【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
申し訳ありませんが数日だけお待ちください。
今回は久しぶりにクルーゼ隊の面々です。といってもクルーゼは本国でイザークとディアッカだけがパナマ攻略戦に向かったのでラスティ、ミゲル、エマ、ジャンヌはお留守番です。そして新型機体が行き渡り始めました。あとブルコスって階級低いのばかりだし、という事で少将を出してみました。これが大将とかだと話が大きくなりますので少将だと階級が低すぎず高すぎずです。
第87話 スーパーコーディネイターの出来損ない
第87話 スーパーコーディネイターの出来損ない
ごぽぽぽぽ……
水の中に彼女はいた。
正確にいうと過去の彼女だ。
彼女は暖かな水中から取り出され外気に晒される。
おぎゃあ───おぎゃあ
赤子の泣く声が聞こえる。
いやこの子は自分だと彼女にはわかる。
なぜだかそれがわかった。
「今回は上手く行ったようだな」
誰か金髪の男性の腕が彼女を抱き上げる。
男性は白衣を着ていてとても嬉しそうにしている。
彼女は男性に運ばれながらそのまま人工の安眠室へと連れていかれる。
そこには彼女のように新たに生み出された者たちがいた。
何人くらいいるのだろうか?
多分五人くらい。
その安眠室がいくつも用意してあって全部で二十から三十人くらいいる。
安眠室の中は甘酸っぱい匂いに満ちていて、その匂いを嗅いだ彼女はすぐ眠りについた。
「流石博士だ、とうとうやったな」
「いえ、これも貴方が資金提供してくださったお陰です」
「これで目途がたったな。次こそ作るのだろう?例のスーパーコーディネイター」
「はい。一から作り上げる真のコーディネイター、スーパーコーディネイター。私の息子です」
「それでこの子達はどうする?」
「折角作った命です。研究資金の謝礼として差し上げますよ」
彼女達は売られた。
スーパーコーディネイター、キラ・ヤマトを作り出すための実験体として生を受けた彼女たちはこう呼ばれる。
『スーパーコーディネイターの出来損ない』
キラ・ヤマトより先に生まれた彼の出来損ないとして。
◆◆◆
地球連合のプトレマイオス基地は月面基地の1つでプトレマイオス・クレーターに建設された軍事拠点である。
地球連合軍のプトレマイオス基地は、現在新たに届いた艦船や物資の搬入で忙しい。
アフリカのビクトリア基地を奪還した事で、この基地の機能は生き返った。
もし少しでもビクトリア基地奪還が遅れていればプトレマイオス基地は補給不足で干上がりザフトによって制圧されていただろう。
オペレーション・スピットブレイクに失敗したザフトにそんな余力が無かったのも幸いしてプトレマイオス基地は生き残った。
「まったく地球連合もしぶといものだなジャンヌ」
隣を飛ぶザフトの最新型MSゲイツに乗ったミゲル・アイマンがジャンヌに話しかける。
ZGMF-600ゲイツは緑色のカラーリングを施されたザフトの最新鋭機体だ。
ミゲルの機体はオレンジカラーで性能が20%ほど良い。
ゲイツの特徴はザフトでMA-M21G ビームライフルという名のビーム兵器を標準装備とした事だ。
まだ量産ラインにのったばかりなので、一部のエースパイロットやクルーゼ隊などのエリート部隊にしか配備されていない。
エースパイロットのジャンヌの乗る機体もゲイツで優先的に配備された。
地上に降りたディアッカが宇宙に帰ってくるというのでジャンヌは上機嫌だった。
トリガーを引く手も軽やかだ。
現在ラスティを隊長としてミゲル、ジャンヌ、エマの四人はプトレマイオス基地に向かう地球連合の輸送船団と交戦中だ。
大規模攻勢に備えて輸送物資を少しでも破壊しておかなければならない。
最近配備されて来た地球連合軍のMSストライクダガーの性能は認めざるを得ない。
一対一なら負けることは無いが、兎に角数が多い。
舐めているとやられる相手だというのにジャンヌは日頃の堅苦しさはどこへやら。
まるでピクニック気分で敵機を撃墜していく。
「ミゲル、エマ、ラスティがいればザフトは負けないな」
それは自信をもって言える。
ラスティは赤服だし『黄昏の魔弾』ことミゲルは緑服とはいえザフトで聞いた者がいない程の実力者。
ジャンヌもエマも緑服とはいえクルーゼ隊に編入される実力者でもある。
「この戦争もあと少しで終わりだな。月基地を落せば終わりだ。ナチュラルのMSなどにザフトが負けるものか」
ジャンヌは上機嫌で敵機を撃墜していく。
その様はまるで水を得た魚のようだ。
◆◆◆
一方、月基地では地球連合軍の輸送船が一隻また一隻と沈められていく報告が入ってくる。
その様にフィリップス少将の第7艦隊は出撃しては逃げられを繰り返していた。
「宇宙のハエめ。ちょこまかと。これ以上輸送船を沈められてはならん。MS隊は警戒を厳にせよ」
フィリップスは地球連合の宇宙艦隊提督で、月面基地の司令官の一人でもある。
彼はこの作戦が失敗に終わるとは思っていない。
損害以上に補給物資が届くのだ、しかもMS付きで。
しかしオーブを攻撃した艦隊は大損害を受けて大敗したという。
オーブのマスドライバーがあればもっと優位に立てるものをまったく腹立たしい。
フィリップスは自分の足を引っ張った盟主アズラエルの力量に疑問を抱いた。
彼もブルーコスモスだったのだ。
「仕方がない。コーディネイターの部隊を回せ」
実は地球連合にもコーディネイターは存在する。
かれらは自身が生まれながらナチュラルではなくコーディネイターとして生まれた事で葛藤し、地球連合に身を投じたコーディネイターである。
概して戦闘力が高いのでこういう時は役立つ。
ブルーコスモスのフィリップスにとって失っても構わない戦力というのは貴重だ。
ハエでハエを落すのだから言うまでもない。
フィリップスが紅茶を飲もうとティーカップに手を差し伸べた時だ。
情報将校が彼に近づき通信文を手渡す。
それはオーブから二隻の船が軌道上へ上がってきたという報告だ。
一隻は反逆艦アークエンジェル、もう一隻はオーブの船らしい。
まったく忌々しい。
ザフトだけでも厄介なのに反逆者共まで『我々の』宇宙を土足で踏みにじる。
だから緒戦に核ミサイルの大量投入であの忌々しい砂時計を全て破壊すればよかったのだ。
農業用コロニー一基を破壊する事で済ませていたのだから甘すぎると言わざるをえない。
「それで反逆者達はどこへ行く?まさか二隻で月を攻撃するとも思えんが」
「進路はL4コロニー群です」
ほぼ無人のコロニー群と報告されたフィリップス少将の第7艦隊は一部をL4コロニー群へと向かわせる事にする。
(あんな所に何があるんだ?)
そう幕僚たちは考えたが命令なら仕方がない。
対してフィリップス少将は紅茶を飲み冷静を装ったが内心気が気ではない。
あそこはまずい。
あそこは無人だが知られたくない事が多い。
特にあの場所は、とそこまで考えて彼は思考を止めた。
今はブルーコスモスの盟主アズラエルが決めた作戦に忠実であらねばならない。
それが地球連合の、いやナチュラルの正義なのだ。
そして第七艦隊の一部がL4コロニー群へと向かう。
宇宙に上がったばかりのアークエンジェルとクサナギは早々に戦闘に入る事となった。