【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。   作:屠龍

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今回は悩みましたが、まあ書いたものは仕方がないなと。たまにはこんな話も書きたいのです。そう言われなくてもキラにはラクス、アスランにはカガリ、ディアッカには史実ではミリアリア(うちの世界はトール生存なので不成立)イザークにはシホ?とみな彼女がいるのにニコルにはいない。もしかしたらニコルにも婚約者候補がいたかもですね。


第83話 告白

 第83話 告白

 

 アスハ邸での作戦会議が終わってからニコルはその足でアークエンジェルが修理を受けている地下ドックへと向かう。

 激戦続きでアークエンジェルは各部がかなりのダメージを受けていた。

 かつて自分たちが沈めようと追いかけたアークエンジェルを、今度は味方だった地球連合が攻撃している。

 つくづく因縁深い艦だと思う。

 アークエンジェルを見上げると感慨深いがニコルがここに来たのは感傷に浸る為じゃない。

 マユに会ってちゃんと気持ちを伝えるためだ。

 明日の早朝総攻撃をかける。

 キラとアスランが隣にいてくれるから心強いが、だからといってニコルが戦死しない保証などない。

 生きている間にマユの気持ちに答えてあげるべきだとアスランに言われた。

 カガリにまだ告白できないアスランにだけは言われたくないけど正論だと思う。

 あんなに可愛くていい子を泣かせてしまうのは心苦しいが、ちゃんと交際を断らないとマユちゃんは新しい恋に向かえない。

 いつまでも死んだ男を想い続けるなんて残酷すぎる。

 ニコルはそう決意してアークエンジェルを見下ろすドックの休憩室に向かう。

 休憩室は殺風景でコーヒーの自販機くらいしかない。

 そこであまりおいしくないコーヒーを飲んで気持ちを落ち着ける。

 バルトフェルド隊長のコーヒーを懐かしく思い出した。

 

 (バルトフェルド隊長ならこういう時の最適解を知ってるんだろうな)

 

 等と考えるがバルトフェルド当人が聞いたら『他人の意見より自分の言葉でマユの気持ちに真摯に向き合え』と怒るかもしれない。

 

 それから待ち合わせのテラスへと向かった。

 戦争中だから普段いるモルゲンレーテ社の社員はいなくて寂しいが二人きりになれる場所はここしかない。

 待ち合わせ時間よりかなり早いのにマユは待っていた。

 Vネックのウェットシャツとスカート姿という戦地で手に入るできるだけのおしゃれをしてきてくれた。

 

 「マユちゃん待たせてごめんなさい」

 

 「ううん。マユもちょっと早く来ただけだから」

 

 多分約束から一時間くらい前に来てたのだろうとニコルは思った。

 健気でいい子だ。

 シンが手放したくない気持ちもわかる。

 なお言うまでもなくシンは柱に隠れて聞いている。

 そしてニコルはシンの気配に気が付いていた。

 

 (本当にマユちゃんの事を大切にしてるんだなあ)

 

 これから告白を断ったら

 

 『うちのマユのどこが気に入らないんだ!!』

 

 って対艦刀で追いかけまわされるかもしれない。

 

 「マユちゃん来てくれてありがとう」

 

 「ううん、誘ってくれて嬉しいな」

 

 そう言ってマユは満面の笑顔でニコルを見る。

 この笑顔を曇らせるのは心苦しい。

 SEEDで曇るのはキラだけでいい。

 

 「マユちゃん告白してくれてありがとう」

 

 「うん。マユ頑張った」

 

 笑顔のままのマユだったが緊張しているのがニコルにはわかる。

 だがちゃんと言わないといけない。

 

 「マユちゃん。僕はマユちゃんと付き合えないです」

 

 ニコルは頭を下げて謝罪する。

 マユがどんな顔をしているのか見たくないが向き合わないといけない。

 ニコルは顔を上げた。

 マユは目に涙を浮かべて泣いていた。

 ニコルの胸がズキンと痛んだ。

 

 「どうしても駄目ですか?マユそんなに魅力ないですか?」

 

 「そんな事無いです。マユちゃんは可愛いし、将来絶対美人になると思います」

 

 それに関しては視聴者と読者一堂異論はない筈だ。

 アスカ兄妹は外見をコーディネイトしたのかと思うくらい美形だ。

 シンだって怒ると怖いが普段は穏やかな美男子だし、きっとモテるだろう。

 

 「じゃあ何故ですか?どうしてですか?」

 

 「マユちゃんの事僕は好きですよ。でもそれは女性として好きというのと違って妹みたいな好きなんです」

 

 「それはマユが年下だからですか?マユだってこれから大きくなるし、ニコルさんの隣に立っても恥ずかしくない大人になります」

 

 「逆に聞くけどマユちゃんは僕のどこが好きになったの?」

 

 「ニコルさん美形だし優しいし強くてマユ達の事助けてくれて」

 

