【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
『その未来切り開けガンダム!!後半戦もサービスサービス☆』
第63話 CE71.04.15
CE71.04.15の朝。
ニコルはいつもの時間に目覚める。
護衛役のミオ三尉が運んできた焼き魚と納豆と卵かけご飯の朝食を食べて予定表を見たあとテレビを付けた。
各地での戦闘状況が流れてくるが、オーブはまだ余裕があるのかアニメや映画なども放映されていた。
「今日は僕の命日なんですよ」
ニコルがそう言うとミオ三尉は怪訝な顔をする。
生きている人が自分の命日など言う筈がない。
自殺でもする気だろうかと部屋を見るが何も変化が無い。
死ぬ人は多少なりとも部屋を片付けたり遺品整理したりなどをするものだ。
いきなり死ぬ人もいるがニコルは精神的に病気を抱えているという報告をミオは受け取っていない。
そんなミオに微笑んでニコルはセイロンティーの入ったカップに口づけた。
史実ではアークエンジェルがオーブを出航し、ニコル達が攻撃した日だ。
そして今日ニコルは戦死した。
これ以後の事はしらないがラクスの情報だけを頼りにするわけにはいかない。
この直前プラントでは二つの重要な決定があった。
CE71.04.01
プラント評議会議長選挙で穏健派のシーゲル・クラインが敗れ強硬派のパトリック・ザラが議長となった。
同日「オペレーション・スピットブレイク」が議会に提出され可決されたのだ。
この攻撃作戦は地球連合も予想していただろう。
アラスカの地球連合軍総司令部かパナマのマスドライバーか。
どちらが標的か今頃スパイの探り合いの真っ最中だろう。
前世通りならそろそろザフトの攻撃が開始されるだろう。
だが前世と違う所はアークエンジェルはまだ出航しておらず、クルーゼ隊あらためザラ隊はオーブ近海から去ったという事だ。
ニコルはキラとアスランとカガリと親友になり、ラクスと記憶を共有する関係になった。
オーブでシン・アスカとマユ・アスカという友達もできた。
心の傷を癒してくれたオーブの為に、プラントから派遣された軍事顧問という肩書でオーブ軍の強化に協力した。
たった三か月の時間だったが自分の能力がどのような影響を及ぼしたのかわからない。
自分の力がオーブの未来に少しでも役立ったのなら嬉しい。
アークエンジェルが出航したら間違いなくアラスカへ向かうだろう。
オペレーション・スピットブレイクの攻撃目標は難攻不落のアラスカではなくパナマだとニコルは予想している。
だが万が一アラスカだったらキラとアスランは再び戦う事になる。
キラとアスランは和解済みだが周りはそれを知らない。
そして二人は器用な演技など出来ないだろう。
「オペレーション・スピットブレイクの目標がパナマならいいのに」
つい独り言を零してしまう。
パナマなら当面キラとアスランは戦わなくて済む。
それに先日父親のユーリ・アマルフィ経由で最高評議会に提案した『オーブのMS開発計画の詳細な報告をアスラン・ザラが直接説明する』という案も通るかもしれない。
もしかしたらアスランが父親のパトリックを説得して戦争の早期終結が出来るかもしれない。
だがそれは甘い期待だろう。
今ニコルに出来ることはアークエンジェルを一日でも長くオーブに留める事。
この歴史の流れを変える事はできないのだろうか?
ニコルは考え続ける。
◆◆◆
その頃ザフト軍のボズゴロフ級潜水母艦クストーは海中を全速力でパナマに向かっていた。
オペレーション・スピットブレイクの目標がパナマだという暗号が入ったのだ。
ブリーフィングルームで一枚の暗号文の書かれたメモを見てイザークは快哉をあげディアッカは口笛を吹いた。
「これでナチュラル共も終わりだな」
「やっと戦争も終わるぜ」
同じくラスティ、ミゲル、ジャンヌ、エマも勝利を疑っていない。
戦場の興奮にみなが包まれている頃アスランだけが暗い顔をしていた。
この戦争はこのままでいいのか?
