【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
ニコル君がすごく好戦的になってきました。
前世でアスランを守れなかった(と思っている)自責で少し曇ったようです。
第6話 最終試験
ニコルはザフトのMSジンのコクピットによく似たシュミレーターに乗り込んだ。
MS操縦訓練でよく乗った機体で扱いも慣れている。
それにニコルは前世でブリッツガンダムに搭乗していたからこの中の誰よりも───アスランよりも経験がある。
遊軍にしてもらえたのも動きやすくて嬉しい。
当然地球連合の艦隊やMAの動きもよく知っている。
卑怯な気もするけどアスランと離れないためにはザフトレッドになるしかない。
その間に発進シークエンスが点滅した。
出撃だ。
「ニコル・アマルフィ。ジン行きます」
ニコルはカタパルトで宇宙に射出されたあと、バーニアをふかして発進する。
後ろにローラシア級フリゲートが見える。
ニコル達が乗っていた『ガモフ』を思い出す。
前世でお世話になったゼルマン艦長の事を思い出してしまう。
ハルバートン提督の地球連合軍第八艦隊旗艦、アガメムノン級戦艦『メネラオス』と刺し違えて戦死された偉大な武人だった。
「こちら隊長機ラスティだ。さっきも言ったがアスランとイザークがアタッカーとして攻撃してくれ。ディアッカは遠距離狙撃。俺は状況次第で援護にまわる。ニコルは遊軍だ。相手は連合の艦隊って設定だ。派手にいこうぜ」
ラスティの言葉にニコルは頷く。
ニコルは4人とは違い天底方面にジンを降下していく。
「おい!!貴様どこへ行く気だ!!」
イザークの怒鳴り声が聞こえるがあえて聞こえない振りをする。
そのままみんなと離れてからバーニアを左に吹かしてさらに離れた。
「あいつ俺たちを囮にする気だぜ」
ディアッカが口笛を吹いてそう言っているのを聞く。
流石ディアッカ、後方からよく見ていると思った。
「ニコル戦い慣れてるよな。アスラン、ニコルはいつもあんな戦い方をするのか?」
「ニコルはいつも正確に状況判断をする。信頼していい。そろそろMAが出てくるぞ」
ラスティとアスランの会話を聞きながら、単に前世での知識を生かしているだけですとは言えない。
その間にニコルの上ではアスラン達とイザークが連合の艦隊に突入して、連合のMAメビウスとの戦闘が始まった。
ジンを一機落とすのにメビウス五機が必要だという評価でほぼ虐殺されるメビウスに同情する。
瞬く間にアスランとイザークがスコア争いをするようにメビウスを落とし、ラスティが二人に指示を出しながら自分も戦闘に加わる。
三人の背後に回ろうとしたメビウスは正確無比なディアッカのジンに撃ち落されていった。
ニコルはそのまま降下して連合艦隊の探知範囲外を潜り抜けて後ろに回った。
「行くよ」
そして回り切った時に背後斜め下から連合艦隊を襲う。
MAはアスラン達の迎撃に必死になっていてニコルに対処するのが遅れた。
ニコルはジンの主武装であるMMI-M8A3 76㎜重突撃機銃を発射しながら連合艦隊へ襲い掛かる。
連合の護衛艦でミサイルポッドをX字に配置したドレイク級がニコルに気が付いて75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルンを発射するが艦艇底部にある1門しか発射できず弾幕を形成できない。
アスランとイザークに対処しながらなので更に厳しいだろう。
X字に配置された主兵装のミサイルは斜め後ろへ撃てず、ニコルに向けられたのは1門のイーゲルシュテルンのみ。
ニコルはそのままミサイル発射口を狙う。
ミサイルの詰まった護衛艦がミサイルの誘爆で爆発し戦闘力を失ったと同時に推進機を狙う。
ミサイル発射口と推進機を破壊された護衛艦が爆散した。
ニコルは護衛艦を一隻撃沈したあと敵艦隊へと突入する。
