【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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最後通告を突きつけられたオーブ政府と戦う準備をすすめるアークエンジェルの話です。現在アークエンジェルにはキラのフリーダムガンダム、ムウのストライクガンダム、フレイのストライク・レッドガンダム、トールのアストレイMK-2、ニコルのリジェネレイトが搭載されています。リジェネレイトはストライクの倍という巨体なので各パーツと予備パーツを搭載し発進前に合体して出撃します。オーブにはM1アストレイとアストレイMK-2が配備されており史実より格段に強化されています。とはいえ地球連合の量に対抗できる質と言うには足りません。


第72話 終わりの見えない明日

 第72話 終わりの見えない明日

 

 オーブの持つマスドライバーはオーブを経済技術大国として育んでくれた。

 だが持つ者はけして油断をしてはならない。

 そしてオーブは油断してはいなかった。

 だが苦難はやってくる。

 

 『一、オーブ連合首長国現政権の即時退陣。二、国軍の武装解除ならびに解体───四十八時間以内にこれらの要求を受け入れない場合、地球連合構成国は、オーブ連合首長国をザフト支援国家と見なし武力をもって対峙する事になる』

 

 とても受け居られる内容ではない。

 これは最後通告だ。

 同時にプラントのカーペンタリア基地からも会談の申し込みがある。

 オーブが降伏しマスドライバーを地球連合が手に入れれば折角封じ込めた地球連合が宇宙へ勢力を拡大する。

 つまりプラントにつけば守ってやるという事だ。

 

 「地球連合もプラントもどうあっても世界を二分したいのか!!地球連合に味方すればプラントは敵!!プラントに味方すれば地球連合が敵!!どちらかに味方して今日の平穏を手に入れても、明日はパナマの二の舞ぞ!!」

 

 ウズミの発言がオーブの方針は決定した。

 オーブは最後までこの戦争には中立の立場を取る。

 オーブ政府は可能な限りの交渉継続と、国民の避難行動を開始した。

 ◆◆◆

 

 アークエンジェルの格納庫でニコルは数か月ぶりにザフトの赤いパイロットスーツを着用していた。

 あの時はブリッツガンダムに乗っていたが、今乗っているのはZGMF-X11A リジェネレイトという核分裂を利用したザフトの最新型MSである。

 コンソールを動かし設定を行うニコル。

 パイロットスーツを着ているだけで手が震える。

 ニコルのPTSDは深刻で今にも倒れそうな眩暈が常に襲ってくる。

 だが戦うと決めた。

 

 「キラ、そちらはどうですか?」

 

 「こちらも直ぐ準備ができるよ。ニコル顔色悪いけど大丈夫?」

 

 「大丈夫じゃないけどやらなきゃ。でしょ?」

 

 「そうだね。やらなきゃ」

 

 ZGMF-X10A フリーダムの発進準備は出来たようだ。

 キラは作業が済んだので降りて来た。

 格納庫にはオーブから借りたMSが並んでいる。

 

 ムウ・ラ・フラガにはキラが乗っていたストライクガンダム。

 フレイ・アルスターにはニコルとキラが設計開発したストライクの改良型MSストライクレッド。

 トール・ケーニヒにはオーブで最新鋭の機体をトール用に改造したアストレイMK-2トールカスタム

 

 ニコルの乗るリジェネレイトはあまりの巨大さの為にアークエンジェルには収まらず背部のコクピット部分だけ乗せている。

 発進前に合体して戦闘開始する。

 ふらつくニコルがパイロットメットを脱ぐとフラガ少佐が真剣な表情で

 

 「坊主大丈夫か?」

 

 と聞いてきた。

 

 「慣れました」

 

 可能な限りの笑顔でフラガ少佐に返しトールの所へ向かう。

 トールは初期設定に戸惑っていたのでニコルは手助けをする。

 ニコルが全部設定してもいいが、その場合不測の事態に対処できない。

 

 「あのさニコル」

 

 「なんですか?」

 

 「このあいだはごめんな」

 

 先日ニコルを思いきり殴った事をトールは気にしていた。

 ニコルは自分がヘリオポリスを破壊した事から目を背ける気は無いので殴られて当然だと思っている。

 

 「いいんです。怒って当然です」

 

 「───でもよ」

 

 「じゃあこの戦いに勝ったらマンゴーパフェ奢ってください。それで貸し借りなしです」

 

 「そうだな。勝ったらいくらでも奢るぜ」

 

 そう言ってトールとニコルは笑う。

 元々相性がいいのだろう。

 

 「あ~あ。いいわね男と男の友情」

 

 そう言ってトールの恋人ミリアリアが二人に飲み物を差し入れてくれる。

 ニコルはミリアリアの事も好きになった。

 むろん恋愛という意味ではなくトールを通じての友人として。

 

 「ミリィも入れよ。席は空いてるぜ」

 

