【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回はオーブで表の顔ウズミ・ナラ・アスハと裏の顔ロンド・ギナ・サハクの話になります。
ニコルってあまり政治的な発言はしなかったので、多分父親と同じく穏健派なのだろうと思って書きました。
ニコルの両親はあまりニコルに政治家になって欲しくないのかなと思いつつ、ニコルの母親ロミナさんが世間ずれしたお嬢様だったようなのでニコルはパーティとかには慣れてるのかどうか。
多分礼儀作法は完璧だと思いますが。
このあたりは勝手に解釈しました。


第43話 パーティ

 第43話 パーティ

 

 オーブ主催の宴は壮麗なものだった。

 100人は軽く入れるだろう大広間に丸テーブルがいくつも並んでいる。

 お国柄か魚介類が多めの料理が並び、沢山の給仕が仕事をしていた。

 ニコルはザフト軍の白い礼服を着て参加した。

 

 「この度オーブに招かれましたニコル・アマルフィです。私の任務はオーブとの軍事協力であり両国にとって大変実りのある事と思います。よろしくお願いします」

 

 ニコルの挨拶に拍手が巻き起こり、給仕が注いだグラスに入った酒が振舞われる。

 飲んだことのない日本酒にニコルは少し酔ってしまう。

 ニコルの周りには五氏族各家の人々と関係者が群れをなす。

 早速軍事の事を聞きたがる人達の中にカガリのお父さんもいた。

 

 「ウズミ・ナラ・アスハです。よろしくおねがいします」

 

 「ニコル・アマルフィです。カガリ様にはお世話になりました」

 

 「あのじゃじゃ馬娘が礼を失する事が無かったのならよいのですが」

 

 「とんでもない。僕はカガリ様に心を救われました」

 

 あのままキラやカガリと戦っていたらきっと何もできず死んでいただろう。

 二人に銃口を向けるなんて、もう出来ないのだから。

 キラとカガリがニコルを攻撃しなくてもアークエンジェルの攻撃で戦死していたはずだ。

 それは戦死というよりなかば自殺に近い事だが。

 

 「といいますと?」

 

 「今回の軍事顧問を勧めてくれたのがカガリ様だからです。恥ずかしながら僕は兵士としては失格の身になってしまいました。キラとカガリ様と出会って二人と関係を深めるようになってから、二人を撃てなくなったのです」

 

 「キラ?」

 

 「親友の名前です。といってもこの間まで敵でしたが」

 

 キラという名前を出したらウズミが驚いたのをニコルは見逃さなかった。

 だがキラとウズミがどういう関係かまではわからない。

 ウズミの視線はニコルの言葉に嘘偽りがないか見抜くように見えた。

 その視線にいつもの微笑みでは無くまっすぐな瞳で見つめ返す。

 ニコルの心に一点の嘘偽りが無い事を見抜いたウズミは微笑む。

 

 「それはとても良いことをしました。帰ったら娘を褒めてやる事にしましょう」

 

 「そうしてあげてください。カガリ様も喜びます」

 

 そう言ってニコルはウズミと笑いあう。

 今頃カガリはくしゃみをしているだろう。

 

 「ウズミ様、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

 「私に答えられる事ならなんなりと」

 

 「オーブがMS開発に至った理由をお聞きしたいです。やはり武器は必要だと思われたのですか?」

 

 ニコルの問いはウズミの予想の範囲内だったようだ。

 

 「武器無き中立とはあやふやなもの。力なき正義は無力で正義無き力は暴力ともいう。だがけしてオーブはどの国とも軍事同盟を結ぶことはない」

 

 ニコルがそう言うとウズミは予想された質問の様子で語りだす。

 だがその表情は納得しがたいという顔をしていた。

 この点についてニコルは疑問に思う。

 自分たちで選んだ選択肢を後悔しているのかとも思ったがニコルの予想は外れていた。

 ヘリオポリスでのMS開発も、更にオーブ軍用に開発していたアストレイというMSも軍事と軍需産業モルゲンレーテ社に強い影響力があるサハク家の独断だとニコルが知るはずもない。

 この宴もプラントとの友好の証という体を取っているが、サハク家が裏で糸を引いていて、ニコルを軍事顧問に招いた政治工作の成功というアスハ現政権に対する勝利宣言の場でもあった。

 魑魅魍魎の相手をして疲れたニコルは大広間から見える庭園を見る。

 日本式の庭園で、植えられた木々は遺伝子改造され南国でも育つように作り変えられた松などだ。

 ニコルは日本に行ったことは無い。

 今は東アジア共和国に属する国の一つとなったが、このオーブにその文化が根付いていた。

 この庭園を見たら日本舞踊が趣味のディアッカが喜びそうだ。

 大気圏での戦闘から別れ別れになった戦友たちの事を忘れたことは無い。

 本国経由でニコルの無事は伝えられている筈だが、みな元気にしているだろうか。

 

 「おやオーブの夜はお気に召しませんでしたか?」

 

 月夜を眺めていたニコルの背中に美しく凛とした男性の声がかけられる。

 ニコルが振り向くとタキシードを着た長い黒髪の高身長の男性がグラスを片手に立っていた。

 

 「ロンド・ミナさん?」

 

 「いえ、私はロンド・ギナ・サハクです。ミナはあちらに」

 

 そう言ってロンド・ギナが手で示すとドレス姿で雑談の輪の中にいるロンド・ミナが楽しそうに笑っていた。

 本当にそっくりなのは遺伝子操作された双子だからだ。

 ロンド・ミナ・サハクとロンド・ギナ・サハクはつまりコーディネイターの姉弟という事になる。

 

 「大変失礼しました」

 

 「いえ、初対面の方はよく間違われますので。パーティはお嫌いですか?」

 

 「嫌いではありませんがあまり政治的な付き合いは無かったもので」

 

 「アマルフィ家のご子息なら慣れておいて損は無いですよ」

 

 ニコルの父親、ユーリ・アマルフィはプラントでMSの生産開発を一手に引き受けるマイウス市の代表で最高評議会の議員。

 無論政治的な付き合いは多いが幼いころより内気なニコルを心配してあまり政治の場には出さなかった。

 おかげでピアニストとして有名になったが政治家になるには向いていない性格に育ってしまった。

 両親はニコルが幸せなら別に政治家にならなくてもいいと思っている。

 ニコル本人は両親に感謝すると共にこういう場に出る事が苦手な自分に少し引け目を感じている。

  

 「今後は慣れる事にします」

 

 「そうなさるが良い。政治というのは求める者から遠ざかり、求めぬものにすり寄ってきたりしますゆえ」

 

 ニコルの素直な言葉にロンド・ギナは満足そうに頷く。

 将来有益な手駒になるかもしれない少年が素直なのは動かしやすくて良い。

 もっともその可能性は低いだろうけどねとロンド・ギナは思う。

 この子は人を信じすぎる。

 それが彼の弱点だ。

 そしてそれは同時に彼の強みでもあるのだとロンド・ギナは判断した。

 その評価は当たっていて、そうでなければニコルはキラとカガリとの縁も無かっただろう。

 ニコル自身は気が付いていないが、アスランとキラとカガリと親友になれる人物はあまりいない。

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