【完結】僕のピアノよCEに響け。逆行したニコルが絶望と悲しみの世界をやりなおします。 作:屠龍
第96話 メンデルへ
ニコルのリジェネレイトはL4宙域の偵察を行う。
リジェネレイトはミラージュコロイドシステムを駆使しながらだから、使用時はバーニアなどを使えない。
なのでコロニーの残骸の影に隠れてミラージュコロイドを使用したり慣性航行で進む事になる。
ニコル達が拠点にしているハーバー・コロニーから索敵範囲を広げているが、広大な範囲内をニコル一人で偵察しなくてはならない。
他の機体だと見つかるからだ。
キラもアスランも手伝ってくれると言ってくれたが、万が一ハーバー・コロニーが発見された場合のリスクが大きすぎた。
勿論ニコルも危険が大きい任務なのでマユが嫌がったし一緒に行くと聞かなかったが、シンとニコルの説得に応じてくれたので大人しくしてくれている。
この戦争が終わったらシンたちはどうするのだろう?
まさかマユだけニコルの家で引き取る訳にもいかないし。
そんな事を考えた自分に緊張感が足りないと思いニコルは反省した。
だがマユと想いを通じ合ったのだから、オーブとプラントの遠距離恋愛は出来ないだろう。
ニコルがオーブに移住するというのは無理ではないが、ニコルは今回の事でマイウス市に大きな借りができた。
父のユーリは笑顔で送り出してくれるだろうがそうもいかないだろう。
「反応アリ。ビンゴですね」
そう言ってニコルは高速巡行モードのMA形態から小回りの利くMS形態にリジェネレイトを変形させてミラージュ・コロイドシステムを起動させた。
リジェネレイトは視覚からも光学的にも見えなくなる。
ニコルの視界にザフトのナスカ級が三隻見える。
そのうちの一隻はヴェサリウス、クルーゼ隊長の艦だ。
(クルーゼ隊長は敵なのだろうか?)
ニコルはラウ・ル・クルーゼの事を指揮官としてもMSパイロットとしても尊敬している。
だが生粋の武人であるクルーゼ隊長はザフトからの離脱には同意してくれないだろう。
クルーゼ隊がここにいるとしたら、イザーク、ディアッカ、ラスティ、ミゲル、エマ、ジャンヌもいるはずだ。
みな経験豊富なMSパイロットで敵に回したくはない。
元々単独で仕掛ける気などないので後を追うことにした。
クルーゼ隊は何かを探しているように散開してMS隊を発進させている。
その狙いはアークエンジェル達だろう。
前回ドミニオンと戦っていたのがクルーゼ隊長に見つかったようだ。
さっとハーバー・コロニーに退避したからよかったものの、もし見つかっていたら危ない所だった。
慎重に辺りを探っているイザークのデュエルとディアッカのバスター。
そしてザフトの新型MS ZGMF-600ゲイツ。
一機はミゲル専用機でオレンジ色だ。
ドミニオンより遥かに優勢な戦力だと言える。
しばらく辺りを捜索していたが何も発見できず別の方向へと去っていく。
ハーバー・コロニーがミラージュコロイドで姿を隠していなかったら、ドミニオンかクルーゼ隊にやられていただろう。
ニコルは一旦帰投して報告しようと考えた。
明らかに彼らはアークエンジェルを探しているのだ。
◆◆◆
ハーバー・コロニーに帰還したニコルは先ほどの報告をマリュー達に行う。
マリュー達は今後の行動を協議しはじめた。
艦の修理が終わらないかぎり動けないのだから当分は平和な時間だろう。
ニコルはザフトレッドの軍服を脱ぎ私服に着替える。
今夜だけでもマユと一緒にいたかった。
「ニコルさんっ♪」
そう言ってマユがニコルの私室に飛び込んでくる。
ピンクのワンピースを着ていてとても可愛い。
「ごめん、また任務があるから少ししか一緒にいられないけど」
ニコルが申し訳なさそうにそう言うと、マユは笑顔になりニコルに抱きついた。
「いいんです。こうしてるだけでも嬉しいですから。今夜はお父さんとお母さんも帰ってくるんです。一緒に夕食を食べようって言ってます」
アスカ家は全員オーブのクサナギに乗艦している。
ニコルも同じだからよく顔を合わせるが、プライベートな時間とはまた別なものだ。
アスカ両親にとって職場でのニコルは技術者とMSパイロットという関係でしかないが、プライベートでは可愛い娘の未来の夫(予定)なので接し方も変わる。
ニコルがオーブ生活で和食に慣れたのを知ったアスカ家では毎朝都合がつけばニコルも含めた五人で朝食を食べている。
楽しそうにしているマユを目の前で見せられるシンはずっと「ぐぬぬ」状態だが諦めが悪いというものだ。
シン自身も将来赤毛の彼女が出来たら六人で朝食を食べるかもしれない。
この話DESTINYまでやるかは作者も悩んでますが。
「ありがとう。それじゃ少しだけ公園でゆっくりしてから行こうか」
「はいっ♪」
マユは満面の笑顔でニコルの手を握る。
九歳の女の子と恋人になった十五歳の自分。
あと数年たったら自分も大人になって、マユちゃんも大人の女性になる。
その時に自分はちゃんとマユちゃんを守れる男になれるだろうか?