 「いいわよ。男の子どうし好きなだけいちゃいちゃしなさいな。それよりラミアス艦長が呼んでいるわよ」

 

 ◆◆◆

 

 アークエンジェルの格納庫に集まったクルー全員の前でマリュー・ラミアスが現状を隠さず伝える。

 

 「現在、このオーブへ向け地球連合艦隊が進行中です。地球連合に与し共にプラントを撃たないなら、オーブをプラント支援国と見なす───それが理由です」

 

 ラミアス艦長は動揺するクルー全員のざわめきが収まるまでまち、それから言葉をつづけた。

 

 「オーブ政府はあくまで中立を守るため外交努力を通じ交渉中ですが。残念ながら戦闘回避の可能性は低いと言わざるをえません」

 

 ラミアス艦長も怒りを抑えている。

 アラスカでサイクロプスを使うような連中に、オーブが屈すればどうなるかわかりきった事だ。

 

 「オーブ政府は全国民に対し避難命令を出し、軍は防御態勢に入りました」

 

 戦争が近い。

 軍人である自分たちだけでなく、平和に暮らして来たオーブの市民が戦場に放り込まれる。

 サイクロプスで殺されたアラスカの民間人のように。

 テレビで見た手足を吹き飛ばされた子供たちのようにオーブの子供たちが殺される。

 

 「アークエンジェルは現在脱走艦扱いでどのように行動するべきか定かではない状況です。オーブのこの事態に際し我々はどうするべきなのかどうか。我々は選ばなくてはなりません」

 

 今まで軍が命令を出してくれた。

 生きるべきか死ぬべきかも含めてすべての答えをだ。

 だが今は自分たちで決めなくてはならない。

 命令してくれる人はいないのだ。

 

 「回避不能となれば明後日0900に戦闘が開始されます。オーブを守るべくこれと戦うべきなのか、そうでないのか。我々は自分で判断せねばなりません」

 

 オーブを守る為に戦えば昨日までの戦友だった地球連合と戦う事になる。

 脱走艦から反逆艦になってしまうのだ。

 普通ならありえない選択肢だろう。

 だがアークエンジェルクルーはアラスカを見てしまった。 

 あのような蛮行を見てしまった。

 クルー全員の地球連合への不信感は高まっていた。

 

 「よってこれを機に艦を離れようと思う者は、今より速やかに退艦し、オーブ政府の指示に従って避難してください」

 

 ラミアス艦長は艦を離れる事を止めたりしない。

 すべて自由意志で行って欲しいと言っている。

 アラスカ戦に間に合っていたら自分たちもサイクロプスで戦死していた。

 その事を知っているクルーを前に引き留める事は出来ただろう。

 だが彼女はしなかった。

 

 「私のような……頼りない艦長に……ここまで付いてきてくれてありがとう」

 

 涙ぐみかけてラミアス艦長は深く頭を下げた。

 その光景を見て今までに見たことが無い艦長だとニコルは思ったが、同時にこの人だからこそコーディネイターのキラが残ったのだと思う。

 ただの艦長ならキラがコーディネイターだと知った瞬間、粛清して終わりだからだ。

 もしそうならとっくの昔にアークエンジェルはニコル達の攻撃で沈んでいる。

 命令ではなく自由意志で判断しろと言われた軍人がどの程度判断できるものだろうか。

 

 ◆◆◆

 

 「そっか。キラはやっぱり残るのか」

 

 「うん。やっぱりあんな兵器を使う世界は間違いだと思う」

 

 サイがキラを呼び止める。

 キラはオーブに残る事を選んだ。

 サイも残るつもりだ。

 キラもサイもオーブの国民だし当然とはいえるが、それでも軍から抜けるという判断はできたはずだ。

 サイにはもう一つの悩みがある。

 婚約者のフレイの事だ。

 

 「サイはフレイをどうするの?」

 

 「フレイは残るって言ってる。フレイの親父さんは地球連合の偉い人だから止めたけど、ブルーコスモスのやった事は許せないって言ってた」

 

 実は父親がブルーコスモスだとフレイは知らない。

 だからフレイも地球連合のやっている事に怒りを持っているのだ。

 そしてコーディネイターであるキラを人間として好きになった事も。

 ナチュラルの自分達を守る為に必死に戦ったキラの事を信頼していた。

 もっとキラに親しいトールとミリアリアも残るしあとはカズイだけだ。

 優等生サイはこうやって皆の意見調整をしている。

 サイはもう少し評価されて欲しい。

 

 「カズイはどうするんだ?」

 

 「俺は降りるよ」

 

 「そっか」

 

 「俺アラスカであんなもの見ちゃってさ。今でも夢に見るんだよね。だって人間がポップコーンみたいに弾けてたんだぜ?俺はあんな死に方したくないよ」

 

 「そうだよな、俺だってごめんだ」

 

 そう言ってサイは優しくカズイの肩を叩いた。

 だがカズイが後程大活躍をする事を当のカズイも知らない。

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