【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
第81話 マーシャル諸島補給基地
アークエンジェルは最大船速で敵艦隊を突破しながらマーシャル諸島の地球連合補給基地を目指す。
動けない島だからたどり着ければこちらの勝ちだ。
勿論そう易々と辿りつけはしない。
地球連合太平洋艦隊はありとあらゆるミサイルや砲弾をアークエンジェルに浴びせかける。
「イーゲルシュテルンはミサイルを迎撃!!コリントス!!バリアント!!ゴットフリート!!てーっ!!」
バジルール中尉の命令で放たれるアークエンジェルの武装が火を噴き、眼下の地球連合水上艦に次々と命中し破壊していくが今回はあくまで突破だ。
四方八方から飛来するミサイルをノイマン少尉の神業操舵でかわしながら前進を続ける。
キラのフリーダムもアスランのジャスティスもミサイルを撃ち落とすのに必死だ。
ニコルのリジェネレイトはMA形態でアークエンジェルの前を飛行し、地球連合の戦闘機を次々と撃墜しアークエンジェルの突破口を開いていた。
しかし、それでもアークエンジェルの被弾が増えていく。
だがニコルは諦めない。
ここで諦めたらオーブは地球連合に占領されてしまうだろう。
それは絶対に避けなければならない事だ。
だからキラもアスランもニコルも必死で戦っているのだ。
「後方より敵機、例のMSとMAです!!」
バジルール中尉の報告にラミアス艦長は指示を飛ばす。
ここで時間を浪費する訳にはいかない。
「キラ君、アスラン君と組んで迎撃してください。ニコル君はそのまま本艦の前面で突破口を開いてください」
ラミアス艦長の命令にキラとアスラン、ニコルが頷く。
そしてキラとアスランはアークエンジェルの援護と敵機の迎撃に専念する。
同時にアークエンジェルも加速して地球連合軍の包囲網から抜け出そうとする。
オルガの乗るカラミティガンダムとクロトのレイダーガンダムとシャニのフォビドゥンガンダムが後方から攻撃してきた。
「落ちろ落ちろ───!!」
カラミティガンダムの放つ125mm 2連装高エネルギー長射程ビーム砲「シュラーク」がアークエンジェルの船体を掠めた。
そのままレイダーガンダムと一緒にアークエンジェルを攻撃してくる。
「相変わらずしつこい奴らだ」
アスランのジャスティスがビームライフルを斉射したあとカラミティとレイダーの二機に接近戦を挑んだ。
MA状態のレイダーガンダムは飛行能力がほぼないカラミティガンダムを乗せているのでバランスさえ崩せれば時間は稼げるだろう。
アスランはそう考えてファトゥム-00(ファトゥム・ダブルオー)にジャスティスを乗せて空中戦を挑む。
「滅殺!!」
レイダーガンダムのパイロットクロトが相変わらず物騒な発言をしつつジャスティスに向かう。
アズラエルからの命令はアークエンジェルの撃沈なのでジャスティスを撃墜する必要は無いのだが、薬の影響で思考力が低下している彼らは目の前の敵を殺す事しか考えない。
中毒で命令を理解する能力が著しく低下しているのだ。
同じくキラがシャニのフォビドゥンガンダムと戦闘に入った。
フォビドゥンガンダムは88mmレールガン「エクツァーン」を放ちつつフリーダムに迫る。
そして巨大な鎌「ニーズヘグ」を振り上げる。
キラはビームサーベルを抜いてフォビドゥンガンダムと接近戦をしつつ、なんとかアークエンジェルから引きはがそうとしている。
「君たちと戦ってる余裕なんて無いんだ!!」
フォビドゥンガンダムとの接近戦は技量に勝るキラのフリーダムが優位だがそれでも苦戦する相手だ。
ビームを曲げる事ができるフォビドゥンガンダムはビームサーベルでの戦法以外通用しない。
シンがいればフォビドゥンガンダムに優位に立てるのだが、シンとマユはオーブ本島で防衛戦の真っ最中だ。
補給基地を早く破壊しなければシン達の命も危ない。
先頭を行くニコルの目の前に何層目になるか数えるのも嫌になる防衛網が貼られていた。
MS支援空中機動飛翔体に乗ったストライクダガーと戦闘機の大群だ。
ニコルの役目はこの防御網を突破しアークエンジェルを無事にマーシャル諸島まで到達させねばならない。
ニコルのリジェネレイトはMA形態のままMMI-GAU2 ピクウス 76mm近接防御機関砲とロングビームライフルを発射しストライクダガーと戦闘機を次々に撃墜していく。