近距離で味方に誤射する恐れがある護衛艦は主砲が使えないのでニコルにイーゲルシュテルンを浴びせかけるが、ニコルはデータと経験で知っている射撃を易々とかわしMMI-M8A3 76㎜重突撃機銃で次々と護衛艦の主武装であるミサイルポッドを破壊し誘爆させ確実に沈めて行った。
踊るように舞うように。
無駄な動きは一切なく次々と護衛艦がスクラップにされていく。
アスランとイザークが大半のMAを仕留めると敵艦隊はミサイルやイーゲルシュテルンで弾幕を張るしか対処できなくなった。
今頃艦隊司令部は悲痛な叫びになっているだろう。
◆◆◆
「俺たちがMAで戦果をあげているのにあいつは動きの鈍い戦艦相手に戦果稼ぎか!!臆病者め!!」
イザークが毒つくがニコルが行っている攻撃で敵艦隊が陣形を崩し、まともな艦隊運動から崩壊へと至っているのはイザークも認めている。
だが現実と感情は別で、ニコルがイザーク達を囮にして敵艦隊崩壊させたのは許せない。
「自分だけ美味しい所を食っちまうなんてな」
ディアッカもそう毒づく。
そう言いながら自分も最前線へ進んで戦果稼ぎに加わるしたたかさを持つのは流石といえる。
「ニコルを遊軍にしたのは正解だったな。アスランはこうなる事を知っていたのか?」
「いや、ここまでとは予想していなかった」
ラスティの言葉にアスランが答える。
確かにニコルなら戦果を挙げるだろうとは思っていたし、今回の活躍でザフトレッドはほぼ確定だろう。
だが先ほどからの戦い方。
普段接している心優しくて理知的なニコルらしくない。
ニコルがあれほど好戦的だとは予想外だった。
「ニコル。お前らしくない」
そう呟きながらアスランも残った戦艦狩りに参加する。
戦場は既に狩場と化していた。
当のニコルは連合艦隊の艦船を確実に撃沈していく。
自分の甘さが前世で多大な犠牲を引き起こした。
それを知っている。
勿論ヘリオポリスを破壊させたように民間人の犠牲者を出すような戦いはしない。
だけど軍人は別だ。
撃たなければ撃たれる。
それを嫌という程思い知っていた。
(僕がストライクを確実に倒していればみんな死ななかったんだ!!)
その思いがニコルを動かしていた。
76㎜重突撃機銃でブリッジを破壊しながら艦の主武装を容赦なく破壊し、推力が落ちた護衛艦の機関部を76㎜重突撃機銃で貫き確実に止めをさしていく。
最初は毒づいていたイザークでさえ、確実に殺していくニコルの戦い方に戦慄を覚えていた。
「───なんなんだあいつは!?」
イザークもナチュラルを倒すことに躊躇はしていないがニコルは違った。
倒すのではなく殺す。
あのキャベツ頭はそういう戦い方をするように見えなかった。
見るからに甘ちゃんなキャベツ頭があれほど血に飢えたような戦い方をするように見えなかったのだ。
『敵艦隊全滅。判定S勝利』
シュミレーターの判定は全滅させた事と戦闘開始の時間から逆算した事で導かれる。
この5人は歴代アカデミーで最高の成績を叩きだした。
喜びにわく皆を無視してアスランはニコルの乗ったシュミレーターへ駆け寄る。
ニコルだけがシュミレーターから降りてこなかったからだ。
「ニコル!!開けろニコル!!」
反応のないニコルの乗るシュミレーターを強制解除するとニコルがレバーを握りしめながら硬直していた。
このシュミレーターは実戦を想定したもので全て実物のように再現されている。
慣れない者は吐いたり失禁したりするほどだ。
つまりニコルは限りなくリアルなシュミレートされた実戦へ放り込まれていた。
「ニコルしっかりしろ!!もう戦闘は終わったんだ!!」
アスランがニコルを揺さぶるとニコルは身体を震わせて泣いていた。
こわばったニコルの手をレバーから離させてアスランはニコルに肩を貸しシュミレーターから出ていく。
ニコルは過度の緊張と自身への恐怖で身体が動かせない程疲労していた。
アスランは周りの喧騒を無視して自室へとニコルを背負っていった。