【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
第74話 アスカ家
後方で支援をしていたシュミット提督の空母艦隊が全滅したという報告は地球連合艦隊司令部を凍り付かせた。
本隊より離れた位置に展開していた空母と輸送艦を失ったという事は補給と航空支援が受けられない事を意味していた。
すぐに別の艦隊がハワイを出撃しているので補給問題はいずれ解決するが、現状残っている戦力で戦うしかない。
報告ではミラージュ・コロイドを多用しビームライフルやビームソードで武装しているMSらしい。
「厄介な敵が出てきましたねェ。ですがまだ戦力は残っている。そうでしょう?」
ムルタ・アズラエルが傍らに立っている艦隊司令ダーレス提督を見やる。
ダーレス提督は残った戦力を頭の中で計算した。
空母艦隊の戦闘機や爆撃機は失われ輸送機による空挺降下は出来なくなったとはいえ、オノゴロ島にはストライクダガーの部隊が取り付き激しい戦闘が行われている。
まだ優勢は動かない。
艦隊司令ダーレス提督は攻撃を続行する事にする。
「そろそろアレの出番です」
そう言ってアズラエルが指示を出すと同時にパイロットスーツに身を包んだ三人の少年が何かの薬を飲んでいる姿がモニターに映し出される。
緑色がかった金髪の少年オルガ・サブナック。
赤毛の少年クロト・ブエル。
緑髪の少年シャニ・アンドラス。
彼らは地球連合の秘蔵っ子であり医学薬学を施された戦闘マシーンだった。
「あー君たち?」
少年たちがモニターを見るとそこにはニヤけたアズラエルの顔が写っていた。
少年たちは一様に鬱陶しそうな顔になる。
アズラエルは気にもしていない。
同じ人間だと思うから腹が立つのだ。
アズラエルにとって少年たちは人間ではなかった。
「いいですか?マスドライバーとモルゲンレーテの工場は壊してはいけません。わかってますネ?」
「ほかはいくらやってもいいんだろ?」
「ええ構いませんよ。市街地だろうと何だろうと好きに壊しなさい」
そう言ってモニターが消える。
少年たちは悪態をついたあと、それぞれのMSに搭乗し出撃した。
緑色がかった金髪の少年オルガ・サブナックの乗るカラミティガンダムは青緑とオレンジのツートンカラーの機体で武装は
背中に125mm 2連装高エネルギー長射程ビーム砲「シュラーク」
右手に337mmプラズマサボット・バズーカ砲「トーデスブロック」
左手に盾と一体になった115mm 2連装衝角砲「ケーファー・ツヴァイ」
胸部に580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」
という重砲撃戦用のMSだ。
赤毛の少年クロト・ブエルのレイダーガンダムはMA形態の時は赤い縁取りのされた翼を広げ、タカのようなカギ爪を持つ。
武装は顔面口部分にある100mmエネルギー砲「ツォーン」
モーニングスターに類似したスパイク付金属球「ミョルニル」
盾と一体になった2連装52mm超高初速防盾砲
鳥のようなMA時にのみ使用できる機関砲だ。
可変MSでMAは鳥のような姿で重砲撃のカラミティガンダムを乗せる事が多い。
緑髪の少年シャニ・アンドラスのフォビドゥンガンダムはカーキ色で背中に甲羅のようなリフターを背負い、そのリフターから機体両側面に巨大なシールドがせり出している。
武装は巨大な鎌「ニーズヘグ」
75mm対空自動バルカン砲塔システム「イーゲルシュテルン」
両腕に内蔵された115mm機関砲「アルムフォイヤー」である。
背部バックパックに誘導プラズマ砲「フレスベルグ」と88mmレールガン「エクツァーン」が装備されている。
この機体最大の特徴はエネルギー偏向装甲「ゲシュマイディッヒ・パンツァー」で、これはブリッツのミラージュコロイドの原理を応用した技術でシールドで発生させた磁場でビームを歪曲させて命中を避ける。
防御力に優れた盾役と言える。
つまりシャニが盾で守りつつ、オルガが支援射撃を行いクロトが速度を生かして遊撃すればかなり手ごわい。
だが彼らは薬物と医学で改造されたブーステッドマンと呼ばれる強化人間で、薬物を摂取しなければ禁断症状で戦闘不能になり、薬物投与を続ければ精神崩壊が進むため冷静な思考ができない。
これは致命的な欠点で薬物投与が出来なければ廃人化するので長時間戦えない事を意味する。
また薬物で凶暴性を高めているので協調性を問われる連携は難しい。
アズラエルが盟主を務めるブルーコスモスはコーディネイターの遺伝子改造に反対しているが、彼らのようにナチュラルを改造強化しなければコーディネイターに勝てないという自己矛盾の歪んだ犠牲者だ。
いやほんとブルーコスモス糞にも程がある。
◆◆◆
「地球連合艦艇よりMS2、MA1の発進を確認。ストライクダガーではありません。新型機です」
バジルール中尉の報告にラミアス艦長は直ちに迎撃を命じようとするが、既にオーブの海岸にまで連合の攻撃が集中している状況で割ける戦力は少ない。
「キラ君、フラガ少佐で迎撃してください。フレイさんとトール君はオーブ軍と連携してオーブの防衛をお願いします」
「わかりました」
「了解」
キラとフラガ少佐が返信すると、アークエンジェルは沖合でオーブ海軍と共に迎撃任務に戻る。
