【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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オーブ戦開始です。アニメ見ててオーブ軍が易々と空挺降下を許してしまい戦線が不利になってるのを見て、カガリやキサカだって空挺降下は予測出来ていただろうにと思いまして。よく見返すと連合側の巡航ミサイルの迎撃にアストレイまで動員してるんですよね。つまり巡航ミサイルへの対処で手一杯だったという風に解釈しました。いきなりピンチですね。


第73話 オーブ防衛戦

 第73話 オーブ防衛戦

 

 『要求は不当なものであり、従う事はできない。オーブ連合首長国は今後も中立を貫く意志に変わりはない』

 

 オーブ側の返答を地球連合太平洋艦隊の旗艦パウエルの艦橋で受け取ったムルタ・アズラエルはシートに座りながら笑みを浮かべていた。

 

 「いやあ、さすがウズミ・ナラ・アスハ前代表。期待を裏切らない方ですねえ」

 

 そう言って傍らに立つ艦隊司令ダーレス提督を見やる。

 その言葉にダーレス提督は不快感を隠そうと黙っていた。

 司令部からアズラエルの要求には全面的に添うようと言われているからだ。

 そんなダーレス提督の不快さを無視してアズラエルは言葉を続ける。

 

 「ホントのところ、要求飲んで武装解除されたらどうしようかって思ってたんですよアレのテスト。ぜひとも最後まで頑張り通していただきたいものですがねぇ?」

 

 アレとはダーレス提督も噂に聞いている兵器の事だ。

 兵器と言っても機体ではない。

 人間を使った非人道的な代物だ。

 オーブが素直に従ってくれたらとダーレス提督は思ったが、もし自分がオーブでも従う事はできないだろう。

 そういう要求だった。

 オーブの持つマスドライバーとモルゲンレーテ社を何としてでも奪わなくてはならない。

 この任務の重要性をダーレス提督は理解しているが、技術大国オーブの抵抗は激烈だろう。

 これから死ぬ部下たちの戦いをショーを見るように語るアズラエルの言葉は不快感しかなかった。

 

 ◆◆◆

 

 アークエンジェルの入ったドックは静まり返っている。

 まるで嵐の前の静かさだとラミアス艦長は思った。

 その傍らに立つバジルール中尉が報告する。

 

 「艦長。退艦は十一名です。残ったクルーはラミアス艦長とこの艦に運命を託します」

 

 その報告を聞いて頷くラミアス艦長にフラガ少佐が話す。

 

 「みんなアラスカの扱いに腹が立ってるって事さ。たとえ昨日までの同胞と戦ったとしてもね」

 

 「わたしは皆に残る事を強いてしまったのかしら」

 

 「みんな自由意志で残ったのさ」

 

 軍にいた時はお飾りとはいえ艦長として皆に命令し従わせる事ができた。

 今は脱走艦の艦長だ。

 不安も迷いもある。

 

 「では私は出航の準備がありますので」

 

 完璧な敬礼をしてバジルール中尉は艦橋から退室する。

 自分にはラミアス艦長を精神面で支える事はできない。

 それはフラガ少佐に任せよう。

 そして扉を閉める寸前、フラガ少佐がラミアス艦長を抱き寄せるのを見て胸が痛くなった。

 

 ◆◆◆

 

 戦闘開始30分前にニコルは精神安定剤の注射を打つ。

 透明の薬剤はプラントで精神病患者の治療に使うものだ。

 これで三時間はもつだろう。

 コクピットには予備の薬剤が入ったキットが用意されていた。

 注射を打ってからコクピットの見える場所にシンとマユと子供たちの写った写真を取り付けた。

 怖くないと言えばうそになる。

 ずっと怖かった。

 前世でキラに殺された記憶が蘇ってから死ぬのが怖くてたまらない。

 死ぬのが怖いから戦うのだ。

 

 (シンやマユちゃんにこんな恐怖を味合わせたくない)

 

 あの兄妹が無残な死に方をするなんて我慢できない。

 ニコルはパイロットメットを被りZGMF-X11A リジェネレイトのチェックを行う。

 するまでもない。

 何度もチェックしているのだから。

 だがしないと落ち着かない。

 今頃避難しているシン達はどれだけ怖いだろう。

 だから自分が戦わなくてはならないのだ。

 シンとマユの笑顔を思い出しながらニコルはコクピットで精神を集中する。

 もう迷いはない。

 戦う覚悟はできているのだから。

 ZGMF-X11Aリジェネレイトはカタパルトデッキに固定されたまま発進の時を待っていた。

 

 ◆◆◆

 

 時計が0900を指した。

 旗艦パウエルの艦橋でアズラエルが陽気に叫ぶ。

 

 「時間です!!」

 

 その発言と同時に地球連合太平洋艦隊から一斉に巡航ミサイルが発射される。

 後方に展開している空母艦隊から戦闘機と大型輸送機が発艦した。

 この輸送機には空挺降下部隊とMSが搭載されている。

 オノゴロ島前面にミサイルを撃ち込み注意を逸らしている間に空挺降下し、一気に沿岸要塞と司令部を押さえるつもりだ。

 その司令部では白い礼服を着たカガリが戦闘指揮を執っていた。

 

 「オーブ全軍迎撃開始!!」

 

 カガリの命令で海岸線に配置されたミサイル防御陣地と戦車部隊から迎撃ミサイルが発射される。

 あらかじめ準備されていた戦車とアストレイMK-2のビームバズーカが巡航ミサイルを纏めて撃ち落とした。

 だが数が多い。

 カガリにもこれが陽動だとわかっているが、このまま海岸を突破されたら市街戦になってしまう。

 なんとしても上陸を阻止しなくてはならない。

 