核エネルギーを利用した高火力のロングビームライフルの一斉射撃ごとに十機ほどの戦闘機やストライクダガーが撃墜される。
ニコル機が開いた突破口をアークエンジェルが突き進む。
アークエンジェルの船体に迫るストライクダガーをニコルのリジェネレイトはMS形態に変形し、両手足に装備されたビームサーベルで叩き落としていく。
海上は落とされた戦闘機と沈む艦船とストライクダガーの破壊された機体で埋め尽くされていた。
だが、ストライクダガーと戦闘機は次から次へとアークエンジェルに向かってくる。
地球連合軍の物量は圧倒的だ。
それでもニコルは諦めない。
オーブを守りたい一心で戦う。
自分の心を癒してくれた人々の為に戦っている。
ストライクダガーの群れを突破したニコル機は何層目になるかわからない防衛網に当たる。
分厚いにも程がある。
「なら、これでどうだ!!」
MMI-GAU2 ピクウス 76mm近接防御機関砲とロングビームライフルを四方八方から放ちながらストライクダガーの群れの中を突っ切っていく。
ニコル機の通った後にはストライクダガーの残骸しか残っていない。
だが突破口の維持は困難だ。
「くっ」
ニコルが奮闘する事でアークエンジェルの負担が減る分ニコル達の疲労は蓄積されていく。
キラもアスランもオルガとクロトとシャニの連携攻撃に苦戦を強いられる。
キラはラクスを、アスランはカガリを想いながら戦っていた。
地球連合軍の物量にキラ達は徐々に押されていく。
アークエンジェルも被弾して船体が揺れる事が多くなった。
それでもラミアス艦長の指揮でなんとか戦線を維持していたのだが推力が低下しはじめたのだ。
アークエンジェルの危機を悟ったニコルはロングビームライフルを一点に集中させて大穴を穿つとビームサーベルを構えてストライクダガーを切り裂いていく。
そしてそのまま防衛線を突破して突破口を作り出したニコルはアークエンジェルを進ませる。
しかし、ストライクダガーや戦闘機の群れがまたも押し寄せてくる。
ニコルのリジェネレイトが激しく振動して墜落しそうになる。
MA形態で飛行していたニコル機のスラスター部分に被弾したのだ。
それを見てサイが素早くラミアス艦長に報告する。
「リジェネレイト被弾しました!!」
「すぐに予備パーツを射出!!急いで!!」
リジェネレイトはパーツ交換する事で戦闘を継続する事ができる。
再生という名前の通り予備パーツがあればいつまでも戦える。
すぐにスラスター部分を切り離し空中で交換するとリジェネレイトは元の位置に戻る。
長時間の緊張にニコルも疲労が限界を迎えつつあった。
ザフトレッドという精鋭でなければとっくに疲労で気絶していただろう。
『ニコルさん。マユ後悔してないよ』
あんな小さい女の子が武器を手にして戦っているのに。
マユはオーブの国民を守るために戦う事を選んだのだ。
『それにマユはニコルさんの事が好きだもん』
あの言葉は子供がよくある年上への憧れだと思う。
ニコルもマユの事は可愛いと思っている。
勿論ニコルはマユの事を子供としか思っていない。
きっと泣かせてしまうだろう。
それでも。
あの子の気持ちがただの憧れだったとしても、その未来を奪わせはしない。
マユが本当に好きな人と出会う未来を無くしたりできない。
なら、今はこの戦闘に集中するだけだ。
そう思いながら気絶しそうな疲労に耐えて戦い続けた。
アークエンジェルは地球連合軍の物量に押されながらマーシャル諸島を目指す。
そしてついにマーシャル諸島の地球連合軍補給基地が見えた。
バジルール中尉が叫んだ。
「ラミアス艦長!!マーシャル諸島です!!」
「ゴットフリート、バリアント照準!!撃ちまくりなさい!!」
ラミアス艦長の命令でアークエンジェルは全ての主砲を補給基地に叩きこむ。
地上車や補給物資が蓄積された補給基地は大爆発を起こし、発進準備していた輸送機やストライクダガーは爆発四散した。
「やった!!」
ニコルが意識を失いそうになった時、アスランのジャスティスがリジェネレイトを支えてくれた。
その隣にはキラのフリーダムがいる。
その隙にアークエンジェルはマーシャル諸島を離脱する。
こうしてオーブは地球連合軍の第二次攻撃を持ちこたえたのだった。