オーブの海岸はMSの足で踏み荒らされ、ニコルがシンとマユと一緒に遊んだ砂浜にもロケット砲や砲弾の爆発痕で無残な姿を晒していた。
戦争は思い出さえも踏みにじっていく。
「フレイそっち行ったぞ!!」
「やだ来ないでよ!!」
オーブ軍と共に砂浜で必死の反撃をしているトールとフレイ。
足元は砂地だがニコルの設計したオートバランサーとロウの作った補助AIのお陰で足元にふらつきは無い。
オーブ軍のMSにも同じ機能が取り付けられており、それは地球連合のMSより格段に運動性能が高い事を意味していた。
ニコルの指導の元、オーブMS部隊にザフト式のMS戦闘マニュアルが教育されたのも大きい。
オーブ軍は全体の数では押されているものの奮戦している。
だが徐々に押され損害も増している。
「アサギ!!右よ右!!」
「!?」
「こんのおお!!」
アストレイMK-2に乗るアサギ、ジュリ、マユラのアストレイ三人娘も奮闘していたが形勢が不利になっていくのを肌で感じていた。
周りを見回せば破壊された味方機ばかりで前方には敵機が押し寄せている。
三人は死を覚悟した。
「遅くなりました!!」
絶望の淵に立たされた三人の耳にニコルの声が響く。
ニコルのリジェネレイトはMA形態のまま地球連合の上陸用舟艇をビーム砲の一斉射で吹き飛ばしたあと、MS形態になってストライクダガーの群れをビームサーベルで薙ぎ払う。
その雄姿に尽きかけていた闘志を燃え上がらせて、アストレイ三人娘もエネルギー切れしたビームバズーカを捨てビームサーベルで切り込んだ。
「ここは通さない!!」
巨体をアストレイ達の盾にしてニコルは四つのビームサーベルで多数のストライクダガーを切り割く。
鬼気迫るリジェネレイトの戦いぶりに、ストライクダガーが足を止め後退し始めた。
ビームサーベルが次々とストライクダガーを破壊し戦況が好転してきた。
だがそのニコルの背後から一機のMSがスパイク付金属球「ミョルニル」を投げつけようとする。
それはストライクダガーではなかった。
地球連合が開発した新鋭機だ。
レイダーガンダムである。
「滅殺!!」
レイダーガンダムはMS形態に変形すると、そのままリジェネレイトに体当たりした。
リジェネレイトは吹き飛ばされて地面に激突する。
そして倒れたまま動かないリジェネレイトにストライクダガーが遠距離で攻撃を始めた。
コクピットでは衝撃と精神安定剤が切れかけたニコルが震える指で機体を立て直そうとしていた。
そこにストライクダガーのビームライフルが撃ち込まれる。
だがそのビームはリジェネレイトに命中する前に何かに防がれた。
ニコルの前に現れたのは白と青色のMSだった。
キラ・ヤマトの乗るフリーダムガンダムである。
「ニコル!!」
「キラ!!」
「ここは任せてニコルは下がるんだ!!」
「僕も戦う!!」
「駄目だ!君には薬が!!」
こんな状況でパイロットスーツを脱いで精神安定剤を注射している余裕は無い。
ニコルはパイロットメットを脱いで手にした無針注射器を首に当て注射した。
急激に脳に直接注がれた精神安定剤にニコルは吐き気と激しい眩暈を覚えるが、痙攣していたな指の震えはなんとか止まる。
その視界に必死に山道を走る一家の姿が見えた。
「マユもう少しよ頑張って!!」
シンとマユの母親が必死にマユの手を引っ張って走っていた。
「マユ頑張れ!!あと少しで港だ!!」
父親が先頭を走って家族を砲撃の砂煙から守っている。
その時、マユの手から携帯電話が落ちた。
「マユの携帯が!!」
「そんなのいいから!!」
「いや!!」
「取ってくる!!」
落ちたマユの携帯を拾おうとシンが山道を下った瞬間、レイダーの放ったビームがシンの家族を吹き飛ばす。
爆音がシンの耳を襲い一瞬視界が真っ暗になった。
山道はビームの弾痕が穿たれ粉々になっていた。
「嘘だろ」
あまりの光景にシンは立ち尽くす。
先ほどまで一緒にいた家族を探すがどこにもいない。
「父さん!!母さん!!マユ!!」
「お兄ちゃ~ん!!ここだよ~!!」
シンが顔をあげると砕かれた山道の一角だけ原型をとどめており、
ニコルのリジェネレイトが盾となってアスカ一家を守っていたのだ。
「父さん!!母さん!!マユ!!」
シンは必死になって山道をかけあがり家族と抱き合った。
そして何度もニコルに手を振って感謝と喜びを伝える。
そのニコルはシンに微笑んで手を振り返す。
そしてリジェネレイトは立ち上がり戦闘を再開する。
キラとレイダーガンダムの戦いも始まっていた。
フリーダムはビームライフルでレイダーガンダムを撃つが、地球連合の新鋭機だけあってなかなか落ちない。
ニコルはアスカ家を救う方法と時間の無さに歯噛みする。
その時、オーブの乗用車がアスカ家の前で止まった。
その乗用車はバスで、沢山の逃げ遅れた民間人を乗せている。
「早くこっちへ!!急いで!!」
バスを運転していたのはカズイだった。
カズイは戦場で放置されていた民間バスを借りて逃げ遅れた人達を救援していたのだ。
カズイの指示に従ってアスカ家の面々がバスに乗り込む。
「ニコルさんありがとう~~!!」
バスの窓から携帯電話を手にしたマユがニコルに手を振っている。
カズイの運転するバスでアスカ家は悲劇の運命を回避した。
※作者です。
頭の中でネタはあるのですが書いている時間がありません。
書き終えたら投稿しますので少しお待ちください。