 「オーブ軍戦闘を開始しました」

 

 CIC席に座るバジルール中尉の報告にラミアス艦長は命令する。

 

 「アークエンジェル発進します!!」

 「ゴットフリート!!巡航ミサイルに照準!!てーっ!!」

 

 バジルール中尉の命令で225cm 連装高エネルギー収束火線砲「ゴットフリートMk.71」が発射され、アークエンジェルの前面に迫った巡航ミサイルが次々と撃墜されていく。

 同時に75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」が射撃を開始し、ミサイルに対して弾幕を張った。

 アークエンジェルが正面に展開する事で敵艦隊の攻撃がアークエンジェルに集中するが、それで他のオーブ軍に余裕が生まれ巡航ミサイルに対処して配置を変更する事ができる。

 そしてアークエンジェルのカタパルトから、リジェネレイトのパイロット部分であるミーティアに似た機体が発進する。

 

 「ニコル・アマルフィ、リジェネレイト発進します」

 

 カタパルトから発進したリジェネレイトのコクピット部のあとに三つのパーツが合体しリジェネレイト本来の姿になる。

 この形態は後のインパルスガンダムに引き継がれる事になる。

 そしてリジェネレイトはドリルのようなMA形態で地球連合艦隊へ最大速度で突っ込んでいった。

 そしてミサイルを振り切ってリジェネレイトが急上昇する。

 

 「キラ・ヤマト。フリーダム発進します」

 

 「ムウ・ラ・フラガ。ストライク出るぜ」

 

 「フレイ・アルスター。ストライクレッド発進するわ」

 

 三機のガンダムが次々に発進し、トールの番が来た。

 トールを見つめるミリアリアの顔は泣きそうになっている。

 戦況の厳しさはミリアリアにもわかっていた。

 

 「そんな顔するなよミリィ。大丈夫だって」

 

 「必ず帰ってきてね」

 

 「約束するよ。トール・ケーニヒ、アストレイMK-2発進するぜ」

 

 トール機を発進させたアークエンジェルはオーブ軍の盾となってミサイルや艦砲を一手に引き受ける事になる。

 だがこれはバジルール中尉の立てた作戦だ。

 地球連合軍が脱走艦アークエンジェルを沈めようと躍起になった時点で作戦は成功した。

 

 ◆◆◆

 

 地球連合艦隊空母部隊、空母マーカスではシュミット提督が、空母艦隊から次々発艦する爆撃機と大型輸送機を見ていた。

 大型輸送機は空挺部隊として地球軍のGAT-01ストライクダガーが多数搭載されている。

 オーブ軍を巡航ミサイル攻撃で動けなくしたあと、空挺部隊が司令部や後方補給基地を破壊し決定打を与えるのだ。

 司令部を襲われたらカガリの命は無い。

 全てが順調だが油断はしていない。

 シュミット提督は優秀な指揮官でザフトの潜水艦隊を何度も仕留めた空母戦術の大家だ。

 その彼の乗る旗艦マーカスの前方を進んでいた空母サイパンが突然大爆発をおこした。

 

 「何事だ!?」

 

 シュミット提督の目の前で飛行していた輸送機や爆撃機が撃墜される。

 そして異形のMAが姿を現した。

 ニコルの乗るリジェネレイトだ。

 ミラージュコロイドシステムを搭載しているリジェネレイトだが、ミラージュコロイド展開時はノズルなどの噴射が出来ず、音も発生する。

 宇宙空間なら慣性移動が出来るが地上では出来ない。

 幸いNジャマーで兵器の索敵・誘導能力が低下しているが今回は完全な奇襲でなくてはならない。

 バジルール中尉とニコルが立案した作戦は、アークエンジェルが敵を引き付けている間にミラージュコロイドを展開したリジェネレイトが高空から自由落下して奇襲するというものだ。

 空母サイパンだけでなく多数の空母や護衛艦にリジェネレイトの持つ全てのビームが叩きこまれた。

 落下を終えたリジェネレイトはそのままMS形態に変形するとミーティアと同じMAX-200ビームソードを振るい艦隊の真ん中で暴れまわる。

 

 「護衛艦タフカ沈黙!!」

 

 「空母マダガスカル轟沈!!」

 無論シュミット提督も迎撃を命じるが、リジェネレイトの巨体からは想像できない機動力とニコルの巧みな操縦でミサイルも砲撃もかすりもしない。

 オーブがこんな化け物を生産しているなど想像もしていなかった。

 ましてやザフト製かつ操縦者がザフトレッドなどわかりはしない。

 理不尽な暴力はリジェネレイトが放ったロングビームライフルが旗艦マーカスと空母艦隊を貫くまで続いた。

 

 「これで空挺作戦はできなくなりましたね」

 

 そう言いながらニコルはコクピットに飾ったシンとマユと子供たちの写真を見る。

 自分が再び大量殺戮者になってしまった事を忘れはしない。

 今の攻撃で親を亡くし友人を亡くした人が大勢出ただろう。

 オーブの人を守る為に地球連合の人を殺す。

 こんな戦争は早く終わらせなくてはならない。

 燃えさかる業火の中で破壊され漂流する空母や輸送船などの艦船を見ながらニコルは決意する。

 ニコルはキラ達と合流すべくリジェネレイトを再びMA形態に戻しオーブ本島へ向けて発進した。

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