【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
第61話 トール専用M1アストレイMK-2
アークエンジェルは修理中という名目でまだオーブから離れなかった。
進むも地獄引くも地獄。
だからオーブ近海からザフトの潜水艦がいなくなるまでここにいる事にする。
自分たちだけならラミアス艦長はアラスカへ向かっただろう。
だが今出航すれば必ずザフトの攻撃に合い、迎撃に出れるのはストライクとスカイグラスパーだけとなる。
そのスカイグラスパーにはキラの親友トール・ケーニヒが搭乗する。
トールは最近ご機嫌だった。
キラが憑き物が落ちたように笑顔を浮かべるようになったからだ。
ヘリオポリスの時のように笑うようになった。
サイやミリアリアやカズイ達もキラの様子に一安心だ。
ずっとキラ一人に負担をかけていた。
その事が重荷になっていたのだ。
そのミリアリアが自分の隣で穏やかな寝息をしながら寝ている。
トールはミリアリアの髪を少しいじると、ミリアリアは『んん』とくすぐったそうな声をあげた。
ずっと張り詰めていた自分とミリアリアがこんなにゆっくりと安心して寝たのはいつ以来だろうか。
「ミリィ」
そう言ってトールはミリアリアの髪をかき上げて眠っている彼女の頬に手をそえる。
優しくて強くて自分の心にまっすぐな恋人を絶対に守ると、トールは誓いを新たにしてもう一度眠りについた。
──────
「───トール、トール起きなさいよ」
「んにゃ……ミリィもう少し寝かせてよ」
「駄目よ。またナタルさんに怒られるわよ」
「ふぁ~い」
着替えるミリアリアの背中を見ながらトールも軍服に着替える。
普段のミリアリアも可愛いが軍服姿のミリアリアも凛々しくて可愛い。
つまり自分の恋人はその全てが可愛い。
「なによにやにやして」
「ミリィみたいないい子が俺の恋人でよかったって思ってさ」
「朝から何いってんのよ!!」
そう言いながらミリアリアは頬を染めて顔を背けた。
今日はモルゲンレーテへ出向しているキラに来て欲しいと頼まれている。
新型機のテストに付き合って欲しいとの要望に、オーブ政府とモルゲンレーテ社経由でアークエンジェルに要請があったのだ。
二人は艦橋に行きナタルから外出許可証を貰う。
「……緊急発進に備えて遠出はしない事。基本モルゲンレーテ社の敷地内から出なければそれでいい」
そう言っていつもの慇懃な態度で書類を渡すナタル。
だがその顔は初期の頃のように冷たいものではなかった。
珍しい事もあるものだとトールもミリアリアも思ったがすぐに艦橋を後にする。
「頑張って来いよ」
「あ~あ。俺も外出したいよ」
そういうサイとカズイに見送られてブリッジから出ていくトールとミリアリア。
サイとカズイが羨ましがる気持ちはすぐにわかった。
二人がモルゲンレーテ社につくと意外な人物が出迎えてくれた。
トールとミリアリアの両親だった。
「トール!!」
「ミリアリア!!」
信じられない光景にトールもミリアリアも感涙で両親の胸に飛び込んだ。
先日の再会以来、もう二度と会えないと思っていた両親と再会できたのだ。
ナタルの気遣いだろう。
ナタルはモルゲンレーテ社ならすぐに帰艦できるだろうと判断して両親に予定を伝えていたのだった。
その光景をキラとキラの両親が見守っている。
キラも両親とのわだかまりが無くなって、モルゲンレーテ社にいる間はずっと両親が傍にいてくれるようだ。
ナタルも先日の砂漠で子供にお菓子を渡してもみくちゃにされた時に母性本能に目覚めたのだろう。
かつてのナタルならありえなかった事だ。
ノイマンのナタルへの好感度が爆上がりしている事はしらないが、この話を聞いたときのマリューとムウはナタルの変わりように驚いたに違いない。
モルゲンレーテ社近くのコ〇ダ珈琲で家族と昼食を食べたあとトールとミリアリアはキラから聞いた仕事について説明をうける。
オーブ軍の新型MS、M1アストレイMK-2のデータ集めだった。
本来こういう事はテストパイロットのアストレイ三人娘ことマユラ、アサギ、ジュリの三人が行うのだが、この三人はニコルの元でテストパイロットとして駆り出されて忙しい。
そしてM1アストレイMK-2はアストレイシリーズ最初に改良された機体で、以後の主力機として簡単な操作で操縦できる事が求められる。
実戦経験の面でトールとミリアリアは申し分ないし何より呼吸があっている。
アークエンジェルはこの世界の誰よりも豊富な実戦経験を持つ艦なのだ。
「とうとう俺もMSパイロットか。腕がなるぜ」
パイロットスーツに身を包んだトールにミリアリアが笑いながらがんばりなさいよと激励した。
M1アストレイMK-2は主武装に71式ビームライフルと70式ビームサーベル、防御に対ビームシールドを装備しているが、この機体の目玉はハイパービームバズーカだ。
これはストライクの装備である320mm超高インパルス砲「アグニ」の威力を押さえた分連射可能なバズーカで対艦対MSに圧倒的な威力を誇る。
また搭載している操縦支援AIによりパイロットの操縦ミスのカバーを行う優れものでこれはジャンク屋のロウの協力で作られた。
エリカとニコルが設計しキラがナチュラル用OSを担当しAIはジャンク屋のロウ・ギュールの協力で作られたオーブ軍の次期主力量産MSとなる。
「すげえ!!俺が操縦してもちゃんと動くぞ!!」
「ちょっとトール!!感激するのはいいけど、トールはあくまでテストパイロットなのよ!!」
「でもよ、すげえぜこれ。本当の手足みたいに動くぜ」
操縦支援AIのお陰でトールの操縦ミスもフォローされているとはいえ、トールのパイロット特性の高さを生かした機体になっている。
その光景を見てニコルとキラとロウは微笑む。
「どうやら成功したみたいですね」
「うん。ナチュラル用OSもよく機能しているね。それに操縦支援AIもうまく機能しているね」
「当たり前だって。俺たちジャンク屋が作った操縦支援AIだぜ。赤子だって乗れるさ」
ロウの言葉は本当で年少者でも動かせる優れたAIだが、まさか本当に役立つとはこの時誰も知らなかった。
今回得たデータを元にトール専用機が作られるのだがそれは後日の事である。