「ニコルさん、どうかしました?」
「ううん。なんでもないよ」
そう言ってニコルはマユの手を握り返した。
翌日もニコルは偵察に出る。
なんとしてもドミニオンとクルーゼ隊の正確な位置を突き止めなくてはならない。
ニコル一人だけではやはり荷が重いので、今日はキラとアスランとフラガ少佐の四人がかりで探索を行う。
「キラ、アスラン、フラガ少佐。昨日ヴェサリウスが立ち去ったのはこの宙域です」
ニコルが周辺の宇宙図を指し示す。
そこはメンデル・コロニーというコロニーがある場所だ。
あのコロニーに何かあるのだろうか?
ドミニオンが発見できない以上、クルーゼ隊をなんとかしなくてはならない。
かつての戦友を撃てるのだろうか?
ニコルには自信が無い。
四機が飛び立ったあと、マユはリジェネレイトの後ろ姿を見送って胸の前で手を合わせる。
その妹の姿にシンはマユの肩を抱き寄せて手をつないだ。
ニコルは真剣にマユを愛しているし、マユも本気でニコルを愛しているのがわかったのでシンも諦めがついた。
シンだって妹の幸せを願わない訳ではないのだ。
それにシンだってニコルの事は好きだし、信頼してるし、優しいし、頭いいし、格闘技だってMSにだって乗れてしかも強い。
マユの事を純粋に愛しているって傍から見てもわかってるわけで。
妹の彼氏にこれ以上相応しい男は今後も現れないかもしれない。
「お兄ちゃん。マユ辛いよ」
「仕方ないよ。俺たちの機体にはNJCが付いてないんだから」
「フラガ少佐のストライクは大丈夫なのに?」
「ストライクには予備のバッテリーパックがあるから」
元々マユのシェンウーもシンのアストレイも地上用を宇宙用に改造したので無理がある。
バッテリーパックの予備はあるが、それでも長時間は戦えない。
キラやアスランが羨ましいと思うマユだが、こればかりはどうしようもないと諦めるしかないだろう。
しばらくしてニコルから緊急通信がアークエンジェルに入った。
メンデル・コロニーの宙域でザフトのクルーゼ隊と戦闘になったというのだ。
フラガ少佐のストライクは損傷しメンデルコロニーに墜落したらしい。
キラとフラガ少佐がメンデルコロニーの中に入り、ニコルとアスランも戦闘中らしい。
その報告を聞いてシンとマユは驚愕した。
二人はクサナギに戻りカガリに直談判する。
「俺とマユも出る。いいよな?」
「いいだろう。ただし四人を救出したらすぐ帰投する事。それが条件だ」
カガリの判断は早かった。
すぐにハーバー・コロニーの軍港にあるカタパルトにマユとシンの機体がセットされる。
「シン・アスカ。アストレイシルバーフレーム」
「マユ・アスカ。シェンウー」
「「行きます!!」」
兄妹はメンデル・コロニーへ向かって飛び立つ。
情勢は再び動き出した。