 ニコルは美形で心根も優しくてピアニストとザフトレッドを両立できる才能豊かでスペックはかなり高い。

 マユの両親も食事時にニコルの事を誠実でMSとか技術も優れていてと褒めている。

 マユも同意しながら団らんしていたりする。

 それを毎日横で聞いているシンの内心は穏やかではないだろう。

 それに加えてアスカ家の命の恩人だ。

 マユは知らないが実家はプラント有数の大金持ちだし。

 あえて欠点を探すなら皆より一歩後ろに引いている立ち位置を好む性格だろうか。

 といっても単身アルテミス要塞に乗り込む度胸があるから優しいだけでもない。

 だがイザークやディアッカやアスランやキラみたいに印象に残る個性が足りない。

 これは今後の成長次第だろう。

 ニコルは良くも悪くも欠点が少ない。

 

 「でもマユが一番好きになったのはニコルさんのピアノ」

 

 「僕のピアノ?」

 

 「はい。マユはニコルさんのピアノを初めて聴いた時、涙があふれちゃった。こんなに優しくて綺麗なピアノを奏でられる人がいるんだって」

 

 そう言ってマユは息をのんで大きな声で言う。

 

 「もう一度言います!!マユはニコルさんの彼女になりたいです!!」

 

 とても真っすぐないい子だとニコルは思った。

 マユが浮ついた気持ちでニコルの事を想っていない事はわかった。

 憧れとか初恋のいわゆる恋に恋してるという状態ならもう一度断れただろう。

 マユはニコルを一人の男性として好きになっている。

 ニコルは迷う。

 戦場で迷った時より迷う。

 ニコルは今までこんなに人を好きになったことは無い。

 アスランへの思慕はあるがあくまで同性としてだ。

 

 そして迷った時点でニコルの負けだ。

 

 いつの間にか、マユに惹かれていた自分の心に気が付いたからだ。

 オーブに来て疲れた心を癒そうと砂浜に出たとき、はじめてシンとマユに出会った。

 それからも軍務の合間を調整して二人と遊んだ。

 シンを引っ張っていく笑顔と元気さがとても魅力的だった。

 そしてあのピアノを聴いてくれた。

 ニコルがマユを妹のように大切に想っているのは事実だ。

 だが、それ以上にマユに惹かれているのも事実だった。

 

 「マユちゃん。僕の本心を言うとね。今日は断ろうって決めてきたんです。マユちゃんはこれからもっと素敵な男の子にも出会えるし、マユちゃんを好きになる子も多いと思います。マユちゃんも知ってる通り明日僕は出撃します。地球連合の艦隊に殴り込みをかけるから、多分生きて帰れない。そんな僕の事を想ってこれからのマユちゃんの人生を縛りたくないです」

 

 「………」

 

 「マユちゃんの気持ちは嬉しいですよ。マユちゃんはとても魅力的だ。でも僕じゃマユちゃんを幸せにできないんです」

 

 「いくじなし」

 

 「え?」

 

 「いくじなしって言ったんです。マユの事を想ってとかマユを幸せにできないとか。そんなのどうでもいいです。そんな男の人の小さなプライドなんて聞かされてマユが納得すると思いますか?」

 

 「………」

 

 「好きか嫌いか、一緒にいたいかだけでいいんです。ニコルさんがマユの為に一生懸命に考えて答えてくれたのはわかります。でもマユが聞きたいのは別の事です。ニコルさんがマユといて楽しくないならマユは諦めます。すぐには無理でも別の人を好きになるかもです。でもマユの事を想ってとかマユを幸せにできないとか、そんなどうでもいい理由で断られて、はいそうですかって諦められるほどマユは器用じゃないです」

 

 「……マユちゃん」

 

 「ニコルさんが言うようにニコルさんは明日戦死するかもしれません。それでもマユはニコルさんの本心が聞きたい。ニコルさんの本当の気持ちを聞きたいです。マユの心の中にニコルさんはいます。ニコルさんの心の中にマユはいますか?いないならマユは諦めます。思いきり泣きます。泣いて泣いてニコルさんを忘れます」

 

 ニコルはマユの事を考える。

 真剣に誠実に。

 そして心の中にマユがいた事を知る。

 ニコルはマユに惹かれていた。

 だから答えは決まった。

 

 「……いるよ。僕の心の中にマユちゃんはいる」

 

 「マユと付き合ってくれますか?」

 

 「まって僕から言わせて。マユちゃん、僕と交際してください」

 

 その言葉を聞いてマユは吹き出した。

 嬉し涙をこぼしながら楽しそうに笑う。

 

 「交際ってニコルさん固すぎです」

 

 「僕、変な事言いました?」

 

 「そういうニコルさんの一面もこれから見せてくださいね」

 

 そう言ってマユはニコルに抱き着く。

 ニコルの胸で嬉し泣きするマユの背中を撫でながら、ニコルは命の限りこの子を愛そうと誓う。

 ───そして柱の陰でシン・アスカは廃人と化した。

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