【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回はマリューさんとナタルさんの出番です。二人とも好きですからナタルさんが死んだときは悲しかったですね。なんとか生き延びさせれないものか。ついでに「アークエンジェル級二番艦ナデシコです」とかやりたい。わかる人にしかわからないネタはやめておきましょう。


第55話 アークエンジェルの人々

 第55話 アークエンジェルの人々

 

 「いや~死ぬかと思ったぜ」

 

 そう言ってフラガ少佐がニコルに笑いかける。

 そして手を差し出して来た。

 少し躊躇したがニコルはフラガ少佐と握手する。

 

 「フラガ少佐と初めて会ったのはヘリオポリスでしたね」

 

 「そうそう。あの時は戦えるのが俺だけなんで困ってたよ。連れて来たXシリーズに乗る予定だった奴らもみんな死んじまってさ。君らにMSを四機も奪われてお手上げって所を助けてくれたのがキラだったのさ」

 

 あの時クルーゼ隊の仲間を失ったが地球連合側も沢山死んだのだ。

 フラガ少佐も沢山の部下や知り合いを無くしている筈。

 ニコル達は仇敵の関係で中立地帯を抜けたら再び殺しあう関係。

 その筈なのにフラガ少佐はニコルに気さくに話しかけてくれた。

 

 「キラがいなかったら俺とお前さんで殺し合いになってたかもな」

 

 「僕はあの時本気で殺すつもりでしたよ」

 

 「そりゃおっかない。だが俺だって殺されてたまるかって本気だったぜ。コーディネイターがナチュラルの作ったモビルスーツに乗って戦ってるんだ。そんな不条理に納得できるほど俺は大人じゃないんでね」

 

 そう言って笑うフラガ少佐の顔は寂しそうだった。

 ニコルが殺したナチュラルのパイロットの断末魔の表情を思い出し身震いがする。

 あのパイロットにはフラガ少佐という友人がいたのだ。

 フラガ少佐だってニコルが何をしたのか察しているだろう。

 それなのに対等に話をしてくれる。

 ニコルはこの人の事を憎めそうになかった。

 もし味方だったらフラガ少佐はどれだけ頼りになるだろうか。

 そしてニコルもフラガ少佐に頼られるような軍人になりたいと思っただろう。

 ついさっき知り合ったばかりなのにニコルはフラガ少佐の事が好きになり始めていた。

 初めて会ったフラガ少佐とさえこうなのに、子供のころからの親友だったキラと戦ったアスランはどれだけ辛かっただろう。

 トビウオの群れを見る気になれないよね。

 前世でもっと世界を知っていればアスランへの接し方も上手くできたかもしれない。

 この世界では絶対にアスランとキラを戦わせるものかとニコルは決意を新たにした。

  

 「俺たち大人が不甲斐ないからキラやニコル達みたいな子供を戦わせてる。俺は碌な死に方をしないだろうな」

 

 「プラントでは15歳で成人ですから子供扱いはやめてください」

 

 「OK。だが知能と肉体が優れてるからって精神的に大人とは限らないだろ?キラもコーディネイターだったが精神的にはまだ子供だったぜ」

 

 フラガ少佐の言葉にはキラを戦わせたを悔やむ気持ちが強い。

 この狂った世界で貴重な、コーディネイターだからといって差別しない人だった。

 

 「どうしたニコル?」

 

 フラガ少佐が心配そうにニコルを覗き込んでいる。

 自分の世界に入っていたせいでいつの間にか黙っていたみたいだ。

 

 「売られた戦争だと分かっていても親友同士が殺しあうなんてバカバカしいですね」

 

 「まったく同感だね。俺もニコルみたいな可愛い子と銃を突きつけあうなんてバカバカしいと思うよ」

 

 そう言ってニコルとフラガ少佐は立ち上がる。

 二人はオーブ以外で出会えば、次に会う時は殺し合いをする関係に戻る。

 ニコルは警備兵が来る前にアークエンジェルを退艦しなくてはならない。

 今なら総員退艦状態なので脱出も可能だろう。

 だがその望みはあっさり絶たれた。

 

 「そこの少年。両手をあげなさい」

 

