょうか?」

 

 「僕の荷物はこれだけですが……ブリッツの事をよろしくお願いします」

 

 ニコルとミオの会話にロンド・ミナ・サハクが微笑む。

 ロンド・ミナには人を魅了するカリスマがあるが、王族という高貴な育ちの違いなのか気圧される。

 カガリもだが王家の人は皆こういうカリスマがあるのだろうかとニコルは思った。

 

 「ニコル様はザフト有数の名パイロットと聞いています。我々も期待していますよ」

 

 親し気に語り掛けるロンドだったがその裏は暗い喜びで満たされていた。

 ブリッツの持つミラージュコロイドとフェイズシフトの技術はオーブが長年欲していた技術だからだ。

 ただミラージュコロイドは使用時間に制限があり、フェイズシフトもまだ改良の余地がある。

 オーブにとって最大の課題はフェイズシフトで、無重力下でないと製造できないという制約の為、高コストなので量産機への使用は困難だ。

 とはいえオーブの軍事をほぼ独占するサハク家にとって極めて有益な技術に変わりはない。

 そして目の前にはミラージュコロイドを用いるのに、世界で一番長けたニコルがいる。

 

 急なプラントとの軍事顧問要請という難問をあっさり通したのはサハク家の権勢という事だ。

 サハク家はオーブの軍事や裏の仕事を執り行う家で五大氏族の一員である。

 現元首ウズミ・ナラ・アスハが反対していたヘリオポリスでのMS開発を強行したのはサハク家で、つまりガンダムSEEDという物語が始まったのはサハク家が原因と言ってもいい。

 ロンド・ミナ・サハクにはロンド・ギナ・サハクという双子の弟がいる。

 双子とはいえ容姿までそっくりで、影武者になれるほどよく似ている二人は第一世代コーディネイター。

 合理的で野心に燃える有能な双子といえる。

 

 「今夜はニコル殿に歓迎の宴を用意しております。ご参加いただければ幸いです」

 

 「そんな、そこまでしていただくても」

 

 ニコルは慌てて辞退しようとするが、ここで断るのも失礼と思い直す。

 

 「大変恐縮です。喜んでご招待をお受けします」

 

 「それは良かった。では宿舎でお待ちいただきたい」

 

 ニコルはロンド・ミナ・サハクと軽い雑談後、ミオが同乗したオーブ軍の高級士官専用車で当面の宿泊地であるオロファト郊外の小高い丘にある小さなログハウスへ向かった。

 防弾防ガスが施された一見高級乗用車にしか見えないオーブ軍車での移動にテロの可能性を感じざるを得ない。

 前後左右に配置された護衛の乗った車には屈強な護衛が乗っている。

 ログハウスには十数人の銃を携帯した兵士がいてミオが事情を説明してくれる。

 

 「この家がニコルさんの住む家です。家の外は兵士が守っています。この家から外出するときは専用の回線を使ってください。護衛の者が同行します。なおここは夜は暗く斜面もありますので夜間外出はお控えください」

 

 「まるで軟禁みたいですね」

 

 「違いますニコルさんの保護の為です。オーブには今回の軍事顧問関係を快く思わない者もいるのです。食事は日に3度お運びします」

 

 「そうですか。お願いします」

 

 ログハウスは丸太を組み合わせた古典的な作りで過ごしやすそうだ。

 オーブは南国だしそんなに冷える事はないだろう。

 ニコルはミオと一緒に室内に入る。

 ベットやキッチンなどが置いてある部屋とは別の大きな部屋。

 

 「ピアノが欲しいな」

 

 大きな部屋を見るとピアノが弾きたくなる。

 こんな山小屋でピアノは贅沢品だろう。

 

 「手配しましょうか?」

 

 「長居するかどうかわかりませんから今はいいです。それより散歩に出かけたいけど、どこか良い所はありませんか?」

 

 「それでしたら車ですぐの所にあるビーチは如何でしょうか?オーブの夕焼けは最高ですよ」

 

 「わかりました。そこにお願いします」

 

 ニコルがそう言うとミオと護衛の兵士が付き従うという物々しい形で近くのビーチに向かう事になった。

 ビーチは一般にも開放されている場所で、ミオと護衛の兵士が気を使ってくれて要所に客の変装をして立ってくれた。

 ニコルは南国の海は初めてだ。

 こういう所には是非恋人と一緒に来たいと思うのは、ニコルも女顔をしていても健康な男性だという事だ。

 

 「明日水着買おうかな。それとも街に出るのは無理なのかな」

 

 そんな事を思っていると水着姿をした小学生くらいの少女と少し年上の男の子が砂浜を走ってきた。

 兄妹は綺麗な黒髪でとても顔立ちがよく似ていて整っている。

 

 「あはははシンお兄ちゃんこっちこっち。マユに追いつける?」

 

 「こらマユ、あんまり走ると転がるぞ」

 

 二人は楽しげに話しながら走って行く。

 それを見ていたニコルは微笑ましく思う。

 この世界では戦争をしている国がある。

 そういう国ではあのくらいの年頃で戦場に立つ子もいる。

 そういうニコルも15歳で戦場に立っている。

 だがあの子達のように平和に暮らせる国もあるものだ。

 こういう風景が当たり前のはずなのだ。

 世界の方が狂っている。

 

 「お兄さんどこの人?」

 

 走っていた少女が笑顔でニコルを見上げる。

 将来間違いなく美人になりそうな女の子が不思議そうに見上げるのでニコルも笑顔で答える。

 

 「僕はニコル。君の名前教えてくれる?」

 

 「マユ!マユ・アスカ。あそこにいるのがシンお兄ちゃんだよ」

 

 マユと名乗った少女は元気よく手を上げて答えた。

 その様子から本当に仲の良い兄妹だとわかる。

 そしてマユは指差す先を見るとそこには穏やかそうな少年がいた。

 年頃はニコルと同じようなものだろうか。

 

 「初めまして。シン君でいいのかな?」

 

 「シンでいいです。友達はみんなそう呼んでます」

 

 「僕はニコル。よろしくね」

 

 そう言って差し出したニコルの手を握るシン・アスカ。

 握手をすると少しだけ照れたような表情をするシン。

 まだ幼いせいかあまり感情を隠すことができないようだ。

 だがそれがとても可愛らしいと思える。

 ハウメアの導きで良い出会いがニコルに訪れた。

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