今頃キラ達も同じことを考えているだろう。
こういうどうしようもない時、何故かカガリに会いたくなる。
何故かカガリの笑顔が頭を離れない。
「アスラン何か悩みでもあるのか?」
同僚のラスティがアスランの顔を覗き込む。
「いや、なんでもない」
「ならいいけどよ。作戦が始まれば嫌でも忙しくなるんだ。今のうちにリフレッシュしとけよ」
そう言ってラスティはアスランの背中を叩いて部屋を出て行った。
今はキラ達と和解したと悟られない方がいい。
イザークは兎も角ラスティやディアッカは敏感だ。
アスランがそう思って自室へ戻ろうとしたときイザークに呼び止められる。
「アスラン。どうやらこの隊はジュール隊に名前が変わりそうだな」
「どういう意味だ?」
「お前に本国への帰国命令だ。何をやらかしたんだ?」
それはニコルが手回しして行った最高評議会への出頭命令だった。
◆◆◆
同時刻プラント、マイウス市
MSの開発生産の主要都市マイウス市はニコルの父親ユーリ・アマルフィが市長兼最高評議会議員を務める市だ。
ここでプラントのMS生産と開発が行われている。
純軍事的にプラントで最も重要な市になる。
その開発区画で三体のMSが完成した。
ZGMF-X09A ジャスティス
ZGMF-X10A フリーダム
ZGMF-X11A リジェネレイト
「───これで本当によかったのでしょうか?」
ニコルの父親ユーリは三機のMSを見ながら呟いた。
この三機にはニュートロンジャマーキャンセラー(以下NJC)。
つまり核分裂を可能にする装置が取り付けられている。
核エネルギーを使う事で従来機ではありえない武装を施されているが、この機体が捕獲された場合地球連合にNJCの技術が伝わってしまう。
「だがオペレーション・スピットブレイクが失敗したらパトリックは必ずこの機体を使うだろう。それだけはさせてはならない」
そう答えるのはシーゲル・クライン前プラント最高評議会議長。
ラクス・クラインの父親である。
「すでに分解されたYMF-X000A ドレッドノートはマルキオ導師の元に送った。NJCを正しく使えば地球のエネルギー問題は解決する」
「しかし正しく使われなかった時、彼らは核攻撃を行うかもしれません」
「遠からず地球連合もNJCを開発するだろう。それでは遅い。今すぐ戦争を止めねば人類は一人残らず滅んでしまう。そうだなラクス」
シーゲルに促されてラクス・クラインが前に出る。
前世のキラにはGAT-X105ストライクしか無かった。
もしキラに新しい剣があれば。
未来を切り開く剣があればキラはラクスの元に帰ってきてくれたかもしれない。
「はい。彼らにこのMSがあればきっと滅びの歴史は変わるはずです」
「そう。滅びの歴史は変えなければならない」
ラクスの言葉にシーゲルが頷く。
そしてユーリに振り向いた。
ユーリが答える。
「三機ともいつでも搬送可能です。ちょうどアスラン君がプラントへ来るころにオペレーションスピットブレイクが発動されるでしょう」
「アスラン君にZGMF-X09A ジャスティス。ラクスが言うキラ君にZGMF-X10A フリーダム。そしてニコル君にZGMF-X11A リジェネレイト」
シーゲルの言葉にラクスは強く頷いた。
アスラン・ザラ。
キラ・ヤマト。
ニコル・アマルフィ。
この時代に生まれ育った親友たち。
ラクスと想いを同じくする者たち。
「彼らの元に新たな剣が届けば滅びの歴史は変わりますわ」
確信に満ちた声でラクスはそう断言した。
CE71.04.15
ニコルが戦死しニコルが再び歴史をやり直す事になった日。
再び歴史が大きく動き出した。