 そう言って先ほど退艦命令を出していたラミアス艦長と副長のバジルール中尉が拳銃を片手にニコルに迫る。

 二人とも総員が退艦するまで退艦しなかったのだ。

 実直で勤勉そうな、いかにも軍人の印象があるバジルール中尉がニコルを詰問する。

 

 「それでお客さんと説明された君は誰だ?まさかあれだけ複雑な爆弾を処理しておいてハイスクールの生徒と言うつもりはないだろうな」

 

 ここは敵艦でニコルはその敵対者。

 身元を明かせば即座に拘束されるだろう。

 

 「まあまあバジルール中尉。この坊主のお陰で助かったんだからさ」

 

 「フラガ少佐は黙っていてください」

 

 オーブ軍の技術士官、爆発物処理班。

 色々と詐称できるがニコルの年齢でこれだけの事をしたのだからコーディネイターだとわかるだろう。

 地球連合は反コーディネイターでそれだけでも危険なのに、ザフトで何度もこの艦を攻撃したブリッツのパイロットなんて言ったらどうなる事か。

 

 「質問に答えたまえ。君は誰だ?」

 

 バジルール中尉がニコルを疑いの目で睨んでくる。

 先ほどの偽IDを提示したがバジルール中尉には信用されなかった。

 この人には嘘が通じないだろう。

 ニコルは観念して両手を上げた。

 

 「ザフト軍ニコル・アマルフィ。貴方たちのMSブリッツを強奪した犯人です」

 

 ニコルがそう言うと、バジルール中尉は努めて冷静にしていた表情が更に険しくなる。

 アークエンジェルとストライクを異常な執念で襲ってきたパイロットが、目の前にいる少女と見間違えそうな少年が行ったというのだ。

 軍人としても自分の迎撃行動を読み切られたという屈辱がある。

 バジルール中尉はコーディネイターの恐ろしさを再認識した。

同時に驚いた顔もする。

 ニコルが言った一言は死を意味するからだ。

 艦内は艦長がその権限をもつ国家のようなもの。

 艦長が捕虜規定を順守せずニコルを処刑したとして罰則に問われるか疑わしい。

 地球連合のコーディネイターに対する憎しみは軍法すら超えてしまう。

 プラントはユニウスセブンに対する核攻撃に対する報復としてニュートロンジャマーという兵器を使用した。

 これは核融合を発生させない装置でこれにより原子力発電が停止し地球は深刻なエネルギー不足となり数億人の犠牲者が出たという。

 最前線ではナチュラルもコーディネイターも捕虜すら認めず、お互いを殺しあっているとニコルは聞いたことがある。

 だからニコルがここで撃ち殺されても不思議はない。

 ただニコルはラミアス艦長がそんな人には見えなかった。

 なぜかラミアス艦長には信頼できるカリスマがある。

 

 「正直に言ったその覚悟は称賛に値する」

 

 そう言ってバジルール中尉がニコルに拳銃を突き付けた。

 

 「バジルール中尉。オーブ軍の士官に対して失礼よ」

 

 そう言ってラミアス艦長はバジルール中尉の拳銃を手で制する。

 

 「しかし艦長!!彼はザフトの軍人ですよ!!捕虜にするべきです!!」

 

 「でも彼がいなかったら私達とアークエンジェルは今頃木っ端みじんになっていた。そうでしょう?」

 

 「それはそうですが」

 

 そう言ってラミアス艦長はニコルに優しく微笑んだ。

 彼女も沢山の戦友を失ったのにニコルを許そうとしている。

 戦争だから仕方なかったと知っているのだ。

 

 「オーブ軍技術将校ハムニ・アシム・アスハ。貴官の活躍と尽力に感謝します。退艦を許可します」

 

 そう言って敬礼してくれるラミアス艦長にニコルは感銘を受けて敬礼を返す。

 見逃されたニコルをフラガ少佐はウインクしてはにかみ、バジルール中尉は睨んで見送った。

 

 「じゃあ俺も解散という事で」

 

 「そうはいかないわね」

 

 「やっぱ駄目?」

 

 「駄目です」

 

 フラガ少佐をラミアス艦長は呆れバジルール中尉は怒りながら連れて行く。

 きっとこれから二人にきついお仕置きを受けるのだろう。

 なぜこんな良い人たちと戦わなければならないのだろう。

 ニコルはもうこの人たちと戦いたくないなと思っていた。

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